<大項目> 原子力発電
<中項目> 原子力発電所の事故・故障
<小項目> わが国の原子力発電所の事故・故障・トラブル
<タイトル>
関電美浜発電所3号機二次系配管破損事故について (02-07-02-23)

<概要>
 平成16年(2004年)8月9日、関西電力(株)美浜発電所3号機において、15時22分に中央制御室にある「火災報知器動作」警報等が発信した。運転員がタービン建屋内の点検を実施した結果、タービン建屋2階の脱気器の天井付近にある第4低圧給水加熱器から脱気器への給水ラインであるA系の復水配管に破口を確認した。事故発生当時、関西電力(株)および協力企業の社員計105名が定期検査の準備作業等を行っており、うち、5名が死亡、6名が負傷した。
 破口から流出した水量は約885トン。破損した配管は、最も薄いところで0.4mmであった。関西電力(株)では、この配管は減肉管理リストからもれていた。原子力安全・保安院は減肉管理の実施状況を精査し、再発防止対策の具体化に際しての必要な要件を提示した。関西電力(株)は「美浜3号機事故 再発防止に係る行動計画」を提出した。関西電力(株)では、2月上旬頃には経済産業省の最終検査を受けて、3号機の本格運転を再開する予定である。
(注:東北地方太平洋沖地震(2011年3月11日)に伴う福島第一原発事故を契機に原子力安全規制の体制が抜本的に改革され、原子力安全委員会および原子力安全・保安院は2012年9月18日に廃止、新たに安全規制を一元的に担う原子力規制委員会が2012年9月19日に発足した。)
<更新年月>
2007年02月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
I.事故の経過
 平成16年(2004年)8月9日、関西電力(株)美浜発電所3号機において、定格熱出力で運転中、15時22分に中央制御室にある「火災報知器動作」警報等が発信した。運転員は、警報動作箇所がタービン建屋2階であることを把握し、現場を確認したところ、建屋内に蒸気が充満していたため、二次系配管から蒸気又は高温水が漏えいしている可能性が高いと判断し、15時26分から緊急負荷降下を開始した。15時27分当直運転員が現場で倒れている被災者を発見し、中央制御室を経由して所長室長は救急車の出動を要請した。15時28分、「3A SG給水<蒸気流量不一致トリップ」警報が発信し、原子炉、続いてタービンが自動停止した(詳細は表1)。運転員がタービン建屋内の点検を実施した結果、タービン建屋2階の脱気器の天井付近にある第4低圧給水加熱器から脱気器への給水ラインであるA系の復水配管に破口を確認した。
 当該号機においては、平成16年(2004年)8月14日から第21回定期検査が計画されており、タービン建屋では、事故発生当時、関西電力(株)の社員および協力企業の社員計105名が定期検査の準備作業等を行っていた。このうち、破損したA系復水配管付近で作業していた作業員が、破口部から流出した蒸気および高温水により被災し、5名が死亡、6名が負傷した。このとき、関西電力(株)社員および協力会社で倒れている被災者を順次タービン建屋から建屋外へ運び出した。被災者11名のうち、8名は、救急車にて市立敦賀病院に搬送し、他の3名は国立福井病院に搬送した(表2)。
II.破損した配管の状況
 復水配管流量計オリフィスの下流部で大きな破口が確認された。蒸気として流出した水量は約885トンと考えられる。破損した配管は、設計上は4.7mmの厚さが必要とされているが、昭和57年(1982年)のプラント運転開始時に10mm(公称)あった厚さが、警察の立会いの下、関西電力(株)が測定した結果によれば、配管は最も薄いところで0.4mmであった(図1図2参照)。
1. 配管の減肉管理指針
 わが国では、昭和60年(1985年)度以降プラントの配管の減肉傾向把握のための点検計画が進められていたが、昭和61年(1986年)12月9日起きた米国サリー原子力発電所2号機の配管破断事故が発生し、この原因として配管の減肉が指摘された。PWRプラント事業者は平成2年(1990年)5月PWR二次系配管の減肉に対する管理方法を取りまとめ当時の資源エネルギー庁公益事業部に届け出、この指針に従って二次系配管の減肉検査を実施している。BWRプラント事業者は、各社独自で点検要領を定め、減肉検査を計画的に実施している(表3参照)。
2.事故発生部位の配管の減肉管理の状況
