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<概要>
 原子力発電所など原子力関係施設をはじめ放射性同位元素取扱施設等から、気体状及び液体状の放射性排出物が放出される。これら放射性排出物中の放射能を計測する主な測定装置として、排気(廃気)モニタおよび排水(廃水)モニタが使用されている。排気モニタは、施設から放出される気体中に含まれる放射性ガスを連続的に監視するガスモニタ、及び大気中の塵埃に含まれる放射能を連続監視するダストモニタである。排水モニタは、排水中に含まれる放射能を連続監視する水モニタである。
<更新年月>
2003年01月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
 排気(廃気)廃水及び排水(廃水、廃液)モニタは、原子力施設等から放出される気体状及び液体状の放射性排出物の放射能を測定・評価するモニタである。
 以下に排気モニタ(ガスモニタ、ダストモニタ)及び排水モニタ(水モニタ)等の主な特徴を記述する。
1.ガスモニタ
 空気中の放射性ガス濃度を測定するためには、予想放出核種及びそれら核種の性状等により、放射性物質から放出されるβ線又はγ線を計測する方法がある。
 β線を計測するタイプには、検出器(電離箱)内部に試料空気を連続的に流して電離電流を測定することにより濃度を求める方式と、検出器(シンチレーション、GM計数管)をガスサンプラ(ガス容器)に挿入しガスサンプラに試料空気を連続的に流して検出器の出力を測定して濃度を求める方式とがある。
 前者はトリチウム等β線のエネルギーが低い核種に対して、後者はクリプトン等のように比較的エネルギーの高い核種に対して、それぞれ有効である。
 γ線を計測するタイプは、検出器(NaI(Tl)シンチレータ)をガスサンプラに挿入し試料空気を連続的に流して、検出器からのスペクトル情報等を用いてガス濃度を求める。この方法はアルゴン等γ線を放出する核種を対象とする。
 電離箱の容積およびガス容器の容積は、数リットル〜数10リットルのものが目的に応じて使用されている。
 ガスモニタの種類および性能を 表1 に示す。
2.ダストモニタ
 粒子状放射性物質の空気中濃度は、ろ紙等によって空気中の放射性物質を捕集し、捕集した試料中の放射能を計測することによって測定する。
 ダストモニタには、α線を放出する核種を計測するものと、βγ線を放出する核種を計測するものとがある。
 α線を計測するタイプは、検出器(ZnS(Ag)シンチレーション、半導体)の出力、計数効率等を用いて放射能濃度を求める。βγ線を計測するタイプでは、検出器としてGM計数管、プラスチックシンチレータ等が使用されている。空気中濃度を求める方法は、上記と同様である。
 空気中の放射能濃度の測定では、空気中に存在するラドンおよびトロン崩壊生成物による影響を考慮する必要がある。また、検出装置の効率試験に用いるα線用β線用標準線源を 表2 に示す。
 空気吸引装置は、モニタ毎にドライポンプ等を備え付けて吸引する方式と、複数のモニタを吸引用配管と大型のブロワを用いて集中吸引する方式の、二つの方式がある。
 モニタの検出感度は、日本工業規格では、試料の捕集時間をT時間とした場合、α線お よびβγ線に対して、それぞれ3.7E−7/T(Bq/cm3)以下および3.7E−6/T(Bq/cm3)以下と規格化されている。
3.水モニタ
 排水(廃水)中に含まれる放射能を計測するために、貯溜タンクに検出器(シンチレータ)を直接挿入する方式と、水サンプラ(水容器)に試料水を連続的に流して測定する方式とがある。
 貯溜タンクに検出器を直接挿入する方式は、γ線を放出する核種を測定対象とするものである。検出器の出力と、予め校正してある主要な核種の濃度換算係数を用いて濃度を求める。この方式は、貯溜タンクの貯水量(水による遮蔽効果)によってバックグラウンド自然放射線)レベルが大きく変動することを考慮する必要がある。
 水サンプラ(水容器)方式は、検出器と水サンプラの組合せによって、β線、γ線を放出する核種をそれぞれ測定することができる。濃度を求める方法は、貯溜方式と同じである。この方式では、水サンプラの貯水量は常に一定レベルに保たれるため、これによるバックグラウンドレベルの変動はない。
 水モニタの種類および性能を 表3表4 に示す。
 日本工業規格(JIS)では、放射性希ガスモニタ(Z4317-1993)、放射性ダストモニタ(Z4316-1995)、およびγ線検出形水モニタ(Z4330-1994)の規格化を行っている。
<図/表>
表1 ガスモニタの種類及び性能
表1  ガスモニタの種類及び性能
表2 検出装置の効率試験に用いる標準線源
表2  検出装置の効率試験に用いる標準線源
表3 水モニタの種類
表3  水モニタの種類
表4 水モニタの種類及び性能
表4  水モニタの種類及び性能

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<参考文献>
(1) 飯田博美ほか:詳細−放射線取扱技術−新版、日本原子力産業会議(1995年4月)
(2) 日本規格協会:JISハンドブック、放射線(能)、(2003年1月)
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