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<概要>
 BNFLは、2000年5月、20基のガス冷却炉マグノックス炉の閉鎖計画を発表した。オールドベリー(2基)およびウィルファ両発電所(2基)のマグノックス炉については、当初、マグロックス燃料の導入計画によって閉鎖時期を2010年以降としていたが、2001年1月、これも閉鎖時期が見直されることになった。
 さらに、2002年6月、初期の比較的出力の小さいコールダーホール発電所(4基)およびチャペルクロス発電所(4基)のマグノックス炉について、経済性、経年劣化現象などが理由で、それぞれ2003年3月、2004年6月と閉鎖時期が早まった。2009年末現在、マグノックス炉はオールドベリーとウィルファ発電所の4基が運転中であるが、2010年には閉鎖時期を迎える。なお、イギリスの廃止措置は、超長期的戦略を採用しており、廃止措置の完了は140年後の2150年を予定している。
<更新年月>
2009年11月   

<本文>
1.マグノックス炉の閉鎖計画と閉鎖概要
 英原子燃料会社(BNFL)は2000年5月23日、20基のガス炉(マグノックス炉、GCR)の閉鎖計画を明らかにした。それによると、ブラッドウェル1、2号機、コールダーホール1〜4号機、チャペルクロス1〜4号機、ダンジネスA−1、2号機、ヒンクリーポイントA−1、2号機、サイズウェルA−1、2号機のあわせて16基を2010年までに閉鎖する。このうちヒンクリーポイントA−1、2号機についてはすでに運転を停止していたため、この発表をもって正式に閉鎖されたことになった。残るオールドベリー1、2号機とウィルファ1、2号機の4基は、新燃料のマグロックス燃料開発を前提に、それぞれ2013年、2016年(または2021年)まで運転が継続されることになった。表1に閉鎖計画を、図1にイギリスにおける原子力発電所の配置図を示す。
 マグノックス炉は、1950年代から1960年代にかけて運転を開始した天然ウランを燃料とする黒鉛減速炭酸ガス冷却型原子炉(GCR:Gas Cooled Reactor)で、出力は比較的小さい。燃料の天然ウラン金属棒をマグネシウムを母材とした合金マグノックスで被覆していることからマグノックス炉(Magnox)と呼ばれる。
 BNFLは20基のGCRを運転しているが、このうち12基は電力事業再編の際にニュークリア・エレクトリック(NE)社から移管された。英国では1995年にニュークリア・エレクトリック(NE)社とスコティッシュ・ニュークリア(SNL)社の民営化を柱とした原子力政策が策定され、1996年に両社を子会社とする持ち株会社、ブリティッシュ・エナジー(BE)社が設立された。その際、NE社が所有していた12基のGCRは経済的に不利との理由で、民営化の対象から除外され、新設の国営会社であるマグノックス・エレクトリック(ME)社に移管され、さらに1998年1月にME社はBNFLに吸収合併されている。
 なお、マグロックス燃料に関して、BNFLは1990年代初期から研究開発に着手している。マグロックス燃料は、改良型ガス冷却炉(AGR)用燃料を、マグノックス炉用に改良したもので、マグネシウム被覆のマグノックス金属燃料とは異なり、被覆にステンレス鋼を採用したウラン酸化物のセラミック燃料である。使用済マグロックス燃料は、他のAGR燃料と同様、BNFLの酸化物燃料再処理工場(THORP)で再処理できるうえ、長期貯蔵も可能である。BNFLは2000年当時、技術や安全面での課題を既に克服していた。しかし、商業化には多額の投資が必要なため、財政が悪化していたことで、2001年1月25日にはマグロックス燃料の導入計画を断念すると発表した。これにより、マグロックス燃料の導入を前提としていたオールドベリーとウィルファ両発電所の閉鎖時期が2010年に見直された。
 また、この閉鎖計画に伴い、スプリングフィールドにあるマグノックス燃料製造施設は2010年までに、セラフィールドにあるマグノックス燃料再処理施設(B−205)は、再処理が終了する2012年ごろに閉鎖されることが決定した。B−205はマグノックス炉専用の再処理施設として1964年に建設されたもので、それ以外の燃料は全てセラフィールドにあるTHORPで再処理される。
2.マグノックス炉閉鎖計画の見直しと現状
 2002年6月21日、BNFLは8基のマグノックス炉の閉鎖を予定より早く閉鎖することを発表した。1950〜1960年代に運転開始したコールダーホール発電所は2003年3月までに、チャペルクロス発電所は2004年6月までに、それぞれ4基が閉鎖されることになった(表1参照)。早期閉鎖に追い込まれた理由は、他のマグノックス炉に比べても出力が小さい、両発電所の経済性は低く、間接費が高いうえ、燃料サイクルコストを中心に運転コストが売電収入を上回っていることや、英国の電力卸売価格が下落傾向にあるなど経済的理由が主である。さらに、2001年後半から、両発電所の原子炉の大部分では、運転停止の原因となる原子炉の経年劣化現象が表面化、チャペルクロス1号機では2001年8月末、黒鉛減速材の収縮が明らかになっていた。