 関西電力(株)では、二次系の配管については、平成2年(1990年)に「原子力設備二次系配管肉厚の管理指針(PWR)」を策定し、その後配管の減肉が予想される部位などについて、スケルトン図や点検管理票といった点検リストを用いて計画的に肉厚を測定し、減肉が進んだものは取替えてきた。しかし破損した配管の部位は、要管理箇所が当初の点検リストから欠落し、かつ、事故に至るまで修正できなかったことから、事故発生まで肉厚測定を実施していなかった。
III.原子力安全・保安院の対応
 原子力安全・保安院は、事故発生後、直ちに保安院審議官を現地に派遣し、現地対策本部を設置し、事故後の対応に当たった。 また、翌10日には、中川経済産業大臣が現地を視察した。また、総合資源エネルギー調査会原子力安全・保安部会原子炉安全小委員会を開催し、関西電力(株)美浜発電所3号機において発生した二次系配管の破損事故について調査・検討を進めるため、美浜発電所3号機二次系配管破損事故調査委員会を設置した。調査委員会は直ちに2名の委員を現地に派遣するとともに、8月11日に第1回の調査委員会を開催した。同日、原子力発電所および一定規模以上の火力発電所を設置する事業者に対し、配管の肉厚管理の実施状況を報告するよう指示するとともに、8月13日には、美浜発電所への立入検査を実施し、破損部の調査および発電所関係者からの事情聴取を行った。さらに、8月30日に当該破損箇所の保守点検を行った事業者に対して、報告徴収を行った。(注:原子力安全・保安院は2012年9月18日に廃止され、原子力規制委員会の事務局として2012年9月19日に発足した原子力規制庁がその役割を継承している。)
 このような調査・検討を踏まえ、保安院として、平成16年(2004年)9月27日、検討結果の中間的な取りまとめとして「関西電力株式会社美浜発電所3号機二次系配管破損事故に関する中間とりまとめ」を公表した。
1.配管破損メカニズム
 配管は炭素鋼と呼ばれる材質でできており、中を流れる水の機械的作用による浸食と化学的作用による腐食との相互作用によって起きる減肉現象(エロージョン/コロージョン)が進展。配管の厚みが徐々に薄くなり、強度が不足し、内圧(約10気圧)により破損したものと推定した。
2.事故発生部位の配管の減肉管理の状況
 破損事故の発生した部位は、関西電力(株)が平成2年(1990年)に策定した「原子力設備二次系配管肉厚の管理指針(PWR)」に照らし、肉厚の測定等の減肉管理を行うべき対象であったが、平成2年(1990年)に三菱重工業(株)がPWR管理指針に基づく点検対象リストを作成した際、既に記載から漏れていた。
 関西電力(株)は、8月18日付けで、「美浜発電所3号機他の計4機のスチームコンバータ系配管において4箇所の減肉管理を行っていなかった。また、高浜発電所3号機等3機で合計11箇所が点検対象から漏れていた。」と報告した。
 保安院としては、この報告の妥当性を検証するとともに、関西電力(株)とは別に、過去の点検記録の確認等を行った。同機を含めて計4機のスチームコンバータ加熱蒸気管関係の4箇所について、これまでに減肉管理が行われていなかったことを確認した。また、同一仕様プラントの測定結果からの推定によって管理していると主張する11箇所は、報告徴収指示以前には点検対象とされておらず、実際にも点検されていないことを確認した。
3.美浜発電所3号機以外の原子炉に係る配管の減肉管理の状況
 関西電力(株)以外の原子力発電所においては、調査を行った範囲において、減肉管理の漏れはなく、全体としては、事業者の点検は適切に行われていた。これらの結論を出すに当たり、保安院は、現地の原子力保安検査官の抜き取りによる資料確認や現場立会い等を通じて、事業者からの点検状況の報告を検証した(表4参照)。
4.当面の対応策
 この時点で考えられる国や事業者等の当面の対応策としては以下の事項を挙げている。
定期事業者検査における配管肉厚管理の検証:二次系配管は定期事業者検査の対象となっている。今回の事案を踏まえ、当該規定を明確化し、事業者へ周知させ、保安検査の際に、実施方針および実施状況を確認していくこととする。また、定期安全管理審査の際にも、事業者が行う定期事業者検査の実施体制を確認していくべきである。
・肉厚管理規格:日本機械学会(JSME)が策定中の発電用設備の配管肉厚管理手法に関する規格安全規制に活用すべく、速やかに、技術評価を行う。
・管理システム構築:事業者には、すべての定期事業者検査対象設備の点検頻度、時期、方法、メンテナンス実績等を適切な外注管理の下に体系的に管理し、点検リストの管理者を設置、事業者と協力企業との間でデータ管理のルールを策定することなどが求められる。実効的な保守管理を行うための体系的な管理システムを早急に構築することが必要である。
