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<概要>
 昭和62年度に「電気事業法」及び「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」の規定に基づき、電気事業者から資源エネルギー庁に報告された故障・トラブル等の件数は19件であった。
<更新年月>
1998年05月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
 昭和62年度に「電気事業法」及び「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」の規定に基づき、電気事業者から資源エネルギー庁に報告された故障・トラブル等の件数は19件であった。一基当たりの平均報告件数は 0.5件であった。 表1 に事故・トラブル等報告件数(法律対象)を、 表2 に内容別報告件数を、 表3原子力発電の事故・故障等の報告件数一覧(電気事業用)を示す。
 19件の内訳は、運転中(試運転中及び定期検査における調整運転中を含む)に自動停止したもの 4件、運転中に手動停止したもの 7件、定期検査における原子炉停止中に発見されたもの 6件、その他のもの 2件となっている。19件の主な原因を管理要素別に分類すると、製作管理が不適切であったもの 4件、施行管理が不適切であったもの 3件、保守管理が不適切であったもの 8件、その他のもの 4件であった。
 なお、以上のいずれの事象についても、原子力発電所の周辺環境への放射能の影響はなかった。

原子力発電所の故障・トラブル等の概要(昭和62年度)
発生年月日発電所名概要
62. 4. 9関西電力大飯発電所 2号機定期検査中、蒸気発生器伝熱管の渦電流探傷検査の結果、U字状曲がり部の振れ止め金具部、管板拡管部及び管板拡管境界部に、有意な信号を発見。U字曲がり部の振れ止め金具部は、支持の不十分な細管が蒸気と水の混合した流れによって振動し、振れ止め金具と干渉したため減肉。
62. 4.14関西電力高浜発電所 3号機定期検査中、格納容器換気空調系統(停止時の使用系統)隔離弁の点検作業中に作業員が第二隔離弁の弁体とダクトにはさまれて死亡。
62. 4.24東京電力福島第一原子力発電所 5号機出力上昇中、発電機保護装置用の計器用変流器の導線の腐食断線により、当該保護装置が動作して発電機が自動停止し、引続き原子炉自動停止。
62. 5.27関西電力美浜発電所 3号機定格出力運転中、原子炉格納容器内床ドレン量に漸増傾向が見られたため、点検のため原子炉手動停止。
62. 7.11関西電力高浜発電所 1号機定格出力運転中、一次冷却材ポンプ(B)の振動が大きくなったため、原子炉手動停止。
62. 7.31関西電力美浜発電所 2号機定期検査中、蒸気発生器伝熱管の渦電流探傷検査の結果、U字状曲がり部の振れ止め金具部、管板クレビス部及び管板拡管部に、有意な信号を発見。
62. 8.22東北電力女川原子力発電所号 1号機定格出力運転中、主変圧器のタップ切替装置に操作支障が発生したが、運転に支障がないため、電力需給の緩和をまって10月に点検・補修のため原子炉手動停止。タップ切替装置の操作支障の原因は、接触摺動面の面荒れのため。タップ切替装置を交換。
62. 8.28中部電力浜岡原子力発電所 2号機定格出力運転中、原子炉保護系電源系統の電磁式スイッチの焼損と原子炉再循環ポンプ停止装置補助リレーの端子のゆるみにより、原子炉再循環ポンプ 2台が停止したため、原子炉水位が上昇し、タービンが自動停止、引続き原子炉自動停止。
62.10. 1日本原子力発電敦賀発電所 1号機定期検査中、タービン関係試験が終了し、出力降下後の圧力調整中、調整弁の操作が若干速かったため、中間領域中性子束検出器の「中性子束高高」信号により原子炉自動停止。
62.10.30関西電力高浜発電所 2号機定期検査中、蒸気発生器伝熱管の渦電流探傷検査の結果、管板上面直下部及び管支持板部に、有意な信号を発見。
62.11.9日本原子力発東海発電所定期検査中、原子炉内ガス温度測定用熱電対ケーブルを収納しているトレイの一部が腐食により脱落しているのを発見。原因はトレイ表面の酸化に起因するトレイ止め金具の損傷。
62.12.17関西電力大飯発電所 1号機定格出力運転中、蒸気発生器(C)のノイズモニターで異音検知、点検のため原子炉手動停止。
62.12.23九州電力玄海原子力発電所 1号機定期検査中、蒸気発生器伝熱管の渦電流探傷検査の結果、管板上面直下部及び管支持板部に、有意な信号を発見。
63. 2. 2中部電力浜岡原子力発電所 1号機定格出力運転中、無停電電源装置の電磁式スイッチの焼損により、原子炉再循環ポンプ駆動装置の潤滑油温度検出器の電源が喪失したため、潤滑油温度高の信号が発生して原子炉再循環ポンプ 2台が停止し、出力が低下。スイッチ焼損の原因調査のため原子炉手動停止。
63. 3. 1中部電力浜岡原子力発電所 2号機定期検査中、電気設備の点検作業を行っていた作業員が誤って回路を短絡させたため、短絡による火花により火傷。
63. 3. 1関西電力大飯発電所 1号機定期検査中、蒸気発生器伝熱管の渦電流探傷検査の結果、管支持板部、管板拡管部及び管板拡管境界部に、有意な信号を発見。
63. 3. 4日本原子力発電敦賀発電所 2号機調整運転中、中性子束計測装置の校正作業において、作業員が、4回路ある中性子束計測装置のうち、1回路のみについて回路から切り離して作業を行なうべきところを誤って別の1回路も切り離したため、「中性子束減少率高」により原子炉自動停止。
63. 3. 7日本原子力発電敦賀発電所 1号機定格出力運転中、原子炉再循環ポンプ(A)が自動停止。原因調査のため、原子炉を手動停止。
63. 3.18東京電力福島第二原子力発電所 1号機定格出力運転中、原子炉再循環ポンプ電動機(B)の上部軸受け部温度にわずかな上昇がみられたため、点検のため原子炉手動停止。

<図/表>
表1 故障・トラブル等報告件数(法律対象)
表1  故障・トラブル等報告件数(法律対象)
表2 内容別報告件数
表2  内容別報告件数
表3 原子力発電所の事故・故障等の報告件数一覧(電気事業用)
表3  原子力発電所の事故・故障等の報告件数一覧(電気事業用)

<関連タイトル>
日本の原子力発電所における事故・故障・トラブルの推移(2005年度まで) (02-07-01-01)
日本におけるBWR原子力発電所の主要な事故・故障・トラブル(2005年度まで) (02-07-01-02)
日本におけるPWR原子力発電所の主要な事故・故障・トラブル(2005年度まで) (02-07-01-03)
昭和62年度試験研究用原子炉における事故・故障 (12-03-01-08)
昭和62年度放射性同位元素等取扱施設における事故・故障 (12-06-01-08)

<参考文献>
(1)原子力安全委員会編(1988):原子力発電所における事故・故障トラブル等の概要(昭和62年4月〜昭和63年8月)、昭和63年版原子力安全白書、114-130.
(2)(社)火力原子力発電技術協会(1988):故障・トラブル等の状況、昭和63年版(昭和62年度実績)原子力発電所運転管理年表、151-230.
(3)科学技術庁原子力安全局編(1988):昭和62年度の原子力発電所における故障・トラブル等について、原子力安全委員会月報 6号(第11巻 6号)、通巻 117号.
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