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<概要>
 放射性廃棄物は、原子力発電所や核燃料サイクル施設からばかりではなく、放射性同位体(RI)を使用する医療機関・研究所等の施設からも発生する。その量は産業、民生活動の発展に伴って増加の一途をたどっており、これらに対して様々な安全対策の充実が図られている。全国の原子力発電所の操業に伴い発生する低レベル放射性固体廃棄物のうち、放射能レベルの比較的低い廃棄物については、六ヶ所低レベル放射性廃棄物埋設センターへ移送し埋設処分されている。
 原子力分野において多様な放射性廃棄物を排出する施設は再処理工場である。ここで発生する放射性廃棄物のうち、高レベル放射性廃棄物は、放射能は強いが、その量は少ない。高レベル放射性廃棄物は、ガラス固化体に処理され、最終的に地層処分される。地層処分等の課題については、日本原子力研究開発機構等の機関で研究されている。
<更新年月>
2012年01月   

<本文>
 放射性廃棄物は、表1に示すように放射能濃度の高低及び含まれる放射性物質の種類等により多種多様である。このため、この多様性を十分踏まえた適切な区分管理と、区分に応じた合理的な処理処分を行うこととしている。原子力施設において発生する低レベル放射性廃棄物の発生量及び海外再処理施設から返還されたガラス固化体、東海再処理工場からのガラス固化体等の高レベル放射性廃棄物の発生量等を以下に紹介する。
 また、低レベル放射性廃棄物のうち放射能レベルの比較的高い廃棄物等を対象とした余裕深度処分及び高レベル放射性廃棄物等を対象とした地層処分等の課題については、日本原子力研究開発機構等の機関で研究が進められている。
1. 高レベル放射性廃棄物
 高レベル放射性廃棄物は原子力発電所の使用済燃料を再処理する工程の抽出第1サイクルにおいて発生する。現在、日本において使用済燃料の再処理は、日本原子力研究開発機構(旧核燃料サイクル開発機構)の東海再処理工場及び日本原燃(株)が青森県六ヶ所村に建設し試験運転段階(アクティブ試験段階)にある再処理工場において実施している。なお、電気事業者は六ヶ所村の再処理工場が竣工し運転が開始されるまでの間の経過措置として、再処理を英国NDA(旧英国BNFL、英国Sellafield Ltdへ再委託)及び仏国AREVA NC(旧仏国COGEMA)の再処理工場に委託している。
 東海再処理工場で生じた高レベル放射性廃液は、同工場内の貯蔵タンクに厳重かつ安全に保管管理され、その保管量は平成21年度末時点において380立方メートルである。また、固体廃棄物(ガラス固化体)の保管量は、平成21年度末時点において、日本原子力研究開発機構に247本、日本原燃(株)に1,445本となっている (表2参照)。
 一方、NDAやAREVA NCに委託した使用済燃料の再処理に伴って発生する高レベル放射性廃棄物は、ガラス固化して安定な形態とされた後、日本の電気事業者に返還されることになっており、平成7年以降、平成22年末までにガラス固化体約1,340本が返還された。なお、AREVA NCからの返還(1,310本)は平成19年3月をもって終了している。NDAからは今後10数年間にわたり、年1〜2回の割合で約850本が返還される予定となっている。
2.低レベル放射性廃棄物
 低レベル放射性廃棄物には、(1)原子力発電所の運転及び解体に伴う発電所廃棄物、(2)再処理施設及びMOX燃料加工施設から発生するTRU核種超ウラン元素ウランより元素番号の大きい元素の総称)を含む廃棄物、(3)ウランの転換・成型加工・濃縮等に伴うウラン廃棄物、そして(4)試験研究炉及び核燃料物質等使用施設をもつ研究所、放射性同位元素の使用施設等から発生するRI・研究所等廃棄物がある。
(1)発電所廃棄物
 原子力発電所の運転及び定期点検等において発生する低レベル放射性廃棄物(以下、「発電所廃棄物」という)の処理は、各事業者が各発電所内で行い、このうち液体の放射性廃棄物は蒸発濃縮した後、セメント等を用いてドラム缶内に固化し、また、紙・布等の可燃物は焼却した後、ドラム缶に保管している。さらに、プラスチック・金属等の難燃物及び不燃物は、圧縮減容等した後、ドラム缶に保管している。これらの発電所廃棄物は、発電所敷地内の貯蔵庫に安全に保管した後、放射能レベルの比較的低いものについては日本原燃六ヶ所低レベル放射性廃棄物埋設センターに移送して埋設処分される。平成21年度末時点における発電所廃棄物の保管量(200リットルドラム缶換算量)は、約65万本である(表2参照)。
 発電所廃棄物のうち、気体状の放射性廃棄物及び放射能レベルの極めて低い液体の放射性廃棄物は、ろ過等の適切な処理を施し、法令で定められた放出基準値を下回るように厳重な管理を行い、施設外の大気、海洋に放出するなど安全な管理が行われている。今後ともこれらの放出量の低減化に努めていく必要がある。
(2)TRU核種を含む廃棄物
 TRU核種を含む廃棄物は再処理工場やMOX燃料加工工場で発生するが、日本では、日本原子力研究開発機構及び日本原燃(株)において発生している。平成20年度末時点においての発生量(200リットルドラム缶換算量)は、約145,000本である(表1参照)。
(3)ウラン廃棄物
 民間のウラン燃料加工事業所、日本原子力研究開発機構のウラン濃縮・加工施設等において発生するウラン廃棄物の処理は、各事業所において安全に処理し貯蔵している。平成21年度末時点においての保管量(200リットルドラム缶換算量)は、民間加工業者において約47,000本である(表1参照)。
(4)RI・研究所等廃棄物
 医療機関及び研究機関等の放射性同位元素(RI)の使用施設等から発生する放射性廃棄物(以下、「RI廃棄物」という)のうち、可燃物、不燃物、無機液体等のRI廃棄物は、(社)日本アイソトープ協会及び日本原子力研究開発機構で焼却処理や圧縮減容処理を行い施設内の貯蔵庫に安全に保管している。平成21年度末時点においてのRI廃棄物の保管量(200リットルドラム缶換算量)は、日本アイソトープ協会において約138,500本である(表2参照)。
 また、日本原子力研究開発機構、大学等の試験研究炉を設置している事業所、核燃料物質使用施設を設置している事業所からも放射性廃棄物(以下、研究所等廃棄物)が発生している。大部分の研究所等廃棄物は、発生した事業所において種々の処理をした後、施設内で安全に保管している。主な発生事業者である日本原子力研究開発機構における保管量(200リットルドラム缶換算量)は、平成21年度末時点において約352,000本である(表2参照)。
3.放射性廃棄物の安全研究
 原子力安全委員会は、平成12年(2000年7月)に策定された「放射性廃棄物安全研究年次計画(2001年度〜2005年度)」において、安全確保の観点から研究課題を浅地中処分、地層処分及びクリアランスの3つの分野に分けた。この分野ごとの研究テーマについて、日本原子力研究開発機構等の機関が分担し実施した(表3-1表3-2参照)。
 その後原子力安全委員会は、平成17年度から5年程度を見通した「原子力の重点安全研究計画(第1期)」(以下、「第1期計画」という)を平成16年7月に決定した。平成19年度に、第1期計画の3年目に当たることから、重点安全研究の進捗状況に関する評価、重点安全研究の推進事項に関する評価を実施し、平成20年3月に「重点安全研究の進捗と今後の推進方策−「原子力の重点安全研究計画」中間評価−」を取りまとめた。さらに、その結果を踏まえ、平成20年6月に第1期計画を改訂した。
 「原子力の重点安全研究計画」中間評価−」から放射性廃棄物処分に関連する研究テーマ及び担当研究機関等を表4に示す。
(前回更新:2003年1月)
<図/表>
表1 日本における放射性廃棄物の区分と現状
表1  日本における放射性廃棄物の区分と現状
表2 主な原子力施設における放射性廃棄物の保管量
表2  主な原子力施設における放射性廃棄物の保管量
表3-1 放射性廃棄物安全研究年次計画に基づく安全研究課題(2001年〜2005年)(1/2)
表3-1  放射性廃棄物安全研究年次計画に基づく安全研究課題(2001年〜2005年)(1/2)
表3-2 放射性廃棄物安全研究年次計画に基づく安全研究課題(2001年〜2005年)(2/2)
表3-2  放射性廃棄物安全研究年次計画に基づく安全研究課題(2001年〜2005年)(2/2)
表4 原子力の重点安全研究計画に基づく放射性廃棄物処分に関連する研究テーマ及び担当研究機関等(2008年3月)
表4  原子力の重点安全研究計画に基づく放射性廃棄物処分に関連する研究テーマ及び担当研究機関等(2008年3月)