・火力発電所の配管の肉厚検査を定期事業者検査の対象とすることを検討
・BWR配管に係る減肉の管理指針の取りまとめ
5.行政的措置
 保安院は、平成16年(2004年)9月27日、関西電力(株)に対し、経済産業大臣名で
i)厳重注意文書(「再発防止対策に関する報告書」の平成16年(2004年)度内の提出を要請)、
ii)美浜発電所3号機に対する「技術基準適合命令」(3号機使用の一時停止)、
iii)「定期安全管理審査の評定結果の格下げ」を発出し、関西電力(株)に対する各種検査(審査)を特別に厳格に実施することとした。
 また、事業者に求められている再発防止策を実行するよう、他の電力会社を指導し、その対応を保安院として随時確認することとした。
IV.関西電力株式会社美浜発電所3号機二次系配管破損事故について(最終報告書)
 調査委員会ではその後も「中間とりまとめで」指摘された事項に対する調査・検討がなされ、平成17年(2005年)3月1日には、関西電力(株)および三菱重工業株式会社から提出された報告書についても検討が行われた。これを元に平成17年(2005年)3月30日に、最終報告書を取りまとめた。主に以下の項目が附加されている。
1.配管破損に関する技術的検討
 独立行政法人原子力安全基盤機構(JNES) および日本原子力研究所 (現:日本原子力研究開発機構)の協力を得て、破損箇所の金属調査、配管流況解析、配管破損挙動解析などの調査結果を加えて、配管破損に関する技術的検討結果として整理した。破口部の状況と配管内面の鱗片状の模様が明らかにされている(図3図4図5参照)。
2.配管の肉厚管理に関する検討
 「PWR管理指針」の概要を表5に示す。今回PWR各プラントで測定した減肉に関するデータを用いて「PWR管理指針」の妥当性について、以下のように検討を行った。
i)主要な配管の測定箇所と減肉傾向:全国の原子力発電所のこれまでの点検によって得られた実績減肉率から、初期設定減肉率は概ね妥当なものと評価される(表6)。
ii)サンプリング箇所の選定:今回調査した結果、全体の傾向として、「その他の系統」とされているサンプリング箇所の減肉傾向は、サンプリングによる管理で問題ないことを示している。しかし、一部の箇所については、注意を要する。
iii)減肉の測定範囲と測定ポイント:調査の結果、減肉が著しくなっている箇所は2×Dの範囲内となっている。また、測定ポイントは、測定ピッチを細かくして詳細測定を行うという運用が行われている。関電以外の不適切な減肉管理事例を表7に示す。
 今後の同指針の見直し作業の中で、詳細な測定手法も指針に追加するなどして、実際の測定手法を指針に適切に反映すべきである。
3. 関西電力(株)および三菱重工業(株)の原因究明および再発防止対策についての評価
 関西電力(株)の社内調査は、専ら点検リスト漏れに関する調査に焦点が当てられ、必ずしも十分とは言えなかった。本年2月になって、従来の調査に加え、原子力事業部門から独立した「事故検証委員会」が匿名で現場における保守管理の実態を調査するなど、より適切な原因把握ができる調査が行われた。その過程において、平成7年(1995年)前後から現在に至るまで、技術基準を独自に解釈して、補修を先送りするなど、技術基準不適合が常態化していたことが判明した(表8)。
 保安院は、再発防止対策を具体化させるよう、平成17年(2005年)3月10日に関西電力(株)に、5項目からなる「再発防止対策の具体化に際しての必要な要件」を示した(表9-1表9-2)。
 関西電力(株)は、これを受けて3月25日に「美浜3号機事故再発防止に係る行動計画」(以下「行動計画」という。)を保安院に提出した。関西電力(株)社長自らが、安全の確保が最も優先することの宣言をしている。「行動計画」は、国民、社会に対して具体的な再発防止を宣言するものであるから、その適切な履行が確認されなければならない。
 三菱重工業(株)は、平成17年(2005年)3月1日に同社の再発防止に関する報告書を、さらに、3月23日に具体的な再発防止対策を示した「関西電力株式会社美浜発電所3号機二次系配管破損事故に関する追加報告書」を保安院に提出した。保安院としては、こうした三菱重工業(株)が挙げた各種対策を同社が着実に実施することを注視していく考えである。
原子力安全委員会の対応
