<大項目> 国際協力・原子力関連機関
<中項目> 核をめぐる動向と保障措置・核物質防護
<小項目> 保障措置
<タイトル>
保障措置の強化・効率化方策 (13-05-02-18)

<概要>
 保障措置の強化・効率化方策としては、現行の保障措置協定の枠組みの中で実施可能な方策パート1と、追加議定書の締結により実施が可能となる方策パート2がある。方策パート1としては、国内保障措置制度に関する質問書、現在の原子力活動に関連する情報であって、これまで定常的には提供されていなかった情報に関する質問書、および早期の設計情報の提供、並びに、査察手段の強化・効率化に関係する無通告査察の適用、環境サンプリングの適用、最新技術の活用による保障措置システムの改善およびSSACとの協力強化がある。方策パート2に関しては、追加議定書が1999年7月7日に国会で承認され、1999年12月16日に発効した。これに係る国内手続きとして、追加議定書の実施を担保するための原子炉等規制法の改正法案が1999年6月9日に成立し、同月16日に公布され、同年12月16日に政令、総理府令等の改正案が国会承認され同日施行された。この国内法の改正により、わが国政府は、毎年12月末時点のサイト(追加議定書で定義)の建家や政府と関連する核物質を伴わない核燃料サイクル研究開発テーマを翌年5月15日までにIAEAに提出している。これは、追加議定書に基づく「拡大申告」と呼び、これらの情報や他の方法で入手したサイトに関する情報を基に、IAEAは必要に応じてサイトに立入、サイト情報の確認などを行う(補完立入)。
<更新年月>
2006年12月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
 IAEA(国際原子力機関)による保障措置強化および「プログラム93+2」による保障措置の強化・効率化方策検討の経緯については、関連タイトル「核兵器の不拡散等をめぐる国際情勢 <13-05-01-03>」で述べられている。すなわち「プログラム93+2」で得られた成果の内、現行の保障措置協定の枠組みの中で実施可能な保障措置強化・効率化方策については、方策パート1として順次実施に移され、また、現行の枠組みでは実施不可能な保障措置強化・効率化方策については、方策パート2として、追加議定書により実現される。ここでは、方策パート1と方策パート2の内容と日本の対応について述べる。なお、現在、従来の保障措置手段と新たな保障措置強化・効率化方策とを統合して、効率的な保障措置を目指す、統合保障措置の検討が進められている。この統合保障措置実施の条件となっている、IAEAによる「未申告の核物質及び原子力活動がなかったとみられる」旨の結論が得られた後、統合保障措置が適用される。2004年6月14日のIAEA理事会でエルバラダイ事務局長は、日本に対して統合保障措置を適用する旨の声明を出しており、わが国は統合保障措置の適用を受けることになった。
1.保障措置強化・効率化方策パート1と日本の対応
 方策パート1は、拡大申告に係る方策と査察手段の強化・効率化に係る方策である。
1.1 拡大申告
(1)国内保障措置制度(SSAC:State System of Accounting for and Control of Nuclear Material)に関する質問書
 主要な内容は、SSACの運用、法的および技術的面に関する情報、SSACで行われる査察、IAEA保障措置に関連して継続的に行われる関連活動の範囲と時期であり、1996年2月にIAEAに回答。
(2)現在の原子力活動に関連する情報で、定常的には提供されていなかった情報に関する質問書
a)解体および閉鎖された施設又は建設されたものの運転されていない施設に関する質問書:解体された原子力施設および以前核物質を保有していたかあるいはホットセルであった又は転換、濃縮、再処理もしくは燃料加工に関連する活動が行われていたその他の場所に関する情報、デコミッショニング以前の操業の説明、目的・範囲、現在の状態、および使用に関する情報であり、1996年6月にIAEAに回答。
