<大項目> 海外情勢
<中項目> アジア各国
<小項目> バングラデシュ
<タイトル>
バングラデシュにおけるRI、放射線利用 (14-02-10-02)

<概要>
 バングラデシュでは、旧東パキスタン時代の1964年、ダッカに原子力開発センターが設置され、1973年には大統領令によりバングラデシュ原子力委員会(BAEC)が設置されている。その後、1979年には核不拡散条約(NPT)に加盟し、1982年にはIAEA(国際原子力機関)との保障措置協定が発効、2001年には追加議定書を締結した。この間、フランス、米国、中国、ロシアと原子力協力協定を締結している。
 BAECは、原子力開発だけでなく、国内の科学技術全般に関しても重要な役割を担っており、1975年にはサバル原子力研究所(AERE)の設立を決め、1986年にはトリガ・マーク2型研究炉(3MW)が臨界となった。このほかに照射設備として1,850TBqのコバルト60照射装置を有しており、食品照射、バイオテクノロジーによる品種改良などの研究に利用されている。医療施設としては15か所に核医学超音波センター及び研究所を持っている。また、国内企業のBEXIMCO社とジョイント・ベンチャー会社(GAMMATECH)を興し、1993年にチッタゴン市に3,700TBqのコバルト60照射装置を設置し、照射サービスを行っている。
<更新年月>
2014年01月   

<本文>
はじめに
 バングラデシュでは、旧東パキスタン時代の1964年、ダッカに原子力開発センター(AECD:Atomic Energy Center, Dhaka)が設置され、1973年には大統領令によりバングラデシュ原子力委員会(BAEC:Bangladesh Atomic Energy Commission)が設置された。所属人員は2000年時点で、1,620名(うち400名が科学者、技術者、医師)であった。1979年に核不拡散条約(NPT)に加盟、1982年にIAEA(国際原子力機関)との保障措置協定が発効している。この間、現在までにフランス、米国、中国、ロシアと原子力協力協定を締結しており、さらにIAEAと1982年に核物質防護協定を締結、2001年には追加議定書を締結している。
 BAECは、原子力開発だけでなく、国内の科学技術全般に関しても重要な役割を担っている。1975年にはサバル原子力研究所(AERE:Atomic Energy Research Establishment, Savar)の設立を決定、1986年にはトリガ・マーク2型研究炉(3MW)が臨界となった。このほか照射設備としては、1,850TBqのコバルト60照射装置を有しており、食品照射、バイオテクノロジーによる品種改良などの研究に利用されている。医療施設としては、5か所のラジオイムノアッセイの研究所を持っている。1993年にBAECは、国内企業であるBEXIMCO社とジョイント・ベンチャー会社(GAMMATECH)をチッタゴン市に設立し、3,700TBqのコバル60照射装置による照射サービスを行っている。
 バングラデシュは放射線利用のほかに、古く旧東パキスタン時代から原子力発電導入の構想を持っており、1961年に立地サイトとしてガンジス川中流のルプールが検討された。この建設計画は独立戦争のために中断したが、その後、原子力発電所建設計画が復活した。1人当たりの国内総生産は約770米ドル(2012年)と上昇しており、資金面でも改善が見られ、2005年以降、中国やロシアとの協力と国際原子力機関の支援を得て、ルプール原子力発電所の建設に向けて着実な動きが見られる。
 以下に原子力開発の現状を主に施設及び放射線利用の面から概括する。
1.主要な原子力施設
(1)研究炉
 バングラデシュは、パキスタンから独立する前から原子力医療、農業のセンターを持っていたが、独立後、1986年9月13日にトリガ・マーク2型研究炉(3MW、最高中性子束:約8×1013n/cm2)が臨界に達した。この原子炉を用いて、原子力医療センター向けのラジオアイソトープ製造(99mTc、131I等)、中性子ラジオグラフィによる分子構造解析(照射スペースでの熱中性子束:1.13×106n/cm2sec)、その他原子力技術者の養成などを行っている(表1)。
2.放射線産業、農業利用
 次に、バングラデシュにおける放射線利用の現況について、分野ごとに述べる。各分野の放射線利用の現状については表2に総括的に示した。