 その後、他のマグノックス炉の閉鎖時期は当初の予定通りに進められ、16基のマグノックス炉が廃止措置に移行し、燃料の搬出作業または安全貯蔵への準備作業を行っている(表2参照)。
 なお、マグノックス炉やその原子燃料サイクル施設、および初期の原子力研究開発施設は負の遺産または原子力債務と呼ばれ、廃止措置に関する費用は総額727億ポンドと試算されている。また、イギリスの廃止措置は、放射能レベルが時間とともに減衰することから、(1) 安全面の確保がしやすいこと、(2) 廃止費用が割安となること、(3) 積立金の運用益を廃止措置費用に充当できることを理由に超長期的戦略を採用しており、廃止措置の完了は140年後の2150年を予定している。2009年末現在、マグノックス炉はオールドベリーとウィルファ発電所の4基が運転中であるが、2010年には閉鎖時期を迎える。このうち最後に運転を開始し、出力が最も大きいウィルファ発電所(グロス電気出力56.5万kW)の2006年に作成された廃止措置計画を図2に示す。これによると、2010年に運転が終了すると炉内燃料要素や乾式貯蔵セルはセラフィールドの再処理工場へ搬出後密閉管理される。2025年までに、除染作業や廃棄物のパッケージ化、生体遮蔽体の外部施設の解体とともに、低レベル廃棄物の貯蔵施設、貯蔵監視装置の設置等、安全貯蔵までの準備を行う。2026年から2126年まで約100年間、原子炉本体の監視を続けながら遮蔽隔離を行う。2126年以降10年間で原子炉本体を解体撤去、放射能の除去後、規制を解除して2125年に敷地を解放する予定である。
 なお、英国政府はこのような超長期的な廃止措置に対応するため、エネルギー法案(2004年7月成立)の下に原子力廃止措置機関(NDA:Nuclear Decommissioning Authority)を2005年4月1日に発足させた。NDAは債務保証および効率的コスト管理を推進する組織であり、省庁から独立した公的機関と位置付けられ、マグノックス炉(一部運転中の施設を含む)の所有はBNFLからNDAへ移管された。NDAは廃止プログラムの実施にあたり、請負企業は競争入札で決定している。また、BNFLは債務だけでなく大半の資産もNDAへ移管したため、自主的に施設を所有・運転する国有企業から、NDAからの委託により施設を運転・管理する企業へ変更された。2005年には事業の再編を行い、再処理、廃止、除染などの事業をNDAから請け負うブリティッシュ・ニュークリア・グループ(BNG)社、炉メーカーのWH社、およびR&D部門のネクシア・ソリューション社を傘下に置く持ち株会社となったが、その後、株式の売却や技術移転が進んでいる。
<図/表>
表1 英国マグノックス炉の閉鎖計画
表1  英国マグノックス炉の閉鎖計画
表2 英国マグノックス炉の概要
表2  英国マグノックス炉の概要
図1 イギリス原子力発電所の配置図
図1  イギリス原子力発電所の配置図
図2 ウィルファ発電所の廃止措置計画
図2  ウィルファ発電所の廃止措置計画

<関連タイトル>
黒鉛減速炭酸ガス冷却型原子炉(GCR) (02-01-01-06)
イギリスの再処理施設 (04-07-03-09)
英国における原子力発電所廃止措置計画 (05-02-03-05)
イギリスの原子力政策および計画 (14-05-01-01)
イギリスの核燃料サイクル (14-05-01-05)

<参考文献>
(1)日本原子力産業会議(編集・発行):世界の原子力発電開発の動向 2002年次報告(2003年5月)
(2)日本原子力産業会議(編集・発行):原子力年鑑2002/2003年版(2002年11月)
(3)Magnox North:hunterston A, Chapelcross, Wylfa, Trawsfynydd, Oldbury
(4)Magnox Sorth:Hinkley Point A, Sizewell A, Bradwell, Dungeness A,
(5)British Nuclear Group:2006/07 Lifetime Plan Rev. B 21-04-2006-29 Wylfa
(6)原子力廃止措置機関(NDA:Nuclear Decommissioning Authority):Calder Hall、http://www.nda.gov.uk
(7)IAEA発電炉情報システム(PRIS)United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland:Nuclear Power Reactors - Alphabetic,
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