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<概要>
 社団法人エネルギー・情報工学研究会議が、全国20才以上の男女3200人及び原発立地・周辺地域の成年男女800人を対象として、1994年10月にアンケートによる原子力に関する世論調査を行った。この中の「原子力発電の重要度」(日、米)と「原子力発電所の建設」(日、米、仏、韓)の2項目について、諸外国で実施された調査結果と国際比較を行った。日米とも、調査の時点で原子力が重要という割合が7割台で、ほぼ同じようにコンセンサスが得られていると考えられる。原子力発電所の建設について、日本や米、仏ではその推進には厳しい環境にあるが、韓国では、調査の時点で原子力発電所の推進を容認する意見が大半を占めている。
<更新年月>
1998年05月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
1 目 的
 エネルギー・原子力についてのわが国の世論の調査結果と諸外国で実施された調査結果との国際比較を行う。

2 国際比較の対象となった調査
〔アメリカ〕委 託 者:エネルギー啓発協議会(UNSCEA)
      実 施 者:Cambridge Reports/Research International
〔アメリカ〕委 託 者:エネルギー啓発協議会(USCEA)
      実 施 者:Bruskin/Goldring Research
〔アメリカ〕委 託 者:原子力エネルギー協会NEI
      実 施 者:Bruskin/Goldring Research
〔フランス〕委 託 者:原子力庁(CEA)、コジェマ(現AREVA NC社)、
            フランス電力公社EDF)、フラマトム(現AREVA NP社)
      実 施 者:BVA研究所
〔韓  国〕委 託 者:韓国原子力文化財団
      実 施 者:コリアサーベイ(ギャロップ)ポール社

 国際比較の対象となった主な調査の方法、対象者数等を 表1 に示す。

(注)アメリカの経年変化のデータについて
 ケンブリッジレポートでは、「原子力発電の重要度」について多年度にわたるデータを所有しており、またブラスキン/ゴールドリング社も調査を行っているが、日本のデータが5回分であるためとグラフ表示などの関係で、今回新たにアメリカの原子力エネルギー協会(NEI)の調査結果を含めて下記の5時点(*印)を分析の対象とした。
〔ケンブリッジレポート〕
 *1989/11 1990/2 1990/5 *1990/11 1991/2 *1991/11 1992/4
〔ブラスキン/ゴールドリング〕
 *1992/2
〔原子力エネルギー協会〕
 *1993/12

3 調査項目:        (注)《 》内は、国際比較をした国名。
原子力発電の重要度
問10 あなたは、原子力発電が今後の電力需要を満たすのに、どの程度重要になるとお考えですか。(1つだけ○印)          《日・米》

  1 非常に重要
  2 ある程度重要
  3 あまり重要でない
  4 全く重要でない
  5 分からない
    
 今回の調査結果と、これまで行われた日米の調査結果を 図1 に示す。
 「今後の国内の電力需要を満たすに際して、原子力発電がどの程度重要になるか」については、「非常に重要」と「ある程度重要」の二つの意見を合わせた割合は、日本は調査開始以来7割台で推移しており、ここ3回は8割近くになっている。アメリカでも、5時点とも7割以上で推移している。とくに「非常に重要」という割合が最近時点では47%となっており、1989年から91年に近い割合となっている。日・米とも原子力の必要性については、ほぼ同じようにコンセンサスが得られているものと思われる。

(注)アメリカの合計%は、四捨五入の関係で99%あるいは101%となるが、グラフの上では100%の目盛りで表示した。

参考データ:
 ■日米の電源別発電電力量(1992年実績)・%
 石炭石油天然ガス原子力水力他総発電電力量(億Kwh)
日本11.027.822.328.210.77,883
アメリカ56.43.29.422.18.927,972
 (日本:電気事業審議会需給部会中間報告1994年6月23日)
(アメリカ:Energy Information Administration/Monthly Energy Review October 1994)

原子力発電所の建設
問11 あなたは、今後原子力発電所の建設はどのようにするべきだと思いますか。あなたのお気持ちに近いものを1つだけお選びください。(1つだけ○印) 《日・米・仏・韓》
 1 何らかのかたちで推進する
 2 現状を維持する
 3 何らかのかたちで廃止する
 4 分からない

 これまで行われた日、米、仏、韓の調査の比較を 図2 に示す。
 「原子力発電所の建設」について、何らかのかたちで建設を推進するべきという人の割合は、日本ではここ3回4割前後で推移しており、今回は最も低い割合となっている。アメリカは、年々減少しており、最近2時点での調査では1割台となっている。フランスはやはり1割前後となっている。一方韓国では一時点の調査であるが75%で、日本や米・仏に比べると非常に高い割合となっている。しかし韓国のサイトでは、何らかのかたちで建設を推進するべきという割合は、55%と低くなる。

 ■各国の原子力発電比較( )内は原子力発電のシェア・%(1992年末現在)
 発電所基数設備容量(万Kw)発電電力量(1992年実績・億Kwh)
日 本463,7362,223(28.2)
アメリカ10810,4696,188(22.3)
フランス555,8983,217(72.9)
韓 国9762565(43.2)
((社)日本原子力産業会議「世界の原子力発電開発の動向」)


選択肢の比較
 なんらかの
かたちで推進
現状維持なんらかの
かたちで廃止
わからない無回答
日 本積極的に推進・
少しずつ推進
現状を維持する少しずつ廃止 
全面的に廃止
わからない無回答
アメリカ現在の原子力発電所を運転し、さらに建設すべき現在は建設しないが、建設の可能性は残しておく全ての現存原子力発電所の運転を中止しこれ以上建設しないわからない無回答
フランス建設を続ける現在の原子力発電所は運転するが、新たに建設すべきではない全ての原子力発電所を廃止わからない無回答
韓 国積極的に増設
安全に漸増
現状を維持する少しずつ減らす
完全に廃止
わからない無回答


<図/表>
表1 国際比較の対象となった調査の概要
表1  国際比較の対象となった調査の概要
図1 原子力発電の重要度
図1  原子力発電の重要度
図2 原子力発電所の建設
図2  原子力発電所の建設

<関連タイトル>
エネルギー・原子力に関する世論調査(1994年)「調査の概要」 (10-05-01-03)
エネルギー・原子力に関する世論調査(1994年)「エネルギー・環境問題(1)」 (10-05-01-04)
エネルギー・原子力に関する世論調査(1994年)「エネルギー・環境問題(2)」 (10-05-01-05)
エネルギー・原子力に関する世論調査(1994年)「電力・原子力」 (10-05-01-06)
エネルギー・原子力に関する世論調査(1994年)「原子力発電の安全性」 (10-05-01-07)
エネルギー・原子力に関する世論調査(1994年)「エネルギー・原子力の情報」 (10-05-01-08)
エネルギー・原子力に関する世論調査(1994年)「核燃料リサイクル」 (10-05-01-09)

<参考文献>
(1) 社団法人エネルギー・情報工学研究会議:エネルギー・原子力に関する世論調査と国際比較<報告書> 1995年1月
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