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<概要>
 スペインの原子力発電所等を含む放射線関連施設の許認可は、1980年4月22日に発効した新原子力法によって行われている。この法律のもと、スペインの原子力安全および放射線防護を司る独立機関として、原子力安全委員会(CSN)が設置されており、CSNによる審議結果の報告に基づいて産業・観光・貿易省(MITYC))が許認可を行う。
 CSNは事務局の下に原子力安全、放射線防護、検査等の部局を構成し、原子力安全規制の提案、建設認可および運転認可を決定するための報告書の提出、施設安全検査、原子力緊急事態に係わる法律、規則の整備と事故対応、環境放射線モニタおよび作業従事者の放射線被ばくのモニタ、セキュリティ、安全に関する各国との情報交換などの業務を行っている。
<更新年月>
2008年12月   

<本文>
 スペインの原子力発電所等を含む放射線関連施設の許認可は、1964年発効の原子力法によって先ず定められ、1972年にはこの法律に従った原子力および放射線取扱い施設に関する規制(RINR:Regulation of Nuclear Installation and Radioactive)が布告・実施された。1980年4月22日に発効した新原子力法(法律1980第15号)では、スペインの原子力安全および放射線防護を司る独立機関として、原子力安全委員会(CSN:Nuclear Safety Council)が設立された。CSNは2007年11月7日法律33号により、以前の規定が改訂されている。
 CSNが規制の対象としている放射線関連施設は、原子力発電所等の原子力施設だけでなく、電離放射線源、または放射性物質の生産、廃棄物処理、貯蔵等を行う施設も含まれている。これらの施設は、危険の度合に応じて3つのカテゴリーに分類され、それぞれ異なる認可手続きが採用されている。認可手続きを受ける必要のある主な原子力施設は次のものがある。
1)原子力発電所、2)発電以外の目的に使用するための原子炉、3)核物質製錬・転換・濃縮・再処理核燃料の形成・加工等の施設、4)核物質や核燃料、廃棄物の貯蔵施設。
1.規制組織
 以前、エネルギーに関する管理監督責任は経済省の経済・エネルギー・中小企業庁にあったが、2008年8月以降、エネルギー関連事項は、産業・観光・貿易省(MITYC)エネルギー庁の所轄に移動している。エネルギー庁は技術、エネルギー政策推進、国際関係の3部門からなるエネルギー局と石油、電力、原子力、探鉱の4部門からなるエネルギー・探鉱政策局から構成されている。CSNは、原子力安全と放射線防護および原子力施設の規制・監督全体に責任を有する唯一の独立機関として、この分野における政府の規制を提案し、認可手続きの各種段階で、MITYCに技術アドバイスを行っている。CSNは、6カ月毎にMITYCを通じて議会に活動報告を提出することになっている。
 CSNは委員5人の他に、約450人の職員からなる事務局を持っており、政府から独立し、議会の監督下に置かれている。委員長は大臣クラスで、委員ともどもMITYCから指名され、議会の承認を得て任命される(任期6年)。事務局は事務局長の下、原子力安全技術、放射線防護技術、検査等の部局から構成される。図1にCSNの組織図を示す。
 CSNの職務には、1)各分野における安全規制の提案、2)建設認可、運転認可、廃止措置認可を決定するための、MITYCへの報告書提出、3)施設安全検査の実施、4)原子力緊急時に係わる法律、規則の整備、5)事故時の対応、6)放射性廃棄物の安全管理規制、7)環境放射線モニタおよび作業従事者の放射線被ばくモニタ、8)セキュリティ、9)安全に関する各国との情報交換などがある。
 なお、スペイン政府は2008年1/28〜2/8にかけて国際原子力機関IAEAによる総合的規制評価サービス(IRRS)を受入れ、原子力安全規制に係わる法制度、組織等について総合的なレビューを行っている。その結果、原子力安全に対するCSNの重要性が評価され、オープンで透明、かつ柔軟な組織体制作りへの助言を得ている。
2.認可手続き
