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<概要>
 原子力発電所等の運転・保守情報を最大限に活用して一層の安全確保に努めるとともに、検査制度等の改善を図ることを目指し、民間の機関として2005年4月に日本原子力技術協会・情報分析部が、また、国の機関として2003年10月に(独)原子力安全基盤機構・安全情報部が設立された。他方、原子力施設の運転管理に関する情報として、従来は、経済産業省原子力安全・保安院原子力安全技術基盤課(編)、火力原子力発電技術協会(発行)による原子力発電所のみの年報が刊行されていたが、中央省庁再編成にともない、研究開発段階にある発電用原子炉、製錬事業、加工事業、使用済燃料貯蔵事業、再処理事業および廃棄事業の情報も加えた原子力施設運転管理年報が刊行されるようになった。

(注)東北地方太平洋沖地震(2011年3月11日)に伴う福島第一原発事故を契機に原子力安全規制の体制が抜本的に改革され、新たな規制行政組織として原子力規制委員会が2012年9月19日に発足したため、本データに記載されている原子力技術情報に関する収集・管理や活用方法についても見直しや追加が行われる可能性がある。なお、原子力安全委員会および原子力安全・保安院は上記の規制組織改革に伴って廃止された。
<更新年月>
2009年01月   

<本文>
 原子力発電所等の運転・保守情報を最大限に活用して一層の安全確保に努めるとともに、検査制度等の改善を図ることを目指し、民間の機関として2005年4月に日本原子力技術協会・情報分析部が、また、2003年10月に国の機関として(独)原子力安全基盤機構・安全情報部が設立された。わが国における原子力関係機関の役割分担の考え方を表1に示す。
1.日本原子力技術協会・情報分析部
 日本原子力技術協会・情報分析部は、電力中央研究所・原子力情報センターにおけるトラブル情報の収集・分析・活用に係る活動を継承・発展させ、下記に示すように、事故・故障情報の収集・分析・評価を行うとともに、勧告・注意等の実施、運転管理や設備保全活動への情報活用に関する活動を行っている。また、事業者の品質保証に係る自主保安活動への協力・支援およびRCA(根本原因分析)の推進・普及活動を行っている(図1)。
1)情報の収集・伝達
 国内外の原子力施設(原子力発電所、日本原燃の燃料サイクル施設)の運転経験情報を収集・整理し、データベース化するとともに事業者への迅速な伝達を図っている(これまでの実績は表2参照)。
2)情報の分析・評価
 事故や故障の未然防止、再発防止に役立てるため、国内外の運転経験情報の分析・評価を行うとともに分析結果に基づく勧告等文書の発行を行っている(これまでの実績は表2参照)。
3)情報の活用
 原子力施設の運転経験情報は「ニューシア」(表3)で一般に公開するとともに、事業者間で共有し、活用されている。
4)国際連携の推進
 INPOやWANOの会員として、原子力発電情報の交換のみならず、技術交流や人的交流を含め、国際交流を推進している。
2.(独)原子力安全基盤機構・安全情報部
 (独)原子力安全基盤機構・安全情報部では、国際的なネットワークも活用して国内外の安全確保に関する情報を蓄積し、データベースを構築するとともに、情報の分析を行い、安全確保の方策を検討し、国に提言している。
1)国内外の原子力施設に関する運転管理上の情報を活用
 国内外で生じた故障や、トラブル等の情報を収集分析するために、国際的なネットワークも活用して国内外の安全確保に関する情報を蓄積し、データベースを構築するとともに、情報の分析を行い、安全確保のために取るべき措置について検討し、国に提言等を行っている。
2)安全確保のための情報の蓄積、提供から国際協力まで(情報の流れは図2参照)
(情報の収集、整理)
 国内外のトラブル情報、プラント運転実績、安全規制情報などを国際的なネットワークも活用して収集するとともに、データベースを構築し、トラブルの原因究明のための分析・評価を行って、今後の安全確保の対策を国に提言している。
(情報の分析・提供)
○トラブル情報の分析
