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<概要>
 昭和56年度における「電気事業法」及び「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」の規定に基づき報告された事故・故障等の件数は36件であった。
<更新年月>
1998年05月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
 昭和56年度における「電気事業法」及び「核原料物質・核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」の規定に基づき報告された事故・故障等の件数は36件であった。表1に故障・トラブル等報告件数(法律対象)を、表2に内容別件数を、表3原子力発電所の事故・故障等の報告件数一覧(電気事業用)を示す。これら36件の事故・故障等を管理要素別に分類すると、設計管理が不適切であったもの 7件、製作管理が不適切であったもの 4件、施行管理が不適切であったもの 4件、保守管理が不適切であったもの16件及びその他のもの 5件であった。また、これら36件の事故・故障等のうち運転中に発生したものが27件、停止中に発生又は発見したものが 9件であった。
 運転中に発生した27件のうち運転停止に至ったものが25件であった。運転停止の状況は、検出器の誤作動等保護装置の作動による自動停止が 9件、保修作業時等に誤って保護装置等を作動させ自動停止したもの 4件、定期巡視等により不具合を発見し保修のため停止したものが12件であった。なお、運転停止に至らなかった 2件は原子炉の運転に直接影響しない濃縮廃液の漏洩 1件及び被曝による放射線事故 1件であった。停止中に発生又は発見したもの 9件の事故・故障等の状況は、化学体積制御系統からの充てんラインのサーマルスリーブが離脱したもの 2件、蒸気発生器伝熱管の損傷 2件その他 5件であった。
 なお、以上のいずれの事故・故障等にあっても、原子力発電所の周辺環境への放射能の影響はなかった。
 このほか、昭和52年3月3日付け通商産業大臣(現経済産業大臣)通達に基づき報告された軽微な故障が45件あった。


