<大項目> 海外情勢
<中項目> ヨーロッパ各国
<小項目> スペイン
<タイトル>
スペインの原子力発電開発 (14-05-13-02)

<概要>
 国内資源の乏しいスペインは、エネルギーの輸入依存度の低減をはかるため、1950年代から原子力開発に積極的に取り組んできた。1960年代末から1970年代初頭にかけて3基の原子力発電所が運転を開始し、原子力による発電電力量も1980年代に入ってから急速に増加した。
 しかし、1979年の米国TMI事故を契機として政策見直しの機運が高まり、1982年に誕生した社会労働党政権は原子力発電開発計画を大幅に縮小した。国民党政権に代わった現在も新規の原子力発電所建設計画はなく、電力需要の増加に対応するため、既存の発電所の出力増強や運転期間の延長が行われている。2015年1月時点、スペインでは加圧水型軽水炉(PWR)6基、沸騰水型軽水炉(BWR)1基の合計7基・グロス電気出力739.7万KWが運転されており、2013年の原子力による発電電力量は567億3,500万kWh、総発電量に占める原子力の割合は19.7%となっている。
<更新年月>
2015年01月   

<本文>
1.はじめに
 スペインでは、第二次世界大戦後の経済の復興に伴い、まず水力発電の開発が行われた。その後、急速な経済成長と工業化の進展による電力需要の大幅増加に対応するため、石油を中心とした火力発電の開発が進んだ。1973年には火力発電と原子力発電の合計が水力発電を上回る規模となった。しかし、二度の石油危機を経て、電源の多様化が図られ、現在では再生可能エネルギーの導入促進、天然ガス火力の拡大に重点が置かれている(図1参照)。
 なお、国内エネルギー資源が乏しいスペインは、輸入依存度の低減に向けて早い時期から積極的に原子力発電開発に取り組んできた。1945年には国内のウラン資源を調査するため、国立地質鉱山研究所を設立。1949年にはウラン製錬など核燃料サイクルの研究開発が原子力研究評議会(JIA)により始められた。また、原子力委員会(JEN)が1951年に設置され、原子力利用に関する各種試験が開始された。なお、JENは1986年にエネルギー・環境・技術・研究センター(CIEMAT)に改組され、原子力開発業務を担当する一方、原子力施設の認可手続きは原子力安全委員会(CSN)が担当することになった。
 2015年1月時点、スペインでは加圧水型軽水炉(PWR)6基と沸騰水型軽水炉(BWR)1基の合計7基・グロス電気出力739.7万KWが運転されており、2013年の原子力による発電電力量は567億3,500万kWh、総発電量に占める原子力の割合は19.7%となっている。発電所の運転サイクルは、トリリョ発電所の12カ月を除いて18カ月(コフレンテスのみ24カ月)と長期化しており、近年の設備稼働率は常に80%以上で推移している。スペインの原子力発電所を表1に、原子力発電所の配置図を図2に示す。
2.原子力発電開発の経緯
 スペインはまず、1955年に米国と原子力協定を結ぶことで、濃縮ウランを入手、米国は1974年までの建設計画に積極的に加わることになった。1958年にはモンクロア研究所でスペイン発の実験炉JEN-1(軽水炉、出力3MW、20%濃縮ウラン燃料)が、1962年にはバルセロナ(Argos)とビルバオ(Arbi)でガス冷却研究炉が運転を開始した。商業炉開発では、まず当時実用化されていた加圧水型軽水炉(PWR)、沸騰水型軽水炉(BWR)、ガス冷却炉(GCR)の3種類の炉型を比較検討するために、これらすべての炉型の発電所が建設されることになった。ホセ・カブレラ(PWR、16万kW)、サンタ・マリア・デ・ガローニャ(BWR、46.6万kW)、バンデリョス1号機(GCR、50万kW)の3基が第一世代の原子力発電所として1969年から1972年にかけて相次いで運転を開始した。
