<大項目> 海外情勢
<中項目> 旧ソ連・東欧各国
<小項目> ロシア
<タイトル>
旧ソ連型原子炉に対するWANOの見解 (14-06-01-13)

<概要>
 世界原子力発電事業者協会WANO)は、原子力発電所の運転の安全性と信頼性の向上を目的に、世界の原子力発電所の所有者、運転者によって構成された国際組織であるが、独立国家共同体CIS)、東欧への支援を推進するために、西側と東側の双方の運転者たちは、(1)旧東ドイツのグライフスヴァルト原子力発電所は閉鎖すべきであること、(2)古いタイプのVVER-440/V-230プラントの改善は必要だが、西側の基準や設計のスタイルに合わせる必要はないこと、(3)個々のプラントを運転継続すべきか、閉鎖すべきかの判断は、WANOは行わないこと、(4)ブルガリアのコズロドイ原子力発電所の運転規準は、改善が必要であること、などを合意している。また、IAEAもこれらの原子力発電所に対して、安全上の問題点を指摘し、改善のための助言を行っている。
<更新年月>
2003年01月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
 独立国家共同体(CIS)および東欧における原子力発電所の安全運転については、国際原子力機関(IAEA)と西側諸国が国際協力で各種の支援を行っている。世界原子力発電事業者協会(WANO:the World Association of Nuclear Operators)も、このようなCIS、東欧への支援に最も熱心な国際組織の1つである。それは、WANOが、原子力発電所の運転の安全性と信頼性を最大限に向上させることを目的に世界中の原子力発電所の所有者、運転者によって構成されているからである。しかも、WANOが生まれるに至った背景には、チェルノブイリ事故を契機に、それまでは西側諸国だけで良しとされていた原子力発電の安全性、信頼性について、旧ソ連や東欧諸国も含めた世界レベルで相互に協力し合って追求していかなければならないということがある。
1.旧ソ連型 PWR(VVER)に対するWANOの考え方
 この数年間、WANOが最重要視課題として取り組んできた問題に、旧東ドイツ、チェコ、スロバキア、ブルガリア、アルメニアに設置されている古いタイプの旧ソ連型PWR(VVER-440モデルV-230プラント)を、この先どのようにしていくのか、ということがある。このVVER-440/V-230プラントは、1970年代に設計開発され、運転されてきたものである。
 このプラントは、大きな安全裕度をもって設計されているが、精緻さというものはない。例えば、燃料設計は運転条件に大きな裕度をもたせて非常に保守的に設計されており、また水のインベントリーも大きなヒートシンクを有していて十分なものになっている。しかし一方では、安全注入系は明示的な形では存在せず、多様性はほとんどなく、診断システムも貧困である。しかも格納容器がなく、その代わりに事故時のためにローカリゼーション・コンパートメント・システムがあるが、その実証性はない。また、このプラントの場合、原子炉圧力容器は中性子照射による脆化を受けやすいという点が最大の欠点となっている。
 これらのプラントは、全て旧ソ連の組織によって設計され、また、設計に当たっては、旧ソ連および東欧各国の規制当局が定期的な合同会議を持って検討、調整を行ってきた。しかしながら、国際的な運転者のグループは、WANOが設立されるまでは存在していなかった。1992年8月のドイツ原子力産業会議の年次大会で、WANOの当時の総裁、マーシャル卿は、東西双方の運転者たちは、これらのプラントの運転について、次のような合意に達していると述べている。
(1) 旧東ドイツのグライフスヴァルト原子力発電所の閉鎖
 旧西ドイツの安全基準を適用してグライフスヴァルト原子力発電所(VVER-440/V-230)の改造を試みようとしても、それは失敗することになろう。そのコストは高くつくであろうし、その他多くの問題を含む。しかも、東西両ドイツの統一によって、旧東ドイツの産業は崩壊しており、従って同発電所の運転継続は実際にはその必要性を欠いていると言える。従って、幾多の熱い議論の結果、冷静に導き出された結論は、同発電所は閉鎖されるべきであるというものであり、少なくとも、同発電所は、他の同型の原子力発電所の指導的なプラントにはなり得ない。
(2) VVER-440/V-230プラントの改善
