<大項目> バックエンド対策
<中項目> 原子力施設の廃止措置
<小項目> 廃止方法と廃棄物
<タイトル>
日本における原子力発電所解体放射性廃棄物処理処分費用の試算(1998年) (05-02-01-11)

<概要>
 総合エネルギー調査会・原子力部会・バックエンド対策ワーキンググループ(当時)では、1998年に原子力施設解体に伴い発生する放射性廃棄物(以下、「解体放射性廃棄物」という。)の処理処分費用の算定の考え方等について論点を整理した。
 論点整理の結果、処理処分方法については、国内における低レベル放射性廃棄物処分事業の実績、解体放射性廃棄物処分に係る技術基準等に基づき解体放射性廃棄物の処理処分に係る標準的な工程及び物量を確定した。
 処理処分費用の合理的見積については、工程を(1)処理・確認検査・構内輸送、(2)構外輸送・処分の2つに分け、個別積算法及び2通りの近似式による簡易な費用算定方法を提示し、試算を行った。近似式の一つは十分な計算精度を有すると評価した。
 なお、発電所1基当たりの処理処分費用については、110万kW級の場合、BWRについて187億円、PWRについて197億円との試算(個別積算法)となった。BWRについては約8割、PWRについては約9割の費用が構外輸送・処分に係るものとなっている。
<更新年月>
2000年03月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
 総合エネルギー調査会・原子力部会・バックエンド対策ワーキンググループ(当時)では、原子力施設の解体に伴い発生する放射性廃棄物(以下、「解体放射性廃棄物」という)の処理処分費用の算定の考え方等について論点を整理した(1998年8月28日)。論点の整理に当たっては、過去の類似の例として原子力発電施設解体引当金制度の基礎となった総合エネルギー調査会原子力部会報告書(1985年7月)が参考とされた。
1.解体放射性廃棄物処理処分費用の算定方法
1.1 費用手当の考え方
 原子力発電施設の廃止措置に伴い発生する放射性廃棄物(以下、「解体放射性廃棄物」という)の処理処分費用は、発電時点でなく将来当該発電施設を廃止した後、処理及び処分する時点で発生することが確実であり、しかもその時点における電気事業者の収支にかなりの影響を及ぼす。このため、これを廃止措置実施時点の世代の負担とすることは、世代間の負担の公平性の観点から合理性を欠くため、発電段階における世代が費用を手当することが必要かつ妥当である。
1.2 合理的見積りの可能性
 1987年の電気事業審議会料金制度部会(当時)中間報告においては、解体放射性廃棄物の処理処分方法に関し、現状においてはなお不確定な要素が多く、将来の費用を合理的に見積もることは困難とされた。その後、国内における低レベル放射性廃棄物処分事業の実績、放射性廃棄物埋設に係る技術基準の制定等により、解体放射性廃棄物の処理処分に係る標準的な工程と物量を確定して、この費用を合理的に見積ることが可能となった。
1.3 見積りにあたっての留意事項
 費用の見積りは、将来においては現時点の制度・知見等に照らして最も合理的と考えられる工程に基づき処理処分が行われるものとし、十分に裏付けのある数量データにより算定方式を定めて行う。この観点から、人件費単価及び設備・資材費については、現行の原子力発電施設解体準備金制度と同様、エスカレーンョン率を考慮する。
 なお、将来において現時点では予期できない外的要因により、費用見積りの根拠となる工法、数量データ等が大きく変化した場合には、その時点で見直すことが適当である。
2.解体放射性廃棄物処理処分費用の手当の在り方
2.1 費用算定の考え方
2.1.1 費用の積算に当たっての基本的な前提
(1)現在稼働中の軽水炉が運転開始と同じ順番で解体(約1.9基/年)。
(2)各処分場は、まとめて1か所立地し25年間に亘って埋設。
(3)各発電所の運転に伴う廃棄物についても併せて処分。
2.1.2 標準的な工程を基にしたモデルに物価上昇など将来の状況変化を反映させる。
2.2 処理処分の標準的な工程と廃棄物の発生量
2.2.1 処理処分の工程