 1975年からは10年間のエネルギー政策目標として国家エネルギー計画(PEN:Plan Energetico Nacional)が策定され、国会の承認を経て施行された。第1次石油危機直後に策定された第1次PEN(1975年〜1984年)では、原子力開発が重点政策に位置づけられ、12基の原子力発電所を建設し、1985年には総発電電力量に占める原子力シェアを57.1%にする計画が立てられた(実際の原子力シェアは22%)。しかし、1979年3月の米国スリーマイル発電所(TMI)事故後、1982年に誕生した社会労働党(PSOE)政権により、原子力発電開発計画は大幅に縮小されることになった。第3次PEN(1983年〜1991年)では、建設中のレモニス1、2号機(Lemoniz、PWR、93万kW×2、進捗率97%及び57%)と、バルデカバロデス1、2号機(Valdecaballeros、BWR、97万5,000kW×2、進捗率71%及び58%)の4基の工事が中断され、トリリョ2号機(Trillo、PWR、104万kW)の計画も凍結された。そして1991年7月に閣議決定された1991年〜2000年を対象とする第4次PENでは、予想される今後の電力需要増加への対応策としては、天然ガス火力、コジェネレーション、フランスからの電力輸入等が示され、5基の発電所の建設・計画の凍結は解除されず、1994年12月成立の電力制度組織法において、上記発電所の建設・計画は完全に中止となった。ただし、第3次PENでは4基の原子炉(Asco-II、Cofrentes、Vandellos-IIとTrillo-I)が中止を免れ、1984年〜1988年までに相次いで運転を開始した。
 一方、フランスの設計による黒鉛減速・炭酸ガス冷却炉バンデリョス1号機は1989年10月にタービン翼損傷からタービン室でオイル火災を発生。その後、政府による安全性再検討の結果、運転再開のためには、日本円で300億円以上かかる大規模な改修が必要であり、改造工事後の運転許可期間8年間を考慮しても経済的に引き合わないとして、1990年5月に廃炉が決まった(ATOMICAデータ「バンデロス原子力発電所1号機の火災事故(14-05-13-05)」参照)。これはスペイン初の廃炉事業で、2003年から廃炉計画に基づき遮蔽隔離中であり、2027年以降解体撤去が進む予定である。
3.出力増強と運転期間延長
 近年、地球温暖化対策やエネルギー安全保障などの観点から原子力発電を再評価する動きが見られ、2011年2月にスペイン議会で承認された持続可能経済法では、エネルギーミックスにおける原子力の役割を再検討する方針が示されている。例えば、既存の原子炉に関しては、原子炉の運転寿命を一律40年に制限する規定が修正され、原子炉の安全性と電力需要、新技術の開発状況、発電コスト、温室効果ガス排出量等を考慮しながら、原子力安全委員会(CSN)が原子炉の運転寿命を決定することになった。また、従来は2年ごとに安全審査を行って運転認可を更新していたが、原子炉の保守や改良に時間がかかることに配慮し、運転認可の更新間隔を長くして10年ごととした。
 他方、電力各社は6基の原子炉を対象に大規模な定格出力増強プロジェクトを1995年から進めている。蒸気発生器(SG)の交換や高圧・低圧タービンの改造を行い、2013年までに約50万kW分の出力増強を行っている。表2に各発電所の具体的出力増強の状況を、図3にスペインにおける原子力発電所設備容量の推移を示す。
 また、上記の運転期間延長に関しては、国内すべての運転中の原子炉を対象に、建設時に40年と定めていた運転期間を延長する計画が進められている。これまで、サンタ・マリア・デ・ガローニャに10年、ホセ・カブレラ(ソリタ)に3年、トリリョに5年と、それぞれ運転延長が認められ、2000年6月にはアルマラス1、2号機に10年延長の認可が与えられた。また、バンデリョス2号機とコフレンテスにも10年の運転延長・更新が原子力規制当局である原子力安全委員会(CSN)により認められている。
 なお、同国で最も古いホセ・カブレラ発電所(PWR、出力150MW)でも、運転期間延長に向けた最新化計画が実施され、運転許可期限の切れる2002年10月までに(1)遠隔式のバックアップ運転停止制御盤の設置、(2)制御盤への消火系制御装置の追加、(3)燃料交換用水タンク弁の制御装置の取り替え等を行うことで2008年まで運転を延長することを計画したが、運転の経済性、機器の劣化に伴う諸問題からCSNは2002年9月、政府に更新期間の短縮を求めた。政府と発電事業者UFG(Union FENOSA Generacion,S.A.)もこれを了承し、2006年4月に閉鎖することが決まった。
