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<概要>
 ガリリアーノ発電所は、イタリア電力公社(ENEL)の所有する出力160MWのBWR型原子力発電所で、1964年に運転を開始し、1978年まで運転された。デコミッショニングは、格納容器内の汚染、放射化機器を安全な状態に維持することなどを目的に1985年に開始され、1998年には密閉管理のための移行措置がほぼ終了した。
 1999年イタリアの廃止措置プログラムが見直され、密閉管理から即時解体撤去が選択された。また、廃止措置を行う機関として原子力発電所管理会社(SOGIN)が設立し、ガリリアーノを含めイタリアの原子力施設の所轄がSOGINに移行した。ガリリアーノ発電所では、2003年までにタービン建屋が解体撤去された。2015年までにサイト解放を予定している。なお、使用済燃料は2007年にフランスのラ・アーグ再処理工場に輸送され、ガラス固化体で返還される。
<更新年月>
2009年01月   

<本文>
1.ガリリアーノ(Garigliano)発電所の運転概要
 ガリリアーノ発電所は、ENELの所有する出力160MW2重サイクル型のBWR原子力発電所である。米国のドレスデン−1、インドのタラプール、ドイツのグントレミンゲン(KRB)などと同様、米国GE社製のBWR−1型に属する。直径49mの球形鋼鉄製の格納容器を持ち、2つの独立したサイクルがタービンに蒸気を供給する。第1サイクルでは、原子炉容器で発生した蒸気が直接タービンに送られる。第2のサイクルは間接的で、蒸気は原子炉からの水を使って蒸気発生器または熱交換器で作られる。従ってこの型の炉は直接サイクルBWRと間接サイクルPWRの中間に位置するものである。図1に2重サイクルの例を示す。ガリリアーノは1964年に営業運転を開始したが、その後、初期のBWRに取り付けてあった蒸気発生器のトラブルで1978年に停止した。修理段階で現在のBWRの安全基準を満たすためのコストと残存耐用年数との関係が検討され、その結果1982年閉鎖、廃止措置が決定された。
2.ガリリアーノ発電所の廃止措置の取り組み
 ガリリアーノ発電所のデコミッショニングの方針は、1)格納容器内の汚染、放射化機器を安全な状態に維持する、2)タービン建家及びその他の建家にある汚染した機器を解体して、無拘束レベルまで除染するなどを目的として1985年に開始され、密閉管理のための移行措置が進められた。なお、密閉管理のため準備は1993年に終了する計画であった。
3.イタリアの廃止措置の取組みの見直し
 イタリアでは、1986年のチェルノブイリ4号機の事故を受けて実施された1987年の国民投票の結果をもって、4基の原子力発電所を恒久停止し、約40年の安全貯蔵期間を設けることを想定した廃止措置に移行した(表1参照)。1999年3月には電力の自由化、国営電気事業の民営化の一環として、それまで発電所を所有・運転していたイタリア電力公社(ENEL)の原子力発電所は、新たに設立された原子力発電所管理会社(SOGIN:State−owned Societa Gestione Impianti Nucleari)に移管された。SOGINはイタリア経済・財務省が株式を保有する国営企業で、廃止措置以外にも、原子力、環境及びエネルギー分野での研究、コンサルティング及びサービス提供の活動も行っている。SOGINは4基の原子力発電所ほか、カサッチア原子力研究センター(ENEA)の研究炉および核燃料サイクル施設EUREX、FN、IPUおよびITRECの4施設を保有している。
 イタリア環境保護庁(ANPA)は原子力施設の早急なデコミッショニングを求め、産業省は1)原子力発電所や燃料サイクルで貯蔵されている液体・固体廃棄物の国営放射性廃棄物処分場へ輸送するための処理・コンディショニング(〜2010年)、2)国営中・低レベル廃棄物処分場(ここでは最終処分されるまで高レベル廃棄物中間貯蔵される)の立地選定(〜2010年)、3)原子力発電所のデコミッショニング(〜2020年)、などを骨子とした原子力発電所および燃料サイクル施設の閉鎖に伴う戦略計画を策定した。
○第一段階(2001年〜2005年半ば):国営放射性廃棄物処分場の立地選定、二次系および低汚染部の解体撤去、運転廃棄物のコンディショニング、許認可手続き等を行う。
