<大項目> 海外情勢
<中項目> 北米各国
<小項目> アメリカ
<タイトル>
核兵器解体による余剰プルトニウム問題と米国の対応 (14-04-01-23)

<概要>
 戦略核兵器削減条約(START)の成立で、米国と旧ソ連の核兵器は廃棄、解体されることになり、その結果、大量の余剰プルトニウムが生じることになった。このため米国では、エネルギー省(DOE)が議会の命令で核兵器解体プルトニウムの処分方法の研究を行い、1993年7月に出されたフェーズI報告書では、兵器用プルトニウムを発電用原子炉燃料として変換して使用するのが最も経済的と結論されている。また1993年9月には議会技術評価局(OTA)が、また1994年1月には全米科学アカデミー(NAS)がそれぞれ報告書を出し、いずれもガラス固化して地層処分するのが最も経済的で、新型液体金属炉(ALMR)で核種変換処理するのは、多くの時間と費用を要するとしている。
<更新年月>
1998年05月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
 冷戦の終結は、長年にわたる核兵器削減交渉の成果を加速する一方で、逆に核兵器解体で生ずるプルトニウムの余剰という、政治的にも深刻な問題をもたらした。すなわち、世界的には民生用としてのプルトニウム利用が極めて限定されており、特に米国では今のところ貯蔵あるいは処分するしか方法がないというのが現状である。当面は、エネルギー省(DOE)の管轄下にある施設サイトで貯蔵するしかないのであるが、パンテックス・プラントでのプルトニウム貯蔵容量拡張批判が出され、地元のテキサス州知事は貯蔵計画そのものに反対している。以下に、米国で余剰プルトニウムにどのように対処しようとしているのかについて整理する。
1.DOEによる核兵器解体プルトニウム処分研究
 DOEは米国議会の命令を受けて、解体される核兵器から生じるプルトニウムの処分方法を調査し、1993年7月26日にこの調査のフェーズ1の報告書を発表した。処分方法として、スパイク、原子炉燃料としての使用および大量破壊の3通りの方法を調査され、さらに、プルトニウムを燃料としたときの原子炉として、ウェスティングハウス社のAP-600、ABBコンバッション・エンジニアリング社のシステム80+、ゼネラル・エレクトリック(GE)社のABWR、GE/アルゴンヌ国立研究所の新型液体金属炉(ALMR)およびゼネラル・アトミック社のモジュール型高温ガス炉(MHTGR)の5つの原子炉設計が検討された。検討に当たっては、プルトニウムを燃焼できること、発電できること、および必要に応じてトリチウムを生産できることが要求条件として考慮された。
 報告書では、3通りの処分方法の中で、兵器級プルトニウムを商業炉用の核燃料に近い状態に変換して、プルトニウムを発電用原子炉燃料として使用することが、スケジュールや配備の不確実性を考えたとに最も経済的であるとされている。また、核兵器解体プルトニウムは軽水炉で利用するのが、技術的に成熟していること、新たに建設しなければならない施設が少ないこと、および発電収入によってコストを相殺できることから、経済的に最も優位であるとされた。

2.技術評価局の報告書
 米国議会の技術評価局(OTA)は1993年9月23日、核兵器解体プルトニウムと高濃縮ウラン(HEU)の取扱いに関する政府の研究活動は統一性に欠け、しかも資金を浪費するだけであると批判する報告書「核爆弾の解体と核物質の管理」を発表した。この報告書では次のような問題点が指摘されている。
(1) 核兵器解体によって生ずる物質を、有用物として処理するのか、あるいは廃棄物として処分するのかという基本的問題が解決されていない。
(2) 新型液体金属炉(ALMR)でプルトニウムなどの核種変換処理を行うには大幅な設計変更が必要で、それには多くの期間と費用がかかる。ガラス固化による処分と比較してあまりに多くの手間がかかる。
(3) 考えられるオプションとしては、混合酸化物(MOX)燃料への加工、ガラス固化処分、消滅処理などが考えられるが、いずれにしろ合意が得られていない。
 そしてOTA報告書では、あらゆるオプションについて評価を行うため、国家的なレベルでの検討委員会の設置の必要性を訴え、DOEの一部署の担当から外すべきだと主張している。また、OTAとしては、燃料加工コストや法規制、パブリック・アクセプタンスなどの観点から、余剰プルトニウムが商用炉で使われることはないであろうと見ている。核不拡散問題を重要視するのであれば、ガラス固化処分か、政府の運転する原子炉でMOX燃料としてプルトニウムを燃やしてしまうのが最善としている。

3.全米科学アカデミー(NAS)の報告書
 核兵器解体によって生じた余剰プルトニウムについて、米国政府の国家安全保障会議(NSC)の要請でDOEが資金を提供し、全米科学アカデミー(NAS)の国家安全保障・軍事管理委員会が「余剰核兵器プルトニウムの管理と処分」と題する報告書を作成し、1994年1月24日に発表している。
 NAS報告書は、余剰プルトニウムの処分に関して、次の3つの方法が最も好ましいものと指摘している。
(1) 使用済燃料オプション:プルトニウムの既存のあるいは改造した軽水炉または重水炉で燃料として用い、プルトニウムの一部を消費した後の残りは、そのまま使用済燃料の中に閉じこめる。
(2) ガラス固化オプション:プルトニウムを軍事用再処理高レベル廃液と混合する。この混合高レベル廃液は最終処分のためにガラス固化される。
(3) 深地層への埋設処分オプション:上記の2つのオプションほど十分には研究されてないが、比較できるほど魅力的なものとなる可能性はある。兵器級プルトニウムは通常の高レベル廃棄物と比較して発生熱量も少なく、また、容積も小さいので、臨界に達しない単位で深地層中に処分する。
 同報告書は核兵器解体プルトニウムを使用済燃料に転換する目的で新型炉を開発したり建設すべきでないと結論している。その理由として、既存のあるいはその改良型の原子炉を用いることによってこの目的がより迅速、低廉、確実に達成できるとしている。
<関連タイトル>
旧ソ連産ウラン問題と米国の対応 (14-04-01-24)
日本のプルトニウム輸送への米国の反応 (14-04-01-25)
米国の余剰プルトニウム処分計画 (14-04-01-26)

<参考文献>
(1) 米国エネルギー省(DOE):核兵器解体プルトニウム処分研究−フェーズI報告書(1993年7月)
(2) 米国議会技術評価局(OTA):核爆弾の解体と核物質の管理(1993年9月)
(3) 全米科学アカデミー(NAS)国際安全保障・軍備管理委員会:余剰核兵器プルトニウムの管理と処分(1994年1月)
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