<大項目> 海外情勢
<中項目> 旧ソ連・東欧各国
<小項目> ハンガリー
<タイトル>
ハンガリーの核燃料サイクル (14-06-09-03)

<概要>
 ハンガリーの首都ブダペストの南114kmに位置するパクシュ原子力発電所は、旧ソ連型第2世代軽水炉(VVER-440/V213)・4基で構成され、1983年〜1987年にかけて次々と営業運転を開始した。パクシュ発電所の燃料は、1990年まで旧ソ連から、その後ロシアから供給されている。同国唯一のウラン鉱山であるメクセク鉱山は、ウラン埋蔵量(USD130/kgU未満の予測資源)は18,399トンU、40年間の生産継続が可能といわれていたが、経営状況が悪化する中、1997年に操業を停止した。ちなみに、ハンガリー国内に製錬、成型加工、濃縮施設はない。
 ハンガリーは放射性廃棄物を直接処分する方針を示し、1997年6月に原子力施設廃止措置放射性廃棄物処分のための原子力基金の創設を盛り込んだ「新原子力法」を成立、1998年には放射性廃棄物管理公社(PURAM)を設立した。
 低・中レベルの放射性廃棄物は、プスポクスズィラギで浅地中処分を行っていたが、住民の反対運動から1997年に廃棄物の搬入を中止、代わりに2012年12月から、バータアパチで操業を開始している。使用済燃料は、旧ソ連及びロシアへ輸送していたが、1997年からパクシュ発電所サイト内で、モジュラー型の乾式中間貯蔵施設において管理している。最終処分場は、2065年以降の開設を目標に計画を進めている。
<更新年月>
2013年12月   

