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<概要>
 ウラン濃縮をめぐる米国及び欧州の動向は、日本のウラン濃縮の供給確保策を改めて検討させる要因となった。動燃(現日本原子力研究開発機構)の遠心分離機6基が完成し、5月にシステム試験を開始するなど技術開発に大きな前進がみられた。ウラン濃縮技術開発懇談会は、10月の最終報告で1985年に遠心分離法による濃縮工場建設を目標に、パイロット・プラントの建設、運転までの研究開発を国家プロジェクトに取上げるように提言した。日立と東芝及び古河電工と住友電工による燃料製造体制の整備も進んだ。関西電力の美浜2号炉が、7月に営業運転を開始したが、一方で、原子力発電所の立地が難しくなってきた。三重県熊野市は3月、中部電力の原子力発電所建設計画に拒否を表明、また、北海道岩内町議会は7月、原子力発電所建設反対を議決した。原研(現日本原子力研究開発機構)は12月に、核融合基礎実験装置JFT-2で摂氏300万度の超高温プラズマの発生に成功した。


<更新年月>
1998年03月   (本データは原則として更新対象外とします。)


<本文>
1.内外の原子力関係の出来事
月日 国内 国外
1972年
(昭和47年)
1/5   ソ連、カスピ海東での初の商業用高速増殖炉BN350(35万kW)の完成とBN600の着工を発表
1/6   米の環境保護6団体、ワシントンの連邦地裁にAECによる原発認可権限を一時停止するよう訴える
1/13 原子力船「むつ」用初期装荷燃料、三菱原子力大宮研で完成  
1/14   米AEC、高速増殖実証炉1号機の同提案を採用
1/20 福島県と大熊、富岡町など6町、原子力発電所安全確保連絡会議を設置  
1/21 9電力社長会、電力中研にウラン濃縮事業調査会の設置を決定  
1/24 福井県、敦賀市、美浜町は関西電力周辺の環境保全について協定を締結  
1/27 原子力委、国際濃縮計画懇談会とウラン濃縮技術開発懇談会の設置を決める  
1/31   西独・オランダ・ベルギーの3電力会社、高速増殖炉発電会社設立。SNR−300の建設を計画
2/15 日本核燃料開発会社(森島国男社長、日立と東芝が折半出資)発足  
2/16 動燃(現日本原子力研究開発機構)のプルトニウム燃料製造工場完成  
2/17 原子力委、環境・安全専門部会の設置を決定  
2/18 9電力社長会、加デニソン・マインズ社とのウラン共同探鉱プロジェクトの中止を決定  
2/25   欧州6か国(ベルギー、英、イタリア、仏、オランダ、西独)、気体拡散方式による濃縮ウラン工場(ユーロディフ)建設で共同研究協定に調印
2/26 日仏原子力平和利用協力協定に調印(低価格核燃料入手の道開く)  
3/1   米フェルミ国立加速器研究所、世界最大の加速器完成(陽子シンクロトン500GeV
3/2 三重県熊野市、中部電力の熊野原発建設計画に正式に拒否を表明  
3/9   仏CEA、豪州と共同で同国にウラン濃縮工場を建設する可能性で調査と発表
3/22 原電、敦賀原発で住友金属が製作した燃料被覆管の採用決定  
3/28 中国電力、島根県及び鹿島町と安全確保に関する協定に調印  
4/4 関西電力、大飯原発建設で地元自治体(県、大飯町)と協定書に調印  
4/10 関西電力美浜2号炉臨界(PWR、原子炉容器・蒸気発生器国産)  
4/15 財核物質管理センター発足  
4/19   米AEC、規制部門の機構を改革
4/20   ENEA(ヨーロッパ原子力機関)改組しNEAとして発足。5/9日本参加決定
4月   米Ginna原発(PWR)で燃料棒の損傷みつかる
5月   米GAA社、サザンカリフォルニアエジソン社からHTGR(77万kW)2基を受注
5/8 四国電力、伊方原発設置許可申請  
5/10 新型転換炉「ふげん」本体着工  
5/12 動燃、ウラン濃縮用遠心機のシステム試験開始  
5/23 古河電工と住友電工、燃料成型加工を行う「原子燃料工業株式会社」の設立計画発表。7/7発足  
6/1 原子力委、原子力開発利用長期計画を策定(1985年6000万kWを目標)  
6/1 三菱重工と電力9社、原子力発電訓練センター(福井県)を設立  
6/6   原発建設禁止で米カリフォルニア州が住民投票。禁止決議は否決
6/15 関西電力美浜1号機の蒸気発生器伝熱管にピンホール発生  
6/17 水産資源保護協会、原発温排水利用による養魚研究を開始(東海村)  
6/23 三菱原子燃料、東海製作所を完成  
6/27 原研(現日本原子力研究開発機構)、大型リニアック(120GeV)を完成  
7/3 関西電力、福井県大飯町と大飯原発建設に関し、安全協定と地域開発協力協定を締結  
7/13 旭化成が開発したウラン電解還元パイロット・プラント、動燃の人形峠鉱業所に完成  
7/15 柏崎市荒浜で東電による原発設置の賛否を問う住民投票、反対が過半数を占める  
7/20 9電力社長会、米AECからの濃縮ウラン5000トン SWUの買入れ方針を決める  
7/24 北海道岩内町議会、北海道電力の原発建設反対を議決  
7/25 関西電力美浜2号、営業運転開始  
8/4 中曽根科技庁(現文科省)長官、多目的高温ガス炉の自主開発のため来年度から原研に概念設計させる、と言明  
8/17 原子力委、ウラン濃縮技術の開発方針決定(遠心分離法をナショナルプロジェクトとし動燃を中心に推進し、ガス拡散法は基礎研究を継続)  
8/25 原子力船「むつ」の原子炉完成  
8/28 東京電力、福島原発2号の設置申請  
8/28 都立RI総合研究所、放射線照射によるPCB分解実験に成功  
8/29 放射線照射馬鈴署を食用として認可 米AEC、液体金属高速増殖炉実証炉の建設サイトをテネシー州のオークリッジに決める
  仏ボルドーの反核団体、仏環境省にNEA固体放射性廃棄物の海洋投棄に抗議
9/11 原産、「地帯整備開発、自治体、財政問題に関する検討会」(座長土屋清)を設置  
9/25   仏CEA、ガボン共和国のオクロ・ウラン鉱床で17億年前の天然原子炉の存在を示す核分裂連鎖反応の痕跡
10/26   米AEC、ECCSで新基準を提案
10/27 原子力委ウラン濃縮技術開発懇談会、1985年に遠心分離法による濃縮工場建設を目標とした最終報告をまとめる  
10/31   仏CEA、米GGA社と高温ガス炉で協定締結
11/6 九州電力、佐賀県、玄海町と原発安全協定を結ぶ  
11/9 全国原子力発電所所在市町村協議会、地帯整備や税・財政に関する特別措置を関係閣僚に要望  
11/28   英、独、オランダ3国共同ウラン濃縮技術開発会社URENCO社、遠心分離法調査グループを発足させ、機密データを開示する意向を表明
11/29   ソ連のFBR、BN−350(原発と海水脱塩併用)臨界
11/30 茨城県原子力審議会、原電東海第2発電所建設問題で安全管理の徹底などをまとめ知事に答申 米AEC、液体金属高速増殖炉の主契約者としてWH社を決定
12/4 原研、核融合基礎実験装置JFT−2で摂氏300万度の超高温プラズマの生成に成功と発表  
12/8   米AEC、ウラン濃縮技術開示で新規則案を提示、またウラン濃縮サービス長期供給契約の再検討に着手と発表


