<大項目> 海外情勢
<中項目> 旧ソ連・東欧各国
<小項目> ハンガリー
<タイトル>
ハンガリーの国情およびエネルギー事情 (14-06-09-01)

<概要>
 ハンガリーは、1990年の民主化以降、市場経済への移行を本格的に開始し、国営企業の民営化、資本市場の育成を中心とする急進的な経済改革を遂行してきた。この結果、高インフレや高失業率に見舞われたが、1994年から成長過程に入り、1996年5月に中東欧ではチェコに次いで経済協力開発機構(OECD)への加盟を果たした。また、1998年3月からEU加盟交渉を開始し、2004年5月にはEU加盟を果たしている。
 ハンガリーのエネルギー政策は、EUのエネルギー政策に従い、安定供給の確保、市場競争の促進及び持続可能性の実現の3本柱を基礎とする。これに基づき、「再生可能エネルギー戦略」と「エネルギー効率戦略」に重点が置かれているが、エネルギー輸入の需要が伸びる一方、外貨不足状態にある。
 ハンガリーでは、1960年代から多くの石炭を生産し、石炭火力発電所により電力を供給してきたが、1980年以降、安価な天然ガスにシフトしている。しかし、資源量に乏しいため、天然ガス消費量の65%以上及び石油の80%以上はロシアから供給され、輸入依存度はきわめて高い。
<更新年月>
2013年12月   

