<大項目> エネルギーと地球環境
<中項目> 日本の新エネルギー
<小項目> 再生可能型新エネルギー
<タイトル>
再生可能エネルギーの普及促進策 (01-05-01-11)

<概要>
 先進各国の温室効果ガス排出削減への取り組みやアジアの石油需要増大を背景にした石油需給バランスの逼迫という二つの要因で、再生可能エネルギーの導入が、近年、急速に進みつつある。再生可能エネルギーは、枯渇する化石燃料から得られるエネルギーに対して、自然環境の中で繰り返し起こる現象に伴って得られるエネルギーで、世界的に、風力、太陽光、バイオマスなどに加え、水力や地熱、海洋を含めた形で定義されている。再生可能エネルギーは、化石エネルギーに比べてまだコストが高いものの、上記二つの要因から、たとえ効率向上やコスト低減が不十分なレベルであっても、その世界的市場が今後急速に発展する可能性がある。再生可能エネルギーの普及に向けては、促進制度の導入が重要な鍵になっている。しかも、世界的に見て、促進制度は、昨今、研究開発主体の技術プッシュ型から、経済的インセンティブを伴う需要プル型に大きく変化してきている。ここでは、その促進制度についてまとめる。
<更新年月>
2006年01月   

<本文>
1.普及促進制度の分類
 再生可能エネルギーの導入は、(1)エネルギー供給の安定化、多様化、分散化、(2)地球温暖化対策などをふまえ、最近、急速に進みつつある。しかし、再生可能エネルギーは、化石エネルギーに比べてまだコストが高いため、その普及には、技術開発に加えて、普及促進制度の導入が鍵になっている。近年、再生可能エネルギーの普及促進は、世界的に、研究開発主体の技術プッシュ型から、経済的インセンティブを伴う需要プル型に大きく変化している。普及促進制度を、より強制的か自主的かという軸と、官民の取り組みという軸で分類したものを図1に示す。例えば、再生可能エネルギー設備に対する政府補助金や特別減税といった初期投資への補助から、実績発電量を対象にした経済的インセンティブを与える支援措置へと変化している。経済的インセンティブを与える支援措置としては、1990年にドイツで導入された固定価格制(電力会社が固定価格で買い取る制度)や、同時期に英国で開始された競争入札があり、その後、1990年代後半には、後述するRPSなどの固定枠制が始まった。また、電気事業者による自主的取り組みで余剰電力買い取り制度や、消費者サイドの仕組みであるグリーン電力プログラム(グリーン料金、グリーン証書等)が、日本、欧州、米国で動き出している。以下、日本のRPS法、余剰電力買い取り制度、グリーン電力プログラムの現状と課題について述べる。
2.新エネルギー利用に関する特別措置法[RPS(Renewables Portfolio Standard)法]
 固定枠制度(RPS制度、電気事業者に一定量の新エネルギーを義務付ける制度)は、「電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法」として、2003年度から日本に本格導入された。本制度は、エネルギーの安定的かつ適切な供給を確保するために、新エネルギー等の更なる普及を図ることを目的としており、電気事業者に対して、毎年、その販売電力量に応じた一定割合以上の新エネルギー等から発電される電気の利用を義務付ける制度である。ここで対象となる新エネルギー等とは、風力発電、太陽光発電、バイオマス発電に加えて、出力1000kW以下の流れ込み式水力発電バイナリー式地熱発電(注1)も含む。大型の水力発電は含まない。
 日本のRPS制度の概念図を図2に示す。政府は、利用目標を勘案して、電気事業者に対して、毎年度その販売量電力量に応じて一定割合以上の新エネルギー等電気の利用を義務付ける。新エネルギー等での電気の利用が義務付けられるのは、北海道電力から沖縄電力に至る10の一般電気事業者と、特定電気事業者、特定規模電気事業者(注2)である。以下では、この3種類の電気事業者を総称して電気事業者と言う。
 電気事業者は、上記の義務を履行するため、以下の三つの方法での新エネルギー等電気の入手が可能である。
(1)自ら「新エネルギー等電気」を発電する
(2)他から「新エネルギー等電気」を購入する
(3)他から「新エネルギー等電気相当量」を取得する
 (3)の「新エネルギー等電気相当量」とは、いわゆるクレジットで、新エネルギー等電気の価値を他社から購入することで、実際の電気の利用や、利用目標量の減少にあてることができる。
 電気事業者が正当な理由なく、この義務を履行しない場合には、百万円以下の罰金に処する等の罰則が設けられているが、このような罰則によって、導入促進のインセンティブが大きく働くとは考えにくい。ここでは、義務量(kWh)に対する不履行量(kWh)の度合いに応じた課徴金制度(ペナルティ措置)などの導入がより合理的であると考えられる(参考文献1)。また、現在、上記の電気事業者の中には、化石燃料を多く使用する自家発事業者(自らの発電設備による電力をもっぱら自らの事業所に供給する事業者)は含まれていない。エネルギー転換部門の温暖化排出量において、自家発事業者は約15%を占めており、自家発事業者への義務化も今後の課題である(参考文献2、3)。
