<大項目> 海外情勢
<中項目> ヨーロッパ各国
<小項目> イギリス
<タイトル>
ブラッドウェル2号機原子力発電所の寿命延長の検討 (14-05-01-10)

<概要>
 英国では、1992年8月にニュークリア・エレクトリック(NE)社のブラッドウェル2号機の寿命延長、すなわち運転期間の更新に原子力施設検査局(NII)の許可が出されたことを契機に、老朽化したマグノックス炉の寿命延長、特に経済的寿命の評価研究が行われている。マグノックス炉は軽水炉と比べて取替え不能な機器を多数抱えており、深刻な経年劣化問題に直面しているが、NE社では、1つ1つのマグノックス炉に対し長期安全性評価(LTSR)を実施し、工学的な改善を行えば寿命延長も可能という結論を出している。しかし、この改善費用には総額1億ポンド(約250億円)も要し、このため、経済性の面で疑問が出されている。
<更新年月>
1998年06月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
1.ブラッドウェル2号機の寿命延長許可
 英国で現在運転中のマグノックス炉は全部で20基あり、その運開年は、1956年のコルダーホール1号機を初め、いずれも古く、しかも、略々30年近くを経過した今もなお運転が継続されている。従って、そろそろ経済的寿命が尽きるため、そのまま閉鎖するか、あるいは寿命延長を行うかの岐路に立っている炉が多い。
 このような状況の中で、1992年8月の初めにニュークリア・エレクトリック(NE)社は、過去30年間運転を行ってきたブラッドウェル2号機の運転継続について、原子力施設検査局(NII)からの許可を取得することに成功している。

2.NE社による全マグノックス炉の寿命評価研究
 英国の原子炉の場合、運転許可の期間は限定されていないが、少なくとも2年ごとに運転許可の有効性が確認されることになっている。運転許可の有効性として最も重視されるのが、経済的寿命である。ブラッドウェルが運開に入った当時、マグノックス炉のもともとの経済的寿命は20年間とされていたが、1970年代に入って、それが25年間に延ばされた。ただしウィルファ原子力発電所については、当時、その運転経験がほとんど積まれていなかったため、その運転寿命は20年のまま留め置かれている。その後、1980年代に入って中央電力庁(CEGB)の14基のマグノックス炉を引き継いだNE社が、さらに原子炉寿命の評価研究を行い、その結果、マグノックス炉の経済的寿命は全て30年間とされるに至っている。

3.マグノックス炉の経年劣化問題
 現在、NE社が運転する14基のマグノックス炉のうち、10基はペアーで設置されている。すなわち、ブラッドウェル1〜2号機、ヒンクレーポイントA1〜A2号機、トロースフィニッド1〜2号機、ダンジネスA1〜A2号機、およびサイズウェルA1〜A2号機の5発電所である。いずれも、鋼製の原子炉圧力容器を採用している。炉心において生成された熱は、ガス・ダクトを経由して、外付けのボイラーへ移送される。またバークレー1〜2号機も、このタイプのマグノックス炉であるが、現在、このペアーの原子炉2基は閉鎖され、デコミッショニング廃止措置)の第1段階にある。
 また、オールドベリー1〜2号機およびウィルファ1〜2号機もマグノックス炉であるが、これら4基は上述の10基と違った設計を有し、エンキャプセレート(密封)されたボイラーを有したプレストレスト・コンクリート製の圧力容器となっている。
 マグノックス炉の安全機能の1つとして、比熱消費率が低いことと、冷却材がシングル・フェーズとなっていることの2点があげられる。また、過圧状態下のいかなる故障条件においても、この原子炉は良好な自然循環冷却能力を有しており、電力供給やガス循環の系統を脅かすような広範囲の故障に対しても頑健である。また大幅な減圧についても、これは極めて起こりそうもない故障と考えられるにもかかわらず、ガス冷却ダクトの重要な故障の1つとして設計ベースに含まれている。しかしながら、熱除去能力は極めてその速度が遅く、燃料抜き取りの失敗や過熱がシビア・アクシデント事象として想定されている。
 マグノックス炉は、軽水炉と比べて、取替え不能な機器を数多く抱えており、このため、次のような深刻な経年劣化問題に直面している。
 ・鋼製の圧力容器の照射による鋼材の材質変化
 ・黒鉛減速材の物理的、化学的変質
 ・鋼製の炉内構造物の酸化問題
 特に最近、議論の的となっているのが、圧力容器の健全性問題で、照射の長期化による圧力容器鋼材の延性と温度上昇の問題である。この現象は、圧力容器内のサンプルを経由して、その変化率がモニターされており、結果的には、これらのサンプルのモニタリングによって原子炉全体の寿命について知ることができるようになっている。
 圧力容器鋼材が通常時および事故・故障時においてクラックに対し十分な耐久性を保持していることが示されている場合には、非延性状態での原子炉稼働は必ずしも安全性を損なうものではない、とNE社は説明している。また、延性問題は、圧力容器の低温領域でさらに重要となるので、NE社は、それを補償するために運転温度を上げている。

4.NE社による長期安全性評価(LTSR)
 NE社は、マグノックス炉の1つ1つに対し長期安全性評価(LTSR)を実施してきたが、これらLTSRでは、マグノックス炉の30年間およびそれ以上の期間の運転を阻止するような要因は全く見出せなかった、という。しかしながら、それぞれ個々のLTSRがNIIによって審査されることになっており、また、個別のベースでNIIの許可は出されることになっている。ブラッドウェル2号機に与えられた許可もこのような手順で与えられており、他のマグノックス炉についても、順次、許可が与えられていくものと考えられる。
 NE社の実施したLTSRの結果、工学的な改善点が数多く示され、また、NIIも工学的改善を行うように要求を出している。また、この時点で運転されていた全発電所に対して見積もられたこれら改善費用は、総額1億ポンド(250億円)にも達する。その結果、何故にNE社がこれら老朽のマグノックス炉の寿命延長のために、そのような巨額の支出を行う必要があるのかという疑問が出されている。
 NE社が与えられた継続運転の基準は、経済性ということであったはずである。これに対し、NE社では、これらの原子力発電所による発電コストは、老朽化したとは言え、他の発電方式と比較しても良好であり、約1.2ペニイ/kWh(3円/kWh)と、電力の市場価格を十分に下まわっていると説明している。
 競争的な価格で電力を生産できるようにすること、特に、コストを原子力補助金なしの場合の市場価格を下まわるようにできるかどうかということが、NE社の最大関心事である。NE社が、老朽化したマグノックス炉を運転維持することで、もはや原子力補助金は必要でないと証明できるのであれば、これは、英国の原子力産業界にとって大きな利益となるであろう。英国政府の原子力長期計画の全体的な見直しにおいて、特にこの点が問われることになろう。
<関連タイトル>
世界の原子力発電の動向・西欧州(2005年) (01-07-05-07)
イギリスの原子力政策および計画 (14-05-01-01)
イギリスの原子力発電開発 (14-05-01-02)
マグノックス炉の廃炉計画 (14-05-01-12)

<参考文献>
(1) 株式会社 アイ・イー・エー・ジャパン 「欧州原子力情報サービス」No.114 1992年 9月
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