<大項目> エネルギーと地球環境
<中項目> 日本の新エネルギー
<小項目> 新エネルギー技術開発
<タイトル>
高効率ガスタ−ビン (01-05-02-07)

<概要>
 わが国においては、総エネルギー需要の約42%が電気という形で消費されているが、化石燃料等を燃焼して得られる熱エネルギーを電気に変換する変換効率は約40%以下である。この値はほぼ技術的限界に近く、これ以上大きな向上は望めないと思われるが、ガスタービン発電と蒸気タービン発電とを組み合わせた複合発電システムが実現できれば、総合効率55%以上を達成することができる。そのためには、まず高効率ガスタービンの開発が不可欠であり、通産省工業技術院(現独立行政法人産業技術総合研究所)では、ムーンライト計画において1978年から1993年度の間に、高効率ガスタービンの開発と複合発電システムの開発が行われた。その結果、タービン入口温度約1,300℃、総合熱効率52.3%、出力9.3万kWを達成し、要素技術の蓄積と、その後の開発の見通しが得られた。2000年12月に産業技術審議会評価部会は大型省エネルギー技術研究開発制度「高効率ガスタービン」追跡評価報告書を提出し、波及効果やプロジェクトの評価をまとめた。現在、省エネルギー技術戦略の一環として、経済産業省の補助事業「高効率ガスタービン実用化要素技術開発」が行われている。また、これまでの研究開発を踏まえて製造された高効率ガスタービンの実機への適用が行われている。
<更新年月>
2006年02月   

<本文>
 近年耐熱合金の開発や冷却技術の進展によりガスタービンの急速な高温・高効率化が実現し、ガスタービンと蒸気タービンとを組み合わせたLNG複合発電の採用によって火力発電の熱効率は飛躍的に向上している。
1.ガスタービン発電システムと複合発電システム.
 わが国においては、総エネルギー需要の約42%(2001年度)が電気という形で消費されている。これは、電気が使い易く安全で且つ利用形態が広いためで、今後ともこの傾向は強まるものと予想される。したがって、省エネルギーを進めるためには、石油、石炭、天然ガス等の一次エネルギーを電気に変換する火力発電所の熱効率を向上させることが最も有効な手段の一つとなる。しかし、現在のボイラーと蒸気タービンによる火力発電所の熱効率は高くても約40%であり、しかも、この値はほぼ技術的限界に近くこれ以上大きな向上は望めないと考えられる。
 これに対して、ガスタービン発電と蒸気タービン発電とを組み合わせた複合発電システムを採用すれば、総合発電効率55%以上を達成することができる。さらに、ガスタービンの高温排気または蒸気タービンの抽排気を用いて集中冷暖房や熱供給等を行うことによる熱のカスケード利用(多段利用)を行えば、最適なトータルエネルギー供給システムを確立することが可能となり、省エネルギーを一段と進めることができると考えられる。
 最も単純なガスタービンによる発電システムは、図1に示すように、圧縮機、燃焼器、タービンおよび発電機(負荷)より成る。圧縮機によって圧縮された高圧空気は、燃焼器で燃料を燃焼させることにより高温高圧のガスとなる。このガスでタービンを回転させ発電機を駆動することによって電気を取り出すシステムである。一方、複合発電システムでは、タービンを回した後の高温排ガスを排熱回収ボイラーに導き、ここで発生した蒸気で蒸気タービンを回して発電機を駆動する方式である。
 ガスタービン単独で発電するためにも、複合発電システムで発電するためにも、高効率のガスタービンの開発が不可欠である。1978年から1993年度まで通産省工業技術院(現独立行政法人産業技術総合研究所)で行われたムーンライト計画では、高効率ガスタービンの開発と複合発電システムの開発が進められた。
2.高効率ガスタービンの開発
 ムーンライト計画で行われた高効率ガスタービンの開発プロジェクト(1978年から1987年度まで)では、ガスタービン入口温度の高温化、タービン効率および圧縮機効率の改善等を達成するため以下の研究開発が行われた。図2に高効率ガスタービンの構造図を示す。
 (1)超高温耐熱部材の研究開発
