<解説記事ダウンロード>PDFダウンロード

<概要>
 原子力の発展を目的として西欧諸国がその知的、財政的資源を共同利用するために、1958年2月に欧州原子力機関(ENEA)として設立され、1970年代にオーストラリア、日本、米国、カナダが加盟した際に原子力機関 (NEA)と改められた。
 加盟国間の協力を促進することにより、安全かつ環境的にも受け入れられる経済的なエネルギー源としての原子力エネルギー開発・利用の発展に貢献することを目的として、原子力政策、技術に関する情報・意見交換、行政上・規制上の問題の検討、各国法の調査および経済的側面の研究等を実施している。2008年11月現在の加盟国は28ヶ国(ニュージーランド、ポーランドを除くOECD加盟国)
<更新年月>
2009年01月   

<本文>
1.概要
 原子力の発展を目的として西欧諸国がその知的、財政的資源を共同利用するために、1958年2月に欧州原子力機関(ENEA:European Nuclear Energy Agency)として設立された。その後、1970年代に日本、米国、カナダ、オーストラリアが加盟した際に、経済協力開発機構(OECD:Organization for Economic Cooperation and Development)の専門機関として、原子力機関(NEA:Nuclear Energy Agency)と改められた。NEA本部の所在地はパリ郊外で、2008年11月現在の加盟国(図1参照)は、日本、オーストラリア、オーストリア、ベルギー、カナダ、チェコ、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、アイスランド、アイルランド、イタリア、韓国、ルクセンブルク、メキシコ、オランダ、ノルウェー、ポルトガル、スロバキア、スペイン、スウェーデン、スイス、トルコ、イギリス、アメリカ合州国の28カ国であり、そのうちの17カ国が有する343基の原子炉は、世界の原子力発電設備容量の約85%(2008年9月現在)を占めている。
 NEAの主な活動分野は、原子力に関する安全・規制から、放射性廃棄物管理放射線防護、原子力科学、核燃料サイクルの経済的・技術的分析、原子力法規、原子力損害賠償責任分野にわたっており、これらの広報活動も行っている。NEAの職員数は69人(2008年9月現在)、2007年度の予算は約1,320万ユーロ。加盟国により経済規模を考慮して拠出されている。
2.NEAの組織と事業内容
 OECD/NEAの意思決定は、加盟国を構成メンバーとする運営委員会において審議・決定され、OECD理事会の承認を受ける。NEAの運営委員会の下には、加盟国の専門家により構成される7つの常設技術委員会が設置されている。また、これらの委員会活動を支える事務局として、事務局長の下に安全・規制担当、科学・開発担当、その他担当の3人の事務局次長が配置されている(図2参照)。これらの組織のもとに、以下の事業(下記の( )内は担当常設技術委員会)が進められている。
(1)原子力安全と規制(原子力施設安全委員会および原子力規制活動委員会)
 原子力施設の合理的かつ適切な規制・管理および科学技術的知見の発展・維持を支援することにより、加盟国が高い安全性を確保し、原子力を利用することに貢献する。
(2)放射性廃棄物管理(放射性廃棄物管理委員会
 加盟国が、高レベル廃棄物をはじめとするあらゆる種類の放射性廃棄物を安全かつ持続性を持って、幅広く受け入れられるよう管理することを支援する。
(3)放射線防護と公衆衛生(放射線防護・公衆衛生委員会)
 放射線防護に関するさまざま側面(基本概念、科学、政策、制御、運用および社会)を適時に、先見的に検討し、基本的考え方を明らかにすることにより、加盟国における放射線防護体系の取り込みと規制を支援する。
(4)原子力科学(原子力科学委員会)
 現行の原子力システムの安全かつ経済的な運転および次世代技術の開発に必要な科学技術の基礎知識について、加盟国の理解、発展および普及を支援する。
(5)原子力開発(原子力開発・核燃料サイクルに関する技術的経済的検討委員会)
 原子力エネルギーの持続可能な開発や国内および国際的なエネルギー政策に基づく原子力エネルギーの将来の役割を含め、政府の政策分析や意思決定に利用できるよう、原子力に関する技術、経済性、戦略およびウラン等の資源について信頼ある情報を提供する。
(6)原子力法と原子力損害賠償制度(原子力法委員会)
 核物質や関連機器の国際的取引を含め、原子力の平和利用に必要な国内的、国際的な法的枠組の構築を支援するとともに、原子力損害賠償責任問題に取組んでいる。また、原子力法に関する情報および教育に係わるセンターとして機能する。
(7)データバンク(NEAデータバンク)
 NEAデータバンクは、加盟国の科学者・技術者へ、原子力コード(計算機用プログラム)や核データに代表される基本核設計用ツールを提供する中核拠点である。同時に、データバンクは、それら専門的知識についてのノウハウの維持・保存、それら知識のNEAの他部門への提供にも取組んでいる。
(8)広報
 加盟国における原子力分野での政策決定を支援するため、原子力エネルギーの利用に関する各種の文書を刊行している。NEAの活動の詳細は年次報告に記載されており、ウエブサイト:http://www.nea.fr/html/pub/activities/ から閲覧できる。
3.共同プロジェクト等
 NEAの共同プロジェクトとは、関心のある国が費用を分担して、特定分野における研究やデータ共有を進めるものである。原子力安全、放射性廃棄物管理および放射線防護などを中心に各種のプロジェクトがNEAの支援により進められている。現在推進中の共同プロジェクトを図3に示す。
 また、NEAは国際プロジェクトである第4世代国際フォーラム(GIF:Generation IV International Forum)について、委託を受け技術事務局を務めている。GIFは、21世紀の要求に応じた、より環境に優しく経済性の高い第4世代炉の開発・研究のために設置された国際的枠組である。現在、ナトリウム冷却高速炉超高温ガス炉超臨界圧炉ガス冷却高速炉、鉛冷却高速、溶融塩炉に関する国際協力プロジェクトが実施されている。
 さらに、多国間設計評価プログラム(MDEP:Multinational Design Evaluation Program)についても、同様に事務局を務めている。これは、新型炉に関する設計評価の知識・経験を共有し、規制プロセスの効率化と実効性の向上をはかることにより、安全性の向上を目指す国際協力事業である。
<図/表>
図1 OECD/NEAの加盟国
図1  OECD/NEAの加盟国
図2 OECD/NEAの組織機構図
図2  OECD/NEAの組織機構図
図3 OECD/NEA共同プロジェクト
図3  OECD/NEA共同プロジェクト

<関連タイトル>
経済協力開発機構(OECD)国際エネルギー機関(IEA) (13-01-01-12)

<参考文献>
(1)OECD/NEAホームページ:
(2)外務省ホームページ:外交政策、軍縮・経済協力開発機構原子力機関(OECD/NEA)
(3)OECD日本政府代表部、OECD基礎知識、原子力機関−NEA:Nuclear Energy Agency,
JAEA JAEAトップページへ ATOMICA ATOMICAトップページへ