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<概要>
 採掘より燃料加工までの放射性廃棄物は脈石、精錬廃液、保守廃棄物が主なものである。これらの工程で発生する放射性廃棄物の放射能レベルは極めて低いが、ウランを含むので貯蔵しているのが現状である。
 燃料加工施設は、核燃料物質を原子炉燃料として使用できる形状又は、組成に加工する施設である。施設から放出される放射線(放射能)には、気体および液体廃棄物に含まれる放射能と、核燃料物質を貯蔵等する場合にそれからの直接放射線がある。これらの放射線(放射能)は、法令により、施設周辺の一般公衆が受ける被ばくが周辺監視区域外の線量限度(公衆に対する線量限度)以下となるように規制されている。
<更新年月>
2009年02月   

<本文>
 核燃料サイクル施設からの放射性廃棄物の発生について図1に示す。
 採掘より燃料加工までの放射性廃棄物は脈石、精錬廃液、保守廃棄物が主なもので、概略を表1に示す。これらの工程で発生する放射性廃棄物の放射能レベルは極めて低いが、ウランを含むので貯蔵しているのが現状である。また民間の燃料加工施設からはウランで汚染された低レベル廃棄物が発生し、原則として保管貯蔵しているが一部(独)日本原子力研究開発機構に送りそこで保管中である。濃縮施設から発生するものも同様に現在は発生個所で保管中である。
1.燃料加工施設
 燃料加工施設は、ウラン、プルトニウム等の核燃料物質を物理的又は化学的方法により処理することによって原子炉燃料として使用できる形状又は組成に加工する施設であり、次のものがある。
a)ウラン加工施設
転換施設   :酸化ウランを六フッ化ウランに転換する施設
ウラン濃縮施設:六フッ化ウランを濃縮する施設
再転換施設  :濃縮六フッ化ウランを濃縮酸化ウランに再転換する施設
成型加工施設 :濃縮酸化ウランを燃料集合体に成型加工する施設
b)混合酸化物(MOX)燃料加工施設
使用済み燃料の再処理によって回収されたプルトニウム、ウランを転換・成型加工する施設
2.施設からの放射線(放射能)
 燃料加工施設では、多量の核燃料物質が取扱われるが、これらはフード、グローブボックスあるいはセル等の閉じ込め設備の中で処理・加工されるため、放射性物質作業環境へ漏洩することはないが、これらの一部は、処理工程の段階で排気系あるいは排水系へ移行し、気体および液体廃棄物として微量ながら環境へ放出される。
 環境へ放出されるおそれのある放射性物質は、天然ウランあるいは濃縮ウランを加工する施設では、238U、235U、234Uの他、これらの娘核種である231Th、234Th、234Pa等である。使用済燃料の再処理によって回収されたプルトニウム、ウランを加工する施設では、上述の放射性物質の他に239Pu、232U、236U、99Tc等である。
 また、燃料加工施設では、多量の六フッ化ウラン、二酸化ウラン等の加工原料あるいは燃料集合体等の加工製品の貯蔵等による直接放射線の周辺環境への影響も考えられるが、一般に無視できる低いレベルである。
3.放出低減措置
 気体廃棄物中の放射性物質は、高性能エアフィルタ、エアウオッシャ等の除去設備によって可能な限り周辺環境への放出量が低減される。液体廃棄物中の放射性物質は、凝集沈澱設備、濾過設備、蒸発濃縮設備、イオン交換設備等の廃液処理設備によって放出量が低減される。
 また、六フッ化ウラン、二酸化ウラン、あるいは燃料集合体の貯蔵等による直接放射線については、遮蔽設備を設けること等により線量率が低く抑えられている。
4.放出管理
 環境へ放出される気体および液体廃棄物は、それぞれの廃棄物中に含まれる放射性物質の濃度が、法令に定める周辺監視区域外における濃度限度以下となるように放出管理されている。これによって、施設周辺の一般公衆の廃棄物から受ける被ばくが公衆に対する線量限度(実効線量で年間1mSv)以下になることを確保している。
 さらに、法令とは別に、ウラン加工施設安全審査指針等において、平常時における一般公衆の被ばく線量が合理的に達成できる限り低くなるように定めており、各加工施設では放出管理目標値を定めて放出放射性物質の管理を実施している。
 そして、通常、燃料加工施設から環境へ放出される気体および液体廃棄物に含まれる放射性物質の濃度は、排気中濃度については、ウランに対して10E−9〜10E−10Bq/cm3、プルトニウムに対して検出下限濃度(10E−10Bq/cm3程度)である。排水中濃度については、ウランに対して10E−3〜10E−4Bq/cm3、プルトニウムに対して検出下限濃度(10E−3Bq/cm3程度)以下である。
<図/表>
表1 採掘から燃料加工までの放射性廃棄物の発生
表1  採掘から燃料加工までの放射性廃棄物の発生
図1 核燃料サイクル施設からの放射性廃棄物の発生
図1  核燃料サイクル施設からの放射性廃棄物の発生

<関連タイトル>
核燃料 (08-01-03-07)
原子炉施設からの放射線(能) (09-01-02-04)
再処理施設からの放射線(能) (09-01-02-06)
線量限度 (09-04-02-13)
放射性排出物の放出前モニタリング (09-04-06-05)

<参考文献>
(1)三島良績編著:核燃料工学、同文書院(1982)
(2)菅野昌義著:原子力工学シリーズ、原子炉燃料、東京大学出版会(1976)
(3)日本原子力産業会議(編):放射性廃棄物管理ガイドブック1994年版、1994年7月
(4)日本原子力産業会議(編):原子力ポケットブック1997年版、1997年5月、p216
(5)資源エネルギー庁公益事業部原子力発電課(編):原子力発電便覧1997年版、電力新報社(1997年8月)
(6)原子力環境整備センター(編):放射性廃棄物データブック、1995年12月
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