「処  理」:○解体物を放射能レベル毎に測定・区分し、放射性物質の濃度が100分の1になるよう除染(汚染金属廃棄物の一部)し、充填。
       ○二次廃棄物の固型化、充填等。
 除染の程度による除染区分の範囲を 図1 に示す。
「検  査」:固形化、充填された廃棄物の表面線量、重量等を検査。
「構内輸送」:発電所構内の保管場所から港湾設備までの運搬。
「構外輸送」:専用船による処分場側の港湾までの海上輸送及び処分場までの陸上輸送。
「処  分」:放射能レベル毎に以下の形態で処分。
(1)高βγ低レベル放射性廃棄物
 地下50〜100mの浅地中(地下空洞)のトンネルまたはサイロに運搬後、地下に搬送し定置。処分坑道は最終的に埋め戻す。
(2)低レベル放射性廃棄物
 現行の低レベル廃棄物埋設センターと同様、コンクリートピットに運搬後、定置。最終的には埋設する。
(3)極低レベル放射性廃棄物
 素掘りトレンチ(コンクリートビット等の人工構造物により周辺土壌から仕切られたものではなく、掘削した土壌)に運搬後、クレーンにより定置。最終的には埋設する。
2.2.2 放射性廃棄物発生量
(1)廃棄物の区分
イ.低レベル廃棄物の上限値は、六ヶ所低レベル廃棄物埋設センターにおける申請濃度。
ロ.極低レベル廃棄物の上限値は原子炉等規制法に定める基準値の10分の1の濃度。
ハ.クリアランスレベルについては.原子力安全委員会において検討中の試算値。
 原子力発電施設のレベル区分の例を図2(BWR)および図3(PWR)に示す。(注:原子力安全委員会は原子力安全・保安院とともに2012年9月18日に廃止され、原子力安全規制に係る行政を一元的に担う新たな組織として原子力規制委員会が2012年9月19日に発足した。)
(2)発生量算出の考え方
イ.(1)の区分値に基づき、機器毎に細分化
ロ.発電所の部位毎の放射能の分布に関する調査結果((財)エネルギー総合工学研究所において実施)に基づき、放射能レベル区分値毎の廃棄物発生量を算出。
ハ.除染(汚染金属廃棄物の一部について放射性物質の濃度を100分の1とする)を考慮。
  発電所の規模別に解体に伴い発生する放射性廃棄物発生量を表1(110万kW級)、表2(80万kW級)および表3(50万kW級)に示す。
2.3 個別積算法による費用の算定
2.3.1 各工程における費用積算の考え方
(1)処理・検査・構内輸送
○費用の性格
 ・ 発電所毎に算出し得る費用。
 ・ 費用の内訳は、作業人件費及び機器購入費用。
○費用算出の根拠
 ・工   程: 解体廃棄物処理システムに関する技術確証試験((財)原子力発電技術機構(2007年3月解散)において実施。)の結果を考慮して策定。
 ・作業人件費: 発電所内での実績値。
 ・機器購入費: 実績値に基づき算定。
(2)構外輸送・処分
○費用の性格
 ・各レベルの廃棄物について、全国の発電所から排出される総量によって処分場及び輸送船の規模、費用を決定。
○費用算出の根拠
 以下の事項から処分場の概略設計に基づいた資材費、人件費を算出。
 ・埋設方法
 六ヶ所低レベル廃棄物埋設センターでの実績、原子力委員会における検討結果。
 ・輸送に係る設備台数、取得回数
 低レベル放射性廃棄物等の輸送実績
 ・埋設工事に係る施設や設備台数・個数・取得回数
 六ヶ所低レベル廃棄物埋設センターにおける実績
2.3.2 発電所1基当たりの処理処分費用の算出
 上記の標準的な工程及び廃棄物の発生量の考え方に基づき、以下のとおり発電所の規模別(大中小)、炉型別に処理・処分費用を算定。
(1)処理・検査・構内輸送について、発電所1基当たりの費用を算出。
(2)構外輸送・処分について、各レベルの廃棄物1m3当たりの単価を算出。
(3)発電所規模及び炉型に応じた廃棄物量を求め、構外輸送・処分費用を算出。
(4)以上を合計し、発電所1基分の処理・処分費用を算出。
2.3.3 試算結果
 110万kW級軽水炉の解体放射性廃棄物の処理・処分費用の工程毎の試算結果を 表4 に、規模別の処理処分費用を表5に示す。
2.4 近似式による算定
2.4.1 近似式を求める上での各工程における費用の性格
(1)処理・検査・構内輸送
○ 各工程における人日数等は、発電所の構造や規模によって左右される。人日等は、解体放射性廃棄物の処理量に相関していると考えられ、関係式を近似法によって求める。
