<大項目> 海外情勢
<中項目> ヨーロッパ各国
<小項目> スペイン
<タイトル>
スペインの原子力政策・計画 (14-05-13-01)

<概要>
 スペインは国内資源に乏しく、エネルギーの輸入依存度を軽減するため、原子力発電導入計画も当初は非常に積極的であったが、1982年に誕生した社会労働党政権は、電力需要の伸びが鈍化傾向にあるのを理由に、原子力発電所の建設・計画の凍結を決定した。その後、電力需要の伸びが徐々に回復したが、1994年には凍結された原子力発電所の中止が決定された。
 また、経済的な理由から、ホセカブレラ(ソリタ)発電所が2006年4月に閉鎖、サンタ・マリアデガローニャ発電所が2012年12月から長期休止状態にある。スペインでは新規の原子力発電所建設計画はないが、環境問題の観点から原子力の存在は不可欠という見方から、既存原子炉の出力増強や運転期間の延長は積極的に進められている。
 放射性廃棄物に関しては、中低レベル及び極低レベル放射性廃棄物はスペイン南部にあるエル・カブリル処分場で処分されている。一方、使用済燃料とガラス固化体については、直接処分する方針が検討されている。
<更新年月>
2015年01月   

<本文>
1.はじめに
 スペインは欧州南西部イベリア半島の大部分を占める立憲君主制国家で、広範な地方自治が憲法で保証されているが、バスク州やカタルーニャ州など独自の言語や歴史を有する州では、より広範な自治又はスペインからの分離・独立を求める動きも見られる。スペイン本土はピレネーやシエラ・ネバダ山脈など高原や山地に覆われ、幾つかの主要河川と沖積平野が沿岸部に存在し、大西洋と地中海の玄関口に位置する。西にポルトガル、南に英国領ジブラルタル、北東にフランスとアンドラと、飛地はモロッコと国境を接する。国土面積は日本の約1.3倍の50.3万km2であり、人口は約4,651万人(2014年10月)、人口の約75%がカトリック教徒と言われている。
 また、スペイン経済は1986年の欧州連合(EU)加盟から1999年のユーロ導入を経て、好調な経済発展を維持し、20年間でGDPは約3倍に拡大して国民生活も大きく改善した。しかし、不動産バブルが崩壊したリーマンショックを受けて経済は減速し、2008年後半以降は景気低迷による財政赤字の拡大、金融機関の破綻、ユーロ危機に伴う国債リファイナンスの困難等の厳しい経済情勢に陥った。国際通貨基金IMFの調べでは、2013年の経済成長率は-1.2%、失業率は26.1%、特に若年層(16〜24歳)の失業率は54%まで達し、深刻化している。
2.エネルギー事情
 スペインのエネルギー政策はEUの政策に準拠しており、経済成長、競争力ある持続可能な発展の維持に向けてエネルギー安定供給の確保を目指すとともに、地球温暖化への対応など環境保全にも配慮してエネルギー生産を行うこととしている。特に再生可能エネルギーの利用促進とエネルギー効率の向上に力を入れ、風力発電の導入規模に関しては世界でもトップクラスにある。
 なお、スペイン国内のエネルギー資源埋蔵量は石炭が53,000万トン、ウランが14,000トンU(生産コストUSD 260/kgU以下の確認資源量)と若干の石炭、ウランが産出されるものの、石油と天然ガス資源は乏しく、原子力を含めた場合のエネルギー自給率は2012年には26.7%(原子力を除いた場合には15.9%)である。このように、エネルギー資源の輸入依存度が高いため、世界経済の影響を受けやすい構造となっている。
 一次エネルギーの国内生産量、総供給量、最終消費量の推移を表1に示す。2012年の一次エネルギー総供給量は石油換算1億2,497万トンで、エネルギー源別構成は、石油40.0%、天然ガス22.4%、原子力12.7%、石炭12.1%、水力を含む再生可能エネルギー12.8%となっている。なお、このうち国内生産量は3,334万トンで、原子力が48%、バイオ燃料・廃棄物が18.6%、石炭7.4%、風力・太陽光等再生可能エネルギーが5.3%と続く。一次エネルギー輸入量の63.4%は石油、次いで天然ガスが24.3%、石炭が10.3%である。2012年の最終エネルギー消費量は8,464万トンで、前年比8.2%減少した。2008年のリーマンショック以降、経済が停滞し、エネルギー消費が減少傾向にある。
 スペインのエネルギー政策は第一次石油危機後の1975年から2000年まで、脱石油政策を含めたエネルギー関連の政策が、国家エネルギー計画(PEN:Plan Energetico Nacional)として10年単位で策定されてきた。しかし、2002年以降、エネルギー産業への政府の介入をできるだけ少なくする方針で、電源開発の決定権が民間へ委ねられた。その結果、PENに替わり、「電力・ガスセクター計画」が策定され、2011年7月に改定された「電力・ガスセクター計画(2012-2020)」ではコンバインドサイクル・ガスタービン(CCGT)の開発や送電網の整備が盛り込まれている。
