<大項目> 国際協力・原子力関連機関
<中項目> わが国の原子力関連機関
<小項目> 民間機関
<タイトル>
日本原子力学会 (13-02-02-04)

<概要>
 日本原子力学会は1959年(昭34年)に発足し、原子力利用に関し「公衆の安全をすべてに優先させて、原子力及び放射線の平和利用に関する学術及び技術の進歩を図り、その成果の活用と普及を進め、環境の保全と社会の発展に寄与する」目的で以下の事業を進めている。:1)会員の研究活動・情報交換、2)会員の学術・技術の調査・研究、3)内外の関連学術団体等との連携、4)規格・規準(標準)の制定・改正、5)学術の継承・発展、教育、人材育成活動、6)年会、シンポジウム、講演会等の開催、7)会誌、研究・技術論文等の資料の刊行、8)社会との情報交換、9)成果の公開と社会への還元、10)研究開発の奨励とその業績表彰、など。2013年の会員数は、一般と学生会員を合わせ7,500名余りである。会員は18の専門部会に一つ以上属している。特定の研究開発については、3専門委員会(特別専門委員会、調査専門委員会、研究専門委員会)があり、2014年にはその下に17専門委員会が置かれ夫々専門分野の推進を図っている。福島第一原発事故については、事故調査委員会を設置し、事故災害の要因を明らかにするとともに改革を提言した報告書「福島第一原子力発電所事故 その全貌と明日に向けた提言」を発表し、提言を実行する「廃炉検討委員会」が活動を進めている。
<更新年月>
2014年12月   

<本文>
1.日本原子力学会の設立目的と事業
1.1 目的と事業(学会定款と行動指針)
 日本原子力学会は、2011年の東京電力福島第一原子力発電所の事故を踏まえ、2013年に「定款」を改正しその目的を「公衆の安全をすべてに優先させて、原子力及び放射線の平和利用に関する学術及び技術の進歩を図り、その成果の活用と普及を進め、環境の保全と社会の発展に寄与する」と定めた。それを承けた「行動指針」は、1)学会の信頼醸成(倫理観のある研究開発)、2)社会に役立つ研究開発(成果活用と技術継承)、3)国際的活動(平和利用)を定めている。
 上記の目的達成のため、1)会員の研究活動・情報交換、2)会員の学術・技術の調査・研究、3)内外の関連学術団体等との連携、4)規格・規準(標準)の制定・改正、5)学術の継承・発展、教育、人材育成活動、6)年会、シンポジウム、講演会等の開催、7)会誌、研究・技術論文等の資料の刊行、8)社会との情報交換、9)成果の公開と社会への還元、10)研究開発の奨励とその業績表彰、などの事業を行っている。
1.2 設立の経緯
 表1に、本学会の設立から今日までの社会背景と主な事業等を示す。原子力の平和利用は、1953年の国連総会での米国アイゼンハワー大統領の演説「Atoms for Peace」から始まった。日本では、1955年に平和利用のために「自主・民主・公開」の三原則を宗とする「原子力基本法」が成立し、大学に原子力工学科等が設置されるようになった。大学・研究機関等の学界と、原子力産業界からの強力な推進活動を受けて、その学界と産業界の有志からなる発起人会で「日本原子力学会」は1959年に設置された。その後2000年までに国内地域で8支部が開設され、活動は全国に広まった。
 1999年のJCO臨界事故の際には、研究技術者の倫理に関する「倫理規程制定委員会」を設置し「倫理規程」を制定した。また事故調査委員会を設置し、原因を究明し対策を提案した。
 2011年の福島第一原発事故では、放射線影響、除染、広報・説明等に関する「原子力安全調査専門委員会」を置いて活動し、引き続き2012年には「福島特別プロジェクト」を開始した。また、同年中に事故調査委員会を設け、2014年3月に調査報告を発表した。その報告の提言実行のため、同年に「福島第一原子力発電所廃炉検討委員会」を設置し活動を開始した。
2.組織と構成
2.1 組織と運営(学会定款と学会細則)
(1)組織と運営
 図1に本学会の組織を示す。本学会は正会員、学生会員、企業等の賛助会員及び推薦会員で構成される。推薦会員以外は、所定の会費を納入する。正会員は互選で50〜80名を代議員(社員)に選ぶ。「総会」は代議員(社員)で構成される。総会は、会員の除名、理事などの選任・解任、定款の変更、本学会の解散等を決める。
 学会は14〜18名の理事で構成され、その1名が会長、3名が副会長に選ばれる。それぞれの理事は担当する事業の業務執行理事である。会長は年度ごとに本学会の事業計画と予算計画を立案し、事業報告や収支報告等を作成し、理事会と総会の承認を得る。
(2)支部活動
