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1.英国の原子力開発の歴史 図1に1940年代から始まる英国の原子力の研究・開発の概要を示す。1946年に国防と原子力発電の観点から原子力研究所(AERE)が発足し、1954年には英国原子力公社(UKAEA)が設立されAEREの業務を引継いだ。1960年には核融合研究も研究・開発に組み込まれた。
1970年代に、多くの業務が外部に移り、英国原子力公社(UKAEA)は核燃料サイクル関連の研究・開発に集中することになった。1990年代には、さらに事業化と民営化が進んだ。1990年に設立された事業体のAEAテクノロジー社は1996年に民営化され、ブリティシュ・エナージも民営化された。1994年、ドーンレイの高速原型炉計画は終わり、1995年に英国は経済性を理由に原子力発電から撤退の方向を示した。
2005年に、研究・開発施設の原子力廃止機関(NDA)が設置された。2008年にはUKAEAにUKAEA Ltdが発足し、ドーンレイ・サイト復元会社(DSRL)及び研究所サイト復元会社(RSRL)はその傍系会社となった。2009年にこれらはバブコック社(Babcock International Group PLC)に売却された。同年に、国立原子力研究所(NNL:National Nuclear Laboratory)が発足した。これ以降、英国原子力公社(UKAEA)の主な業務は、核融合研究のカラム科学センター(Culham Science Center)の運営である。
2.カラム科学センター(Culham Science Center)
英国原子力公社(UKAEA)は、事業・革新・技術局(BIS:Department for Business, Innovation and Skills)の公共団体(NDPB:Non-Departmental Public Body)となり、英国の核融合研究を管理し、カラム科学センター(Culham Science Center)を運営している。 表1に示すように、カラム科学センターには英国の核融合研究カラムセンター(CCFE:Culham Center for Fusion Energy)、及びヨーロッパ核融合開発協定により運転されるJET(Joint European Torus)がある。
3.国立原子力研究所(NNL:National Nuclear Laboratory)
原子力の利用・開発に不可欠な技術力を保存・利用・発展させるため、エネルギー・気候変動局(DECC:Department for Energy and Climate Change)の下に、国内外への技術提供事業に重点を置いた国立原子力研究所(NNL)が2009年に発足した。当所は、原子力廃止機関(NDA)、ウェスチングハウス社、英国健康安全省、防衛省、英国原子力公社(UKAEA)、燃料・材料研究や廃棄物処理研究を進める大学等が当面の主な顧客である。 表2に国立原子力研究所 NNLに属する4研究所の中央研究所(セラフィールド)、プレストン研究所(スプリングフィールド)、ウィンズケール研究所(セラフィールド)及びワーキントン研究所(ワーキントン)を示す。図2に国立研究所 NNLの6研究サイトを示す。
4.その他の機関 表3に原子力関連機関を示す。ラザフォード・アップルトン研究所(RAL)は、科学技術施設協議会(STFC:Science and Technology Facilities Council)が運営する国立科学研究所である。当所は、600MeVの陽子加速器、核破砕反応による中性子発生施設(ISIS)、レーザー施設等を有し、原子核、素粒子物理、レーザー科学、物質科学等の研究を進めている。
英国原子力学会(BNES:British Nuclear Energy Society)は、原子力工業協会(InucE:Institution of Nuclear Engineers)と合併して、2009年1月に英国原子力協会(NI:Nuclear Institute)が発足した。
(前回更新:2004年2月)<図/表>