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<概要>
 外部放射線モニタリング作業環境モニタリングの一項目であり、作業環境の放射線レベルに異常がないことの確認、放射線作業における作業者の被ばくによる線量の推定、放射線作業計画を立案する際の放射線被ばくを防護する手段や作業手順等の検討、外部被ばくに係る個人モニタリングのための管理資料の収集が目的である。
<更新年月>
2007年07月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
(1)モニタリングの対象と方法
 外部放射線モニタリングの対象となる放射線の種類は、エックス線、ガンマ線、ベータ線および中性子線である。モニタリングには測定する放射線の種類、エネルギーレベル等を考慮して適切な測定器を使用する。モニタリング方法として、施設の特定の箇所に据付型のエリアモニタを設置して検出器位置における放射線レベルの変動を連続監視する方法と、サーベイメータを携帯して管理区域内外の詳細な線量率をモニタリングする方法がある。
(2)エリアモニタによるモニタリング
 エリアモニタの目的は、人の常時立ち入る、線量率が高くなる恐れがある作業環境の放射線レベルを知る上で最も有効な箇所に検出器を設置して、線量限度とレベルの関係から定められた警報レベルに達すると警報を発生させ、作業者にその状況を直ちに知らせて不用意な外部被ばくを未然に防止することである。
 警報のレベルには、調査レベル介入レベルがある。調査レベルは、放射線の平常値を超えた変動(例えば、平常値の2倍)を異常と捉え、警報発生の原因を調べ必要な処置をするために設定する。介入レベルは、作業者に退避を促し線量限度を超えるような過度の被ばくを防止するために(例えば、平常値の10倍)設定する。
 作業環境の放射線レベルの情報は、放射線管理室あるいはモニタ室に設置されている放射線モニタ監視盤に集中させて監視および記録される。したがって、実時間の放射線レベルはもとより過去からの連続した長期間の変化が記録される。これらの情報は、放射線作業などとと密接した関連があり放射線管理上の有効な資料となる。また、大型の施設では、計算機を使用した放射線管理集中監視システムによって放射線レベルおよび使用設備の情報を解析して作業環境の状態を迅速、正確に診断するなどの高度な管理システムが採用されている。
(3)サーベイメータによるモニタリング
 サーベイメータ(ベータ、ガンマ、中性子等)による測定の目的は、作業環境の放射線のレベルの状態を探査(サーベイ)しながら線量率の空間分布を記録し、作業状況や放射線の発生源との関係、定期的な頻度で測定した結果や放射線管理基準との比較等を行い、必要があれば適切な処置や対策をして外部放射線レベルの低減を図ることにある。
 外部放射線のサーベイには、測定する放射線の種類、エネルギ、レベルに応じてGM管式 サーベイメータ、電離箱式サーベイメータ、中性子線用サーベイメータ等を使用する。また、フィルムバッジ、TLD等の積算線量計を使用して、一定期間の平均の線量を求めて評価する方法もある。
 外部放射線モニタリングは、原子炉、加速器等の使用施設の運転条件、作業環境中における放射性物質の使用や搬出入、遮へい壁の健全性、放射線作業における放射線防護の3原則の適用などの周囲の状況および作業環境モニタリングの目的を考慮して実施する。測定結果は、管理区域の入口などに設けた掲示板に記載し、作業者に告知する。
 放射線業務従事者個人に対するモニタリングは個人モニタリングと呼ばれ、個々の放射線業務従事者の被ばくによる線量の測定評価が目的である。外部放射線による放射線業務従事者の実効線量、皮膚または手足等の局部被曝による線量を評価する資料を得るためには、胸部、腹部など体幹部の主要な各所または手足等に個人線量計を装着することがある。外部放射線モニタリングによる測定結果は、個人モニタリング計画の有効な資料となる。サーベイメータによる外部放射線モニタリング記録の例を図1に示す。
(4)校正と線量率の評価
 モニタおよびサーベイメータは、被ばくの形式や評価対象に適合し、国家標準(標準線源と校正)とのトレーサビリティーが保たれた計器が使用され、使用前には、正常に動作することの確認をする。
 放射線障害防止法では、使用施設等の放射線の量を知るために放射線測定器を用いて、原則として最も適した箇所の1cm線量当量率(ただし、70μm線量当量率が1cm線量当量率の10倍を超える恐れのある場所)について測定を行うことを義務づけている。
 1cm線量当量は、作業環境中のガンマ線や中性子線のような透過性の外部放射線のモニタリングに適用される。70μm線量当量率は、皮膚、手と前腕および足とくるぶし(この部分において着目組織は皮膚である)の表面から70μmの深さの線量を測定・評価する際にそれぞれ適用される。これらの測定および評価は、測定放射能の種類、エネルギーに対して測定器により直接または間接的に測定した自由空間中の空気吸収線量または粒子フルエンス量に対して放射線障害防止法の告示に示す値との関係から求めることができる。なお、1cm線量当量率をサーベイメータ等の指示値からそのまま読み取れる測定器もある。また、測定器の校正の際に各線量に対する換算係数を求めておき、測定値を補正して求める方法もある。
(前回更新:2004年3月)
<図/表>
図1 サーベイメータによる外部放射線モニタリング記録の例
図1  サーベイメータによる外部放射線モニタリング記録の例

<関連タイトル>
限度とレベル (09-04-02-12)
標準線源 (09-04-03-02)
個人線量計 (09-04-03-03)
サーベイメータ(α線、β線、γ線、中性子等) (09-04-03-04)
エリアモニタ (09-04-03-05)
放射線管理基準 (09-04-05-01)
外部被ばくモニタリング (09-04-07-02)

<参考文献>
(1)日本アイソトープ協会:2002年版 アイソトープ法令集、ICRP Publ.60
(2)安全衛生技術試験協会:作業環境測定ガイドブック(4)(1976)
(3)原子力安全技術センター:外部被爆における線量当量の測定・評価マニュアル(1988)
(4)山本峯澄:法令改正に伴う具体的対処について、保健物理、24(1989)
(5)南健太郎:線量測定の実際(3)、Isotope News、No.415、39(1989)
(6)辻本 忠、草間朋子:放射線防護の基礎、日刊工業新聞社(2001)
(7)日本アイソトープ協会:「作業環境の放射線モニタリング/計画から立案まで」、丸善(1978)
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