<本文>
1.事業の経緯
1984年に電気事業連合会が青森県および六ヶ所村に埋設施設の建設を申し入れ、1985年3月に電力各社の出資のもとに日本原燃株式会社が設立された(設立当時は日本原燃産業株式会社)。同社は1985年8月に概念設計を開始し、翌年9月にそれを完了した後、1988年4月に、法規制に則って青森県六ヶ所村での埋設事業(第1期分の200リットルドラム缶換算で20万本相当)の許可申請を行った。
行政庁(科学技術庁(現文部科学省))による審査(いわゆる1次審査)での経緯から、当初の施設設計を大きく変更する補正申請を含めて3回の補正申請を行ったが、これは1990年2月21日に、また、
原子力安全委員会による審査(いわゆる二次審査)が1990年11月1日に終了し、いずれも安全上問題なしとの結論が示されたことから、1990年11月15日に国は埋設事業を許可した。(注:原子力安全委員会は原子力安全・保安院とともに2012年9月18日に廃止され、原子力安全規制に係る行政を一元的に担う新たな組織として
原子力規制委員会が2012年9月19日に発足した。)
直ぐに建設を開始し、1992年12月より「六ヶ所低レベル放射性廃棄物埋設センター」(当初は「貯蔵センター」)の1号施設の操業が開始された。この第1期分は、電力が
電気事業法のもとで運転している原子炉施設から発生する低レベル放射性廃棄物のうち、濃縮廃液等をセメント等で均質・均一に
固型化した廃棄体を対象としている。
なお、本文では、事業全体を示す場合に概ね「第1期」という言い方をし、施設そのものを示す際には「1号施設」という言い方とする。
一方、第2期分(2号施設対応)は、原子炉から発生する低レベル放射性廃棄物のうち、金属等雑固体をセメントで充填固型化した固体状廃棄体を対象としている。1997年1月に事業許可申請(正確には、同じ日本原燃(株)が同じサイトの埋設センター内で事業を行う予定であることから、「事業変更許可申請」)が行われ(2回の補正)、第1期と同様に行政庁による1次審査が1997年12月18日に、原子力安全委員会による2次審査が1998年9月10日に終了し(経理的基盤等を審査する
原子力委員会による審査結果は9月11日答申)、1998年10月8日に国は埋設事業を許可した。この後、建設工事を行い、2000年より2号埋設施設への受け入れが開始された。
2.埋設施設の概要(レイアウト等)
1号施設に関して、
図1に「埋設施設」の断面の鳥瞰図を、また、
図2には埋設設備の中枢である「鉄筋コンクリート製ピット」の構造(平面図および断面図)をそれぞれ示す。5列8行8段の計320本のドラム缶(200リットルドラム換算)を収納できるセルが16セル(4×4)で1ピットを形成し、1号施設は40のピットを有する。ドラム缶間隙はセメント系充填材(モルタル)で充填される。
コンクリートピット自体は、十分な支持力をもつ「鷹架(たかほこ)層」の中に建設されるが、諸外国における事例と異なり、地下水位よりも下に施設が設置されることから、地下水がピット内へ侵入することを防止するため、埋設当初は万一地下水が侵入しても排水管理が可能なように施設外周に排水・監視設備としてポーラスコンクリートを設置するとともに、施設の側部および上部はベントナイト混合土で覆い、さらにその上部には覆土を施し、地表面を形成する。
2号施設の構造も基本的に同じであるが、
図3(断面の鳥瞰図)および
図4(断面図と平面図)に示されるように、1セルが5列8行9段の計360本のドラム缶(200リットルドラム換算)を収納できるように改良され、また、36セル(6×6)で1ピットを形成することから、2号施設は16のピットを有するのみである。
3.埋設する廃棄体中の核種濃度
1号施設および2号施設に埋設される廃棄体の総
放射能量、事業許可された最大放射能濃度を
表1に示す。さらに埋設された廃棄体により周辺の一般公衆が受ける
線量を試算する際にパラメータとして使用する、すなわち線量評価で使用する各核種の平均濃度も合わせて示した。
4.廃棄物埋設施設の管理方法
1号施設、2号施設いずれにおいても、埋設した廃棄物の放射能が時間の経過に伴って低減し、放射能のレベルが安全上支障のないレベル以下になるまでの間、レベルに応じて廃棄物埋設地の管理を段階的に軽減していくため、原子力安全委員会が提示した「放射性廃棄物埋設設備の