○ 検査機器などの購入費は固定費であり、発電所の規模等によって左右されない。
 したがって、定数項となる。
(2)構外輸送・処分
○ 全国の発電所から排出される各レベルの解体放射性廃棄物の量について、構外輸送・処分の総費用を算出し、各レベルの解体放射性廃棄物の総量で除することによって処分単価が求められる。
2.4.2 具体的な近似法
 上記の費用の性格を踏まえ、以下の2つの近似法について検討した。
(1)物量一次近似法[1]
○ 処理・検査・構内輸送費用については、発電所の種別に解体放射性廃棄物量と費用との関係を一次式で近似。
○ 構外輸送・処分については近似式を用いず、発電所の種別に各レベルの解体放射性廃棄物の処分単価に解体放射性廃棄物の量を掛け合わせる方法を採用(個別積算法と同様)。
 解体放射性廃棄物の処理処分費用
 =処理費用の物量一次近似式+Σ(各区分の輸送処分単価)×(各区分の物量)
 =(α×Q+β)+(A×Q1+B×Q2+C×Q3)
 ここで、
 Q :解体時(解体後除染前)の放射性廃棄物量(m3
 Q1:高βγ低レベル放射性廃棄物量(m3
 Q2:低レベル放射性廃棄物量(m3
 Q3:極低レベル放射性廃棄物量(m3
 各係数等を求めると、
 BWRにおける解体放射性廃棄物の処理処分費用(億円)
 =(7.80×10−4×Q+2.02×10)
 +2.18×10−1×Q1+3.7×10−2×Q2+9.0×10−3×Q3
 PWRにおける解体放射性廃棄物の処理処分費用(億円)
 =(1.03×10−3×Q+2.11×10)
 +2.18×10−1×Q1+3.7×10−2×Q2+9.0×10−3×Q3
○ 算定結果
 上記算定式による算定結果と、個別積算法による試算結果を比較すると、 表6 のとおり、誤差は0〜1%となった。
(2)物量一次近似法[2]
○ 発電所の種別に、すべての工程について廃棄物量と費用との関係を一次式で近似する。
 放射性廃棄物の処理処分費用
 =処理・検査・構内輸送・構外輸送・処分の物量一次近似式=γ×Q+δ
 ここで、
 Q :解体時(解体後除染前)の放射性廃棄物量(m3
 各係数を求めると、
 BWRにおける放射性廃棄物の処理処分費用(億円)
  =4.73×10−3×Q+6.88×10
 PWRにおける放射性廃棄物の処理処分費用(億円)
 =2.85×10−2×Q+3.77×10
○ 算定結果
 上記算定式による算定結果と、個別積算による試算結果を比較すると、表7のとおり1〜9%の誤差となり、物量一次近似法[1]に比較して誤差がやや大きくなった。
<図/表>
表1 解体に伴い発生する放射性廃棄物発生量(110万kW級発電所1基あたりの発生量)
表2 解体に伴い発生する放射性廃棄物発生量(80万kW級発電所1基あたりの発生量)
表3 解体に伴い発生する放射性廃棄物発生量(50万kW級発電所1基あたりの発生量)
表4 解体放射性廃棄物の工程毎の処理・処分費用試算値
表5 炉型、プラントの規模別の試算値のまとめ
表6 個別積算法による試算結果と物量一次近似法[1]による算定結果の比較
表7 個別積算法による試算結果と物量一次近似法[2]による算定結果の比較
図1 解体後の除染区分範囲(対象)
図2 BWR原子力発電施設のレベル区分例
図3 PWR原子力発電施設のレベル区分例

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<関連タイトル>
放射性廃棄物 (05-01-01-01)
原子力施設の廃止によって発生する大量の放射性廃棄物の処理処分対策 (05-01-04-06)
原子力発電所の廃止措置費用評価 (05-02-01-02)

<参考文献>
(1)(社)日本原子力産業会議:原子力発電所の解体廃棄物(H10.8.28付総合エネルギー調査会・原子力部会資料)、原産マンスリー、No.34(1998年9月)、p.27-73
(2)上村 雅一:わが国商業用原子力発電所の廃止措置の廃止措置のあり方、エネルギーレビュー(1985年9月)
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