 原子力施設設置の許認可は立地、建設、運転の3段階からなり、CSNによる審議結果の報告に基づいて産業・観光・貿易省(MITYC)が許認可を行うことが法律で定められている。また、許認可手続きには、環境省が環境影響評価を行うなど、他省庁および公共団体、専門家との協議も行われる。MITYCはこれらの意見をすべて考慮した上で、認可を決定する。以下に原子力発電所の設置に関する認可の流れを示す(図2参照)。
(1)立地認可(予備認可)
 MITYCは、電力会社などの申請者が提案した施設の設置および選定されたサイトに関して、地方当局との協議、CSNの報告書、情報公開時の異議申し立て等を参考に、分析調査して立地認可を与える。申請書には、設置の理由、1986年布告法令第1302号に従ったサイトおよび周辺環境への詳細な調査の結果、プロジェクトの財政面などの情報が盛り込まれる。立地認可は、公式の承認であり、このとき特定サイトに耐震、放射性廃棄物の処分等の制限が課されることもある。
(2)建設認可
 CSNは、原子力安全および放射線防護の立場から独自の技術的見解を作成し、MITYCが建設の最終決定を行う。建設認可には、プラントの詳細設計、建設に関する仕様(基本仕様、所在地、実施工程、建設業務の仕様)、運転責任者、参考プラントの明細、サイトの諸条件、放射性廃棄物管理の方法、設計および建設時の品質管理、規則、基準、運転員訓練の基本的指導要綱などの項目が明記され、官報で公示される。
(3)運転認可
 運転認可は試験運転のための暫定運転認可と最終運転認可の二つに分かれる。
 CSNは原子炉試験運転計画の評価を行い、MITYCに結果を報告する。MITYCは見解に基づいて暫定運転認可を発給する。CSNおよびMITYC検査官の立会いのもとで運転試験が行われ、合格すると、申請者は最終運転認可を申請することができる。
 最終運転認可は、CSNにより安全性等が審査された後、MITYCで運転者が遵守すべき条件等を決定し、大臣により認可が決定される。認可の更新は2〜10年の単位で延長される。認可更新の申請に対しては、CSNが対象の原子炉の運転経費や安全性などの審査を行い、更新の可否や年数についての勧告をMITYCに行い、MITYCが最終的な判断を下す。
3.原子力施設の検査
 CSNは原子力安全および放射線防護の観点から、MITYCはそれ以外の項目から、建設中および運転中の原子力施設の監督と検査を行う。
(前回更新:2003年1月)
<図/表>
図1 スペインの原子力安全委員会(CSN)の組織
図1  スペインの原子力安全委員会(CSN)の組織
図2 スペインにおける原子力施設認可システム
図2  スペインにおける原子力施設認可システム

<関連タイトル>
スペインの原子力政策・計画 (14-05-13-01)
スペインの原子力発電開発 (14-05-13-02)
スペインの核燃料サイクル (14-05-13-04)

<参考文献>
(1)OECD/NEA:Licensing Systems and Inspection of Nuclear Installations 1991,p.91−100
(2)OECD/NEA:Nuclear Legislation Analytical Study (1996 Edition),Spain−1?24
(3)(社)日本原子力産業会議:OECD/NEA加盟国の放射性廃棄物管理計画、原子力資料No.299(1999)、スペイン、p120
(4)(社)日本原子力産業会議:原子力産業新聞2002年11月14日号3面
(5)スペイン原子力安全委員会(CSN)
(6)原子力安全委員会:平成17年原子力安全白書、第6章第2節スペイン、
、p.161
(7)産業・観光・貿易省(MITYC)、

(8)IAEA:INTEGRATED REGULATORY REVIEW SERVICE(IRRS)TO SPAIN,

(9)IAEA:Country Nuclear Power Profiles,http://www-pub.iaea.org/MTCD/publications/PDF/cnpp2003/CNPP_Webpage/countryprofiles/Spain/Spain2003.htm
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