<大項目> エネルギーと地球環境
<中項目> 世界のエネルギー情勢
<小項目> 世界の原子力発電
<タイトル>
世界の原子力発電の動向・北米(2011年) (01-07-05-17)

<概要>
 2011年12月時点、米国には31州、65箇所で104基・合計出力1億524万4,000kWの原子炉が運転中で、これは世界第1位の規模である。これらは1964年〜1977年に着工されたもので、1979年3月28日のスリーマイル島原子力発電所事故の影響で30年近く原子力発電所の新規発注が途絶えていた。しかし、近年、電力需要の増加が見込まれ、前ブッシュ政権は積極的に原子力推進政策を打ち出した。2005年に成立した「エネルギー政策法」には原子力支援策が盛り込まれ、現オバマ政権においても地球温暖化に配慮したクリーンエネルギー政策により、8基・940万kWの原子力発電所の新規建設が2016年〜2017年の営業運転を目指して計画されている。更に計画入りを目指して、米国原子力規制委員会(NRC)へ数多くの建設・運転一括認可(COL)の申請が行われている。
 カナダではカナダ原子力公社(AECL)の分割民営化として、原子炉部門の売却を進める一方、現在原子炉運転中のオンタリオ州のダーリントンやニューブランズウィック州のポイントルプローで新規原子力発電所の建設に向けた動きが活発化している。
 2011年3月の福島第一原子力発電所事故による両国の原子力推進政策に変更は無いものの、より安全規制強化に向けた許認可等の見直しが進められることが予想される。
<更新年月>
2011年12月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
1.米国
 2011年12月時点、米国には31州65箇所で104基・合計出力1億524万4,000kWの原子炉が運転中で、これは世界第1位の規模である。原子力発電所はミシシッピ川以東の州に集中している(図1-1図1-2図1-3図1-4図1-5図1-6参照)。また、米国は石油、石炭、天然ガスなど世界有数の化石燃料資源国で、2010年の国内総発電電力量は4.12兆kWh(対前年比で4.3%の増加)、電源別には、石炭火力44.9%、石油火力0.9%、ガス火力24.1%、原子力19.6%、水力6.1%、再生可能エネルギー4.1%と、石炭火力が主力電源である。一方、6つの州では原子力が主要電源となっており、最も原子力依存度の高いバーモント州では電源構成の73.3%を占めている。
 現在稼働中の原子力発電所104基は1964年〜1977年に着工されたもので、米国では、1979年3月28日のスリーマイル島原子力発電所事故の影響で30年近く原子力発電所の新規発注が途絶えた。しかし、前ブッシュ政権において、積極的に原子力推進政策を打ち出し、2005年に成立した「エネルギー政策法」に原子力支援策が盛り込まれたことから、原子力発電所の建設や計画が盛んに行われている。2007年5月には1985年以来長期にわたって運転を休止していたテネシー峡谷開発公社(TVA)のブランウンズフェリー1号機(BWR、115.5万kW)の運転が再開されるとともに、1988年以来中断していたワッツ・バー2号機(PWR、120万kW、2013年営業運転開始予定)の建設が2007年10月から再開された。また、8基・940万kWの原子力発電所の新規建設が2016年〜2017年の営業運転を目指している(表1参照)。
 更に計画入りを目指して、米国原子力規制委員会(NRC)へ数多くの建設・運転一括認可(COL)申請が行われている(図2参照)。NRCは2011年6月までに、18発電所(28基)の新規発電設備の許認可申請を受理したが、リーマンショック後の景気後退により、新設計画を延期・中止する事業者もある。一方、気候変動問題へ積極的に取り組む姿勢を示す現オバマ政権は2011年3月に発表した「国家エネルギー戦略」の中で、2035年までに電力需要の8割をクリーンエネルギーで賄うとし、安全性の高い原子力発電の開発を強調した。なお、設備利用率は、1980年代に60%程度であったが、その後は年々上昇し、2000年以降は90%程度を維持している。燃料交換による運転停止期間の短縮(1990年代100日程度が2000年代40日程度へ短縮)や、運転サイクルの延長(1980年代12〜18ヶ月が18〜24ヶ月へ延長)、出力運転中のメンテナンスの普及、プラント停止に至るトラブルの減少(重大事故発生件数1989年0.9回/年・基が2008年には0.02回/年・基へ減少)等が設備利用率の改善となった要因とされている。
1.1 運転認可の延長
 当初、米国の原子力発電所の運転認可期間は原子力法で40年と定められていたが、1995年6月のNRCによる規則の改定で、安全性(10 CFR Part 54)と環境基準(10 CFR Part 51)をクリアしたものに限りさらに20年までの延長が可能となった。これまでにNRCから運転認可の更新を認められた原子力発電所は、2000年3月のカルバート・クリフス1、2号機を皮切りに、2011年10月時点では運転中の原子炉104基中、延長承認済みが71基、審査中が14基で、オイスタークリーク発電所(BWR、64万1000kW、1969年12月営業運転開始)が2019年に閉鎖する方針なので、今後延長となりうるのは18基となっている。
1.2 熱出力増強による出力増強
 NRCは1970年代から出力増強の申請を審査してきた。1977年のカルバート・クリフス1号機(5.5%、140MWt出力増強)を初めに、2011年10月までに合計で139基(601万7700kWe)の出力増強を承認、2016年までに317.7万kWを承認する見込みである(図3参照)。なお、NRCは熱出力増強のタイプをMU(Measurement Uncertainty Recapture:出力測定精度向上型(〜1.5%まで)、測定誤差の修正)、S(Stretch:ストレッチ型(〜7%まで)、計装設定値の変更)、及びE(Extended:拡張型(〜20%まで)、高圧タービン、復水ポンプ、モーター、発電機、変圧器等のBOP大規模改修)の3タイプに分けている。