<関連タイトル>
放射性廃棄物 (05-01-01-01)
放射性廃棄物の処理処分についての総括的シナリオ (05-01-01-02)
高レベル放射性廃棄物と処分対策の安全問題 (05-01-01-03)
原子力発電所からの放射性廃棄物の処理 (05-01-02-02)
放射性廃棄物の処分の基本的考え方 (05-01-03-01)
TRU(超ウラン元素)含有廃棄物の処分方針と基準 (11-03-04-03)

<参考文献>
(1)原子力安全委員会安全審査指針集:
(2)日本電気協会新聞部:原子力ポケットブック 2011年版(2011年9月19日)
(3)原子力委員会:平成21年版原子力白書(平成22年3月)、
http://www.aec.go.jp/jicst/NC/about/hakusho/hakusho2009/index.htm
(4)資源エネルギ—庁 放射性廃棄物のホームページ:放射性廃棄物の概要、

(5)日本原燃(株):http://www.jnfl.co.jp/index.html
(6) 原子力安全委員会 原子力安全研究専門部会:重点安全研究の進捗と今後の推進方策−「原子力の重点安全研究計画」中間評価−(平成20年3月)、

(7) 原子力安全委員会 原子力安全研究専門部会:重点安全研究計画に沿った研究課題の取組状況等について(報告)(平成18年7月)、
http://www.aec.go.jp/jicst/NC/senmon/seisaku/siryo/seisaku06/siryo3.pdf
(8) 経済産業省 原子力安全・保安院:平成22年度原子力施設における放射性廃棄物の管理状況及び放射線業務従事者の線量管理状況について(平成23年9月)、

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