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<概要>
 平成4年(1992年)5月28日付け原子力安全委員会が決定した「発電用軽水型原子炉施設におけるシビアアクシデント対策としてのアクシデントマネージメントについて」において、今後新しく設置される原子炉施設については、「当該原子炉設置許可等に関わる安全審査(ダブルチェック)の際に、アクシデントマネージメントの実施方針について原子力安全委員会は行政庁から報告を受け検討することとする」が、1997年10月20日の一部改正で、「当該原子炉施設の詳細設計の段階以降速やかにアクシデントマネージメントの実施方針について原子力安全委員会は行政庁から報告を受け検討することとする。この検討結果を受け原子炉設置者はアクシデントマネージメント策を当該原子炉施設の燃料装荷までに整備することとする」に改正された。ここにその原文のとおり示す。

(注)東北地方太平洋沖地震(2011年3月11日)に伴う福島第一原発事故を契機に原子力安全規制の体制が抜本的に改革され、新たな規制行政組織として原子力規制委員会が2012年9月19日に発足したため、本データに記載されている原子力施設の設置に係る安全審査体制とその際のアクシデントマネージメント実施方針についても見直しや追加が行われる可能性がある。なお、原子力安全委員会および原子力安全・保安院は上記の規制組織改革に伴って廃止された。
<更新年月>
2002年11月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
 平成4年(1992年)5月28日付け原子力安全委員会(注:原子力安全委員会は原子力安全・保安院とともに2012年9月18日に廃止され、原子力安全規制に係る行政を一元的に担う新たな組織として原子力規制委員会が2012年9月19日に発足した。)が決定した「発電用軽水型原子炉施設におけるシビアアクシデント対策としてのアクシデントマネージメントについて」(ATOMICAデータ<11-03-01-24>参照)において、「今後新しく設置される原子炉施設については当該原子炉設置許可等に関わる安全審査(ダブルチェック)の際に、アクシデントマネージメントの実施方針(設備上の具体策、手順書の整備、要員の教育訓練等)について原子力安全委員会は行政庁から報告を受け検討することとする」が、平成9年(1997年)10月20日の一部改正で、「今後新しく設置される原子炉施設については、当該原子炉施設の詳細設計の段階以降速やかにアクシデントマネージメントの実施方針(設備上の具体策、手順書の整備、要員の教育訓練等)について原子力安全委員会は行政庁から報告を受け検討することとする。この検討結果を受け原子炉設置者はアクシデントマネージメント策を当該原子炉施設の燃料装荷までに整備することとする」に改正された。以下にその原文のとおり示す。

 発電用軽水型原子炉施設におけるシビアアクシデント対策としてのアクシデントマネージメントについて(平成4年5月28日付け原子力安全委員会決定文(平成9年10月20日一部改正)
 
 当委員会は、原子炉安全基準専門部会に昭和62年7月、共通問題懇談会を設け、シビアアクシデントの考え方、確率論的安全評価手法、シビアアクシデントに対する格納容器の機能等について検討してきた。その後、平成2年2月19日、同懇談会からシビアアクシデントに関する知見及びそれまでに得られていた確率論的安全評価の一部について「原子炉安全基準専門部会共通問題懇談会中間報告書」を受けた。
 さらに当委員会は、平成4年3月5日、同懇談会から「シビアアクシデント対策としてのアクシデントマネージメントに関する検討報告書−格納容器対策を中心として−」(以下、「報告書」という。)を受けた。これは、近年、シビアアクシデントヘの拡大防止対策及びシビアアクシデントに至った場合の影響緩和対策(以下、「アクシデントマネージメント」という。)が発電用軽水型原子炉施設(以下、「原子炉施設」という。)の安全性の一層の向上を図る上で重要であると認識されていること、また、アクシデントマネージメントの一部として海外諸国において格納容器対策が採択され始めていることを踏まえ、わが国が採るべき考え方について検討を行ったものである。
 当委員会は、報告書の内容を検討した結果、報告書が述べるアクシデントマネージメントの役割と位置付け及び格納容器対策に関する技術的検討結果についてはこれを妥当なものであると考える。また、アクシデントマネージメントの整備を一層促進するための同懇談会の提案は、わが国の原子炉施設の安全性の一層の向上に資するものであり意義深いものと認識する。
 当委員会としては、同懇談会の提案を踏まえ、下記の方針で対応を行うこととする。また、原子炉設置者及び行政庁においても、同方針に沿って一層の努力をされるよう要望する。