2.社会一般の出来事
月日 国内 国外
1972年
(昭和47年)
1/20   OPECと国際石油資本グループ、原油公示価格を8.49%値上げで協定
2/21   米大統領ニクソン、中国訪問。米、中国の立場認める
5/15 沖縄の施政権返還、沖縄県発足  
5/22   米大統領ニクソン、訪ソ、5/24字宙平和開発と科学・技術の両協定調印、5/26戦略兵器制限条約(SALT-1)調印
6/5 第1回国連人間環境会議関催(ストックホルム)112カ国参加。6/15捕鯨10年間禁止決議。6/16人間環境宣言を採択  
6/22 自然環境保全法公布、大気汚染防止法・水質汚濁防止法各改正公布(公害無過失損害賠償責任を規定)  
7/14 閣議、新全国総合開発計画を練り直し、日本列島改造構想との調整を決定  
8/2 カシオ、パーソナル電卓「カシオミニ」1万2800円で発売(電卓普及に先鞭)  
8/31 田中角栄首相・ニクソン米大統領首脳会談  
11/6 通産省(経産省)、「資源・エネルギー庁」の新設など大幅機構改革案を作る  
11/13   海洋投棄規制国際条約(海洋汚染防止の)に79か国仮調印(ロンドン条約)1980/10/25日本、批准
12/20 総理府(現内閣府)、1971年度日本の科学研究費はGNPの2.02%、大学関係者の研究費は欧米諸国の25%と発表  



<関連タイトル>
遠心分離法によるウラン濃縮 (04-05-01-04)
人形峠のウラン濃縮施設 (04-05-02-01)
核融合炉の概念 (07-05-01-02)
核融合研究開発の経過 (07-05-01-03)


<参考文献>
(1)森 一久編:原子力年表(1934-1985)、日本原子力産業会議(1986年11月18日)、丸ノ内出版(発売)、中央公論事業出版(制作)
(2)原子力委員会(企画)、原子力開発三十年史編集委員会編:原子力開発三十年史、日本原子力文化振興財団(昭和61年10月26日)
(3)森 一久編:原子力は、いま(上巻)−日本の原子力平和利用30年−、日本原子力産業会議(1986年11月18日)、丸ノ内出版(発売)、中央公論事業出版(制作)
(4)科学技術庁原子力局(監修):原子力ポケットブック・1996年版、日本原子力産業会議(1996年4月26日)


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