3.電力事情
3.1 電力需給
 スペインでは、起伏の多い地形を利用して早くから水力開発が進み、1972年まで水力が総発電設備の50%以上を占めた。しかしその後、安い輸入燃料を使用する石油火力が水力を抜き、1975年には火力中心の電源構成となった。1970年代の石油危機以降は、エネルギー輸入依存の軽減策から、原子力や国内炭を使用する石炭火力の開発が促進された。表2及び図1に電源別発電設備容量の推移を、表3及び図2に電源別発電電力量の推移を示す。発電設備容量は1945年から1975年までの間に132.9万kWから2460.4万kWへと約18.5倍に増加、発電電力量は41億7300万kWhから825億1500万kWhへと約19.8倍まで増加し、電源構成は水主火従型から火主水従型へ移行した。2013年の発電設備容量は1億781万kW、発電電力量は2865億1200万kWhで、発電電力量の電源構成は火力41.8%、水力を含む再生可能エネルギー38.4%、原子力19.8%になっている。
 なお、再生可能エネルギー開発促進にあたり、スペイン政府は電力会社に対して、発電電力を高価格で買取ることを義務付ける固定価格買取制度(FIT)を1994年から導入してきた。しかし、買取に要するコストの電気料金への転嫁を認めなかったため、電力会社は巨額な負債を抱え、2007年まで段階的に引上げられていた太陽光や風力などの買取価格は次第に引下げられ、または買取停止へ追込まれている。
3.2 電力自由化と電気事業体制
 スペインでは2003年1月に家庭用需要家を含めた電力の自由化が実施され、スペイン電力市場は欧州の大手電力会社へも開放された。1995年にはスペインの電力会社は4大グループ(エンデサ、イベルドローラ、ウニオン・フェノーサ、イドロカンタブリコ)に集約された。特にエンデサとイベルドローラの両グループを合わせてシェアは、発電で80%という寡占状態であったが、イドロカンタブリコがポルトガル電力会社EDPの支配下に、またENELヴィエスゴ社(イタリアENELがエンデサ所有の一部の発電・配電会社を買収してできた会社)はドイツ E.ONに買収された。また最大手の一つであるエンデサも、イタリア ENELとスペイン建設会社アクシオーナに買収された。ウニオン・フェノーサは、スペイン大手ガス会社ガズ・ナチュラルに買収された。現在、スペインでは、最大手のエンデサ、イベルドローラの2社に、ガズ・ナチュラル・フェノーサ、イドロカンブリコ、E.ONエスパーニャの3社を加えた5大グループが電気事業の中心を形成している。これら大手5社は、それぞれ発電会社、配電会社、供給会社を持つ垂直統合型の持ち株会社である。5社で発電市場(発電電力量ベース)の約7割、また小売市場(供給量ベース)では規制料金市場の約10割、自由市場の約9割を占めている。なお、送電系統の運用は、スペイン電力系統運用会社(REE)が独占的に行っている。
4.原子力政策
 国内資源に乏しいスペインでは、エネルギー輸入依存度を低減するため、1960年代から原子力発電開発に積極的に取り組んできた。2015年1月時点、加圧水型軽水炉(PWR)6基、沸騰水型軽水炉(BWR)1基の計7基が運転しており、総発電量に占める原子力の割合は約20%となっている(表4及び図3参照)。また、核燃料サイクルに関しては、1972年に設立されたウラン公社(ENUSA)がフロントエンドを担当している。スペインでは1970年代から一時期ウラン鉱山でウランの生産を行っていたが、既に閉山しており、ウランの調達、濃縮等は海外で行われている。燃料に関しては、ENUSAがニジェール・アクータ鉱山に10%出資、フランス・ジョルジュベス濃縮工場に11.1%出資するなど、安定供給確保に努めている。燃料加工はサラマンカ地方にあるENUSAのフスバド燃料加工施設において、国内の原子炉や欧州の顧客向けにPWRとBWR用燃料を製造している。なお、1983年以降、政府は再処理を行わない方針を決定しているため、各発電所の使用済燃料は発電所サイト内の使用済燃料プールあるいは所内乾式貯蔵施設で貯蔵されている。
 1973年の石油危機以降、スペインでは石油の代替施設として原子炉建設が続いたが、1979年の米国スリーマイルアイランド事故を受け、1982年に発足した社会労働党(PSOE政権)は建設中だった4基と計画中の1基の建設凍結を決定した。さらに1986年の旧ソ連チェルノブイリ事故の影響から、今日に至るまで新規建設凍結が続いている。
