<解説記事ダウンロード>PDFダウンロード

<概要>
 原子力船「むつ」を廃船にする自民党部会の決定に対して、原子力委員会は1月、今後の原子力船研究開発方針をまとめ、そのなかで「むつ」の重要性を強調し、実験継続が決まった。日本原子力船開発事業団を原研(現日本原子力研究開発機構)に統合するため、原研法が一部改正された。総合エネルギー調査会(現総合資源エネルギー調査会)は、核燃料サイクル事業化計画の見直し作業を始め、自主的な核燃料サイクルの確立に向けての報告書を7月にまとめた。原子力産業会議も、核燃料サイクル・バックエンド開発の進め方の報告書をまとめた。電気事業連合会は4月、核燃料サイクル3施設の立地協力を青森県及び六ケ所村など地元に要請した。このほか、原研の臨界プラズマ試験装置JT-60本体の据付終了(2月)、総合エネルギー調査会の軽水炉の高稼働率化をめざす中間報告(8月)、放射性廃棄物の処分に関する中間報告(8月)などがあった。欧州5か国が1月、商用高速増殖炉の共同建設で長期協力協定を締結した。
<更新年月>
1998年03月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
1.内外の原子力関係の出来事
月日 国内 国外
1984年
(昭和59年)
1/10   欧州5か国、FBRの長期協力協定
1/17 自民党科学技術部会、事実上の原子力船「むつ」廃船を決定  
1/24 原子力委、原子力船研究開発の観点から原子力船「むつ」の重要性強調  
2/3 通産省(現経産省)、混合酸化物(MOX)燃料事業化促進調査を新金属協会に委託  
東京電カ福島第二原発2号、営業運転開始  
2/6 原研(現日本原子力研究開発機構)核融合装置JT‐60本体(トロイダル磁場コイル)据付終了 米技術評価局、原発新発注には大幅な改革が必要と報告
2/8 東京電力福島第一原発3号炉、BWR用高性能燃料の照射試験を開始  
2/14   米厚生省、果実野菜及び香辛料の殺菌に放射線照射承認
2/28   米上院、非核保有国への原子力輸出に関する規制強化法案を可決
3/29 理研、ウランなど重金属の同位体分離用レーザーとして「赤外可変ラマンレーザー」の開発に成功  
3/30   米ユニオン・カーバイド社、オークリッジ原子力施設の運営から撤退。マーチン・マリエッタ社がパデューカの気体拡散工場も含め委託運営(1984/4/1〜)
3月 1983年度のわが国原発の平均設備利用率71.6%に達する  
4/1 原研、仏CEAと軽水炉の冷却材喪失事故共同研究で協力協定結ぶ(ROSA‐4計画)  
4/9   欧州共同トーラス型核融合臨界プラズマ実験装置(JET)完成
4/11 動燃(現日本原子力研究開発機構)、再処理工場から回収したUとPuを使って、新型転換炉「ふげん」用の混合酸化物燃料4体を完成  
4/17 関西電力高浜3号臨界(PWR、87万kW)  
4/19 中央電力協議会、わが国の原子力は1983年度全発電量の21.4% 米コロラド州産業委員会、ロッキーフラッツ核兵器工場従業員のガン死を低レベル放射線の長期被曝が原因と認定
4/20 電気事業連合会、北村青森県知事に対し原子燃料サイクル3施設の立地を正式に要請。7/27青森県六ケ所村に正式申し入れ  
5/1 原研、インドネシア原子力庁と放射線加工処理に関する研究で5年間の協力取決め結ぶ  
5/2 日・豪が研究開発中の高レベル廃棄物シンロック固化法の研究協力について、口上書交換  
5/4   カナダAECL、経済的理由からダグラスポイント原発を停止
5/10   米連邦地裁、ネバダ核実験場風下地区住民の発ガンと核実験による放射性降下物との因果関係認め、米政府に損害賠償命令出す
5/13   仏パリュエル原発1号臨界(PWR、135万kW級標準化シリーズ初号機)6/22送電開始
5/15 通産省、現行の原子力発電所安全審査判断基準の体系的見直しを決定  
6/1 東北電力第1号原発女川1号が営業運転  
6/7   IEA、原子力不振による石炭不足を警告
6/12   仏、低・中レベル廃棄物の地表処分で新規則制定、アルファ廃棄物の制限設定
6/28 原研、高磁界超電導コイルを使って、同規模クラスのコイルでは世界最高の11テスラを達成  
7/1   仏マルクールGl炉、炭酸ガス冷却材漏れのため閉鎖
7/2 総合エネルギー調査会(現総合資源エネルギー調査会)原子力部会、「自主的核燃料サイクルの確立に向けて」と題する報告書を発表  
7/4 九州電力川内原発l号が営業運転  
7/6 原船事業団を原研に統合する原研法改正法案が参院本会議で可決、成立 NRC、試験研究用原子炉への高濃縮ウラン燃料の使用を制限する新規則を提案
7/10   オーストラリア、ウラン輸出を条件付きで認める新政策を発表
7/16 原子力安全委放射性廃棄物安全規制専門部会、英仏からの使用済み燃料再処理による返還廃棄物の輸送、貯蔵、処分の安全性指針などを検討  
7/17   仏で大幅な政府組織改革、研究工業省を分割
7/22 九州電力玄海原発2号機415日の日本累積運転記録を達成  
8/1   米コネチカットヤンキー原発、417日間の軽水炉連続運転世界記録を達成
8/3 原電、敦賀原発1号で混合酸化物燃料の少数体照射試験(1986年度から)を福井県と敦賀市に申入れ  
8/7 原子カ委放射性処廃棄物対策専門部会、低レベル放射性廃棄物を低・極低・非管理の3つに区分することを提案  
8/10   OECD加盟国、原子力輸出の融資ガイドライン設定
8/23 総合エネルギー調査会原子力部会、原発の稼働率を80%以上にするなど軽水炉技術高度化の具体的戦略を盛込んだ中間報告を発表  
8/25   六フッ化ウラン450トン積載の仏貨物船「モンルイ号」がベルギ一沖で沈没(10/3ウラン入りコンテナ回収)
8/28 科学技術庁(現文部科学省)、原子カ船「むつ」による新原子力船研究開発計画を策定  
9/6 科技庁(現文科省)原子力局原子力開発長期戦略研究会、超長期的視野にたって今後のわが国の原子カ開発のあるべき姿を提言した報告をとりまとめる  
9/12 原研、米国の核融合研究装置「タプレット3」を用いて、世界で最も臨界プラズマ条件に近い値を達成  
9/15 東北、東京両電力の東通原発電建設に伴う漁業補償金72億6700万円を白糠、小田野沢両漁協組合長が受入れ  
9/16   仏シノンB1原発、負荷追従運転始める
9/20   IAEA理事会、放射性物質安全輸送規則を6年ぶりに改定
10/11 関西電力高浜4号臨界(PWR、87万kW)  
10/17 原研、従来の3倍の捕集率の海水ウランの吸着材を開発  
10/18 東京電力福島第二原発2号臨界(BWR、110万kW)  
10/24   仏、トリカスタン3号機で急激な負荷変動実験を公開
11/7   米学術研究会議、「次期核融合装置は日、欧と共同建設を」と提言 
11/15 仏から初の返還プルトニウム東京港着。陸上輸送で動燃東海事業所に搬入  
12月 東芝・日立・三菱重工合弁のウラン濃縮機器(株)発足  
12/11 原子力委、原子力分野での対開発途上国協力の推進方策をきめる  
12/12 東京電力柏崎・刈羽1号臨界(BWR、110万kW、半地下式原子炉建屋採用)  
12/14 高松高等裁判所、四国電力伊方原発1号機の設置許可の取り消しを求めた周辺住民の控訴を棄却  
12/15 社会党、原発既存施設の容認を決定  
12/20   DOE、高レベル廃棄物処分で3候補地選定