 本学会には、効率的な運営と事業のため、北海道から九州の地域毎に「8支部」が置かれている(表2)。夫々の支部は、規約を定め、地域内の会員の連絡・調整を図る事務所を置き、情報交流を図る支部大会、研究発表会、講演会、見学会、一般や学生を対象としたオープンスクール等を開催している。
(3)会員
 本学会の会員は以下のような資格が求められる。
 ・正会員:原子力学会の目的、事業に賛同して入会した個人。
 ・賛助会員:原子力学会の目的、事業に賛同し、その事業を援助する企業または団体。
 ・推薦会員:原子力及び放射線分野の研究開発について功績顕著の者、または原子力学の目的達成に多大の貢献があり総会の議決によって推薦された者。
 ・学生会員:学生であり原子力学会の目的、事業に賛同する者。
 図2に学会員数の推移を示す。1959年(昭34)の発足時の正会員数は1,299名、学生会員は66名、賛助会員263社であった。2001年には正会員7,292名であったがそれ以降は漸減傾向がある。学生会員数は約500名余でほぼ一定である。
3.事業(活動)
 本学会の事業(活動)は、常設委員会、専門分野別の部会、連絡会、専門委員会等により進められる。その成果は、学会員の研究・開発の成果と合わせ、春の年会、秋の大会、講演会、シンポジウム、刊行物等で公表される。
3.1 常設委員会
 2014年現在には図1に示す12の常設委員会があるが、本文では研究開発に関する次の2委員会について述べる。
(1)標準委員会
 本委員会は、原子力に関する基準・指針の作成・制定、その普及・維持管理及び改廃、国際標準原案と日本工業規格原案等の作成及び内外の学協会等との協力、その他必要な事項の検討と調整等を行う。2014年度には、リスク専門部会、システム安全専門部会、基盤・応用技術専門部会及び原子燃料サイクル専門部会がある。これら専門部会は、産業、大学、研究機関等の専門家で構成される複数の分科会を擁する。
(2)倫理委員会
 本委員会は、研究開発に従事する本学会員の心構えと言行の規範を検討し、「倫理規程」を定めている。倫理規程は、平成13年に制定された後にほぼ2年ごとに部分改正されている。平成26年には、福島第一原発事故の反省から全面改正され、「原子力の安全確保」を最優先する考えが明確に示された(表3参照)。
3.2 部会と連絡会
 本学会には、核燃料サイクルに関連する分野を包含した18の専門部会がある(表4-1表4-2)。各々の部会は、その研究・開発目的を明らかにし研究開発の推進、新世代の育成、一般の啓蒙に務めている。連絡会(表5)は、学生・若手研究者の育成、一般の原子力利用の啓蒙及び海外の原子力関連機関等との協力のため活動している。
3.3 専門委員会
 本学会には3専門委員会がある。
1)研究専門委員会:学会の指定した研究の進歩・推進を図るため、文献紹介・研究発表・情報交換を行う。
2)特別専門委員会:外部の委託あるいは補助、または内外学術機関との連絡の便宜のために設けられ、指定した課題について資料収集・情報交換・調査研究を行う。
3)調査専門委員会:本学会の特定した題目について、状況・実態等を把握するため、調査・資料収集・検討を行う。
 表6に2014年度に活動している専門委員会名とその関連部会を示す。設置期間は課題で異なる。
3.4 国際協力
 本学会は、米国、カナダ、中国、韓国等の12学協会と協力協定を締結している。その他、日米欧原子力学生国際交流事業(欧米の研究施設や大学への学生派遣と学生受入)、日韓原子力学会学生・若手研究者交流事業(学生と若手研究者の共同サマースクール)、環太平洋原子力協議会(PNC:Pacific Nuclear Council)及び環太平洋原子力会議(PBNC:Pacific Basin Nuclear Conference)に加わり、原子力科学・技術及び利用に関する情報交換と協力を進めている。
3.5 成果の刊行物と顕彰制度
(1)刊行物
 「アトモス:ATOMOΣ」は本学会の機関誌である。本誌は本学会の活動・会告、世界の原子力関連情報、重要課題のレビュー、意見・コメント等を掲載しており、会員には毎月無償で配布される。全巻の目次は本学会ホームベージから知ることが出来る。
 「日本原子力学会和文論文誌(原子力誌)」と英文誌「JNST:Journal of Nuclear Science and Technology」は、夫々和文と英文の論文誌である。和文誌はJ-Stageで無料公開されており、英文誌は、最新の2年前の号までは T&F Onlineで無料公開されている。その他、標準委員会の成果「標準」、一般書籍、専門委員会報告書、倫理委員会発行書籍等を販売している。
(2)顕彰制度
