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<概要>
 濃縮ウランを造る場合、遠心分離機を使ってウラン235の濃縮度を上げる方法を遠心分離法という。原料としては、気体状態の六フッ化ウランを使用し、高速回転中の遠心分離機に入れると、遠心力により重いウラン238と軽いウラン235とが、わずかに分離される。その分離係数は遠心分離機の性能に左右されるが、分離された気体の六フッ化ウランを上手に取り出す方法である。遠心分離法はガス拡散法に比べ、分離係数が大きく電力消費量も少ない利点がある。しかし、遠心分離機は、回転胴を高周速で回転させるために製造面、運転面において高度な技術を要する。
<更新年月>
1998年03月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
  図1 に遠心分離法のしくみ、 図2 に遠心分離法のカスケード構成、 図3 に遠心分離法のプラント構成を示す。
 遠心分離法によるウラン235濃縮は多数の遠心分離機をカスケードに組み、所定の濃縮度のウラン235を得る方法である。遠心分離機は音速の数倍程度の周速で回転胴を回し、回転胴内にウラン化合物である気体の六フッ化ウランを入れると、ウラン235とウラン238の質量差によって、重いウラン238の六フッ化ウランは回転胴の円周側に、軽いウラン235の六フッ化ウランは軸側に分離される。これらの気体の六フッ化ウランを回転胴内のガスの流れを乱すことなく取り出して、濃縮ウランと劣化ウランとする。遠心分離機の分離係数は、理論的には質量差の2乗と周速の4乗に比例し、回転胴の長さに比例するといわれている。したがって周速の速いかつ長回転胴を有する遠心機が効率がよいことになる。
 六フッ化ウランガスの取り出し方法にも工夫がこらされ、端板方式とスクープ方式がある。端板方式とは、上記回転胴の端板にノズルを付けて、軽い気体と重い気体とを抜き出す方法である。スクープ方式は回転胴内に抜き出しパイプを取り付けて抜き出す方式である。
 この遠心機の性能が、カスケードを組み合わせる数に影響するので、できるだけ高性能の遠心機の開発が行われている。性能が良ければ遠心機の台数が少なくてよいのでコストは低減される。
 ガス拡散法に比べて分離係数が極端に高いため、カスケードの段数はガス拡散法と比較すれば数百分の一でよい。しかし、1台の遠心機の取り扱い量は非常に少ないので並列に幾台も並べる必要があり、濃縮されるに従って台数を減らしたアイデアルカスケードを組むことになる。
 遠心機の構造や材質は各国とも機密事項として取り扱われているので、各国の工業水準により独自の高性能の遠心機が開発されている。
 ガス拡散法と比較して特徴的なことは、分離係数が高いことと、運転による電気代が十分の一以下であることである。
<図/表>
図1 遠心分離法のしくみ
図1  遠心分離法のしくみ
図2 遠心分離法のカスケード構成
図2  遠心分離法のカスケード構成
図3 遠心分離法のプラント構成
図3  遠心分離法のプラント構成

<参考文献>
(1)動燃事業団:パンフレット「ウラン濃縮」(1988)
(2)動燃事業団:パンフレット「ウラン濃縮」(1997.5)
(3)W.マーシャル(編)、内藤奎爾(監訳):原子力の技術3 燃料サイクル[上]筑摩書房(1987年1月)
(4)柴田朋文、甲斐常逸:遠心法ウラン濃縮技術の開発、動燃技法、No.100,151-158(1996.12)
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