2.社会一般の出来事
月日 国内 国外
1984年
(昭和59年)
1/31 1983年の完全失業率2.6%  
2/2 学術審議会、大学での植物遺伝子組み換え実験を承認  
3/16 カネミ油症事件控訴審で福岡高裁が国の過失を認める判決。国側上告(3/29)  
3/18 グリコ・森永事件  
5/30 大蔵省金融自由化の方針示す。日米金融摩擦決着  
5月 科学雑誌「自然」(中央公論社刊)休刊  
7/4 欧州合同原子核研究所(CERN)、素粒子の基本粒子・トップクォーク発見  
7/28   ロサンゼルス五輪開催
8/21 新技術開発事業団、次世代コンピュータ用ガリウムひ素の精密結晶に成功  
8/23 東京で23日間連続熱帯夜、日本列島記録的暑さに  
9/12   IMF(国際通貨基金)、世界景気の回復を宣言
9/28 電電公社の高度情報通信システム(INS)モデル実験、東京三鷹で始まる  
10/9 出光石油開発、阿賀沖北海底油田での本生産を開始  
10/31   OPEC臨時石油相会議、生産上限を日量150万バーレル削減ときめる
11/1 新1万円・5千円・千円札発行  
12/2   インド・ボパールの殺虫剤工場で毒ガス漏れ事故。死者2600人以上
12/20 電電公社、民営化3法成立  



<関連タイトル>
第三次改良標準化 (02-08-02-02)
世界の高速増殖炉実証炉 (03-01-05-03)
原子力船「むつ」開発の概要 (07-04-01-01)
シンロック (05-01-04-03)

<参考文献>
1.森 一久編:原子力年表(1934-1985)、日本原子力産業会議(1986年11月18日)、丸ノ内出版(発売)、中央公論事業出版(制作)
2.原子力委員会(企画)、原子力開発三十年史編集委員会編:原子力開発三十年史、日本原子力文化振興財団(昭和61年10月26日)
3.森 一久編:原子力は、いま(下巻)−日本の原子力平和利用30年−、日本原子力産業会議(1986年11月18日)、丸ノ内出版(発売)、中央公論事業出版(制作)
4.科学技術庁原子力局(監修):原子力ポケットブック・1996年版、日本原子力産業会議(1996年4月26日)
JAEA JAEAトップページへ ATOMICA ATOMICAトップページへ