<大項目> 海外情勢
<中項目> ヨーロッパ各国
<小項目> ドイツ
<タイトル>
ドイツのPA動向 (14-05-03-08)

<概要>
 アレンスバッバ研究所が2001年夏に行った世論調査によると、ドイツ国民の大多数は原子力発電が将来にわたって重要な電源であり続けると回答している。連邦政府が進める脱原子力政策については高い関心が示されてはいるものの、多くの人が正確に理解していないことが浮き彫りになった。この世論調査後、2002年4月には脱原子力政策を盛り込んだ改正原子力法が発効。同秋に行われた総選挙では、社会民主党(SPD)と1990年連合・緑の党(以下、緑の党)の与党連合が僅差で過半数を制した。原子力問題は選挙の争点に含まれなかった。
<更新年月>
2003年01月   

<本文>
1.ドイツの原子力発電開発
 国内に石炭資源を有するドイツは、石油危機以来、石油への依存を減らし、国内炭と原子力を代替エネルギーとする政策を掲げた。1970年代半ばから80年代はじめにかけて、社会民主党(SPD)と自由民主党(FDP)の連立政権が原子力開発を推進したが、超党派の合意が得られていた。しかし、1970年代後半ごろから環境保護運動や反原子力運動が高まり、緑の党が1980年に設立された。
 さらに、SPDがキリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)に政権を奪われ、緑の党が台頭するにつれて、SPD内に原子力を批判する勢力が強まった。こうした中、1986年4月のチェルノブイリ事故が決定打となり、SPDは同8月の党大会で原子力反対を綱領として採択した。これ以来、原子力開発にむけた政党間の合意が崩れ、原子力を推進するCDU/CSUと反対するSPD、さらに強硬に反対する緑の党という対立関係が続いている。
 原子力発電所の新規建設は、1984年に着工したネッカー2号機が最後。同機は1989年に運転を開始している。ただ、新規建設が途絶えた背景には、政治的な問題のほか、経済の低迷による電力需要の伸びの鈍化や電力市場の自由化に伴う欧州連合(EU)内の電力取引の拡大などもあげられる。2001年末現在、運転中の原子力発電所は19基、設備容量の合計は2,235万5,000kWに達している。また発電電力量に占める各電源の割合は、石炭が50%、原子力が30%、天然ガスが9%、水力が4%、風力が2%、石油が1%とまでなった。原子力発電所の平均時間稼働率は91.43%を達成し、世界的にも高い水準を保っている。
 原子力推進派のCDU/CSUは、連邦政権に就いていた1983年〜1998年の間、野党ほか、州政府、労働組合、産業を巻き込んで幾度となくコンセンサス協議を行った。しかし、いずれの協議も合意に達しなかった。この間、原子力の許認可権限が実質、州政府にあることから、州によっては緑の党やSPD当局が発電所の運転監督に過剰に介入し、発電所が長期にわたる運転停止を強いられるケースが増えた。
 そうした中、SPDと緑の党が1998年秋の総選挙により政権を樹立。産業界との交渉の結果、段階的脱原子力政策で合意に達し、2002年4月には改正原子力法が成立した。4年後の総選挙でもCDU/CSUが僅差で敗れ、現政権が再選を果たした。このため、エネルギー・バーデン・ビュルテンベルク(EnBW)社は2002年12月、同社が所有するオブリッヒハイム原子力発電所(PWR、35万7000kW)を遅くとも2005年11月15日までに閉鎖することを決定した。
2.ドイツの世論調査
 ドイツ国民は一般的に新規原子力発電所の建設には反対するが、既存の原子力発電所の運転継続は認める傾向にある。産業界は、短期的には既存の原子力発電所の運転継続が保証されていることから現政府との妥協もやむ終えないとの考えだが、長期的には政府に対して原子力だけでなく、他電源をも含めた総合的なエネルギー政策を策定するよう強く求めている。また、サイトの周辺住民は、原子力発電所が高い安全水準を保ち、税収や雇用面で地域の経済に貢献していることから、運転継続を認めている。
 民間の調査会社であるアレンスバッバ研究所は2001年夏、ドイツ原子力産業会議(DAtF)の委託を受け連邦政府の脱原子力政策について世論調査を実施した。この調査は、2001年8月から9月にかけて2071名を対象に対面形式で行われた( 表1−1表1−2表1−3表1−4 )。
 それによると、81%は脱原子力協定に関心があると回答しているが、協定通りに原子力発電所が段階的に閉鎖されると、あと20年程度で全廃されることを知っている人は全体の4分の1に過ぎなかった。連邦政府の脱原子力政策について、「良い」とする回答は28%、「悪い」とする回答は34%だった。それぞれの内訳を見ると、「良い」と回答したなかに原子力推進派が21%、「悪い」としたなかに原子力反対派が37%とそれぞれ含まれている。これは、推進派の中には発電所の通常運転を妨げない点を評価する見方がある一方、反対派の中には発電所が即閉鎖にならない点に批判的な見方をするためと分析されている。
 また、将来の電源について質問したところ、脱原子力に伴い再生可能エネルギーが増えるとした回答が92%にのぼった。石炭については増加するとした回答は7%にとどまり、減少するとした回答は65%に達した。ただ、化石エネルギーによる発電シェアを尋ねる問いに対しては、「5〜15%未満」とする回答が32%と最も多く、「15%以上」は29%だった。
 脱原子力のマイナス影響としては、「電力価格の上昇」や「輸入電力の増加」が多く、「雇用の減少」や「国際競争力の低下」「生活水準の低下」をあげた回答は少なかった。一方、プラス面として「環境保全上好ましい」との回答が多数を占めた。
 3分の2はドイツ以外の国が将来、原子力を放棄するとは思っておらず、反対に必要ならば利用が拡大すると考えていることが明らかになった。さらに、原子力の賛否に係わらず、全体の68%がドイツにとって放射性廃棄物の最終処分施設を開設することが必要だと考えていることが分かった。
 DAtFは、脱原子力政策がドイツ国民に十分理解されているわけではないとした上で、大半は脱原子力政策は撤回できるものと、非常に現実的な見方をしていると評価している。またDAtFは、原子力賛成派も反対派も連邦政府に対して早急な最終処分場の設立を要望している点を強調している。
<図/表>
表1−1 アレンスバッハ研究所による脱原子力政策に関する世論調査の主な結果(問1〜4)(1/4)
表1−2 アレンスバッハ研究所による脱原子力政策に関する世論調査の主な結果(問5〜8)(2/4)
表1−3 アレンスバッハ研究所による脱原子力政策に関する世論調査の主な結果(問9〜10)(3/4)
表1−4 アレンスバッハ研究所による脱原子力政策に関する世論調査の主な結果(問11〜12)(4/4)

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<関連タイトル>
旧西独の原子力発電の現状および統一ドイツの原子力政策 (14-05-03-01)
旧東独の原子力政策および原子力発電の現状 (14-05-03-02)
ドイツの原子力発電開発 (14-05-03-03)
ドイツの原子力開発体制 (14-05-03-04)
ドイツの核燃料サイクル (14-05-03-06)

<参考文献>
(1) (社)日本原子力産業会議(編集発行):世界の原子力発電開発の動向 2001年次報告(2002年5月)、p.46−50
(2) (社)日本原子力産業会議(編集発行):原子力年鑑 平成2003年版(2002年11月)、p.379−385
(3) アレンスバッハ研究所:「脱原子力政策に関する世論調査報告書」(2001年11月) ”Das Meinungsklima Kernenergie nach Unterzeichnung der Vertrage vom 14. Juni 2000”
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