<本文>
1.概要
 ハンガリーの首都ブダペストの南114kmに位置するパクシュ原子力発電所(PAKS)は、旧ソ連型第2世代軽水炉(VVER-440/V213)・4基で構成され、1、2、3、4号機はそれぞれ1983年、1984年、1986年、1987年に営業運転を開始した(表1及び図1参照)。これら4基の原子炉で2012年には157.93億kWhを発電、国内供給電力量の45.89%を担い、原子力発電は同国における電力供給の重要な位置を占めている(図2参照)。
 パクシュ原子炉の燃料は、運転当初、ハンガリー国内でウラン鉱石を採掘し、濃縮、その他の燃料加工を旧ソ連で行ってきた。しかし、同国唯一のウラン鉱山であるメクセク鉱山(Mecsek)は、悪化する経済不況の中、操業することが困難となり、1997年に操業停止に追い込まれた。現在、パクシュ原子炉の燃料は年間370トンU必要であり、ロシアのアトムエネルゴイクスポルト社(ATOMENERGOEXPORT)から購入している。
 旧ソ連時代には、ソ連製原子炉から出される使用済燃料は、核不拡散の原則からソ連側が全て引取り、貯蔵、再処理が行われてきたが、ソ連邦解体以降の1992年、ロシアは環境保護法により、中間貯蔵及び最終処分を目的とした外国からの放射性廃棄物の持込を禁止した。しかし、ロシアから燃料供給を受けているハンガリーは、1994年にハンガリー・ロシア間で枠組み協定を締結し、1989年から1998年にかけて使用済燃料をロシアへ輸送していた。その後、パクシュ原子力発電会社は将来を考慮し、発電所サイト内に乾式貯蔵施設を建設して1997年から使用済燃料の貯蔵管理を行っている。
2.フロントエンド
 ハンガリーのウラン探査は、ハンガリーと旧ソ連のジョイントベンチャー企業「SOVROM−CUARTIT」により、石炭を採掘していた地域を中心に行われ、1954年にメタセク山脈でウラン鉱脈を発見した。1956年に、上部砂岩層に覆われた地下100〜800メートルの中で採鉱が開始された。しかし、生産コストが世界市場の2倍に相当するなど悪化する経済不況の中で操業継続は困難とされ、1997年に閉山された。
 ウラン埋蔵量は、USD130/kgU未満の予測資源量(旧推定追加資源量II)で18,399トンUあり、40年間の生産継続が可能といわれていた。採掘規模は500,000〜600,000鉱石t/年、平均採掘実収率は50〜60%、製錬はヒープリーチング法(採石した鉱石に酸性溶液を散布し、ウランを浸出させて生産する方法)により定格生産容量700トンU/年、1997年までに21,000トンUが処理され、旧ソ連邦に送られた。
 なお、メクセク鉱山のデコミッショニングは、ハンガリー管轄当局の承認のもと、1996年からメクセクウラン会社(Mecsekuran Ltd.)、メクセクウラン鉱山公社(MEV)及びメクセク環境会社(Mecsekerc Environmental Corporation)により進められた。1997年の鉱山閉鎖に伴い、政府の資金援助を得て、環境の安定化及び修復に関する環境修復保全計画が実施され2008年に終了した。主な修復内容は、(1)坑内採掘区域の閉鎖、(2)ずり堆積場、ヒープリーチング区域、鉱滓ダム及び汚染水流の改善、(3)採掘プラントと露天採掘区域の閉鎖である。その後も、採掘区域と鉱滓ダム区域の汚染水の処理及びウラン採掘地の監視システムの運用が継続して行われている。
 一方、2006年以降、メクセク(Mecsek)鉱床を中心に、4箇所のウラン鉱床プロジェクトと7件の探鉱ライセンス活動が進行し、過去の探鉱活動の見直しや地質学的モデルの確立により、資源量が見直されている。OECD・NEA/IAEAのURANIUM 2011(レッドブック2011)によると、発見資源量(旧既知資源量)は高コスト区分USD260/kgU未満で11,550tU、未発見資源量はUSD260/kgU未満で12,800tUと報告されている。
 なお、ハンガリーに製錬、成型加工、濃縮施設はない。
3.バックエンド
 ハンガリーでは、国家レベルで放射性廃棄物及び使用済燃料の管理、最終処分場の設置、原子炉の廃止措置が計画されている。1997年6月には、原子力施設の廃止措置と放射性廃棄物処分のための原子力基金の創設を盛り込んだ「新原子力法」が成立している。放射性廃棄物の管理は、1998年に設立した放射性廃棄物管理公社(PURAM:Public Agency for Management of Radioactive Waste)が、原子力の安全性、認可等に関しては、ハンガリー原子力庁(HAEA:Hungarian Atomic Energy Authority)が担当している。
 放射性廃棄物の分類は、液体、固体両方の廃棄物に対し、5×108Bq/kg以下で、空気中の吸収線量率が300μGy/h以下を低レベル放射性廃棄物、5×1011Bq/kg以上で、空気中の吸収線量率が1×104μGy/h以上を高レベル廃棄物とし、その中間を中レベル廃棄物としている。さらに半減期により、30日以下の短寿命、30年以上の長寿命、その中間の廃棄物に分類している。法規制はEUの法規制に照らし合わせ、社会福祉省の公衆衛生・医療監督局が行っている。表2に2012年1月時点の放射性廃棄物の管理状況を示す。
(1)発電所廃棄物
 液体の低レベル及び固体の中レベル廃棄物は、パクシュ発電所サイトの処理施設でセメント固化された後、暫定貯蔵(一時保管)されている。これらの廃棄物パッケージ(ドラム缶)は、試験的にブダペスト近郊に位置するソリマー(Solymar)サイトにおいて処分されていたが、1963年、新たにPest州プスポクスズィラギ処分場(Puspokszilay)の操業が開始されると廃棄物は全てこの施設に移され、2005年まで浅地中処分された。総埋設量は5,040m3である。
 なお、プスポクスズィラギ処分場はサイトを拡張する際、(1)処分場周辺地域が地震帯に属すること、地層の浸水性や岩盤移動性などから、放射性廃棄物を安全に処分するうえで憂慮されること、(2)廃棄物の移送経路に問題があることなどが指摘され、住民の反対運動が激化、1997年から搬送は中止された。
 これにより、新たな処分場として、パクシュ発電所から南へ30kmに位置するTolna州バータアパチ(Bataapati)処分場が2012年12月から操業を開始している。バータアパチ処分場は地下200〜250mの花崗岩質のトンネル空洞内に埋設処分している。2013年中にはボールトの追加建設を開始するなど、埋設規模は40,000m3まで拡張される計画である。
 現在、パクシュ発電所では年間250m3の液体廃棄物、200リットルドラム缶6本の固体廃棄物、2.5m3の高レベル廃棄物が発生している。また、パクシュ発電所の廃止措置がとられた場合には、低中レベル廃棄物が20,000m3、高レベル廃棄物が3,700m3発生すると推定されている。
(2)使用済燃料
 パクシュ原子力発電所で発生した使用済燃料は、1994年にハンガリーとロシア両国政府間で結ばれた枠組み協定によりロシアへの移送が可能であった。しかし、パクシュ原子力発電会社は、発電所の使用済燃料貯蔵プールが満杯であることや、将来的な不確定要素を考慮して、1995年3月から同発電所サイト内に使用済燃料中間貯蔵施設の建設を開始した。
 施設は1997年2月に完成、3月には操業認可が発給された(総工費:約3,500万ドル)。建設を英仏合弁会社であるGECアルストム社が担当したモジュラー型地下貯蔵方式の乾式貯蔵施設で、50年間にわたり、同発電所の使用済燃料を貯蔵する能力を持つ(図3参照)。
(3)非発電所廃棄物
 ブダペストの30km北のプスポクスズィラギ(Puspokszilay)にある放射性廃棄物管理処分施設において、産業・医療・研究分野などで発生する低・中レベル放射性廃棄物の処分が行なわれている。この施設は、社会福祉省の公衆衛生・医療監督局が、1977年から運営するトレンチ方式のコンクリート製浅地層処分施設で、埋設容量は5,040m3に達している。現在、運営管理は1998年に設立された放射性廃棄物管理公社(PURAM)が行い、埋設処分場が満杯であることから、廃棄物を3分の1から4分の1に減容処理し、地下6mに埋設したスチール製のパイプ内に処分している。
(4)最終処分場計画
 低・中レベル放射性廃棄物の最終処分場に関しては、1993年からハンガリー原子力委員会(現、ハンガリー原子力庁)がパクシュ原子力発電会社、国立地層研究所(MAFI)の協力のもと選考を開始し、2006年にTolna州バータアパチ(Bataapati)が選定された。決定に際し、バータアパチ地区で、2005年7月10日に住民投票が実施され、投票率75%のうち90.7%の賛成を得た。
 一方、使用済燃料の最終処分場に関しては、1994年から1998年にかけてメクセクウラン鉱山(MECSEK)からボダ(BODA)の粘土層の岩石調査が行われ、2003年から地下研究施設が設置されている。使用済燃料及び高レベル放射性廃棄物の最終処分場施設として、深さ500m〜800mでの地下トンネルへの埋設を計画している。図4にハンガリーにおける最終処分場建設計画を示す。
(前回更新:2005年1月)
<図/表>
表1 ハンガリーの原子力発電所一覧
表2 ハンガリーの放射性廃棄物貯蔵量
図1 ハンガリーの原子力関連施設所在地図
図2 ハンガリーにおける電力供給量の概要
図3 ハンガリーの使用済燃料中間貯蔵施設
図4 ハンガリーにおける最終処分場建設計画

