<本文>
1.州許認可当局
ドイツでは、
原子力発電所の許可および監視に関する規制の責任は、連邦政府から発電所の立地する州政府に委託することが原子力法で規定されている。州政府は、連邦環境・自然保護・原子炉安全省(BMU:Bundesministerium fur Umwelt, Naturschutz und Reaktorsicherheit, 環境省と略す)の監督のもとで、原子力に係る法規を執行する。この目的のため、州政府は独自に省庁を設置する。
2.連邦政府
原子力の規制と推進は省庁レベルで分離されており、原子力規制は連邦環境・自然保護・原子炉安全省(BMU)、原子力の研究開発は連邦教育・研究省(BMBF:Bundesministerium fur Forschung und Technologie)がそれぞれ担当する。連邦政府内における規制の均一性を確保するために、BMUが州の規制活動を監督している。このため、BMUは規制上の多くの指針を出している。連邦政府と電力会社の間で原子力発電所の閉鎖について合意され、これをもとに改正原子力法が2002年4月に成立した。このため、
放射性廃棄物処分に関する基礎研究と開発の責任は連邦経済・技術省(BMWi:Bundesministerium fur Wirtschaft)に移管された。
3.その他、規制組織
原子炉安全委員会(RSK:Reaktorsicherheits−Kommission)
原子炉の安全性、
保障措置に関するすべての問題に対してBMUに助言する責任を持つ。また、州に対する連邦の監督を行う際にも助言する。RSKは、許認可における技術審査の基礎を規定するものとして指針(RSKガイドライン)を作成し、個々の審議や勧告の際の基礎資料として引用される。BMU大臣から任命される18人の委員で構成される。
放射線防護委員会(SSK:Strahlenschutzkommission)
電離放射線の
リスクからの防護のあらゆる問題について、BMUに助言する責任を持つ。BMU大臣から任命される15名の委員で構成される。
原子炉安全協会(GRS:Gesellschaft fur Anlagen−und Reaktorsicherheit mbH)
原子力専門家機関として、BMUからの委託を受けて原子炉安全技術分野での研究活動を行うとともに、技術問題について支援する。一部は州規制当局からの委託事業も行う。1877年に技術検査協会(TUeV)の原子力安全研究所(IRS:Institut fur Reaktor−sicherheit)とミュンヘン大学の原子炉管理・プラント防護研究所が合併して設立された。
技術検査協会(TueV:Technischen Uberwachungs−Vereine)
政府公認の非営利の民間検査機関。産業界が120年以上前にボイラーの検査を目的として設立した。原子力に関して、州政府からの依頼を受け、専門家として助言や検査を行う。国内11ヵ所にあり、それぞれが比較的独立して活動している。
原子力技術委員会(KTA:Kerntechnischer Ausschuss)
1972年に設立された委員会で、安全技術基準の策定やそれらの遵守を促進している。委員は製造業者、運転者、規制機関、技術専門家機関などの関係機関から代表者各10名(合計50名)で構成されている。
連邦放射線防護局(BfS:Bundesamt fur Strahlenschutz)
BMUの業務分野のうち、放射線防護に関し専門的な立場から、BMUを支援するため、BMU内に1989年に設立された独立官庁である。その他の主な業務は、
核燃料の政府管理、連邦廃棄物処分場の建設・運転、核燃料・
放射性物質の輸送の許可、核燃料貯蔵の許可、放射線被ばく登録の確立・維持、事故・トラブル情報の文書化、関連安全研究の実施。
原子力州間委員会
連邦政府および各州規制機関と連絡調整を行う機関。各州規制機関の代表と連邦大臣からなる委員会。安全を確保するための基準などを作成するが、通常は拘束力を持たない。連邦大臣の名で交付される場合には、実質的拘束力は大きい。
連邦政府官庁の組織図を
図1 、
図2 、
図3 に、原子力許認可・規制機関の関連図を
図4 に示す。
<図/表>
<関連タイトル>
旧西独の原子力発電の現状および統一ドイツの原子力政策 (14-05-03-01)
旧東独の原子力政策および原子力発電の現状 (14-05-03-02)
ドイツの原子力発電開発 (14-05-03-03)
ドイツの原子力開発体制 (14-05-03-04)
ドイツの核燃料サイクル (14-05-03-06)
ドイツの電気事業および原子力産業 (14-05-03-07)
ドイツのPA動向 (14-05-03-08)
<参考文献>
(1)(社)日本原子力産業会議:原子力ポケットブック 2002年版(2002年11月)、p.460−464
(2) (社)日本原子力産業会議(編集発行):世界の原子力発電開発の動向 2001年次報告 (2002年5月)、p.46−50
(3)(社)日本原子力産業会議(編集発行):原子力年鑑 2003年版(2002年11月)、p.379−385