 原子力に関する学術及び技術上の優れた成果、貢献者及び施設等を対象にした、論文賞、技術賞、奨励賞、学術業績賞、技術開発賞、貢献賞、原子力歴史構築賞、等の学会賞制度がある。
4.東電原発事故に関する主な活動
4.1 「原子力安全調査専門委員会」と「福島特別プロジェクト」の取組
 2011年4月に、「原子力安全調査専門委員会」を理事会直轄で設置し、安全安心フォーラム、シンポジウム等を開催し、環境クリーンアップ、放射線影響等の情報を提供した。
 2012年6月には、福島の復興に貢献する「福島特別プロジェクト」を開始した。本プロジェクトは、住民への情報提供、理解促進のシンポジウムの開催、除染の支援、対策への提案等のための活動である。この活動を支援するため、原子力安全調査専門委員会に除染と環境修復に関する「クリーンアップ分科会」を設置し、三部会混成(保健物理・環境科学、放射線工学、社会・環境)で被ばく低減に関する「放射線影響分科会」を設置した。
4.2 「東京電力福島第一原子力発電所事故に関する調査委員会」の活動
 本委員会は、2012年8月に理事会直轄で設置され、2014年3月に専門家の立場から事故災害の要因を明らかにし改革を提言した報告書「福島第一原子力発電所事故 その全貌と明日に向けた提言−学会事故調査報告書−」を発表した(丸善、2014)。
4.3 「福島第一原子力発電所廃炉検討委員会」の活動(図1
 2014年6月に、4.2に述べた報告書の提言「今後の復興に関する事項」の実行のため、標記委員会が理事会直轄で置かれた。本委員会は、燃料デブリ取出しから廃炉、放射性廃棄物処理・処分までの長期にわたり、原子力損害賠償・廃炉等支援機構(NDF)、国際廃炉研究開発機構(IRID)等と協力する。2015年春の年会で計画の方向を検討し、秋の大会では研究経過を議論する予定である。
4.4 関連する専門委員会の取組
 2014年6月〜2015年3月の間に存続予定の「東京電力福島第一原子力発電所事故以降の低レベル放射性廃棄物処理処分の在り方」特別専門委員会、2014年1月〜2016年3月の予定で「福島第一原子力発電所事故により発生する放射性廃棄物の処理・処分」特別専門委員会が設置された(表6参照)。
(前回更新:2006年1月)
<図/表>
表1 日本原子力学会の歴史概要
表2 日本原子力学会の支部
表3 日本原子力学会の倫理規程(憲章)概要
表4-1 部会活動(1/2)
表4-2 部会活動(2/2)
表5 連絡会
表6 専門委員会(2014年度)
図1 日本原子力学会の組織
図2 日本原子力学会の会員数の推移

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<関連タイトル>
日本保健物理学会 (13-02-02-07)
日本放射線影響学会 (13-02-02-08)
日本放射化学会 (13-02-02-10)
日本の原子力発電開発の歴史 (16-03-04-01)
JCOウラン加工工場臨界被ばく事故の概要 (04-10-02-03)
福島第一原発事故の概要 (02-07-03-01)

<参考文献>
(1)(一社)日本原子力学会定款、http://www.aesj.or.jp/introduction/teikan20140620.pdf
(2)(一社)日本原子学会行動指針、http://www.aesj.or.jp/introduction/koudoushishin20140728.pdf
(3)(一社)日本原子力学会倫理規程、http://www.aesj.or.jp/introduction/rinrikitei20140620.pdf
(4)(一社)日本原子力学会、「最終報告書の概要及び提言」、スライド、
http://www.aesj.or.jp/jikocho/jikochohokoku20140308.pdf
(5)田中&藤田、福島特別プロジェクトの立ち上げ、日本原子力学会誌、54、10、640-641(2012)、http://www.aesj.or.jp/atomos/tachiyomi/2012-10mokuji.pdf
(6)田中、福島特別プロジェクトの活動と今後の展開−福島の環境回復を目指して−、日本原子力学会誌、56、3、193-205(2014)、http://www.aesj.or.jp/fukushimaproject/atomos201403-1.pdf
(7)(一社)日本原子力学会の歴史、http://www.aesj.or.jp/information/50th-rekishi.pdf
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