 古いタイプのVVER-440/V-230プラントの改善を行う場合には、資金投入に対し十分な価値があり、欧州共同体(EC)からの資金援助を魅力あるものにするということが十分に認識されている必要がある。VVER-440/V-230タイプの原子炉が持つ優れた機能は、むしろ大いに伸ばされるべきであるし、また、機能的に劣っているところは改善されるべきであるが、その場合にも、西側の基準や設計のスタイルに合わせる必要はない。
(3) VVER-440/V-230プラントの運転継続もしくは閉鎖の判断
 VVER-440/V-230プラントの改善が更なる運転継続に対し十分であるかどうか、また、プラント改善によってどれ位の期間、運転継続ができるかどうかという判断については、WANOは部外者の立場に立つ。この種の決定はWANOの責任下にはなく、WANOはプラントの運転継続もしくは即時の閉鎖、あるいは閉鎖の猶予ということに対し口を挟むべきではないと考えている。何故ならば、そのような決定は、その国の政府、規制当局によってなされるべきことだからである。
 また、そのような決定について、その国の政府もしくは規制当局からWANOに対し諮問がなされたとしても、WANOは、IAEAと違って、いかなる助言、答申も行うべきではないと考える。そして、WANOが考慮すべき唯一のことは、あるプラントが運転されている場合に、そのプラントができるだけ安全に運転されるようにすることである。
2.CIS諸国とWANOの国際協力、支援
 旧ソ連の原子力発電所は、ロシア、ウクライナ、リトアニアおよびアルメニアという4つの独立国家に分割所有されている。各独立国家は、それぞれの領土内にある原子力発電所を所有し、独立の規制機関を持ち、そして運転者も別々である。
 しかしながら各独立国家における原子力発電所は、相当のバックアップ技術を必要としており、それを提供できるのは4つの独立国家のうちでロシアだけである。従って、WANOとしては、原子力発電所を保有する4つの独立国家が共通の目的を持ち、現在運転中のVVERやRBMKの安全性維持ということのために、共同で対処する必要がある。ここで、特に念頭に置いておかねばならないのは、ロシアの冬の厳しさということであり、電力供給については決して甘くない状況にある。
 独立国家のうちでロシアだけが豊富なエネルギー資源を有しており、また、ロシア自身も経済的にも安定した外貨を稼ぐために天然ガスや石油を輸出する必要がある。このため、4つの独立国家は、原子力発電をいかにして最大限活用するかについて、率直かつ具体的な討論を行うべきである。
 WANOの任務は、全ての原子力発電所が安全に運転されるように支援を与えることであるが、幸いにもWANOは、これら新しい独立国家に分割された全ての原子力発電所の運転者たちと極めて密接な関係を確立している。
3.IAEAの支援
 IAEAの活動についても若干述べる。IAEAは、旧ソ連製原子力発電所を運転している国々からの安全性への助言要請があり、これに応じ始めている。
 1990年9月に、第一世代原子炉VVER-440 Model V230について、安全性評価プログラムが実施された。このプログラムは1992年まで延長され、運転中および建設段階のVVER-440 Model213,VVER-1000,RBMK原子力発電所についても、各炉共通問題、炉固有問題、運転訓練の3つに絞って検討された。1994年末に、VVER、RBMK原子力発電所の設計上、運転上の欠点が抽出され、およびその改善が安全性確保のために重要であることが指摘された。
 IAEAは、安全上の改善ついての提案、実行に助言を続けている。
<関連タイトル>
世界原子力発電事業者協会(WANO) (13-01-03-15)
世界原子力発電事業者協会(WANO)の活動 (13-01-03-16)
旧ソ連型VVER-440/V-230に対するIAEA安全評価 (14-06-01-12)

<参考文献>
(1) 株式会社アイ・イー・エー・ジャパン:「欧州原子力情報サービス」、10月号、(1992年)
(2) NEI SOURCE BOOK,Soviet−Designed Nuclear Power Plants in Russia,Ukrainne,Lithuania,the Czech Repubilic,the Slovak Repubilic,Hungary and Bulgaria,Internatinal Atomic Energy Agency,
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