<大項目> 海外情勢
<中項目> ヨーロッパ各国
<小項目> イタリア
<タイトル>
イタリアの原子力施設の廃止措置政策 (14-05-14-02)

<概要>
 1987年にイタリア政府は、国内の全ての原子力施設、即ち原子力発電炉4基及び5つの核燃料サイクル施設の停止を決定し、これを受けて施設の所有者は、全ての施設の廃止措置完了時期を2050年頃とした。その後、1999年末に同国政府は、全ての施設の廃止措置計画を前倒しして、2020年までに完了させる政策を打ち出した。これらの廃止措置は政府所有機関のSOGIN社が行うこととなっている。
<更新年月>
2014年01月   

<本文>
1.イタリアの商用原子力発電所の概要
 イタリアには1960年代から1980年代にかけてGCR型(マグノックス型ガス冷却炉)のラティナと、BWR型(沸騰水型原子炉)のガリリアーノとカオルソ及びPWR型(加圧水型原子炉)のトリノ・ベルチェレッセの合計4基の商用発電炉が稼動していたが、これらは1990年までに全て恒久停止している。発電炉停止の理由は、1986年のチェルノブイル事故をきっかけに、イタリア国内の反原子力の機運が高まり、1987年11月に国民投票が行われた結果、原子力発電所の建設中止と運転中の全ての原子力発電所の閉鎖を決定したことにある。1981年当時に採択されたエネルギー計画では、ピエモンテ州(トリノサイト)、ロンバルディア州及びプーリア州に1000MWe級2基、合計6基の原子力発電所の建設が計画されていた。これらの概要を表1及び図1に示す。
 なお、原子力発電を放棄したイタリアでは、天然ガス火力、水力発電、輸入電力等により国内電力消費を賄っていたが、2000年以降、恒常的な電力不足と高い電気料金に閉口し、原子力発電の再導入を計画した。しかし、2011年3月に福島第一原子力発電所事故が発生、同年6月に行われた国民投票で、再度原子力を放棄することが決定された(ATOMICAデータ「イタリアの原子力事情と原子力開発(14-06-14-01)」を参照)。
2.商用発電炉の廃止措置計画
 商用発電炉を停止した1987年当時、廃止措置に関するイタリア政府の政策は明確でなかった。このため、原子力発電所の所有者であるイタリア電力公社ENELは、廃棄物処分場がないこと、廃止措置に従事する作業者の被ばくを低減させること、さらに廃止措置に必要な資金の準備ができていないことを理由に、全ての原子炉を約50年程度「安全貯蔵」して、その後に解体することを計画した。したがって、2050年頃に全ての廃止措置を完了しサイトを解放する計画がたてられた。(文献1)
 しかし、政府は1999年4月に、以下の理由から廃止措置計画を前倒しして、2020年までに全ての原子力施設の廃止措置を完了させる「即時廃止措置計画」を打ち出した。(文献1)
・原子力を放棄した現在、原子力の技術や知識を国内に保持しておくことは疑問である。
・各原子炉は停止後12年以上経過しているので、放射能減衰が明らかである。
・原子力従事者の技術力を廃止措置活動期間中に保持し続けることは極めて重要で、廃止措置を早期に行う必要がある。
・国家レベルで廃止措置計画を立案して、施設間で一定の人員を確保できれば、廃止措置を加速することが可能である。
・短期間で廃止措置経験を蓄積すれば、この技術を国際市場まで拡大させることができる。
・開放されたサイトは、他の産業、例えば電力施設に有効利用できる。
 表2に原子力発電所の廃止措置計画を示す。
3.即時廃止措置計画を遂行するための課題
 即時廃止措置計画の遂行には、技術的課題と経済的課題を解決する必要がある。
 技術的課題としては放射性廃棄物の最終処分場の建設が重要である。施設の解体及び廃棄物処理は可能であるが、処分場が未定であると、廃棄物を施設内で中間貯蔵させ、サイト解放を遅らせるほか、中間貯蔵施設管理のための費用が余分にかかることになる。このため、新政策では2005年までに処分場の立地、2009年までにその開設を目標とした。表2に2009年までの処分場開設を前提とした発電所の廃止措置計画と国の廃棄物処分場計画の全体スケジュールを示す。
 また、即時廃止措置計画に関する経済的な課題としては、発電所の解体に必要な資金の確保が挙げられる。発電炉所有者のイタリア電力公社ENELは、当時廃止措置の資金計画を法的に義務付けられていなかったため、米国の原子炉の運転寿命を考慮した廃止措置政策に倣って50年程度の安全貯蔵を行う方針で資金計画を1980年代に立てていた。このため、1987年11月の国民投票の結果により発生した発電炉廃止措置の追加費用は電力使用者が負担すべきとして、政府は電気料金からカバーすることを決定した。なお、具体的検討は後述する「原子力発電所管理会社」SOGIN社が行っている。SOGIN社は表2の廃止措置計画に従い、2001年9月には、追加負担料として売電1kWh当り0.036ユーロ程度を政府に提案した。これに関する状況報告書は毎年9月に、大きな変更は3か年毎に発表されることになった。(文献1)
4.原子力発電所管理会社(SOGIN:Societa Gestione Impianti Nucleari)について
 SOGIN社は原子力施設の廃止措置のため、電力の民営化を推進するENEL傘下の子会社として1999年に設立された。SOGIN社はその後、ENELから分離されて財務省の所有機関となり、過去の国家による核活動から生じる負債の管理も含め、全ての原子力発電所及び核燃料サイクル施設の廃止措置活動の責務を負うことになった。また、SOGINは国の放射性廃棄物処分場の技術的・工学的責務も負っている。(文献1)
5.発電所以外の原子力施設の廃止措置
 イタリアでは原子力発電所の廃止に伴い、全ての核燃料サイクル施設が廃止されることになった。施設としては、イタリア電力公社ENEL所有の再処理パイロットプラント(EUREX)、MOX燃料製造パイロットプラント(IPU)、照射後試験施設(OPEC)及び再処理・再製造パイロットプラント(ITREC)と、アジップ(Agip Nuclear)社所有の商業炉用燃料製造プラント(FN)の5つの施設がある(表3参照)。
 核燃料サイクル施設の廃止措置は、発電所同様、ENELによる資金の積立がなかったため、廃止措置費用の確保が問題となった。そのため、2000年以前の活動は、最も危険性の高い廃棄物の処理と廃止措置の準備のみであった。しかし、これら核燃料サイクル施設のライセンスが2003年8月にSOGIN社に移転されると、発電所と並行して核燃料サイクル施設の廃止措置計画が立てられた(表4参照)。なお、SOGIN社はこれら施設の廃止措置費用として、売電1kWh当り約0.026ユーロの電気料税を提案した。(文献1)
6.廃止措置に伴う許認可プロセス
 イタリアの廃止措置に伴う許認可プロセスに関しては、経済開発省が廃止措置活動の終了を2020年と設定したことから、各施設の廃止措置資金の確保、解体、廃棄物管理、処分を含んだ計画と手順を確立する省令が2000年1月26日に発行された。2001年5月7日の省令では使用済燃料の乾式貯蔵戦略の詳細が示された。また、2004年12月2日の省令では最終処分場が確保されない場合でも、施設解体活動の開始前に事業者により、廃棄物の適切な貯蔵容量が確保され、サイト内での一時保管が可能な場合、規制機関ISPRAは廃止措置の認可を与えることになった。図2に廃止措置の許認可プロセスを示す。
 なお、イタリアの廃止措置関連の規制は、政令230/95の55〜57条に記載されており、廃止措置の認可手続きに際しては、申請者は廃止措置の全体的な工程を記載した全体廃止措置計画、放射性廃棄物のインベントリや安全解析を含む環境影響評価等を提出する必要がある。解体継続は各ステージ毎に評価・判断される。認可は環境省、内務省、労働健康社会省及び関連地方政府の見解を集めた規制機関ISPRAの了承の下、経済開発省により行われる。
7.廃止措置の進捗状況
 発電炉から出る使用済燃料に関しては、イタリア国内のENELによる再処理は1990年代半ばに終了しているため、フランス及び英国で再処理されることになっている。SOGIN社と仏・アレバ(Areva)社との2006年11月の契約によると、2007年から2015年にかけて軽水炉から出る使用済燃料235トンがラ・アーグ再処理工場で再処理され、2020年以降に高レベル放射性廃棄物が返還される予定である。また、Latina発電所のマグノックス使用済燃料約1400トンに関しては英国のセラフィールドで再処理される予定である。
 廃止措置の進行状況は、ボスコマレンゴの燃料製造工場(FN)の除染及び解体撤去が一番早く2008年に終了しており、2022年にサイト開放を予定しているほか、発電炉もサイト内に解体廃棄物の一時保管場所を確保し、順調に除染及び解体撤去を進めている。図3にイタリアにおける各原子力発電所の廃止措置状況を示す。
 なお、放射性廃棄物処分場建設に関して、2003年11月にイタリア政府は、バジリカータ州マテラ県のスカンツァーノ・ヨニコ地点を建設地に選定したと発表したが、地元の反対を受け、計画は頓挫したままである。処分場では高・中・低レベル放射性廃棄物の処分施設及びフランスやイギリスで再処理した使用済燃料の返還廃棄物などをひとつのサイトで管理する方針である(文献1、3)
(前回更新:2005年5月)
<図/表>
表1 イタリアの原子力発電所
表2 原子力発電所の廃止措置計画、国の廃棄物処分場計画の全体スケジュール
表3 イタリアの核燃料サイクルプラント
表4 燃料サイクル施設の廃止措置計画
図1 イタリアの原子力発電所位置図
図2 イタリアの廃止措置の認可プロセス
図3 イタリアにおける原子力発電所の廃止措置状況

