<大項目> 海外情勢
<中項目> ヨーロッパ各国
<小項目> スペイン
<タイトル>
バンデロス原子力発電所1号機の火災事故 (14-05-13-05)

<概要>
 1989年10月19日にスペインのバンデロス原子力発電所1号機で火災が発生した。この火災の原因は、タービンの軸振動によって発電機が壊れ、発電機を冷却する水素に引火したと考えられている。この火災によって、タービン発電機とタービン建屋内のケーブルに被害がでたが、人身事故および放射能放出はなかった。その後、同発電所の修復が検討されたが、コストがかかりすぎることを理由に同発電所の閉鎖が決定された。
<更新年月>
1998年05月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
[火災の発生経緯]
 バンデロス原子力発電所は、スペインの第1世代の原子力発電所として、1972年に運開した。原子炉はフランス製の黒鉛減速炭酸ガス冷却炉であり、電気出力は50万kWである。
 事故当時、同原子力発電所1号機で熱交換器に腐食が発生していたため、40万kWに出力を抑えて運転されていた。1989年10月19日21時39分、グループ2タービン発電機の軸振動が大きくなり、タービンがトリップした。コンピュータの記録によると、この時の振動は18/100mmで、警報が発生する12/100mmを大きく超えていた。このときタービン付近と発電機励磁機側で1号機に火災が発生した。このため、タービンがトリップ、原子炉もスクラムされた。火災は約4時間後の翌20日1時30分になって下火になり、4時頃には完全に鎮火した。この発電所の蒸気・タービン系統を 図1 に示す。

[火災の原因]
 火災の原因は、発電機の冷却用水素が漏れ、それが発火したと推定されている。つまり、タービンで軸振動が起こった際に軸が損傷して潤滑油が流出するとともに、タービンに連結されている発電機側にも損傷を受け発電機内部の冷却用水素が漏れ出し、この漏洩水素が発火して、流出した潤滑油にも引火し、タービンの下部エリアに延焼したと考えられている。原子炉停止後、炉内部を冷却するための操作が行われた。この作業には、加圧水型炉PWR)の一次冷却材ポンプに相当するターボブロワと蒸気発生器が用いられた。
 このターボブロワは、火災によって、4台のうち2台が使用不可能となってしまったが、後の2台は電気系統が独立していたため、使用することができた。プラントの設計では冷却には最低1台のターボブロワがあれば十分となっており、事故時の冷却作業には支障はなかった。

[火災による被害]
 発生した火災によって、グループ2のタービン発電機とその補機、主復水器、循環水系、制御弁およびケーブルが損傷した。循環水系では、継手が損傷を受けて海水漏れを起こし、消火用水に加えて、この漏洩海水によってタービン建屋と原子炉建屋の低階層部が水浸しになった。この影響でシステムの一部が動作不能となった。人身事故および環境への放射能放出はなく、炉心冷却および炉心の構造にも、なんら大きな問題はなかった。

[バンデロス原子力発電所の閉鎖問題]
 1990年5月、政府は、財政上の理由によって、火災以来運転を停止していた同炉の閉鎖を決定した。原子力安全委員会の勧告に従い修復した場合の費用は、最低330億ペセタと見積もられているが、残る原子炉の寿命(同炉は1972年に運転開始、寿命は25年)を考慮すると、あまりにも高額になり過ぎるからである。
 その後、同炉を所有するイフレンサ社は、この決定に「修復費用は過大見積であり、我が社の資産を奪うもの」として反発し、発電所用地や施設などの再利用の可能性について検討を重ねていたが、1990年当時、ガス火力に転換するという計画が有力案として浮上したこともあった。
 イフレンサ社筋によると、技術的には特に問題はなく、立地点としても、ガス流通設備が比較的整っている北東部に位置することから、ガス火力に適しているという。また、転換に要する費用は約500億ペセタと見積もられている。
<図/表>
図1 バンデロス原子力発電所の系統図

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<関連タイトル>
スペインの原子力政策・計画 (14-05-13-01)
スペインの原子力発電開発 (14-05-13-02)
スペインの原子力安全規制体制 (14-05-13-03)
スペインの核燃料サイクル (14-05-13-04)

<参考文献>
(1) 海外電力 1990年1月号 海外電力調査会
(2) 海外電気事業統計 1994年版 海外電力調査会(1994年7月)
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