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<関連タイトル>
ハンガリーの国情およびエネルギー事情 (14-06-09-01)
ハンガリーの電力事情 (14-06-09-02)
ハンガリーの原子力発電開発 (14-06-09-04)

<参考文献>
(1)海外電力調査会:海外諸国の電気事業 第2編、(2010年3月)、ハンガリー共和国
(2)日本原子力産業協会:原子力年鑑 2013、(2012年10月)、ハンガリー
(3)日本原子力産業協会:世界の原子力発電開発の動向 2013年版、(2013年5月)、p.124-125
(4)原子力安全研究協会(編):旧ソ連、中・東欧諸国ハンドブック、1997年3月
(5)OECD/NEA/IAEA:Uranium2011 Resources, Production and Demand、
http://www.oecd-nea.org/ndd/pubs/2012/7059-uranium-2011.pdf
(6)放射性廃棄物管理公社(PURAM):第12回中長期計画、2012年5月、
http://www.rhk.hu/wp/wp-content/uploads/2013/07/PURAM%E2%80%99s-Twelfth-Mid-and-Long-Term-Plan.pdf
(7)ハンガリー原子力庁(HAEA):National Report Fourth Report prepared within the framework of the Joint Convention on the Safety of Spent Fuel Management and on the Safety of Radioactive Waste Management, 2011、

(8)MVM Paks Nuclear Power Plant Ltd.:gallery、

(9)MVM Paks Nuclear Power Plant Ltd.:PRESS CONFERENCE、2013年2月、

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