<本文>
1.カナダの原子力・放射線利用の概要と研究開発
カナダは豊富なウラン資源に恵まれ、その90%は輸出され、10%は国内でCANDU炉燃料に利用される。使用済燃料は直接処分の予定である。また、医療や工業用の放射性同位体RIの研究・開発と製造・販売は1949年以来の実績があり、放射線の工業、農業などへの利用も進んでいる。そのため、多様な分野の基礎的研究、CANDU炉に関する研究・開発、RIや放射線の工業・医療分野の利用に関する研究開発などがある。
2.主な研究・開発の機関
原子力利用の研究開発は、カナダ原子力公社(AECL:Atomic Energy of Canada Limited)、大学、カナダ国立研究機構(NRC・CNRC:National Research Conseil Canada)などで主に進められている。以下に、主要な機関について述べる。
2.1 カナダ原子力公社(AECL:Atomic Energy of Canada Limited) 表1の(1)にAECLの研究所を示す。AECLのチョークリバー研究所(CRL:Chalk River Laboratory)はカナダの原子力研究の要であり、二基の研究炉、加速器等を整備し大学等と協力して基礎研究とともに、以下に示す8項目;(1)炉安全、(2)ソフトウエア、(3)炉物理・燃料、(4)燃料チャンネル、(5)システム、(6)水素と重水、(7)環境放出・保健物理、(8)研究情報・管理の研究・開発を進めている。また、CANDU-600の改良と新CANDU炉(ACR-1000)の開発も担当している。NRU炉(National Research Universal)を利用するRIの製造・販売では、MDS Nordion社と協力している。
ホワイトシェル研究所(Whiteshell Laboratory)は、1998年に廃止になり研究炉や施設の廃止措置が進められているが、放射性廃棄物処分の研究・開発を進める地下研究施設(URL:Underground Research Laboratory)は継続利用されている。その他の研究開発は、チョークリバー研究所に統合中である。
2.2 カナダ国立研究機構(NRC:National Research Conseil Canada) 表1の(2)に示す中性子利用研究センター(NRC-CNBC:NRC Canadian Neutron Beam Centre)は、カナダ国立研究機構に属する。チョークリバー研究所のNRU炉(National Research Universal)を利用して、中性子線技術、物質科学・技術、生物科学、構造科学、表面科学等の推進と工業利用を支援する。
2.3 大学など 表2に示す大学にはSLOWPOKE-2型研究炉が6基、そのほか多くの加速器があり、物理・化学、放射化分析などの基礎から利用までの多岐にわたる研究・開発を進めている。表3に示すトロント大学等の大学は、原子力工学研究ネットワーク(UNENE:University Network of Excellence in Nuclear Engineering)を組んでいる。
UNENEは、世界のCANDU炉所有会社グループ(COG:CANDU Owners Group)と契約し、(1)材料・化学、(2)燃料チャンネル、(3)安全・許認可、(4)保健物理・環境等の研究・開発を進めている。表3の右の欄に大学に対応してその研究課題を示す。 表4に、放射光、プラズマ、核物理・素粒子研究が目的の高エネルギー加速器を備える研究所を示す。
2.4 学協会など 表5に、原子力利用及び開発に関連する学協会を示す。
(前回更新:2004年2月)<図/表>