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<概要>
 国際原子力機関は、原子力の平和利用の推進のため、加盟国間の支援により、各種の安全基準の作成、情報交換、発展途上国への原子力技術援助などの原子力の安全と放射線防護に係わる活動を行っている。
<更新年月>
2009年01月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
1.目的
 国際原子力機関(IAEA)は、その正式名称をInternational Atomic Energy Agencyという。IAEAは、国際連合(国連)の専門機関ではないが、国連に年次報告を提出するなどして国連とは密接な関係を有している。
 IAEAの憲章第2条には、その目的として、
 (1)全世界の平和、健康および繁栄のため原子力の貢献を促進、増大する。
 (2)IAEAにより、またはIAEAを通じて提供された援助が、軍事目的に転用されないことを確保しなければならない、ということが規定されている。
 IAEAは、総会、理事会および事務局から構成されており(図1参照)、2008年末現在、職員総数90か国以上2,326人、また2008年9月末現在の加盟国は145か国である(表1参照)。
2.本部所在地
 P.O.Box 100 Wagrammerstrasse 5,A-1400,Vienna,Austria
 国際電話:(+431)2600-0
 ホームページ:http://www.iaea.org/
3.主な活動
(1)技術協力、科学者・技術者の育成
 原子力平和利用に関する技術および知識の普及などの援助を発展途上国の要請に応じて、研修員の受け入れ、専門家の派遣および機材供与を行う。
(2)原子力分野の安全性の向上
 国際的な安全に係わる原子力施設等の安全基準、指針、協定、規定の作成と普及を促進する。発展途上国の要請には、原子力発電に関する計画の立案、運転などに関して技術協力プロジェクトを行う。また、ミッションの派遣、ガイドブックの出版などの協力を行う。また、1986年旧ソ連のチェルノブイリ事故以降、国境を越えた原子力安全確保が求められ、旧ソ連・東欧諸国の発電所の安全性の向上や、アジア地域での原子力安全性の向上にIAEAの活動の強化、新規の活動を行う。
(3)原子力情報の提供および情報交換の促進
 ウラントリウムなどの資源供給状況、既存および計画中の核燃料サイクルの現状、能力、経済性等に関する最新の情報を加盟国に提供する。
 燃料分野においては、燃料の製造、使用時の信頼性の向上、品質管理に重点を置き、核燃料サイクルの終端においては、放射性廃棄物の貯蔵管理、経済的、技術的側面の検討に重点が置かれている。
(4)研究、アイソトープ利用
 ラジオアイソトープおよび放射線利用による食料、農業、医療、工業などの分野において加盟国、特に発展途上国に対して種々の協力を実施している。これらの活動は、FAO(国連食糧農業機関)やWHO(世界保健機関)の活動と密接な関係を有しているものが多く、協力の形態は、主として技術協力プロジェクトと研究契約である。
(5)保障措置
 IAEAの活動の柱の1つは原子力の平和利用の促進である。活動のもう1つの柱は、原子力が軍事目的に転用されないための保障措置の実施である。IAEAの保障措置は、核不拡散条約の規定によるものと、任意にIAEAと協定を結ぶものにより実施されている。
(6)核のセキュリティ
 2001年9月11日米国同時多発テロ以降、核物質および原子力施設の核のセキュリティ対策が強化されている。IAEAでは核セキュリティ特別基金が設けられ、2005年には既存の「核物質の防護に関する条約」が強化改定され、採択されている。
4.IAEAの放射線防護活動
 放射線防護に関しては、ICRP(国際放射線防護委員会)、IAEAおよびUNSCEAR(原子放射線の影響に関する国連科学委員会)などの国際機関がある。
 IAEAの活動のうち原子力安全と放射線防護に係わる活動としては、放射線の生物影響調査、環境放射能の調査、放射線安全工学の研究、放射線測定技術、放射線管理技術の向上など国際的な放射線防護に関する活動がある。特に重要な活動として、安全基準文書の策定がある。1996年にIAEAは安全基準文書の一貫性と整合性を図るという観点から、文書策定過程を統一するとともに、委員会体制を再編成し、国際原子力安全諮問グループ(INSAG)と5つの基準委員会、すなわち安全基準委員会(CSS)、原子力安全基準委員会(NUSSC)、放射線安全基準委員会(RASSC)、廃棄物安全基準委員会(WASCC)および輸送安全基準委員会(TRANSCC)を設けて、それぞれの役割を定めた。それにより、安全基準文書は、原子力安全、放射線安全、廃棄物安全、輸送安全、および一般安全(全分野に共通する事項と各分野にまたがる事項:行政および法令上の基盤、緊急時対応、品質保証等を含む)の5分野について準備され、あるいは検討が進められている。なお、これらの安全基準文書は、国際基準文書として国際合意を得た文書とすることになっているが、加盟国を法的に拘束するものではなく、各国の安全に対し、助言する形で行われる。
 IAEAの放射線防護に係わるその他の重要な機能として、「原子力事故の早期通報に関する条約」、および「原子力事故または放射線緊急事態の場合における援助に関する条約」に関する事務局としての活動がある。
 また、IAEAはOECD/NEAと共同して「国際原子力事象評価尺度(INES:International Nuclear Event Scale)の運用に当っている。INESは原子力施設等で発生した事故、トラブルなどについて、その安全上の重要性を速やかにわかりやすい形で公衆に知らせる手段である(表2参照)。1992年から運用されている。
<図/表>
表1 国際原子力機関(IAEA)の地域別加盟国一覧
表1  国際原子力機関(IAEA)の地域別加盟国一覧
表2 国際原子力事象評価尺度(INES)
表2  国際原子力事象評価尺度(INES)
図1 国際原子力機関(IAEA)の組織図
図1  国際原子力機関(IAEA)の組織図

<関連タイトル>
国際原子力機関(IAEA) (13-01-01-17)
経済協力開発機構(OECD)原子力機関(NEA) (13-01-01-10)
国連科学委員会(UNSCEAR) (13-01-01-19)
国連食糧農業機関(FAO) (13-01-01-20)
IAEAによる開発途上国等への技術支援・協力 (13-01-01-01)
原子力安全条約(原子力の安全に関する条約:Convention on Nuclear Safety) (13-03-01-08)
世界保健機関(WHO) (13-01-01-21)

<参考文献>
(1)日本電気協会新聞部:原子力ポケットブック2008年版(2008年7月)、p.290-293、p.450-−453
(2)国際原子力機関(IAEA):Offices and Contact Information、http://www.iaea.org/About/contact.html、Organization Chart、List of IAEA Member States、http://www.iaea.org/About/Policy/MemberStates/index.html、Board of Governors、http://www.iaea.org/About/Policy/Board/index.html、Numbers、http://www.iaea.org/About/by_the_numbers.html
(3)外務省:国際原子力機関(IAEA)の概要、http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/atom/iaea/iaea_g.html
(4)電気事業連合会(編):「原子力」図面集2008年版、p.115
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