b)核燃料サイクルおよびその他の原子力活動に関する質問書:核燃料サイクル施設、施設外の場所、および保障措置適用開始以前の核物質に関する情報であり、1997年5月にIAEAに回答。
(3)設計情報の早期提出
 日・IAEA保障措置協定の補助取決めを1995年7月に改訂した。新規施設に関しては、予備的設計情報を許可申請後速やかに提出。予備的建設計画に基づく設計情報質問書を遅くとも建設開始の180日前までに提出。完成された設計に基づく設計情報質問書を遅くとも核物質受入の180日前までに提出。既存施設の変更に関しては、重大な変更の場合には、当該変更を変更許可申請後速やかに提出し、変更の完了後速やかに提出。重大でない変更の場合には、当該変更を最初の在庫変動報告と同時に提出。
1.2 査察手段の強化・効率化
(1)無通告査察の適用
 査察を無通告あるいは短時間の通告の後に実施し、保障措置の有効性の強化と効率向上を図る。低濃縮ウラン加工施設1社を選定し、短時間通告ランダム査察(SNRI)の有効性、効率向上の評価を試験的に実施。2000年からは国内の全ての加工施設(4施設)について実施。
(2)環境サンプリングの適用
 原子力サイト内の水、植物、土壌、拭き取り試料等を採取し、その中に含まれる極微量核物質を調べ、原子力活動が未申告で行われていないことを確認。これまで、国内2か所のウラン濃縮施設および8か所のホットセル施設において、基礎データ取得のためのベースラインサンプリングを実施し、ホットセル施設については1998年12月に終了。現在、定常的実施に向け、全ての施設を対象に、施設付属書の改訂を順次実施。また、環境サンプル分析のため、原子力機構(旧・原研東海研究所(現日本原子力研究開発機構原子力科学研究所))内にクリーン化学分析所が2001年に完成した。同所では、極微量核物質分析技術の研究開発を行っており、この分野の世界の最先端の活動を目指している。本施設はまた、IAEAと協力して資格取得のための試験を開始、2003年にIAEAのネットワーク分析所として正式に認められた。
(3)最新技術の活用による保障措置システムの改善
 最新技術等の導入による現行保障措置システムの有効性および効率向上。
a)遠隔監視(リモートモニタリング)技術の活用:電子カメラ(デジタルビデオカメラ)および自動伝送技術を用いた遠隔監視システムにより、現場を監視するもの。査察費用の削減、施設側の負担の軽減が期待される。軽水炉(BWRおよびPWR各1基)で試験的に実施してきたが、2004年6月のエルバラダイ事務局長のIAEA理事会での報告のように、わが国が統合保障措置の適用を受けることもあって、軽水炉への遠隔監視の適用は継続して検討されると考えられる。なお、原子力機構(旧・サイクル機構(現日本原子力研究開発機構))のMOX燃料加工工場では、非破壊測定データの収集と遠隔場所への伝送等の試験が実施され、今後IAEAの承認を経て実用化が期待される。
b)保障措置測定・監視システムの機械化:再処理施設の溶液モニタリング技術、査察データ自動取得システム等の効率的システムを開発。本開発は、対IAEA保障措置技術開発支援プログラム(JASPAS:Japan Support Program for Agency Safeguards)により実施。溶液測定・モニタリングシステムは、再処理施設における溶液の移動を、施設側とは独立に検認でき、未申告で溶液の移動が行われた場合は、直ちにこれを検知する。
(4)SSACとの協力強化
 SSACとの協力強化により、査察の効果と効率を改善。例えば、特定の査察活動を共同で実施、査察員の研修、保障措置機器の開発、保障措置手法および手順の開発、機器の調達等の保障措置支援活動の共同実施など。なお、査察機器の共同利用はすでに始まっており、一層効果的な利用を実現するため、手順書の改訂等が進められている。
2.保障措置強化・効率化方策パート2と日本の対応
 方策パート2について、追加議定書が保障措置強化・効率化方策を規定している。
2.1 追加議定書で規定された保障措置強化・効率化方策