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<関連タイトル>
国際的に見た原子力発電所の廃止措置の政策、戦略、費用について (05-02-01-15)
イタリア・ガリリアーノ発電所の廃止措置 (05-02-03-12)
イタリアの原子力事情と原子力開発 (14-05-14-01)
イタリアの国情およびエネルギー事情 (14-05-14-03)

<参考文献>
(1)Luigi Noviello and Tripputi,“Italy’s Shutdown Strategy”,Nuclear Engineering International(December 2003)
(2)G.Bolla,E.Macci,J.F.D.Graik and P.Walkolen,“The Decommissioning of the Latina Nuclear Power Plant”,ICONE9-884(2001)
(3)日本原子力産業会議「諸外国における原子力発電開発の動向:最近の動き(2003年11月中旬から2003年12月中旬)」、インターネット(2005年5月)
(4)IAEA・NEA/OECD:Strategy Selection for the Decommissioning of Nuclear Facilities(Seminar Proceedings Tarragona,Spain2003年9月1-4日)、
http://www.oecd-nea.org/rwm/pubs/2004/5300-strategy-selection.pdf
(5)(独)原子力安全基盤機構:平成20年度 廃止措置に関する調査報告書【別冊】廃止措置ハンドブック
(6)SOGIN(イタリア廃止措置管理会社):Italian Decommissioning Programme Overview(Technical Meeting on the Country Nuclear Power Profiles Italian Profile)、2013年3月
(7)世界原子力協会(WNA):Italy、http://www.world-nuclear.org/info/Country-Profiles/Countries-G-N/Italy/
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