1.3 新規原子力発電所の建設
 米国では、1974年以降42基が発注されたが、a)石油危機を契機とした景気後退による電力需要の減少、b)インフレによる資金調達コストの増大、c)1979年のスリーマイルアイランド発電所事故後の安全規制の強化により、全てが途中でキャンセルされた。しかし、米国では2001年5月、ブッシュ政権が「国家エネルギー戦略」を発表し、向こう20年の電力需要を満たすためには約3億9,300万kW分の新規発電設備が必要になると指摘、原子力発電利用の拡大を支持する方針を打ち出した。2002年には原子炉新設を目指す「原子力発電2010」イニシアチブが開始されている。同プログラムでは先行許認可プロセスとして、早期サイト承認(ESP:Early Site Permit)・・・炉型決定前の立地審査、標準設計認証(DC:Design Certification)・・・立地サイト決定前の標準設計の審査で20年間有効(追加20年)、建設・運転一括許認可(COL:Combined License)・・・環境影響評価や緊急時計画などサイト関連問題をクリアしてESPを取得したサイトに標準型炉を建設する場合のみ建設許可と運転認可を一括実施するプロセス(完成時にNRCによる供用前検査ITAAC検査が必要)が採用され、米国エネルギー省(DOE)による融資保証制度も確立された。
 標準設計認証(DC)では、設計や安全問題が全て解決されているという前提で発注することができる炉型で、ゼネラル・エレクトリック(GE)社の「改良型沸騰水型炉(ABWR)」、ABBコンバッション・エンジニアリング社(現在はウェスチングハウス社に統合)の「システム80+」、ウエスチングハウス(WH)社の「AP600」、「AP1000」が承認を受けている。なお、GEの高経済性単純化沸騰水型炉「ESBWR」、アレヴァ社の「US-EPR」、三菱重工の「US-APWR」及び安全強化条件付き「ABWR」、「AP1000」が現在申請中である。「AP1000」に関しては2011年12月末にNRCから設計認証を取得した。
1.4 福島第一原子力発電所事故の影響
 オバマ政権は福島第一原子力発電所事故後、基本的に原子力政策を維持する方針であるが、米国内では福島第一原子力発電所と同型のBWR/Mark1が16箇所で運転されている。Mark1は、1960年代にGEにより設計された沸騰水型原子炉で、冷却装置が停止し、燃料棒がオーバーヒートすると、原子炉格納容器が破壊される弱点があるが、低価格で容易に建設することで普及した。事故直後、NRCは異常事態に伴う広範囲な損害への対応能力等に関し、改善の余地はあるものの概ね安全であると発表した。その後、事故調査と米国内の原子炉や使用済プールの安全強化のため「ジャパンタスクフォース(調査委員会)」を立上げ、規制・検査・認可手続き等に関して、系統だった確実な予防と事故緩和措置の向上、緊急事態対応強化、NRCプログラムの効率性改善に対して勧告を行った。
1.5 核燃料サイクルの動向
 米国は10年以上にわたってユッカマウンテンにおいて、高レベル放射性廃棄物最終処分場設置計画を推進してきたが、地元ネバダ州知事の不承認通知もあり、2010年1月にバックエンド政策の包括的な検討を行うブルーリボン委員会が設置された。委員会は2年以内にDOE長官に結果を報告することになっている。なお、DOEは2008年6月にNRCへ許認可申請を行い、NRCは1982年の放射性廃棄物法に従って安全審査を開始していたが、2010年3月、DOEは許認可申請の取下げ申請を行っている。
2.カナダ
 2011年12月時点、カナダにある22基の原子力発電所は全て、豊富なウラン資源を背景に開発されたカナダ型重水炉(CANDU炉)で、18基、合計出力1,323万1,000kWの原子炉が運転中で、このほか4基(269万4,000kW)が休止中である(図4参照)。2010年の原子力発電電力量は855億kWh、総発電電力量に占める原子力の割合は前年比0.3ポイント増加して15.1%であった。カナダ中央部のオンタリオ州には、運転中の原子炉の大半の16基が集中しており、原子力発電は総発電電力量の4割を占める。
 カナダ政府は2020年までに炭酸ガス排出量を2006年比の20%削減を目標に、今後10年以内にオンタリオ州、ニューブランズウィック州、アルバータ州、サスカチュワン州の4州で9基の原子力発電所の新設を計画した。カナダの電力事業は州政府直営の電力会社が手がけており、連邦政府が許認可権を持つが、州政府の影響力は大きい。オンタリオ州は2010年11月、20年にわたる長期エネルギー計画を発表し、2007年の8月に策定された包括的電力供給計画とともに、2014年までに石炭火力全廃計画を推進し、ベースロード電源として原子力発電の役割を強調、既存の原子力発電所の運転延長や出力増強、新規原子力発電所の建設を提案した。州政府の意向を受け、オンタリオ発電会社(OPG)はダーリントンに、現在CANDU炉より低コストで高信頼性を実現した次世代CANDU炉(ACR-1000)・2基の導入を計画している。ニューブランズウィック州は2010年7月に、フランス・アレヴァ社とポイントルプロー2号機の増設に向けたフィージビリティ・スタディを実施する合意文書に調印、重水炉以外の原子炉の導入を検討している。なお、政府はカナダ原子力公社AECL(Atomic Energy of Canada Ltd)の民営化として、原子炉部門の売却を計画していたが、福島第一原子力発電所の事故を受け、売却は保留、安全規格の見直しを進めている。
<図/表>
表1 北米の原子力発電開発の現状
図1-1 米国の原子力発電所立地点
図1-2 米国北東部の原子力発電所立地点
図1-3 北米南東部の原子力発電所立地点
図1-4 米国中部北地域の原子力発電所立地点
図1-5 米国中部南地域の原子力発電所立地点
図1-6 米国西部の原子力発電所立地点
図2 NRC で審査中の原子力発電所新設プロジェクト
図3 米国原子炉の出力増強計画
図4 カナダの原子力発電所立地点