 追加議定書では、表1および表2に示す情報を新たにIAEAに提供すること(拡大申告)が必要。また、未申告の核物質および原子力活動がないことを確認するため、又は拡大申告で提供された情報の正確性および完全性に関する疑義並びに不一致を解決するため、IAEAは、サイト内の任意の場所、申告に係る任意の場所等に補完立入(補完的アクセス)を実施できる。補完立入で実施される活動は、立入対象の場所毎に定められ、目視、環境試料採取、放射線検知・測定装置の利用、封印の適用、記録検査と規定される。追加議定書の規定では、補完立入に先だって行うべき事前通告制度、核拡散上機微な情報の拡散を防止し、安全上の要件又は核物質防護上の要件を満たし、知的所有権を保護し、あるいは商業上の機微情報を保護するための管理立入(補完立入の1つの形態)制度、追加議定書に基づき実施された活動、疑義あるいは不一致に関係した活動で得られた結果および追加議定書に基づく活動で得られた結論を国に報告する。なお、追加議定書には、IAEA査察官の指名手続きを簡素化する制度等も規定されている。
2.2 日・IAEA保障措置協定の追加議定書
 追加議定書に関する日本とIAEAとの公式協議は、1998年3月に開始され、4回の協議を経た後にまとまった。本追加議定書は、1998年11月25日のIAEA理事会で承認、同年12月4日に署名された。本追加議定書の承認案件は、1999年2月19日に閣議決定。同年6月10日に衆議院本会議で可決、同年7月7日の参議院本会議で可決された。本追加議定書は、日本国政府が効力発生のための日本国の法律上および憲法上の要件を満たした旨を書面でIAEAに通告し、IAEAがこれを受領する日に効力を生じる。このためには、追加議定書の国内担保措置の確立が必要で、政令、総理府令等の改正が行われ、国会承認の後法律が施行され今日に至っている。
2.3 新しい国内保障措置体制の整備
 追加議定書で規定された保障措置強化・効率化方策の適切な実施には、法的枠組みの整備が必要である。また、プルトニウム利用の増大により、保障措置業務量の大幅な増大が見込まれ、国内保障措置業務の効率的な実施も必要で、対応方策を検討するため、文部科学省(旧科技庁)は、有識者、専門家から構成される保障措置企画委員会に新保障措置制度検討グループを設け、同グループがIAEAの保障措置の変化に対応すべき活動を検討し、2003年9月にその作業を終えた。本グループが1998年9月にまとめた報告書を踏まえて、旧科技庁は、核原料物質核燃料物質および原子炉の規制に関する法律(原子炉等規制法)の一部改正法案を取りまとめ、1999年2月5日の閣議決定を経て国会に提出した。改正法案は、同年6月9日に成立し、同月16日に公布された。同年12月16日に、政令、総理府令の改正が国会承認され、同日施行された。
 追加議定書の実施に必要な措置を講ずる際、原子炉等規制法の既存規定、あるいは他法令等において既に措置可能なものについては、既存の枠組みを利用し、それ以外については、原子炉等規制法の改正法案で措置する。規定された新たな措置の概要は以下の通り。
(1)国際特定活動の届出(法第61条の9の2)
 拡大申告の内、附属書Iに掲げられた活動(特定の原子力関連資機材の製造活動等)に関する情報を把握するため、当該活動を「国際特定活動」と位置付け、当該活動を行う場合には、その開始から30日以内に、当該活動を行う者の氏名等所定の情報を内閣総理大臣に届け出なければならない。
(2)報告徴収(法第67条第4項)
 従来の原子炉等規制法の規制を受けていない者に関する情報やIAEAからの要請に係る情報等についても国が入手できるよう、内閣総理大臣は、追加議定書の定めるところにより、IAEAに報告又は説明を行うため必要な限度において、関係者に対し、IAEAからの要請に係る事項その他の政令で定める事項に関し報告させることができる。
(3)立入検査等(法第68条第4項、第8項、第11項および第13項)
