<大項目> 海外情勢
<中項目> 旧ソ連・東欧各国
<小項目> ロシア
<タイトル>
旧ソ連諸国の核兵器廃棄への西側支援 (14-06-01-14)

<概要>
 米露間の第二次戦略核兵器削減条約(START 2)によって、両国は2003年までに戦略核兵器を3500発程度に削減することになった。このため、米国はナン・ルーガー法を成立させ、この支援のために総額12億ドルを計上し、核兵器解体・廃棄用の資機材の供与を行っている。また1993年2月、ロシアの間で核兵器解体後の高濃縮ウラン500トンの購入契約を締結している。
 さらに米国のクリントン大統領は、1994年1月にモスクワでロシア、ウクライナ両国大統領と、今後7年以内にウクライナに配備された旧ソ連の核兵器を解体・廃棄することを盛り込んだ3か国共同コミュニケに調印し、その見返りとしてウクライナは、米国から核兵器解体・廃棄に必要な資金提供を受け、またロシアからは原子力発電用燃料の現物供与を受けることとなった。
 日本は、1993年4月のG7閣僚合同会議において、旧ソ連非核化支援のために、約1億ドルの無償支援を行うことを表明した。
<更新年月>
2003年01月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
 旧ソ連の核兵器廃棄後に生じるプルトニウムの量は50トンとも100トンとも言われている。1992年7月ミュンヘン・サミットにおいて、核兵器の解体・廃棄の結果生じる核物質の平和的利用を確保するためのロシアの努力を支援するということが政治宣言に盛り込まれ、核兵器の解体・廃棄後に発生する核物質に対する国際的関心の高さが示された。
1.ロシアの核兵器廃棄への西側支援
 米、ロシアは1993年1月、第二次戦略兵器削減条約(START2)に調印して、核兵器削減・核弾頭解体・解体核処分の動きが始まった。両国は2003年までに戦略核兵器を3,500発程度(保有量の約3分の1)に削減することを条約で合意し、それぞれ大統領声明で核弾頭を解体し、余剰核物質を処分することを国際的に公約した。
 このSTART2の前提となっているSTART1は、1991年7月に旧ソ連ゴルバチョフ書記長と米国ブッシュ大統領の間で調印されている。その後、旧ソ連が崩壊し、核保有国がロシア、ウクライナ、カザフスタン、ベラルーシに分散された。このため、1992年5月にこれら旧ソ連4か国と米国とがリスボンで議定書に調印し、旧ソ連の核兵器に関してはロシアを唯一の継承国とすることで合意した。同時に、ロシア以外の3か国は、7年間をかけて自国内から戦略核を撤去するとともに、非核保有国として核兵器不拡散条約(NPT)に加盟することを確約している(その後NPT条約を批准)。
 このため、米国はナン・ルーガー法を成立させ、これにより旧ソ連の大量破壊兵器の解体・廃棄支援のために総額12億ドルを計上し、米国・ロシア間で防護ブランケット、緊急時対応装置、核分裂性物質コンテナの供与につき合意し、実施された。
 さらに、米国は1993年2月、ロシアの高濃縮ウラン500トンを向こう20年間にわたって買い取る「核兵器解体に伴う高濃縮ウランの処分に関する米国およびロシアの政府間合意」(高濃縮ウラン合意)を締結し、購入することになった。
 一方、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア等の西側各国もロシアと二国間の形で、核兵器を運搬するための輸送機材の供与、放射能事故防止協力、核物質の平和利用の共同研究等に関して検討または実施している。
2.ウクライナの核兵器廃棄への西側支援
 1994年1月に米国クリントン大統領とウクライナのクラフチュク大統領、ロシアのエリツィン大統領は、モスクワで首脳会談を行い、今後7年以内にウクライナに配備された旧ソ連の核兵器のロシアへの移管と全面廃棄を完了することを盛り込んだ3か国共同コミュニケに調印した。またウクライナは、NPTへ早期に加盟することも合わせて約束した。 この合意には、核兵器の解体・廃棄の他に、ウクライナに対して米国、ロシア、英国は核攻撃を行わない、核兵器の解体・廃棄に必要な資金を米国が提供する、核兵器の解体に伴う高濃縮ウランをロシアに移管する補償としてロシアから原子力発電用燃料をウクライナに供給する、などの規定も盛り込まれており、ウクライナ側の条件をある程度満たすものとなった。
3.日本の支援
 わが国は、1993年4月に行われたG7閣僚合同会議において、新たな対ロシア支援策を発表し、そのなかで旧ソ連非核化支援のために約1億ドルの無債支援を行う意図を表明した。この決定は、以下のようなわが国の考え方にもとづいて行われたものである。
 まず第一に、わが国は唯一の被ばく国として、究極的な核兵器廃絶をめざし、これまでさまざまな機会、さまざまなレベルにおいて、核軍縮、核不拡散を訴えかけてきた。冷戦終結後、核軍縮の歴史的チャンスが訪れているこの機会に、わが国としても可能なかぎり、具体的核軍縮のための国際的努力に積極的に貢献していくことは重要である。
 第二に、わが国は、ロシアが内政、経済、および外交のすべての面にわたり改革路線を推し進めることを期待し、このような改革努力に対しては、国際社会と協力しつつ適切な支援を進めている。非核化支援もこのような支援の一環である。
 第三に、わが国とウクライナ、カザフスタン、ベラルーシとの関係が樹立されて未だ日は浅いが、これら諸国が旧ソ連より「負の遺産」として受け継いだ核兵器の廃棄作業に関し、わが国が支援を行うことは、今後これら諸国との二国間関係を発展させていくにあたって非常に有意義である。
 第四に、国際社会が新しい国際秩序を模索している今日、わが国としても世界の平和と安全保障のための外交を積極的に展開しているが、旧ソ連の非核化支援もわが国のこのような積極的外交活動の一つである。
 なお、旧ソ連の核兵器開発に携わった多くの科学者、技術者等の能力を平和的活動に向ける機会を提供することを主目的とした国際科学技術センター(ISTC)が、米国、EC、日本およびロシアの4者によって1994年3月に設立され、ISTCプロジェクトの活動が進められている。(ATOMICA<14−06−01−15>参照)
 米国およびロシアによる余剰兵器級プルトニウムおよびロシア解体高濃縮ウランの処分計画の現状については、詳しくはATOMICAデータ(構成番号<14−04−01−26>、<14−06−01−18>)を参照されたい。
<関連タイトル>
核兵器不拡散条約(NPT) (13-04-01-01)
START(戦略兵器削減条約) (13-04-01-08)
旧ソ連産ウラン問題と米国の対応 (14-04-01-24)
米国の余剰プルトニウム処分計画 (14-04-01-26)
旧ソ連の科学者・技術者の流出に係る国際科学技術センター(ISTC)の協力・支援 (14-06-01-15)
ロシアの高濃縮ウランの処分計画 (14-06-01-18)

<参考文献>
(1) (社)日本原子力産業会議(編集発行):原子力年鑑 平成5年版(1993年12月)、p.245
(2) 原子力委員会(編):原子力白書 平成5年版、大蔵省印刷局(1993年12月)、p.53−55
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