 原子力安全委員会は、事故発生当日に臨時会議を開催し、保安院から発生状況等の報告を受け、8月11日には、現地調査を行い、事情聴取をした。8月13日には原子炉事故・故障分析評価専門部会を開催し、「美浜発電所3号機二次系配管事故検討分科会」の設置を決定した。10月6日、分科会第4回会合で、保安院の調査委員会が9月27日にまとめた「中間とりまとめ」とこれを受けた保安院の対応について報告を受けた。また、分科会は平成17年(2005年)4月5日に保安院から、最終的な調査報告書を受けた。平成17年(2005年)4月28日、関西電力株式会社美浜発電所3号機二次系配管破損事故について(最終報告書)を了承した。(注:原子力安全委員会及び原子力安全・保安院は2012年9月18日に廃止、新たに安全規制を一元的に担う原子力規制委員会が2012年9月19日に発足した。)
 関西電力(株)では、平成19年(2007年)1月5日美浜発電所3号機の原子炉起動および調整運転の開始についてプレス発表した。平成19年(2007年)1月10日に原子炉を起動、同日臨界となり、1月11日頃には定期検査の最終段階である調整運転を開始し、2月上旬頃には経済産業省の最終検査を受けて、本格運転を再開する予定という。
 平成16年(2004年)の関西電力美浜原発3号機(福井県美浜町)配管破損事故で、福井県警敦賀署の捜査本部は、安全管理の最高責任者だった関電若狭支社(当時)の支社長(現・原子力事業本部副事業本部長)や、現場の補修担当者ら計約10人を業務上過失致死傷容疑で、月内にも書類送検する方針を固めた。という。
<図/表>
表1 美浜発電所3号機原子炉自動停止に関する時系列
表2 初動対応、関係機関への連絡、被災者の救出に係る対応(時系列)
表3 わが国における配管減肉に関する対応の経緯
表4 原子力安全・保安院による電気事業者の配管肉厚管理状況の検証結果
表5 「PWR管理指針」の概要
表6 主要点検系統
表7 不適切なPWR管理指針の適用事例(関西電力(株)以外の事業者)
表8 余寿命1年を割り込みながら定期検査で適切な補修を行わなかった件数
表9-1 再発防止対策の具体化に際しての必要な要件について(その1)
表9-2 再発防止対策の具体化に際しての必要な要件について(その2)
図1 美浜発電所3号機主要系統と破損位置
図2 配管破損個所の概要
図3 破口部き裂近傍の肉厚分布および破面の状況
図4 配管内面観察結果
図5 余寿命設定要領

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<関連タイトル>
原子力プラント流動高温水中における炭素鋼腐食 (02-08-01-10)
日本におけるPWR原子力発電所の主要な事故・故障・トラブル(2005年度まで) (02-07-01-03)

<参考文献>
(1)原子力安全・保安院:美浜発電所3号機二次系配管事故調査委員会(第一回)配布資料、資料1-1(平成16年8月11日)
(2)原子力安全・保安院:美浜発電所3号機二次系配管事故調査委員会(第一回)配布資料、資料1-3-2(平成16年8月11日)
(3)原子力安全・保安院:関西電力株式会社美浜発電所3号機二次系配管破損事故に関する中間とりまとめ(平成16年9月)
(4)原子力安全・保安院:関西電力株式会社美浜発電所3号機二次系配管破損事故に関する中間とりまとめ、添付資料(平成16年9月)
(5)原子力安全・保安院:関西電力株式会社美浜発電所3号機二次系配管破損事故について(最終報告書)(平成17年3月30日)
(6)原子力安全・保安院:関西電力株式会社美浜発電所3号機二次系配管破損事故について(最終報告書)、添付資料(平成17年3月30日)
(7)関西電力株式会社:美浜発電所3号機事故について(平成17年5月11日)
(8)関西電力株式会社ホームページ:関西電力からのお知らせ、美浜発電所3号機事故について、美浜発電所3号機の原子炉起動および調整運転の開始について(2007年1月5日)
(9)原子力安全委員会:平成16年版 原子力安全白書 第2編 第2章 第1節、関西電力(株)美浜発電所3号機二次系配管事故について
(10)原子力安全委員会ホームページ:分野別の取組みについて、事故・故障トラブル関連、関西電力株式会社美浜発電所3号機二次系配管事故(2006年9月28日)
(11)関電・美浜原発11人死傷事故 元支社長ら書類送検へ
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