安全審査の基本的考え方」(以下、「
安全審査指針」)等の考え方に基づき、第1〜第3段階を設定している。各段階の実施期間は次のようになっている。
第1段階 埋設設備開始以降10〜15年以内
第2段階 第1段階終了後30年
第3段階 第1段階終了後約300年
安全審査指針等を踏まえて、日本原燃が設定した各段階の管理内容を
表2に示す。
5.線量評価
埋設施設の安全性を示す線量評価については、管理の有無および管理終了後の事象発生の可能性を勘案して試算しているが、1号施設に対しても2号施設に対しても考え方は同じである。
(1)管理期間中の評価:平常時評価(第1〜3段階)
平常時評価では、埋設後約300年間に、施設から漏出する
放射性物質により周辺の人々の受ける恐れのある線量を評価している。ただし、第1段階では、放射性物質の漏出が生じないよう所要の対策を講ずることとしているため、漏出による評価は行わず、覆土までの埋設作業時における線量評価を行っている。
一方、第2〜3段階での線量評価経路は、線量の計算対象とする代表的な経路および人を想定して評価を行っている。評価条件は、
(a)廃棄体、セメント系充填材および埋設設備の状態が砂程度まで劣化している。
(b)設備が劣化するまで放射性物質の時間経過による減衰は考慮しない。
というように線量評価結果が厳しくなるように設定している。
評価経路を
図5に、評価結果を
表3に示す。
表3においては、1号施設および2号施設の各々の寄与分を独立して示すとともに重畳効果も合わせて示すが、重畳が起こり得ないシナリオについては、独立に示していない。
評価結果は、法令で定める公衆の
線量限度である1mSv/yに比べ極めて小さい値となっている。(敷地境界における一般公衆の線量の最大値は、この施設に一時貯蔵および埋設される放射性物質から外部放射線(
スカイシャイン)に係わる線量当量で約0.027mSv/yrと評価されている)
(2)管理期間終了以後における評価
管理期間終了以後において、埋設された廃棄物に起因して発生すると想定される一般公衆の線量が、被曝管理の観点から管理することを必要としない低い線量であるかどうかを比較検討する。評価経路を
図6に、評価結果を
表4に示す((1)と同様に1号施設2号施設別に示す)。通常起こるシナリオに対する評価結果は全て「安全審査指針」の目安として示されている線量の10μSv/yを下回っている。
上記「安全審査指針」では、発生頻度が小さい事象については、線量が10μSv/yを著しく超えないこととしている。これらについての評価経路を
図6に合わせて示し、評価結果を
表5に示す。線量の最大値は約14μSv/yとなっているが、「基本的な考え方」に示されている線量の判断基準を満足している。
(前回更新:1999年3月)
<図/表>
<関連タイトル>
六ヶ所低レベル放射性廃棄物埋設センターの概要 (05-01-03-04)
放射性廃棄物の発生源・発生量と安全対策の概要 (11-02-05-01)
わが国における低レベル放射性廃棄物の処分についての概要(制度化の観点から) (11-02-05-02)
廃棄物管理施設の安全性の評価の考え方について (11-02-05-03)
<参考文献>
(1)日本原燃(株):六ヶ所低レベル放射性廃棄物埋設センター廃棄物埋設事業許可申請書(1988年4月)(一部補正:1989年10月、1990年2月、同年10月)
(2)日本原燃(株):六ヶ所低レベル放射性廃棄物埋設センター廃棄物埋設事業変更許可申請書(1997年1月)
(3)原子力安全委員会:放射性廃棄物埋設施設の安全審査の基本的考え方、1988年3月17日(1993年1月7日一部改訂)
(4)科学技術庁:日本原燃株式会社濃縮・埋設事業所における廃棄物埋設の事業の変更許可申請とその安全審査について(2号廃棄物埋設施設の増設等:平成9年1月30日申請)概要版 (1997年12月)
(5)日本原燃(株):六ヶ所低レベル放射性廃棄物埋設センター(パンフレット)(1997年6月)
(6)日本アイソトープ協会:2002年度版 アイソトープ法令集、ICRP Publ.60