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1.経緯
国際原子力規制者会議(INRA:International Nuclear Regulators Association)の設立の経緯は次のようである。1996年(平成8年)9月にパリで開催されたOECD/NEAの原子力規制機関首脳会合において、米国原子力規制委員会委員長が、広範な原子力規制上の課題に関して原子力規制当局の責任者による意見交換のためのフォーラムを設立することを提案した。翌年1月にワシントンにおいて主要国の規制当局の首脳が参加し、設立のための準備会合が開催された。準備会合では、フォーラムの当初参加国として、原子力プログラムの規模、独立した規制機関の存在、原子力安全条約の署名国であることが考慮され、力ナダ、フランス、ドイツ、日本、スペイン、スウェーデン、英国及び米国の規制当局の首脳が当初メンバーとなることが合意された。
1997年(平成9年)5月にジャクソン米国原子力規制委員会委員長(当時)を議長としてパリで正式に設立され、これまでに各国の原子力発電を巡る社会情勢の動向、原子力規制の現状と今後の課題、旧ソ連、中・東欧諸国及び中国に対する支援方策、各国の原子力安全規制の共通点・相違点等について、意見・情報の交換を行ってきた。
2004年(平成16年)12月末までに15回の会合が開催され、2004年は、東京及び京都で開催された。2005年(平成17年)はドイツ及びフランスで開催予定である。
本会議には日本から、原子力安全委員会委員長と経済産業省原子力安全・保安院長がメンバーとして参加している。
2.INRAの目標
・地球規模での原子力安全文化を構築し、
・原子力規制問題への対応に関して国際的な共通認識を探求し、健全な解決策を実施するため国際協力を促進する、
・原子力安全に係る他の国際ないし国家的組織と協力する
・資産の最も効果的な利用を促進する。
原子力安全は国境を越えた問題である。チェルノブイル原子力発電所事故のような事故は、一国の安全問題、安全への憂慮、情勢の進展が他国民の関心事でもあること明らかにした。原子力規制に関する疑問、低線量被ばくの影響、及び
原子炉の安全への新しい対応は世界中が関心に値する問題である。
INRAは、1997年(平成9年)5月に規制関係者からの国際的情報連絡と協力を強化し、かつ彼らに影響を及ぼすために設立された。パリの会合において、8ヶ国の代表がINRAの組織と運営についての最初の約款を採択した。INRAは、相互の関心のある問題を論じ、かつ、世界的な原子力規制を強化する勧告ができるよう、原子力で最も発展した先進諸国の上級規制当局者から構成される。
3.INRAの組織と運営
INRAは、
国際原子力安全条約と堅く連携して、条約の目的を満たすべく全員の一致によって議決する。INRAは継続することに関して、INRA自身の効用を評価し、原子力規制問題に関して国際規制機関及び国家規制機関に勧告を行う。
上級規制当局者の独立の集団が原子力安全問題を論ずる会合によって、INRAは国際的理解をもたらすため、ユニークな貢献をすることができる。他の国際団体との共同の活動によってINRAは重複や模倣を避けることができる。
INRAは少なくとも、年に一回会合する。その業務は議長によって調整される。議長は、全員一致で選任され、任期は1年間(最初の議長のみ2年)
(3)INRAの約款
序文には、規制関係者から、メンバー国並びに世界的規模の原子力安全に影響を及ぼしかつ強化するために設立されるとある。
以下、目標に続いて、
第1条:名称
第2条:目的(序文と同じ)
第3条:活動
情報と経験の交換、INRAの継続に関する評価、安全規制上重要な問題に関する勧告、支援、参画及び評価をする
第4条:会員
第5条:言語
第6条:組織構成
第7条:会合
内容は、既に述べたとおりである。
<関連タイトル>
原子力安全委員会 (10-04-03-01)
原子力安全条約(原子力の安全に関する条約:Convention on Nuclear Safety) (13-03-01-08)
<参考文献>
(1)原子力安全委員会(編):原子力安全白書 平成16年版、財務省印刷局(2005年5月)、p.208−209
(2)原子力安全委員会(編):原子力安全白書 平成11年版、大蔵省印刷局(2000年9月)、p.264−265
(3)原子力安全委員会(編):原子力安全白書 平成12年版、財務省印刷局(2001年4月)、p.189−190