原子力発電所の故障・トラブル等の概要(法律対象)
発生年月日発電所名概要
54. 4. 4関西電力美浜発電所 2号機定期検査中、燃料取替クレーン調整作業時に発生した中性子源の破損を発見。
54. 4. 4東京電力福島第一原子力発電所 1号機隔離時復水器A系統蒸気側入口配管溶接部近傍からの水漏れを発見、調査のため原子炉手動停止。
54. 4.23関西電力大飯発電所 1号機定期検査中、燃料集合体内挿物の入替作業時、使用済燃料プールで制御棒クラスタを落下。
56. 5.12東京電力福島第一原子力発電所 2号機高圧復水ポンプ吐出圧力警報設定器の電源回路しゃ断器の誤作動により高圧復水ポンプが停り、原子炉水位が低下したため原子炉自動停止。
56. 5.22関西電力美浜発電所 1号機定期検査中、原子炉圧力容器の開放準備作業時、作業手順の不手際により、炉内温度計測用素子取付部から冷却材が格納容器内に漏えい。
56. 6.24関西電力大飯発電所 1号機調整運転準備中、発電機の試験時、発電機励磁装置の回路の一部が短絡のため損傷。
56. 7.20中部電力浜岡原子力発電所 1号機濃縮廃液ポンプシール水配管の損傷のため濃縮廃液等が漏えい。
56. 7.20関西電力大飯発電所 1号機調整運転中、炉心上部注入系窒素ガスタンク逃がし弁のシート漏れのため原子炉手動停止。
56. 7.22日本原子力発電東海第二発電所タービン主塞止弁作動試験時、同弁のリミットスイッチの動作不良による誤信号で主蒸気加減弁が急閉のため原子炉手動停止。
56. 7.24関西電力大飯発電所 2号機定期検査中、燃料集合体 2体に損傷を発見。
56. 7.31関西電力大飯発電所 2号機定期検査中D−蒸気発生器水室内で、化学体積制御系統充てんラインのサーマルスリーブを発見。
56. 8.10日本原子力発電東海第二発電所給水管に取り付けられている試験用計装配管の溶接部からの水漏れを発見、調査のため原子炉手動停止。
56. 8.26東京電力福島第二原子力発電所 1号機試運転中、主タービン制御油圧系配管の継手部からの油漏れを発見、調査のため原子炉手動停止。
56. 8.31九州電力玄海原子力発電所 1号機試運転中、定期検査中、蒸気発生器細管の高温側下部支持板部に粒界腐食型の損傷を発見。
56. 9.12日本原子力発電東海第二発電所定期検査のため出力降下中、原子炉ウェル水位計較正作業時、不手際により、原子炉水位検出系に変動を与えたため原子炉自動停止。
56. 9.14関西電力大飯発電所 1号機D−蒸気発生器細管からの漏えい、調査のため原子炉手動停止。
56. 9.18東京電力福島第二原子力 1号機試運転中、タービン湿分分離器水位計が検出部での水の滞留により誤作動したため原子炉自動停止。
56. 9.28東京電力福島第一原子力 5号機調整運転中、給水試料採取系配管の取出継手部からの水漏れを発見、調査のため原子炉手動停止。
56. 9.29関西電力大飯発電所 1号機停止中、化学体積制御系統充てんラインのサーマルスリーブの離脱を発見。
56.10. 2関西電力高浜発電所 2号機制御棒駆動装置の制御回路の不調により制御棒が一部挿入したため原子炉自動停止。
56.10. 9関西電力美浜発電所 1号機調整運転中、一次冷却材試料採取弁のシート漏れのため原子炉手動停止。
56.10.12東京電力福島第一原子力発電所 6号機復水器細管の損傷を修理するため原子炉手動停止。
56.10.28東京電力福島第二原子力発電所 1号機試運転中、タービン駆動給水ポンプトリップ試験後、蒸気タービン軸振動が増加したため原子炉自動停止。
56.11. 4関西電力美浜発電所 1号機調整運転中、蒸気タービン軸振動が急増、調査のため原子炉手動停止。
56.11.12日本原子力発電東海発電所使用済燃料冷却池の使用済燃料ラックを修理中、作業員 1名が許容被曝線量を超えて被曝。
56.11.13 東京電力福島第二原子力発電所 1号機試運転中、出力上昇時、中性子束が中性子束(熱流束相当)高の設定値に達したため原子炉自動停止。
56.11.19東京電力福島第二原子力発電所 1号機試運転中、低圧復水ポンプ仮設ろ過器清掃時、作業の不手際により給水系が停止したため、原子炉自動停止。
56.12. 3東京電力福島第一原子力発電所 1号機調整運転中、スクラム排出容器水位検出系の誤信号により原子炉自動停止。
56.12. 5日本原子力発電敦賀発電所 1号機定期検査中、制御棒駆動水圧系の引抜側手動弁の損傷を発見。
56.12.10東京電力福島第二原子力発電所 1号機試運転中、タービン組合せ中間弁開閉試験時、タービン湿分分離器水位計が検出部での水の滞留により誤作動したため原子炉自動停止。
56.12.20日本原子力発電東海第二発電所調整運転中、タービン組合わせ中間弁開閉試験時、制御油圧系の油圧低下により主蒸気加減弁が急速閉したため原子炉自動停止。
56.12.23東京電力福島第一原子力発電所 5号機原子炉水位記録計点検時、端子部の接触不良による給水系の誤信号により原子炉水位が上昇したため原子炉自動停止。
57. 1.11日本原子力発電敦賀発電所 1号機調整運転中、給水ポンプ入口側配管逃し弁配管溶接部からの水漏れを発見、調査のため原子炉手動停止。
57. 2. 2中部電力浜岡原子力発電所 2号機調整運転中、格納容器内の弁駆動用窒素系から窒素ガスが漏えい。調査のため原子炉手動停止。
57. 2.14東京電力福島第一原子力発電所 2号機調整運転中、給水制御系の主給水制御器の不調のため原子炉手動停止。
57. 2.22・関西電力高浜発電所 2号機定期検査中、蒸気発生器細管の高温側管板部及び下部支持板部に粒界腐食型の損傷を発見。
57. 3.20・関西電力美浜発電所 1号機調整運転中、B−蒸気発生器細管からの漏えい、調査のため原子炉手動停止。

<図/表>
表1 故障・トラブル等報告件数(法律対象)
表1  故障・トラブル等報告件数(法律対象)
表2 内容別報告件数
表2  内容別報告件数
表3 原子力発電所の事故・故障等の報告件数一覧(電気事業用)
表3  原子力発電所の事故・故障等の報告件数一覧(電気事業用)

<関連タイトル>
日本の原子力発電所における事故・故障・トラブルの推移(2005年度まで) (02-07-01-01)
日本におけるBWR原子力発電所の主要な事故・故障・トラブル(2005年度まで) (02-07-01-02)
日本におけるPWR原子力発電所の主要な事故・故障・トラブル(2005年度まで) (02-07-01-03)
昭和56年度試験研究用原子炉における事故・故障 (12-03-01-02)
昭和56年度放射性同位元素等取扱施設における事故・故障 (12-06-01-02)

<参考文献>
(1)原子力安全委員会編(1983):昭和56年度及び57年度の原子力発電所における事故・故障等の概要、昭和58年版原子力安全白書、547-553.
(2)(社) 火力原子力発電技術協会(1982): 事故・故障の状況、 昭和56年度原子力発電所運転管理年報、261−388.
(3)科学技術庁原子力安全局(1982): 昭和56年度の原子力発電所における事故・故障等について、原子力安全委員会月報 6月号、通巻第45号、23-25.
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