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<関連タイトル>
世界の原子力発電の動向(2005年) (01-07-05-01)
原子力発電が総発電電力量に占める割合 (01-07-05-08)
アメリカの原子力発電開発 (14-04-01-02)
カナダの原子力発電開発 (14-04-02-02)

<参考文献>
(1)(社)日本原子力産業協会:世界の原子力発電開発の動向 2011年版(2011年5月)
(2)(社)日本原子力産業会議:原子力年鑑2012(2011年10月)、アメリカ、カナダ
(3)米エネルギー省エネルギー情報局(EIA):Nuclear & URANIUM,
http://www.eia.gov/cneaf/nuclear/state_profiles/nuc_state_sum.html
(4)米国原子力規制委員会(NRC):http://www.nrc.gov/reactors.html
(5)米国エネルギー協会(NEI):Graphics and Charts,
 及び
Cumulative Capacity Additions at U.S. Nuclear Facilities (1977-2016),

(6)世界原子力協会(WNA):Nuclear share figures(2000-2010),
http://www.world-nuclear.org/info/nshare.htm
及び World Nuclear Power Reactors & Uranium Requirements(2011.12.1),
http://www.world-nuclear.org/info/reactors.html
(7)世界原子力協会(WNA):
アメリカ原子力発電(http://www.world-nuclear.org/info/inf41.html)、
カナダ原子力発電(http://www.world-nuclear.org/info/inf49a_Nuclear_Power_in_Canada.html
(8)IAEA発電炉情報システム(PRIS)ホームページ:

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