 構築したデータベースを検索・活用できるようにするため、国内でトラブルが発生した時は、類似トラブル情報の検索・提供を行うとともに、トラブル情報の統計分析、重要事象の分析評価なども行っている。また、国内で発生したトラブルについて、国際原子力事象評価尺度(INES)に基づき国が行う評価を、技術的に支援している。
○原子力発電プラント特性の分析・評価
 運転実績、定期検査線量放射性廃棄物などの運転管理データに関して統計的に分析・評価を行っている。また、発電所における線量低減を国際的に推進するための職業被ばく情報システム(ISOE)のアジア技術センターとしての情報の提供を行っている。
○原子力安全・保安院の活動を支援
 原子力安全・保安院に対して、保安規定解説書の作成、海外の最新の規制情報に関する調査・検討、各国の高経年化対策に関する情報収集等の活動を通じて支援を行っている。(注:原子力安全・保安院は2012年9月18日に廃止され、原子力規制委員会の事務局として2012年9月19日に発足した原子力規制庁がその役割を継承している。 また、(独)原子力安全基盤機構の機能も原子力規制庁の所管となる。)
○情報の提供
 収集、整理した各種情報は、国内外の関連機関等にホームページや運転管理年報等で提供している。
3.原子力施設運転管理年報
 原子力施設の運転管理に関する情報として、従来は、経済産業省原子力安全・保安院原子力安全技術基盤課(編)、火力原子力発電技術協会(発行)による原子力発電所のみの年報が刊行されていたが、中央省庁再編成にともない、原子力施設の規制行政の概要並びに研究開発段階炉、製錬、加工、貯蔵、再処理および廃棄施設に関する諸データを取りまとめた原子力施設運転管理年報を(独)原子力安全基盤機構が発行するようになった。
 この新しい年報では、わが国の原子力発電所に関して、発電所一覧、運転状況、定期検査の状況、定期安全管理審査の状況、保安検査の状況、工事計画・燃料体設計の認可および検査の状況、運転計画、運転管理の状況に関するデータ、製錬・加工・貯蔵・再処理および廃棄施設に関して、施設の一覧、稼動状況等および核燃料物質等の運搬物確認実績、施設定期検査の状況(製錬を除く)、保安検査の状況、加工・再処理および廃棄施設の設計・工事の方法の認可および検査の状況(製錬を除く)に関するデータ、トラブルの状況、トラブルの評価状況、放射線管理等報告および安全規制行政に関する各情報を提供している。
(前回更新:2004年2月)
<図/表>
表1 国内関係機関の果たすべき役割
表1  国内関係機関の果たすべき役割
表2 トラブル情報の分析結果集計状況
表2  トラブル情報の分析結果集計状況
表3 原子力施設情報公開ライブラリー「ニューシア」
表3  原子力施設情報公開ライブラリー「ニューシア」
図1 日本原子力技術協会における国内外の原子力発電所関連トラブル情報の収集・分析・活用の流れ
図1  日本原子力技術協会における国内外の原子力発電所関連トラブル情報の収集・分析・活用の流れ
図2 原子力安全基盤機構における安全情報データベースの流れ
図2  原子力安全基盤機構における安全情報データベースの流れ

<関連タイトル>
原子力発電運転協会(INPO) (13-01-03-10)
世界原子力発電事業者協会(WANO) (13-01-03-15)
原子力発電技術機構 (13-02-01-06)
電力中央研究所 (13-02-02-03)

<参考文献>
(1)電気事業連合会:http://www.fepc.or.jp/library/index.html
(2)日本原子力研究開発機構・国際原子力事象尺度(INES):
(3)経済産業省原子力安全・保安院原子力安全技術基盤課(編):平成15年版原子力施設運転管理年報、火力原子力発電技術協会(2004年1月)
(4)日本原子力技術協会ホームページ:情報分析部、http://www.gengikyo.jp/katsudo/JohoBunsekiTop.html
(5)原子力安全基盤機構ホームページ:安全情報部
(6)原子力安全委員会、原子力事故・故障分析評価専門部会:原子力施設の事故・故障情報の活用のあり方について(平成19年3月30日)
(7)鶴田忠和:日本原子力技術協会における事故・故障等情報活用の取組について(平成18年3月1日)
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