(1)農業利用及び食品照射
 農業への原子力技術の利用は、農業省傘下の原子力農業研究所で行われている。原子力科学技術に関する研究・開発及び訓練のための地域協力協定(Regional Cooperative Agreement for Research,Development and Training Related to Nuclear Science and Technology、以下「RCA}と略称)の下での空気中窒素の固定計画は、成功裡に完了し、民間会社一社がリゾビウム根粒バクテリアのバイオ肥料生産ビジネスを開始した。米の遺伝的多様性突然変異による増強についても研究が実施されている。
 食品保存及び医療用殺菌のための放射線照射技術は、BAECの重要なプロジェクトとなっている。この分野ではGAMMATECH社製の最初の商用照射施設が役立った。これに加え、バングラデシュは、食品としての品質及び容認可能性の調査を進めてきた。2003年現在、バングラデシュ政府により照射許可となっている食品は14品目(スパイス、玉ねぎ、じゃがいも、鶏肉、マンゴ、米、小麦、パパイア、魚(乾燥)、魚(冷凍を含む)、豆類、いんげん、えび(冷凍を含む)、小麦粉製品)である。
 原子力研究所(AERE)の食品・放射線生物学研究所(IFRB)は1979年に設置され、1,850TBqのコバルト60照射施設が製薬産業を含む研究開発のための主要施設として運転されている。
(2)医学利用
 バングラデシュは、放射線治療を含め、核医学に関連するRCAのすべてのプログラムに積極的に係わっている。ラジオイムノアッセイ(RIA)と超音波技術がバングラデシュにおいて初めて導入されたのは、INM(核医学研究所)であった。核医学センターは1980年までに5か所に設置され、1990年代には、さらに8つのセンターが設置された。超音波技術は核医学同様、バングラデシュ原子力委員会(BAEC)によって導入されたので、核医学センターはすべて核医学超音波センター(Centre for Nuclear Medicine and Ultrasound)と改称され、同様に、核医学研究所は核医学超音波研究所(Institute of Nuclear Medicine and Ultrasound)となった。核医学超音波研究所ではSPECT、カラードップラー等の装置の新規導入と更新が進められている。チッタゴンやラジシャヒ(Rajshahi)など4か所の核医学超音波センターの近代化が進行中であり、さらに5か所の核医学超音波センターの近代化が計画されている。ヨウ素障害の急性事象にも対応できるようになっており、このプログラムからは大きな成果が得られた。図1に核医学超音波センターの所在地を示す。
 シンガポール、パキスタン及びインドネシアとともにバングラデシュも参画している外部品質評価スキームは、バングラデシュにおけるRIAの品質を確保する上で有用であった。ウイルス性肝炎のスクリーニング及び診断用にRIAによる低コストかつ信頼性の高い手法の開発が進められた。
 多数の甲状腺がん患者が、切除及び治療のため定例的に131Iを摂取している。時に67Gaや201Tlも、種々のがんを検知するため使用される。また、真性赤血球増加症や脊髄増殖性疾病の他、転移性骨痛についても32Pが使用されている。さらに、乳がん検知用の新しい技術であるシンチ乳房X線撮影法が、ダッカの核医学研究所及びダッカ、ミットフォールドの核医学センターに導入されており、多数の患者がこのサービスを受けている。
 また、先天的甲状腺機能低下を検知するための新しいプログラムがRCAプロジェクトの下で始まった。新生児スクリーニングのプログラムはバングラデシュには従来なかったものである。このプロジェクトを導入することで、間に合う時期に発見されれば、新生児にとって治療可能な状態を検知する技術をもつこととなった。
 バングラデシュの科学者は、組織移植の放射線殺菌プロジェクトを追求してきた。整形外科や歯科の手術で使用するための放射線殺菌された羊膜が、限定された量だけ種々の病院に供給されている。サバルの照射施設がこの目的に使用されており、近い将来、組織銀行を設立することが計画されている。
 バングラデシュは核医学及び生物学での人材養成に関するRCAプロジェクトに積極的に参加している。その他、がん治療及び甲状腺機能亢進症のための放射性ヨウ素使用の改善という2つのプロジェクトにも参加することを予定している。