 補完立入はIAEAの個別の判断により実施日時、場所等が決められ、また、核物質を取り扱っていない場所に対しても実施されることがあり、既存の立入検査等の規定だけでは対応できない可能性がある。このため、補完立入について、IAEAの指定する者は、内閣総理大臣の指定するその職員等の立会いの下に、追加議定書で定める範囲内において、IAEAが指定する場所に立ち入り、帳簿、書類その他必要な物件を検査し、又は試験のため必要な最小限度の量に限り、核原料物質、核燃料物質その他の必要な試料を収去することができ(第8項)、また、国際規制物資などの移動を監視するために必要な封印をし、又は装置を取り付けることができる(第13項)。また、補完立入の結果、IAEAとの間で争いが生じる場合に備え、IAEAが補完立入を実施する際にはわが国も同様の検査を行う(第4項および第11項)。
 なお、改正法案では、追加議定書の実施とは直接関係しないが、今後増大が予想される保障措置関連業務を適切に実施していくため、定型化している業務について、民間機関(指定保障措置検査等実施機関)による代行制度を導入することも規定している。
2.4 インプリメンテーション・トライアル
 追加議定書に基づく拡大申告と補完立入は、わが国およびIAEAにとって十分な経験がなく、試行的に補完立入等を実施、手続き上の課題を明らかにすることが重要である。そのためインプリメンテーション・トライアルが、IAEAと共同で実施された。即ち、原子力機構(旧・原研東海研究所(現日本原子力研究開発機構原子力科学研究所))を対象に、追加議定書第2条a.(i)および(iii)に基づく情報(核物質を用いない国関連の核燃料サイクル関連研究開発およびサイト内建屋情報)が、1998年8月、IAEAに試験的に提供され、同年11月から1999年7月にかけて、補完立入(管理立入を含む)のトライアルが5回にわたり実施された。また、原子力機構(旧・サイクル機構(現日本原子力研究開発機構))の大洗工学センターにおいても、同様の手順でトライアルが行われ、追加議定書が発効後円滑に運用されるよう知見の蓄積が図られた。これらの成果は、IAEAの出版物として刊行され、加盟国の追加議定書批准や追加議定書実施に伴う諸課題解決にも役立てられている。
(前回更新:2004年6月)
<図/表>
表1 追加議定書締結国に提供が義務づけられる情報
表2 加盟国が最大限の努力を払い提供する情報

・図表を一括してダウンロードする場合は ここをクリックして下さい。


<関連タイトル>
核兵器の不拡散等をめぐる国際情勢(〜1998年) (13-05-01-03)

<参考文献>
(1)(財)核物質管理センター(編集、発行):特集 新しい保障措置の実施に向けて、核物質管理センターニュース、28(11)(1999)、p.1-14
(2)IAEA:MODEL PROTOCOL ADDITIONAL TO THE AGREEMENT(S)BETWEEN STATE(S)AND THE INTERNATIONAL ATOMIC ENERGY AGENCY FOR THE APPLICATION OF SAFEGUARDS,INFCIRC/540(Corrected),IAEA(1998)
(3)IAEA:THE STRUCTURE AND CONTENT OF AGREEMENTS BETWEEN THE AGENCY AND STATES REQUIRED IN CONNECTION WITH THE TREATY ON THE NON-PROLIFERATION OF NUCLEAR WEAPONS,INFCIRC/153(Corrected),IAEA(1972)
(4)瀬山 賢治:日本を取り巻く核不拡散、第19回核物質管理学会日本支部年次大会論文集(1998)、p.13-28
(5)Winston Alston:Demetrius Perricos:Strengthened Safeguards − an Operations Perspective、第19回核物質管理学会日本支部年次大会論文集(1998)、p.29
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