1.わが国の原子炉施設の安全性は、現行の安全規制の下に、設計、建設、運転の各段階において、(a)異常の発生防止、(b)異常の拡大防止と事故への発展の防止、及び(c)放射性物質の異常な放出の防止、といういわゆる多重防護の思想に基づき厳格な安全確保対策を行うことによって十分確保されている。これらの諸対策によってシビアアクシデントは工学的には現実に起こるとは考えられないほど発生の可能性は十分小さいものとなっており、原子炉施設のリスクは十分低くなっていると判断される。
 アクシデントマネージメントの整備はこの低いリスクを一層低減するものとして位置付けられる。
 したがって、当委員会は、原子炉設置者において効果的なアクシデントマネージメントを自主的に整備し、万一の場合にこれを的確に実施できるようにすることは強く奨励されるべきであると考える。
2.原子炉設置者においては、原子炉施設の安全性の一層の向上を図るため、報告書が示す提案の具体的事項を参考としてアクシデントマネージメントの整備を継続して進めることが必要である。また、行政庁においても、報告書を踏まえ、アクシデントマネージメントの促進、整備等に関する行政庁の役割を明確にするとともに、その具体的な検討を継続して進めることが必要である。
3.当委員会としては、アクシデントマネージメントに関し、今後必要に応じ、具体的方策及び施策について行政庁から報告を聴取することとする。当面は以下のとおり行うこととする。
(1)今後新しく設置される原子炉施設については、当該原子炉施設の詳細設計の段階以降速やかに、アクシデントマネージメントの実施方針(設備上の具体策、手順書の整備、要員の教育訓練等)について、行政庁から報告を受け、検討することとする。この検討結果を受け、原子炉設置者は、アクシデントマネージメント策を当該原子炉施設の燃料装荷前までに整備することとする。
(2)運転中又は建設中の原子炉施設については、順次、当該原子炉施設のアクシデントマネージメントの実施方針について行政庁から報告を受け、検討することとする。
(3)上記(1)及び(2)の際には、当該原子炉施設に関する確率論的安全評価について行政庁から報告を受け、検討することとする。
4.関係機関及び原子炉設置者においては、シビアアクシデントに関する研究を今後とも継続して進めることが必要である。さらに、当委員会としては、これらの成果の把握に努めるとともに所要の検討を行っていくこととする。
<関連タイトル>
シビアアクシデント時の炉心溶融進展に関する研究 (06-01-01-09)
シビアアクシデント時の格納容器の健全性に関する研究 (06-01-01-10)
ACE計画 (06-01-01-21)
シビアアクシデント防止に関する研究(ROSA-V計画) (06-01-01-28)
軽水炉におけるシビアアクシデントマネージメントについて(1992年) (11-03-01-24)

<参考文献>
(1) 内閣総理大臣官房原子力安全室(監修):改訂10版原子力安全委員会安全審査指針集、大成出版(2000年11月)p.1216-1217
(2) 科学技術庁原子力安全局原子力安全調査室(監修):改訂8版原子力安全委員会安全審査指針集、大成出版(1994年10月)p.870-893
(3) 原子力安全委員会(編):原子力安全白書(平成5年版)、大蔵省印刷局(平成6年3月31日)p.414-416
(4) 原子力安全委員会(編):第2編第1章第2節5シビアアクシデント対策、原子力安全白書(平成9年版)、(平成10年10月17日)p.155-156、第2編第1章第2節5シビアアクシデント対策、原子力安全白書(平成10年版)、(平成11年8月31日)p.197-198
(5) 原子力安全委員会:発電用軽水型原子炉施設におけるシビアアクシデント対策としてのアクシデントマネージメントについて、原子力安全白書(平成5年版)
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