<本文>
1.国情
1.1 概要
 ハンガリー(Hungary/Magyarorszag(マジャルオルサーグ))は中欧を代表する内陸国で、北はスロバキア、西はオーストリア、東はルーマニアと接し、面積は93,030km2(日本の約4分の1で、北海道よりやや広い)。人口は約990.6万人(2013年1月、中央統計局調べ)で、人口の2割弱の約170万人が首都ブダペストに集中している。国土の中部をドナウ川とティサ川が縦断し、その流域には肥沃な平地が広がっている。北東部や西部は丘陵地帯で、国土の18%が森林である。気候は、湿気の多い大陸性気候である。
 ハンガリーは40の地方行政区分に区分され、19は郡とも県とも訳されるメジェ(megye)で、20はメジェと同格の市(正確には都市郡;megyei varos)という行政単位に区分される。ただし、首都のブダペスト市はいずれにも属さない独立した自治体である。
 国民の86%がマジャール人(ハンガリー人)で、公用語もマジャール語(ハンガリー語、ウラル語族フィン・ウゴル語系の言語)である。宗教は国民の39%がローマ・カトリック、11.6%がカルヴァン派、2.1%がルター派である。
1.2 政治
 ハンガリーは、ハンガリー平原と言われる広大な平原を中心に様々な民族が定着し、ハンガリー王国を形成してきたが、第二次世界大戦で敗戦国となり、1945年5月以降、ソビエト連邦(ソ連)に占領され、共産化が進んだ。1949年にはソ連の衛星国として、共産党一党独裁国家のハンガリー人民共和国が成立した。1980年代後半、ペレストロイカとともに、ハンガリー民主化運動が高まり、1989年10月23日には新憲法(ハンガリー共和国憲法)を発布して、議会制民主主義国家である「ハンガリー共和国」が成立した。その後、ヨーロッパ社会への復帰を目指して民主化を進め、1999年には北大西洋条約機構(NATO)に加盟。1998年3月からEU加盟交渉を開始し、2003年4月に加盟条約に調印、2004年5月にEUへの加盟を果たした。
 2012年1月、ハンガリー基本法(新憲法)が施行され、国名が「ハンガリー共和国」から「ハンガリー」に変更されている。
1.3 経済
 1990年の民主化以降、市場経済への移行を開始し、国営企業の民営化、海外資本の導入、資本市場の育成を中心とする急進的な経済改革を遂行した。その結果、高インフレや高失業率に見舞われ、経済は一時マイナス成長となったが、1994年から成長過程に入り、1996年5月に経済協力開発機構(OECD)への加盟を果たした。
 1997年〜2006年まで、経済成長率は年平均4%以上の高成長を続けたが、経常収支は外資依存型小国開放経済であることから、恒常的に赤字が継続、2007年には対GDP比でEU27ヵ国中、最大の財政赤字を記録した。2009年以降は国内経済が低迷し、輸出の増加が輸入の増加を上回る貿易黒字が拡大し、財政赤字は復調する兆しが見え始めている。
 現在、ハンガリーの公式通貨は「フォリント」であるが、ユーロ導入を見据え、マーストリヒト条約の通貨統合に関する基準の一つである財政赤字の解消(GDP比3%以内)を目指している。表1に主要経済指標を示す。
2.エネルギー
 ハンガリーは平地が多く、大規模水力発電に適した地点が少ない。そのため、化石資源(石炭、石油、天然ガス)がエネルギー供給の大部分を占めるが、資源量に乏しく、海外輸入依存度は大きい。1960年代にはほとんど自給していたものの、徐々に石油や天然ガスの輸入量が増加し、1970年代には自給率が約65%から50%に低下した。それ以降、エネルギー自給率は40〜50%程度で推移している。エネルギー資源の多くは、ペレストロイカ崩壊前はソ連から、崩壊後はロシアから供給されている。1990年代に入り、ロシアが経済不況に陥ると、ロシアからのエネルギー供給量が減少した。ハンガリーのエネルギー政策は、エネルギー輸入先の多様化、国内資源の開発促進、エネルギー利用効率の改善、環境対策(特に石炭)の推進などが課題となった。以降、この課題はエネルギー政策の基礎となっている。
2.1 エネルギー需給
 ハンガリーでは、1960年代から多くの石炭を生産してきたが、1970年代に入るとエネルギー消費量の中心は石油へ移行した。しかし、1979年の第2次石油ショックをきっかけに石油消費量は減少、1980年代に入ると石炭産出量が減少したことから、エネルギーの供給は天然ガスへシフトした(図1参照)。近年、全ての化石エネルギーの輸入量は増大する傾向にある(図2参照)。エネルギー供給源別にみると、原子力及びバイオマスを中心とした再生可能エネルギーの比率が伸び、化石エネルギーの消費量は減少する傾向にある(図3参照)。一次エネルギーにおける化石エネルギーの占める割合は、1990年には80%、958PJであったが、2009年には75%、789PJに減少している。
 EU統計局(ユーロスタット)のデータでは、2011年の最終エネルギー消費量は、景気の減速により、前年比2.4%減の1,628万TOE(石油換算トン)。部門別エネルギー消費量は、エネルギー効率の向上により産業部門の消費量は減る一方、運輸部門のエネルギー消費量が増加する先進国共通の現象が見られる。2011年のエネルギーの輸入依存度は52%である(表2参照)。
 再生可能エネルギーの一次エネルギー供給量に占める比率は、2000年の3.3%から2011年の7.4%と上昇したが、中東欧4ヵ国とルーマニア、ハンガリーを含めた6ヵ国中、最も低い(IEA平均は7.7%)。なお、EU再生可能エネルギー促進指令(2009/28/EC)では、2020年までに13%まで高めることを求めている。
 以下、ハンガリーにおける資源状況を示す(表3及び図4参照)。小数点2桁
(1)石油
 ハンガリーの石油生産量は減少傾向にあり、2009年の石油生産量80万トンは1990年比約40%、石油自給率は20%程度で、不足分はロシアからの輸入で賄われている。
(2)天然ガス
 1960年代に天然ガス鉱床が発見されて以来、天然ガス消費量は増加し続けている。2003年に1,320億m3と過去最高となり、備蓄量は年間消費量の約50%、580億m3に達する。天然ガスの自給率は約3分の1、確認埋蔵量はMakoサイトで35,630億m3と推定されている。
 輸入天然ガスのおよそ80%はロシアからの単一パイプライン(Brotherhood pipeline)で供給されている。現在、欧州のエネルギー安全保障を高める目的で、中央アジアの黒海周辺の天然ガスを欧州に送る、ロシア主導のサウス・ストリーム(South Stream)と、ドイツ企業などが手掛けるナブッコ(Nabucco)の二つのパイプライン建設が計画されているが、ハンガリーは双方のルート上にあり、両方の計画に参加している。サウス・ストリーム計画にはロシアのガスプロムとハンガリー開発銀行が、2010年1月に合弁企業を設立した。ナブッコ計画にはハンガリーの石油ガス大手MOLがメンバーとして加わっている。
(3)石炭
 石炭は北部及び北東部のTransdanubia地域に集中し、その規模は可採年数で100年分以上とも言われている。しかし、そのほとんどが褐炭や亜炭という低品質な石炭である。石炭の生産はMATRA地区のVisontaとBukkabranyの露天掘り鉱山が中心で、生産拠点に隣接するヴァーテス発電所は排煙脱硫システムが取り付けられておらず、閉鎖が決定している。今後、EU排出量取引制度の下、亜炭生産の経済性が課題となる。
2.2 エネルギー政策
 1993年に議会承認された「エネルギー政策」は、エネルギー供給の多様化(旧ソ連への輸入依存の軽減)、環境保護、エネルギー効率の向上、新エネルギー設備の導入環境の整備及び外国資本の導入といった政策目標が挙げられた。1999年には、エネルギー政策の中期的目標と詳細な行動計画を整備することを目的に「エネルギー政策方針とエネルギー分野のビジネスモデル」が政府により承認された。目標には、欧州統一エネルギー市場への参加を踏まえた効率的な国内エネルギー市場の創設、自由競争と消費者保護の両立、安定供給の向上、環境保護基準の施行、情報公開の改善、透明性のある料金規制等が挙げられた。
 2004年5月にEU加盟を果たしたハンガリーのエネルギー政策は、EUのエネルギー政策に従い、安定供給の確保、市場競争の促進及び持続可能性の実現の3本柱を基本とする。2008年には「再生可能エネルギー戦略」と「エネルギー効率戦略及び行動計画」が決定され、2012年にはハンガリー国家開発省(Ministry of National Development)により、2030年までを見通したエネルギー政策の基礎となる「エネルギー政策 2030」が発表された。エネルギー効率では2030年までの各発電プラント単位の削減目標を掲げ、送電ロスを含めて2010年時点より78PJ削減するとしている(図5参照)。また、2030年までのエネルギー政策では再生可能エネルギー戦略に加え、ベース電源を原子力とするパターンが示されている(図6参照)。
(前回更新:2002年1月)
<図/表>
表1 ハンガリーの主要経済指標
表2 ハンガリーのエネルギー需給バランス
表3 ハンガリーの化石資源量の概要
図1 ハンガリーの化石資源消費量の推移
図2 ハンガリーにおける一次エネルギーに対する輸入依存度
図3 ハンガリーにおけるエネルギー源別一次エネルギー消費量の割合
図4 ハンガリーのエネルギー資源埋蔵サイトマップ(2009年)
図5 2030年に向けたエネルギー変換効率改善の目標値
図6 2030年に向けたハンガリーの発電構成シナリオ