 高温高圧で作動するタービンや燃焼器に使用する耐熱材料の開発は、効率向上の決め手と言っても過言ではなく、超耐熱合金と超耐熱セラミックの開発およびタービン翼や燃焼器の金属表面を被覆する溶射技術の開発が行われた。
 (2)ガスタービン要素技術の研究開発
 ガスタービンの高効率化には、入口温度を上げることが最も効果が大きい。そのため、タービン翼の冷却技術の開発、高温高圧燃焼器の開発、空気圧縮機の開発、制御技術の開発等が行われた。
 (3)高効率ガスタービンの試作運転研究
 最高水準の技術を集積したパイロットプラントのガスタービンを製作し、1983年度から性能・信頼性・効率等に関する試験が行われた。その結果、入口温度約1,300℃、総合熱効率52.3%、出力9.3万kWを達成することができた。パイロットプラントの仕様および概略構成を図3に示す。
 パイロットプラントは、2軸再熱型中間冷却器付きと呼ばれるもので、構造はやや複雑であるが、熱効率が高い。空気は、発電機の左側にある低圧圧縮機で圧縮された後左端の高圧圧縮機に導かれ、再び圧縮された後、高圧燃焼器で燃料の供給を受け燃焼し高圧タービンに入る。続いて、中圧タービンを通り再び再燃燃焼器で燃焼し、低圧タービンに入る。低圧タービンを出た燃焼ガスは、蒸気発生器で蒸気を発生した後煙突から大気中に排気される。発生した蒸気も蒸気タービンに導かれる。ガスタービンおよび蒸気タービンにより発電機が駆動されて発電が行われる。
 (4)環境保全実証調査
 高効率ガスタービン発電設備の脱硝・騒音防止等の公害防止施設の能力を実証するための脱硝装置は、低圧ガスタービンの排気を直接高温(約610℃)の状態で脱硝するもので、過酸化水素、アンモニアによる気相還元方式と触媒による還元方式を採用し、約90%の脱硝効率が得られている。また、消音装置を空気圧縮機の吸込側を低圧ガスタービンの出口に取り付け、騒音対策がとられている。公害防止施設の試験は、東京電力(株)袖ヶ浦発電所で実験された。
3.ガスタービン利用発電システム
 ガスタービンを利用した新発電システムには、次のような方式がある。まず、アドバンスト高湿分空気燃焼ガスタービン(AHAT:Advanced Humid Air Turbine)サイクル発電は、熱サイクルの改良によりガスタービン発電の高効率・低コスト化と低NOX燃焼の実現をねらいとしている。AHATサイクル発電は、構成機器の多くが従来技術を応用して製作できることから、発電効率、運用性、信頼性の実証ならびに商品化のための課題、経済性の見通しを得るための実証的な試験研究段階に入っている。また、クローズドサイクルガスタービンは、発電分野におけるCO2排出量を大きく低減させることをねらい、天然ガスを酸素燃焼することで、窒素酸化物を排出せずに既存のLNG複合発電を上回る発電効率を有し、かつ、システムをクローズド化することにより、CO2を大気に排出しないという新たな高効率ガスタービンである。さらに、夜間の低負荷時の電力で空気を圧縮して地下空洞に貯蔵しておき、昼間の高負荷時にこの貯蔵した圧縮空気を用いて発電を行う新たな負荷平準化システムとして、ACC(Advanced Combined Cycle)併設型CAES(Compressed Air Energy Storage)が利用率の向上と高効率化を目指して考案されている。
4.プロジェクトその後の評価
 サンシャイン計画、ムーンライト計画、ニューサンシャイン計画が実施されたが、終了したプロジェクトである高効率タービンに関して、2000年度経済産業省委託調査報告書がある。また、産業技術審議会評価部会が2000年12月に<大型省エネルギー技術研究開発制度「高効率ガスタービン」追跡評価報告書>を提出し、高効率ガスタービン研究開発プロジェクトについて、評価の実施方法、プロジェクトの概要、追跡調査結果(プロジェクト終了後2000年までの波及効果、今後への提言を含む)、波及効果に対する評価、プロジェクトの評価、等についてまとめた。得られた技術的成果とその後の応用・波及及び実用化状況などについてまとめたものが、図4の高効率ガスタービン開発プロジェクトの技術波及効果として示されている。
5.省エネルギー技術戦略
