<大項目> 海外情勢
<中項目> 北米各国
<小項目> アメリカ
<タイトル>
旧ソ連産ウラン問題と米国の対応 (14-04-01-24)

<概要>
 戦略核兵器削減条約(START)の成立で、旧ソ連の核兵器は廃棄、解体されることになり、それに伴い大量の余剰高濃縮ウラン(HEU)が生じることになった。このため米国はHEUをロシアから買い取って希釈し、それを発電用原子炉燃料として売却することにし、1994年1月、ロシア原子力省と米国濃縮公社との間で今後20年間に500トンの購入契約を締結している。
かねてより旧ソ連産のウランのダンピングが米国(および欧州)で問題となっており、このため1992年10月に米国と旧ソ連6カ国はウラン・ダンピング停止協定を締結している。しかしその後、ウクライナ、タジキスタン等が協定破棄を通告してきており、米国側は約130%の船積み保証金などの対抗措置を取るに至っている。その結果、1994年12月には米国商務省とロシア原子力省の間で協定の改訂が行われている。
<更新年月>
1998年05月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
1. 旧ソ連の核兵器解体による高濃縮ウラン/(HEU)
 戦略核兵器削除条約(START-1:1991年7月調印、START-2:1993年1月調印)により核兵器削減が急激に進む一方で、旧ソ連諸国における政治的混乱の中で核解体によって生ずるプルトニウムや高濃縮ウラン(HEU)の管理が問題となってきている。即ち、それらのプルトニウムが核拡散のリスクをもたらすのではないかと懸念され、そのため米国はそれらのプルトニウムやHEUを買い取るとの方針を打ち出したのである。特にHEUに関しては、ロシアから買い取って希釈し、それを商業原子力発電用として売却することを米国は計画するに至っている。
 1993年1月にはこの問題について米国とロシアで話し合いが行われたが、調印までには至らなかった。しかし、ニュークリア・フューエル・サービシズ(NFS)社は5月初め、HEUを低濃縮ウラン(LEU)に混合希釈するための許可を、原子力規制委員会(NRC)から取得している。そして、HEUの購入によって米国濃縮公社(USEC)の収益が悪化するのではとの懸念から、米国の核兵器解体によって生ずるHEUは同公社へ提供することになっている。
 1993年5月には、ロシア原子力省(MINATOM)のミハイロフ大使と米国のデービス国務次官との間でHEU購入に関して交渉が行われ、次のような合意が得られている。
(1) 米国とロシアは対等の取引関係である。
(2) 商取引は合理的な固定コストと回避コストをカバーするものである。
(3) 価格はインフレーション市場の変化に合わせて調整される
(4) ロシアは従来の米国の顧客と取引可能である。
(5) ロシアで混合処理されるHEUは新たな市場でロシア産ウランの価格を下げるために使用されてはならない。
(6) 年間の最低取引量を決め、両者はその量を超える取引を行うよう努力する。
(7) 天然ウランが取り引きされる場合にはロシアは支払を受けることができる。
(8) 販売を促進するため、民間会社を含む共同事業体を設立する。
(9) 価格は780ドル/kgU(濃縮度:4.4%)
(10)両者は10トンのHEUをLEUに転換する準備を開始し、ロシアへの支払いは1993年に行う。
 さらに1994年1月にはロシアの核兵器解体によるHEUを米国のUSECがロシアのMINATOMから購入する契約が成立し、今後20年間にわたって約500トンの核兵器解体HEUを米国は約10億ドルでロシアから購入することになった。

2. 旧ソ連産ウランのダンピング問題
 かねてから旧ソ連諸国から西側諸国へのウランのダンピングが問題となっており、このため、1992年10月16日には、米国と旧ソ連6カ国との間にウラン・ダンピング停止協定が締結された。しかし、その年の12月には、ウクライナ共和国政府から米国商務省(DOC)宛の書簡の中でダンピング停止協定を解約する意図があることが示唆されるなど、その後も混乱は続いていた。その結果、1993年に入ってからも旧ソ連産ウランのスポット価格が下落し、米国内だけでなく、欧州においてもウラン市場の混乱が見られ、EURATOMの年報では1992年に旧ソ連諸国からのウラン輸入が増大したことに懸念が表明された。
 ウクライナ政府は1993年4月12日、キエフの米国大使館に対し、ダンピング停止協定を遵守しない旨の通告を行った。同国は、国内に配置されていた旧ソ連の核ミサイルをロシアに引き渡すことに拒否の姿勢を示すなど、旧ソ連諸国の中でも独自の路線をとろうとしている。このようなウクライナの方針に対しDOCは4月19日、ウクライナ政府によるダンピング問題の調査を再開したことを発表した(DOCは1992年にダンピング調査を行っていたが、停止協定により調査は中断された)。また、タジキスンタンも停止協定を破棄したが、DOCは4月26日にダンピング防止法に基づく調査を開始した。そして8月上旬、米国の国際貿易委員会(ITC)が、ウクライナからの輸入ウランが米国内のウラン産業に実害を与えているとの判断を下し、その決定理由を示した書類がDOCに送付された。その結果、ウクライナからのウランの船積みに対しては129.9%の保証金が要求されることとなった。ただし、タジキスタン産ウランに対しては、米国産業に実害を与えていないとされた。
 一方欧州でも旧ソ連産ウランのダンピングが問題となり、欧州原子力共同体(EURATOM)の核物質供給機関(ESA)は旧ソ連産ウランを欧州連合(EU)の市場から閉め出すとの方針を示した。これに対しEU議会では、ESAの試みに対する批判も出された。EU加盟国は、EU−ロシア間の原子力貿易協定を締結してこれらの問題に対応することを望んでいたとされるが、ロシア側の政治的混乱で、合意寸前までいきながら棚上げになっている。
このような状況の中で、米国DOCとロシア原子力省(MINATOM)は1993年12月15日、ウラン・ダンピング停止協定の改訂を行った。その中で最も重要な点は、ロシアからのウランあるいはSWU(分離作業単位)を米国の消費者へ提供する際は、そのうちの50%は米国産ウランあるいはSWUで提供することを求めた「抱き合わせ輸入(matched imports)」の規定である。これについては次のような条件が課せられている。
(1) 1994〜1995年は、ロシア産ウラン3000メトリック・トン/年、200万SWU/年を限度とする。
(2) 上記の年限度のうち20%以上を、米国企業1社からの提供と「抱き合わせ(matched)」してはならない(同一企業グループ内では50%)。
(3) 米国の最終消費者への提供価格は、DOCが評価した最新の価格と同じかあるいはそれ以上でなければならない。
<関連タイトル>
世界原子力協会(WNA) (13-01-03-02)
START(戦略兵器削減条約) (13-04-01-08)
核兵器解体による余剰プルトニウム問題と米国の対応 (14-04-01-23)
米国の余剰プルトニウム処分計画 (14-04-01-26)

<参考文献>
(1) (株)アイ・イー・エー・ジャパン組織データベース
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