 この間、1989年10月にタービン火災事故を起したバンデリョス1号機が、修復に莫大な費用を要することを理由に1990年5月に閉鎖され、2003年から廃炉計画に基づき遮蔽隔離中にあり、2027年以降解体撤去が進む予定である(ATOMICAデータ「バンデロス原子力発電所1号機の火災事故(14-05-13-05)」参照)。また、国内で最も古いホセカブレラ(ソリタ)が2006年4月に閉鎖している。当初、同機を所有・運転するUFG(Union FENOSA Generacion,S.A.)社は近代化工事の実施により、運転開始から40年目にあたる2008年まで運転を継続するよう政府に申請していた。しかし、原子力規制当局である原子力安全委員会(CSN)が同発電所の運転経費や機器の劣化に伴う諸問題を審査。この結果、産業エネルギー省(MIE、現経済省)へ2006年の閉鎖を勧告した。UFGもこれを受け入れた。当時のサパテロPSOE政権(2004年〜2011年)は40年の運転期間を目安として既存の原子炉を順次閉鎖する段階的な脱原子力政策を採っていた。一方、地球温暖化対策やエネルギー安全保障などの観点から原子力発電を再評価する動きが見られ、2011年2月にスペイン議会で承認された持続可能経済法では、エネルギーミックスにおける原子力の役割を再検討する方針が示された。
 スペインでは既存原子炉に関し、運転者が10年ごとに運転継続の許可を得て運転を延長することが認められている。原子炉の運転寿命を一律40年に制限する持続可能経済法が修正され、原子炉の安全性と電力需要、新技術の開発状況、発電コスト、温室効果ガス排出量等を考慮しながら、原子力安全委員会(CSN)により、原子炉の運転寿命が決定されるようになった。
 2011年12月総選挙では原子力発電開発に肯定的な国民党(PP)が社会労働党(PSOE)に勝利して政権を奪回した。新政権は商業炉の中で最も古いガローニャ原子力発電所(米国GE社製BWR、46.6万kW)を2013年7月に閉鎖するという前政権の2009年決定を見直すことになったが、同発電所の経済性を憂慮した事業者が運転認可更新申請期限の2012年9月までに更新申請手続きを行わなかったため、ガローニャ発電所は長期休止状態にある。
 また、政府は既存原子炉の出力増強を積極的に許可する方針を明らかにしている。電力各社は、蒸気発生器(SG)の交換や高圧・低圧タービンの改造により、運転中の原子力発電所の大規模な定格出力増強プロジェクトを1995年から進めている。原子力発電所設備容量の推移を図4に示す。
5.放射性廃棄物政策
 放射性廃棄物のうち中低レベル及び極低レベル放射性廃棄物は、スペイン南部にあるエル・カブリル処分場で処分されている。一方、使用済燃料とガラス固化体については、直接処分する方針が検討されている。
 使用済燃料とガラス固化体の管理・処分に関しては、放射性廃棄物処分の実施主体である放射性廃棄物管理公社(ENRESA)が起草し、最終的に政府の承認を受ける総合放射性廃棄物計画(PGRR)によって基本方針が定められている(図5参照)。スペインでは、1990年代まで処分サイト選定手続が実施されたが、その後中断。また1999年の第5次PGRRでは、2010年まで使用済燃料等の最終的な管理方針の決定の延期や、地層処分の関連技術や核種分離・変換の研究の遂行が方針として示された。さらに2006年の第6次PGRRでは、最終的な処分管理方針の決定はさらに先送りされており、現在に至っている。なお、第6次PGRRでは、使用済燃料等のための集中中間貯蔵施設(ATC)の設置が当面の優先事項として掲げられている。準備委員会が設置され、2009年12月〜2010年1月にかけてATCの候補サイトの公募が実施された。公募に応じた14自治体のうち、最終的に8自治体が候補となっていたが、政府は2011年12月、ビジャル・デ・カニャス(カスティーリャ・ラ・マンチャ州クエンカ県)をATCサイトに選定した。ENRESAは2014年1月にATCの立地及び建設の許可申請を行っている。図6に使用済燃料の現状及び計画概要を示す。
 低・中レベル廃棄物は、各発電所内の貯蔵施設に一時保管された後、エル・カブリル処分場で1992年から処分されている(図7参照)。貯蔵量は既に容量の50%以上に達し、2020年には満杯になることが予想されるため、新しい処分施設の開業が課題となっている。なお、同サイトでは極低レベル放射性廃棄物処分施設も2008年から開設されている。
(前回更新:2005年9月)
<図/表>
表1 スペインにおける一次エネルギー需給量の推移
表2 スペインにおける電源別発電設備容量の推移
表3 スペインにおける電源別発電電力量の推移
表4 スペインの原子力発電所一覧
図1 スペインにおける発電設備容量の推移
図2 スペインにおける発電電力量の推移
図3 スペインの原子力施設所在地
図4 スペインの原子力発電所設備容量の推移
図5 スペインの放射性廃棄物実施体制
図6 スペインにおける使用済燃料の取扱い
図7 エル・カブリル処分場の処分施設概要

