<解説記事ダウンロード>PDFダウンロード

<概要>
 ドイツは、1998年の脱原子力から一転して、2009年には原子力発電の稼働延長を認めることとなった。これまで37基の発電炉が建設され、2010年には17基が稼働し電力需要の1/4を供給しているが、今後の方向は流動的である。ここでは、ドイツの原子力分野の研究開発機関と学協会を紹介する。
<更新年月>
2011年01月   

<本文>
1.ドイツの原子力利用の概要
 ドイツは、1998年に脱原子力に向ったが、経済、エネルギー資源、環境問題などの観点から2009年には再生可能エネルギーが普及するまでを条件に、原子力発電の稼働延長を認めることとなった。今後の方向は流動的である。これまで37基の発電炉が建設され、2010年には17基が稼働し電力需要の1/4を供給している。その他は停止した。
2.ドイツの研究・開発の組織
 上記の状況から、当面のドイツの原子力利用の課題は、今後のエネルギーの選択肢の検討、放射線・原子力の教育、放射線影響、環境、施設の解役・解体、使用済燃料の直接処分、高エネルギー加速器を利用する科学研究等である。
 そのうち、研究・開発機関とその概要、学協会について紹介する。表1に、原子力関連の研究所、学協会などを示す。表2に、基礎研究、素粒子物理、超重素、物質科学などの研究所を示す。
3.主な研究施設
3.1 主な原子力関連の研究機関(表1
 (1)カールスルーエ工学研究所 KIT、カールスルーエ研究センター(Forschungszentrum Karlsruhe)は、カールスルーエ大学と合併しカールスルーエ工学研究所 Karlsruhe Institute of Technology KITとなった。ここには、人文科学から自然科学まで140の講座(Institute)がある。原子力分野では、原子物理、原子炉工学、核融合等の講座がある。
 (2)ユーリッヒ研究センターでは、エネルギー・天候研究講座 Institute of Energy and Climate Research(IEK)に原子力安全、核融合などの研究部門、核物理講座 Nuclear Physics Institute(IKP)に素粒子研究、ハドロン、核物理部門がある。
 (3)ヘルムホルツセンター ドレスデン−ローゼンドルフ研究所、Helmholtz-Zentrum Dresden-Rossendorf(HZDR)は、イオンビームによる機能性物質開発、ガンのイオンビーム治療、原子力安全等の研究を進める。2011年1月からヘルムホルツ協会に属している。ヘルムホルツ協会は、最先端の大型施設や装置が充実している16の研究所からなるドイツ最大の研究機関であり、エネルギー、地球環境、健康、基幹技術、材料構造、宇宙の6分野が主要研究分野である。
 (4)地球科学・資源研究所、Bundesanstalt fur Geowissenschaften und Rohstoffe (BGR)は、連邦政府、経済工業省に属する研究所である。原子力に関して、放射性廃棄物の処分に関する調査・研究と、核実験禁止条約(CTBT)に関連し地震波のデータセンターであり当該技術の研究開発を進める。
3.2 高エネルギー加速器関連の研究所(表2
 (1)ヘルムホルツセンター、重イオン研究所、Helmholtz-Zentrum、Gesellschaft fur Schwerionenforschung(GSI)mbHは、ヘルムホルツ協会に属する研究所である。原子物理、原子核物理、理論物理、プラズマ物理、生物物理、イオンビーム利用、物質開発等の基礎的研究を進める。
 (2)ヘルムホルツセンター、ベルリン研究所、Helmholtz-Zentrum Berlin(HZB)は、ハーンマイトナー研究所 HMIとベルリン電子線シンクロトロン研究所 BESSYの合併で生まれ、ヘルムホルツ協会に属する。機能性物質の研究・開発、放射光の利用研究、磁性材料の開発、太陽光利用の研究開発等を進める。
 (3)プラズマ物理マックス・プランク研究所、Max-Plank-Institut fur Plasmaphysik(IPP)は、マックス・プランク協会の80研究施設の一つである。素粒子、宇宙粒子線物理、暗黒物質、暗黒エネルギー、量子力学、高エネルギーガンマ線、宇宙塵等の基礎的研究所。
 (4)ヘルムホルツセンター、ドイツ電子シンクロトロン研究所(DESY:Helmholtz-Zentrum, Deuches Elektronen Synchrotron)はヘルムホルツ協会に属する。多くの高エネルギー光量子(レーザ、X線など)の発生施設を有し、光量子科学、素粒子物理の研究を進める。
(前回更新:2004年2月)
<図/表>
表1 原子力関連の研究所と学協会
表1  原子力関連の研究所と学協会
表2 基礎研究所及び高エネルギー加速器研究所
表2  基礎研究所及び高エネルギー加速器研究所

<関連タイトル>
カナダの研究・開発に関する主な機関 (13-01-03-03)
フランスの研究・開発に関する主な機関 (13-01-03-05)
英国の研究・開発に関する主な機関 (13-01-03-06)
西欧の主な研究機関と原子力学会(英、仏、独を除く) (13-01-03-17)
ドイツの1998年総選挙後の脱原子力政策 (14-05-03-13)
ドイツの原子力開発体制 (14-05-03-04)
ドイツの核燃料サイクル (14-05-03-06)
ドイツの電気事業および原子力産業 (14-05-03-07)
ドイツの原子力発電開発 (14-05-03-03)

<参考文献>
(1)World nuclear association(WNA), Nuclear Century Outlook - WNA NCO Data - Germany, http://www.world-nuclear.org/info/inf43.html
(2)OECD/NEA, Country profile - Germany,
http://www.nea.fr/general/profiles/germany.html
(3)IAEA, Country Nuclear Power Profile, Germany,
http://www-pub.iaea.org/MTCD/publications/PDF/cnpp2009/countryprofiles/Germany/Germany2008.html
(4)NEDO、海外レポート、971、ドイツ新政権のエネルギー政策(2006)、

JAEA JAEAトップページへ ATOMICA ATOMICAトップページへ