 2001年6月、総合資源エネルギー調査会省エネルギー部会報告書において、今後の省エネルギー対策のあり方が示された。この報告書は民生・運輸・産業の各部門の横断的な対策として、需要面における課題を抽出し、それを克服するための対応の方向性を示した。その方向性の基本は次のとおりである:1)需要本位の技術戦略、2)省エネルギー技術の開発と普及、3)新たな視点に着目した課題克服技術の方向性提示。
 この技術戦略の一環として、経済産業省の補助事業の一つである「高効率ガスタービン実用化要素技術開発」が2004年度に開始されている。これは省エネルギーおよびCO2削減の観点から電力産業用高効率ガスタービン要素技術の開発を行うもので、2つの開発計画から成る:1)1700℃級ガスタービン要素技術開発:電力産業用の大容量機(25万kW程度、コンバインド出力40万kW)の高効率化のための要素技術開発と成立可能性の調査、2)高湿分空気利用ガスタービン(AHAT)要素技術開発:電力産業の中長期的ニーズに対応する中小容量機(10万kW程度)の高効率化のために、有望とされているAHATガスタービンの要素技術開発および検証機によるシステム確認。これらのガスタービンが商用機に導入された場合の省エネ効果が期待されている。1700℃級ガスタービンの要素技術開発は、文科省、(独)物質材料研究機構、川崎重工等の協力によって実施されている。図5にタービン入口温度とコンバインド熱効率の関係を示す。(参考文献8)
6.高効率ガスタービンの実機への適用
 これまでの研究開発を踏まえて、製造された高効率ガスタービンの実機としての適用が行われている。例えば、H−25ガスタービンを適用した1軸コンバインドサイクル発電設備が五井コーストエナージー社の五井発電所に納入された。これはプラント出力11万2200kW、計画熱効率48.9%(低位発熱量ベース)であり、2003年11月に試運転、2004年6月に営業運転を開始した。計画以上の熱効率が達成されている。(参考文献9)また、東北電力は1500℃級のガスタービン実現に必要な要素技術開発を行い、同社の東新潟火力発電所に1450℃級ガスタービンに適用して熱効率50%以上(高位発熱量ベース)を達成している。(参考文献10)川崎重工は2万kW級高効率ガスタービンを用いたコージェネレーション設備PUC180を製作し、ガスタービンL20Aの性能の確認のため、長期間運転を行っている。(参考文献11)
<図/表>
図1 ガスタービンの構成
図2 高効率ガスタービンの構造
図3 ムーンライト計画で開発された高効率ガスタービンを用いた複合発電システム
図4 高効率ガスタービン開発プロジェクトの技術波及効果
図5 タービン入口温度とコンバインド効率

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<関連タイトル>
ムーンライト計画 (01-05-02-06)
セラミックガスタービン (01-05-02-14)

<参考文献>
(1) 三輪光砂:ガスタービンの基礎と実際、成山堂書店
(2) 省エネルギー、Vol.41、No.1、(1989)
(3) 資源エネルギー庁(監修):1999/2000資源エネルギー年鑑、通産資料調査会(1999年1月)、p755−760
(4) 三巻利夫:ガスタービン利用発電システム、熱効率向上への電中研の挑戦、エネルギー(2002.3)p67−72
(5) 平成12年度経済産業省委託調査報告書:研究開発プロジェクトの技術・産業・社会へのインパクトに関する調査
(6) 産業技術審議会評価部会:大型省エネルギー技術研究開発制度「高効率ガスタービン」追跡評価報告書
(7) 省エネルギー総覧編集委員会、省エネルギー総覧2006−2007、通産資料出版会(株)(2006年1月)p521−610
(8) 塚越敬三他:大型発電用ガスタービンの最新技術動向、三菱重工技報vol.42、No.3、98−103(2005)
(9) 村田英太郎、仲田智将:高効率H−25ガスタービンのコンバインド発電設備への適用とその展開、日立評論 vol.82、No.2、19−24(2005)
(10)東北電力ホームページ:
(11)川崎重工ホームページ:
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