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国際原子力機関(IAEA)は、原子力の平和利用と、原子力の軍事利用への転用を防止するため、1957年に発足した。この目的達成のため、図1.に示すように、以下の6局がある:1)技術協力局、2)原子力局、3)原子力安全局、4)管理局、5)原子核科学・利用局、および6)保障措置局。発展途上国への技術支援・協力は、技術協力局が主に担当する。各局長は副事務局長(Deputy Director General)という。
1.開発途上国等への技術支援・協力の分野
IAEAの技術支援・協力は、希望する国や地域の計画に基づき教育訓練、専門家派遣、技術提携、研究所訪問、装置の購入等により、それぞれに適する技術基盤の確立を促すものである。技術支援・協力分野は、原子力の平和利用に関するものであり以下のように大別される。
(イ)原子力発電
各国の、エネルギー政策の企画、決定、評価に資するための技術情報の交流、
(ロ)非原子力発電(放射線利用)
放射線の健康影響、食品、農業、環境、鉱工業等の分野における放射線利用の促進、
(ハ)原子力利用の安全
原子炉施設および利用に関する各種の国際的な安全基準・指針の作成および普及、
(ニ)核セキュリティ(保障措置、保安)
上記(イ)〜(ハ)に利用する各種放射線源の「汚い爆弾」への転用防止、核テロ対策のため核物質および原子力施設の防護の強化、
(ホ)技術支援・協力
重点プロジェクトを中心に、研修生の受入、トレーニングコース、専門家の派遣等。
2.開発途上国等への技術支援・協力の現状
2.1協力の体制とプロジェクト 図2は技術支援・協力を主に担当する技術協力局の組織を示す。技術協力は、アフリカ地域(37国)、アジア・太平洋地域(27国)、ヨーロッパ地域(32国)、ラテンアメリ地域(22国)に分けて分担されている。
技術協力の形式は、国別協力、地域協力、地域間協力に分かれる。
(1)国別協力
メンバー国−IAEAで協力協定を結ぶ方式である。例えばアフガニスタン−IAEAでは9プロジェクトがある。また、中国は23プロジェクト、キューバは7、ウクライナは12である。
(2)地域協力
地域−IAEAで協力協定を結ぶ協力方式である。次の4協力協定がある。
AFRA(African Regional Cooperative Agreement for Research,Development and Training Related to Nuclear Science and Technology)は、アフリカ地域の26国の協力協定で、1990年に発足した。
ARCAL(Regional Cooperative Agreement for the Advancement of Nuclear Science and Technology in Latin America and the Caribbean)は、ラテンアメリカ地域19国の協定で、1984年に発足した。
RCA(Regional Co−operative Agreement for Research,Development and Training Related to Nuclear Science and Technology for Asia and the Pacific)は、アジア・太平洋地域の協力協定で1972年以来17国が参加している。
ARASIA(Cooperative Agreement for Arab States in Asia for Research,Development and Training related to Nuclear Science and Technology)は、アラブ7国の協定で2002年に発足した。プログラムの例を表1に示す。
(3)地域間協力
地域にまたがった国々−IAEAの協力である。放射性廃棄物の処理処分、放射線利用、RI利用、原子力開発(発電)等の18のプロジェクトがある。
2.2 予算とスタッフ
IAEAの会計年度は、1月1日〜12月31日、予算は、通常予算、技術協力基金および特別拠出金によるものに大別される。表2に2008年度と2009年度の予算を示す。
通常予算は、人件費、会議費、情報配布費、保障措置実施費等である。技術協力基金は、技術協力活動のための義務的経費であり、通常予算の分担率に基づき各加盟国の拠出目標額が定められる。特別拠出金は技術協力、原子力安全、原子力広報等のために加盟国が任意に拠出する。
技術協力局の2007年度予算は約70百万米ドル(約84百万ユーロ)、190人のスタッフが100以上の国と地域で、800のプログラムを進めた。 図3は2007年度のプログラムと予算の割合を示す。健康管理に関する予算が最も多く(28.3%)、次いで食料・農業(12.8%)、科学(8.2%)、放射性廃棄物(7.7%)、RI製造(7.5%)などが続く。<図/表>