 新エネルギー等電気の利用目標は、政府が4年ごとに総合資源エネルギー調査会の意見をもとに当該年度以降8年間の利用目標を定めることになっている。現在の利用目標は、図3に示したように、2010年度(122億kWh/年、予想販売電力量の1.35%に相当)までしか定められておらず、利用目標量が全電力量の1.35%程度では、市場の流動性がほとんど期待できない。また、この利用目標だけでは、電気事業者や発電設備製造事業者は長期的な資金調達計画を立てることが難しい。今後、新エネルギーを中長期的に推進していくには、目標値の向上、および少なくとも2020年ぐらいまでの長期目標設定が必要である。RPS法導入時に予定されていた法の見直しが2005年6月から始まったが、その際には、海外の状況が参考になると考えられる(参考文献4)。
 一方、ここで、新エネルギー等の導入を義務化するということは、量の大小に関わらず、今後、多くの風力発電や太陽光発電などを分散型電源として既存の電力系統に連系して使用していくことを意味する。この義務化を実現するには、各々の発電システムの高性能化および低コスト化技術開発に加え、多くの分散電源を既存電力系統に連系し協調運用していく制度的・技術的連系問題が近々の課題となる。
 なお、ここでは再生可能エネルギーとして水力発電等も含めた。現在、RPS法の対象となっていない大型水力発電等を含んだ「再生可能エネルギー」で考えれば、日本の再生可能エネルギーの利用目標量は、1次エネルギー消費の約6%程度ということになる。
3.余剰電力買い取り制度
 一般電気事業者は、新エネルギーの導入拡大に協力するため、自主的な取り組みとして1992年度より、太陽光発電と風力発電から余剰電力を購入してきた。さらに、1993年度からは熱電併給等の自家用発電、1998年度からは事業を目的とした風力発電(2000kW未満)からも余剰電力を購入してきた。余剰電力の購入単価は、新エネルギーの種別等に基づいて設定され、購入メニューが公表されている。特に、風力(事業用を除く)および太陽光については、一般電気事業者の電力販売価格(電力量料金)と同額で購入しており、一般家庭(時間帯別電灯)の場合、約27円/kWhである。また、事業用風力発電については、長期かつ安定的に購入する事業用風力メニューを設定している。東京電力の例では、15年の長期契約で約11円/kWhとなっており、これは火力燃料費相当の4〜6円/kWhに比べ、非常に割高である。
4.グリーン電力プログラム
 グリーン電力プログラムは、電気の消費者が何らかの形で電気の種類を選んで使っていける仕組みである。RPS制度が電気の供給サイドに対して何らかの義務やインセンティブを与える制度であるのに対して、本プログラムは消費者サイドの自発的取り組みを促す制度で、これも再生可能エネルギーの普及を促進するための一つのプログラムと言える。グリーン電力プログラムを形態から分類すると、図4のように四つに大別される。
 グリーン電力の市場は、例えば、電力証書の契約総額が開始後4年で約25億円に達するなど一定の成長を遂げてきたが、今後の本格的な市場拡大に向けてはいくつかの課題が出てきている。最大の課題は、企業における証書購入費が税務上原則として寄付金扱いで、法人税が課せられているため、一般の環境対策に比較して高コストになっていることである。これは導入量を大きく制約する要因であり、今後は経費扱いできるような措置が必要である。
 また、本プログラムでは、民間事業者が自主的に消費者サイドに対して、再生可能エネルギーのもつ「環境価値」に焦点をあてた商品の開発や取り組みを行なっているため、この取り組みが、供給サイドに向けられたRPS制度と並存できるような仕組み作りも必要である。現状の制度では、グリーン電力証書とRPS制度の「新エネルギー等電気相当量」との2重カウント(2度売り)を避ける措置がとられておらず、これが課題の一つになっている(参考文献5)。
*注1 地熱発電:熱水、蒸気などにより低沸点の媒体(ペンタン)を加熱・沸騰させ、発生した蒸気によりタービンを回転させて発電を行うシステム。
*注2 特定電気事業者、特定規模電気事業者:特定電気事業者は、限定された区域に対し、自らの発電設備や電線路を用いて、電力供給を行う事業者。特定規模電気事業者は、契約電力が50kW以上の大口需要家に対して、一般電気事業者が有する電線路を通じて電力供給を行う事業者(いわゆる小売自由化部門への新規参入者)。
<図/表>
図1 再生可能エネルギー普及促進制度の分類
図2 日本のRPS制度の概要
図3 新エネルギー等電気の利用目標量
図4 グリーン電力プログラムの分類

・図表を一括してダウンロードする場合は ここをクリックして下さい。


<関連タイトル>
新エネルギーの導入と動向 (01-05-01-09)
グリーン電力制度 (01-09-05-20)
日本の新エネルギー導入政策 (01-09-07-01)
新エネ等電気利用法(RPS法) (01-09-07-06)

<参考文献>
(1)(財)日本エネルギー経済研究所:日本における再生可能エネルギー導入の論点、パネルディスカション(2003年8月)
(2)環境省:地球環境・国際環境協力、報告書、平成12年度温室効果ガス削減技術シナリオ策定調査検討会報告書(平成13年3月)、http://www.env.go.jp/earth/report/h12-03/3-4.pdf
(3)(財)日本エネルギー経済研究所:日本における再生可能エネルギー導入策の論点(2003年6月)
(4)大平竜也:再生可能エネルギーの普及促進策と技術課題、科学技術動向、2005年8月号、p.30−41
(5)飯田哲也(編):自然エネルギー市場、築地書館(2005年)
(6)資源エネルギー庁、RPS法ホームページ:http://www.rps.go.jp/RPS/new-contents/top/main.html
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