・図表を一括してダウンロードする場合は ここをクリックして下さい。


<関連タイトル>
スペインの原子力発電開発 (14-05-13-02)
スペインの原子力安全規制体制 (14-05-13-03)
スペインの核燃料サイクル (14-05-13-04)
バンデロス原子力発電所1号機の火災事故 (14-05-13-05)

<参考文献>
(1)海外電力調査会:海外諸国の電気事業、第2編(2010年3月)、スペイン
(2)日本原子力産業協会:原子力年鑑、2014年版(2013年10月)、スペイン
(3)日本原子力産業協会:世界の原子力開発の動向、2014年版(2014年4月)
(4)(財)原子力環境整備センター:放射性廃棄物データブック(1998年11月)
(5)スペイン電気事業連合会(UNESA):Las centrales nucleares espanolas en 2013、2013年7月等
(6)NUCLENOR:スペインの原子力発電所、

(7)国際エネルギー機関(IEA):Spain Statistics Balances for 2012、

(8)(公財)原子力環境整備促進・資金管理センター:スペインにおける高レベル放射性廃棄物処分、http://www2.rwmc.or.jp/hlw:es
(9)放射性廃棄物公社(ENRESA):HLW storage and SL-LLW disposal in Spain、2014年9月、http://www.polsoz.fu-berlin.de/polwiss/forschung/systeme/ffu/veranstaltungen/termine/downloads/14_salzburg/Zuloaga-2014.pdf
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