(3)放射線防護
 バングラデシュの国会は、1993年に原子力安全・放射線管理法を、1997年に原子力安全に関する規制を制定した。その後、このための社会基盤整備及び関係法令の整備を進めてきた。放射線被ばく、装置の校正等についての二次基準作成もIAEAの援助の下で進められている。バングラデシュ国内のすべてのX線装置についてのリストも既に出来上がっており、放射線防護に関する教育訓練を通じて、従事者の意識も高まっている。バングラデシュは、アジア標準人に関連する被ばく及び放射線測定に関する地域プロジェクトにも参加している。また、輸入食品は法令により定期的に検査されている。
(4)工業利用
 バングラデシュは、放射線技術に関するRCAの4つのセクション、すなわち非破壊試験(NDT)、トレーサー技術・核制御、放射線プロセシング及び核分析技術に参加している。NDTの場合、バングラデシュ原子力委員会(BAEC)の役割としては、技術提供及び技術の普及があり、訓練プログラムにより、ISOのレベル1、2及び3の技術者が育っている。また、バングラデシュは、独自の免許を発行しており、種々の免許スキームの相互認定についての協定素案を作成するためのIAEA/RCA地域諮問会合が、2001年8月27日〜29日にダッカで開催された。さらに、国内ガス・ネットワークのガス流量校正のためのトレーサー技術の開発に成功し、この技術が現在肥料生産プロセスで利用されている。バングラデシュではまた、UNDP-IAEA-RCA共同の「NDTにおける地域プロジェクト」にも参加している。
3.放射線プロセシング
 放射線プロセシングの分野では、紫外線技術を用いた木材プラスチックの表面コーティング研究が行われている。このプロジェクトの成果で木材を処理するパイロット・プラントを設置し、将来的に商業化することを想定している。また、放射線及び発酵を用いて農業廃棄物を改良し、動物飼料などの有用な産物とするプロジェクトが進められている。
4.核分析技術
 核分析技術では、プロトン誘起X線放射、プロトン誘起ガンマ線放射及び原子吸収スペクトロスコピー技術が医療、生物及び工業サンプル中の微量元素を算定するために使用されており、この役割は種々の地域組織に割り当てられている。また、そのような技術を医療及び生物学の調査で利用することが、将来さらに多くなることが期待される。
 原子力委員会傘下の加速器施設部では、3MVバンデグラフ加速器、イオンビーム実験施設を用いた研究が進められている。
5.研究炉の利用
 BAECは、RCAの研究炉利用プロジェクト、とくにガンマ・スペクトロスコピー、中性子散乱、放射化分析及びRI生産に取組み、物理学的及び生物学的調査をもとに放射化技術の利用が試みられている。また、RCAの今後の活動としては、地域協力協定傘下の研究炉を加盟国が利用できる方策を講じるべきとしている。
(前回更新:2006年3月)
<図/表>
表1 バングラデシュにおける研究炉等の原子力施設
表2 各分野における放射線利用の現状
図1 核医学超音波センター及び核医学超音波研究所(DHAKA)の位置

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<関連タイトル>
IAEAのアジア・太平洋地域協力協定(RCA) (13-03-02-02)
日本のIAEA/RCAへの協力 (13-03-02-03)
バングラデシュの国情と原子力開発 (14-02-10-01)

<参考文献>
(1)原子力産業会議:アジア諸国 原子力情報ハンドブック(2002年3月)、p.153-162
(2)原子力産業会議(編集発行):原子力年鑑2003年版(2002年11月)、p.335-337
(3)原子力産業会議(編集発行):原子力年鑑2005年版・各論(2004年10月)、p.72-74
(4)海外電力調査会(編集発行):海外電力事業統計2005、(2005年9月)p.326-327
(5)在バングラデシュ日本大使館ホームページ(http://www.bd.emb-japan.go.jp/
(6)バングラデシュ原子力委員会ホームページ:
(7)バングラデシュ核医学超音波研究所ホームページ:
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