・図表を一括してダウンロードする場合は ここをクリックして下さい。


<関連タイトル>
ハンガリーの電力事情 (14-06-09-02)
ハンガリーの核燃料サイクル (14-06-09-03)
ハンガリーの原子力発電開発 (14-06-09-04)

<参考文献>
(1)海外電力調査会:海外諸国の電気事業 第2編、(2010年3月)、ハンガリー共和国
(2)日本原子力産業協会:原子力年鑑 2013、(2012年10月)、ハンガリー
(3)日本原子力産業協会:世界の原子力発電開発の動向2013年版、(2013年5月)、p.124-125
(4)国際エネルギー機関(IEA):2009 Energy Balance for Hungary
(5)ハンガリー国家開発省:NATIONAL ENERGY STRATEGY 2030、(2012年)
(6)British Petroleum(BP)統計:
(7)Embassy of Japan in Hungary:ハンガリー概況(2012年6月現在)、

(8)Global Methane Initiative:CMM Country Profiles Hungary、
https://www.globalmethane.org/documents/toolsres_coal_overview_ch15.pdf
(9)国際通貨基金(IMF):World Economic Outlook Databases(2013年10月版)、

(10)欧州委員会:eurostat、Energy
(11)外務省ホームページ/各国・地域情勢/欧州/ハンガリー共和国、
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/hungary/data.html
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