 現在、ホセ・カブレラ発電所では、放射性廃棄物の処分と廃止措置を一元的に行う迅速な解体作業が放射性廃棄物管理公社(ENRESA)により進められており、2010年〜2017年までの8年間で廃止措置を完了する計画である。汚染レベルが高い炉内構造物は、キャスクへの封入を考慮し、縦切りして搬出・保管するなど作業の効率化や低コスト化を図っている。使用済燃料は2010年までの準備期間中にUFGが炉心から取り出して移送し、発電所敷地内でコンクリートキャスク保管している。キャスク貯蔵は使用済燃料(12本、175トン)と、比較的放射線量の高い炉内構造物等の解体廃棄物(4本)である。一方、ENRESAは技術的支援を行いながら、廃止措置計画を策定、2010年以降はENRESAに廃止措置の責任が移転し、使用済燃料の管理や原子炉本体の解体等を進めている。低中レベル放射性廃棄物は、タービン建屋を改造した貯蔵施設で一時的に保管し、1カ月に1回の頻度でエル・カブリル処分場へ搬出している。
 また、サパテロPSOE政権(2004年〜2011年)当時、40年の運転期間を目安として既存の原子炉を順次閉鎖する段階的な脱原子力政策を採っていたため、サンタ・マリア・デ・ガローニャ原子力発電所(米国GE社製BWR、46.6万kW)に関しても2013年7月に閉鎖することを2009年に決定している。しかし、2011年12月にラホイ国民党(PP)政権が誕生すると積極的な原子力維持に政策が転換。この発電所の閉鎖決定も見直され、2012年2月に原子力安全委員会(CNS)が2019年まで運転期間を延長することが可能であると判断したことから、2012年7月、産業・観光・商業省は経済・財政状況にも鑑み、前政権下での閉鎖決定を取り消す省令を交付した。一方、ラホイ政権は財政危機対策として、2013年から発電税と核燃料税の導入を決めた。運転会社のニュークレノール社(ENDESAとイベルドーラの合弁会社)は、運転継続のための改修費用1.2億ユーロと課税措置により年間1.5億ユーロの負担が発生するとして、経済性を理由に運転延長申請を見合わせたため、2012年12月末に運転を終了し、以降長期休止状態にある。
 なお、スペインの原子力安全規制は、政府から独立した議会の直接監督下に置かれた機関である原子力安全委員会(CSN)が行う。CSNは原子力安全と放射線防護及び原子力施設の規制・監督全体に責任を有する唯一の機関で、議会によって任命された委員長及び委員(任期6年)により構成され、産業・エネルギー・観光省及び国会に対して安全審査結果を報告することが義務付けられている(図4参照)。CSNは原子力基本法として制定された1980年4月22日法(法律第15号)に基づいて設置された。スペインにおける規制対象となる原子力施設数は、発電炉10(うち運転中7)、研究炉4、核燃料サイクル施設7である。原子力施設の許認可は立地、建設、運転の3段階からなり、CSNによる審議結果(報告)に基づいて産業・エネルギー・観光省(大臣)が行っている(ATOMICAデータ「スペインの原子力安全規制体制(14-05-13-03)」参照)。
(前回更新:2005年9月)
<図/表>
表1 スペインの原子力発電所
表2 スペインの原子力発電所出力増強プロジェクトの推移
図1 スペインにおける発電電力量の推移
図2 スペインの原子力発電所配置図
図3 スペインの原子力発電所設備容量の推移
図4 スペインの原子力関連体制図


<関連タイトル>
スペインの原子力政策・計画 (14-05-13-01)
スペインの原子力安全規制体制 (14-05-13-03)
スペインの核燃料サイクル (14-05-13-04)
バンデロス原子力発電所1号機の火災事故 (14-05-13-05)

<参考文献>
(1)海外電力調査会:海外諸国の電気事業、第2編、(2010年3月)、スペイン
(2)日本原子力産業協会:世界の原子力発電開発の動向、2004年次報告(2005年5月)及び2014年版(2014年4月)、スペイン
(3)日本原子力産業協会:原子力年鑑、2014(2013年10月)、スペイン
(4)スペイン電気事業連合会(UNESA):Las centrales nucleares espanolas en 2013、2013年7月
(5)IAEA発電炉情報システム:Spain、

(6)(公財)原子力環境整備促進・資金管理センター:スペインにおける高レベル放射性
(7)放射性廃棄物公社(ENRESA):HLW storage and SL-LLW disposal in Spain、2014年9月、http://www.polsoz.fu-berlin.de/polwiss/forschung/systeme/ffu/veranstaltungen/termine/downloads/14_salzburg/Zuloaga-2014.pdf
JAEA JAEAトップページへ ATOMICA ATOMICAトップページへ