○第二段階(2008年〜2009年): 最終的な解体撤去に向けたモックアップ試験、国営放射性廃棄物処分場の建設。
○第三段階(〜2020年):一次系の解体撤去、国営放射性廃棄物処分場への輸送と埋戻し。
SOGINもこれに応じて新たなデコミッショニング計画をとりまとめている(表2参照)。この計画は国営放射性廃棄物処分場がスケジュール通りに操業開始できなければ根底から崩れる。全体の廃止措置総費用は約45億ユーロ(約7,200億円)で、廃止措置の不足費用は電気使用者が負担して、電気使用量1kWh当り0.036ユーロ(6円弱)が上積みされ、3年毎に実績ベースで改訂される。(2001年1月26日デクレ(政令))。
4.ガリリアーノ発電所の廃止措置方針変更への影響
 1998年ガリリアーノ発電所では原子炉およびタービン建屋の密封管理が進められていたが、1999年の廃止措置政策の変更から、ガリリアーノ発電所においてもタービン建家取り扱いなどの見直しが行われた。2001年7月に廃止措置のための新認可が発行されている。現在は原子炉格納容器は密閉、タービン解体、タービン建屋除染後密封により2003年解体が終了し、放射性廃棄物は全て施設内から撤去された。タービン建家の除染には対象機器に応じて電解研磨、超音波、ウォータジェット及びフレオンジェットが使い分けられた。主な廃棄物としては、圧縮貯蔵されたLLW廃棄物(320L)、使用済樹脂、スラッジ(280立方m)、低レベルの手袋、ぼろ布などを入れたオーバーパック容器(1166個)などのILW廃棄物、4トンのHLW廃棄物はセメント固化されて6個の遮へい容器(50トン、15立方m)に収納、サイト内で管理されている。また、600トンの金属廃棄物は、金属除染や金属溶融などを行い、1Bq/g or cm2(β、γ線放出核種)、0.1Bq/g or cm2(α線放出核種)の場合は無拘束廃棄物となっている。遮へい容器に入っている廃棄物は最終処分場に運ばれるまで監視・保管される。廃止措置完了目標は2015年である。廃止措置費用は2000年時点で29,700万ユーロと算出された。
5.国営放射性廃棄物処理場
 放射性廃棄物処分場について、2003年11月にイタリア政府は、バジリカータ州マテラ県のスカンツァーノ・ヨニコ地点を建設地に選定したと発表したが、住民の反対によりサイト選定が再度見直されている。
 なお、使用済燃料に関しては、2006年にフランスとイタリアの間で締結された政府間協定に基づき、2007年にSoginとアレバ社との間で使用済燃料235トンを再処理する3億3,800万ドルの契約に調印している。ラ・アーグ再処理工場までの輸送は2007年から開始され、2015年〜2020年までには、ガラス固化体としてイタリアに返還される。
<図/表>
表1 原子力発電所廃止措置
表1  原子力発電所廃止措置
表2 原子力発電所の廃止措置計画、国の廃棄物処分場計画の全体スケジュール
表2  原子力発電所の廃止措置計画、国の廃棄物処分場計画の全体スケジュール
図1 二重サイクル・システム(BWR−1)
図1  二重サイクル・システム(BWR−1)

<関連タイトル>
海外主要国における発電炉の廃止措置の実績 (05-02-03-01)
イタリアの原子力施設の廃止措置政策 (14-05-14-02)

<参考文献>
(1)European Commission:A review of the situation of decommissioning of Nucler Installations in Europe.,Report EUR−17622,
(2)Luigi Noviello and Tripputi,“Italy’s Shutdown Strategy”,Nuclear Engineering International(December 2003)
(3)W.マーシャル編 住田健二監訳 筑摩書房発行:原子炉技術の発展(上)、1986年9月、p.296−301
(4)日本電気協会新聞部:原子力ポケットブック2008年版(2008年7月)p.278
(5)State−owned Societa Gestione Impianti Nucleari( Sogin):
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