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<概要>
 核燃料リサイクルは将来を展望した我が国の原子力開発利用の基本政策として推進されており、そのための技術開発や事業化が着実に進展してきている。一方、民間においては、1992年からの六ケ所ウラン濃縮工場の操業開始、1993年の六ケ所再処理工場の建設着工、さらには軽水炉によるMOX燃料利用画等を踏まえて、2000年過ぎを目指した国内 MOX燃料 加工の事業化計画も着実に進められている。これらの進展に対応して、我が国における核燃料施設の安全研究は、再処理施設、廃棄物処理・貯蔵施設、ウラン濃縮施設及び燃料成形加工施設・転換施設を対象として進められ、その研究の成果は、これら施設の安全性評価及び安全性向上のために幅広く活用されている。
<更新年月>
1997年03月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
 日本原子力研究所(現日本原子力研究開発機構)は、燃料サイクル安全工学研究施設(NUCEF)等の試験施設を活用し、核燃料サイクル関連施設の安全性の向上と将来に向けた技術の高度化を目指し、異常事象、事故事象を含む広範な安全に関する研究を行ってる。動力炉・核燃料開発事業団(現日本原子力研究開発機構)は、東海再処理工場等の大型核燃料施設の設計、建設、運転、保守、管理の経験の蓄積や、ウラン濃縮、再処理、MOX燃料加工、放射性廃棄物の処理・貯蔵等に関する技術開発を推進しており、併せて再処理施設、プルトニウム取扱施設の安全性全般に関する研究や核燃料施設から発生する放射性廃棄物の処理・貯蔵の安全性に関する研究等を実施している。また、科学技術庁等の所管の研究所は、専門分野の知見を反映した安全に関する研究を実施している。大学は核燃料物質臨界遮へい等に関する基礎研究を実施しており、また、民間では大型商業用再処理施設の安全性をより一層高めるための研究等を実施している。
 核燃料施設の安全研究においては、多岐にわたる施設について広範囲の研究分野に着目する必要がある。このため、再処理施設、プルトニウム取扱施設、ウラン燃料の加工施設等の安全審査に適用される「核燃料施設安全審査基本指針」による分類を参考とし、相互に関連の深い要素を整理、統合して研究課題を選定した。
1.臨界安全性に関する研究
 核燃料施設等の臨界安全評価技術の向上及び臨界安全設計の合理化に資するため、臨界計算コードの信頼性の向上、臨界安全ハンドブックの充実等を目指した臨界安全性評価手法の研究を実施する。また、NUCEF等の臨界実験装置を活用して、ウラン、プルトニウム及びそれの混合物の溶液燃料、棒状燃料の臨界データを系統的に取得し、核燃料サイクル施設の臨界安全評価に係る技術基準の整備に資するとともに、臨界安全設計・管理の信頼性向上と合理化を図る。さらに、臨界事故に発展する過渡事象を解明するとともに、臨界安全性評価に必要な溶液燃料の特性データの取得を図る。また、核燃料施設等の臨界安全管理技術の向上等のため、未臨界度測定システムの開発を行う。MOX燃料加工施設の臨界安全監視システムを開発し、臨界管理手法の安全裕度の定量化、実プラント体系に近い臨界安全データの収集、マイナーアクチニド核種の臨界安全データの整備を行う。
2.遮へい安全性に関する研究
 軽水炉燃料の高燃焼度化及びMOX燃料の軽水炉利用により増加が見込まれるアクチニド核種について、自発核分裂やα崩壊に伴う軽核種との(α,n)反応及ぴ崩壊熱に関連するデータを収集して、遮へいや熱安全評価の精度向上を図り、核燃料サイクル施設の臨界及ぴ遮へいに係わる数値実験を高精度・高信頼度で行うシステムを構築する。また、中性子線量測定手法の高度化と施設内外の測定・評価を行い、複雑形状部のストリーミング放射線データを系統的に収集してストリーミング放射線計算式の開発を図り、遮へい設計における安全裕度の評価に資する。
3.閉じ込め安全性に関する研究
 再処理施設の平常時及び事故時における放射性エアロゾルの放出に関するソースターム評価に係わる研究を行う。また、再処理のプロセス異常評価に関して、連続処理プロセスの応答特性研究を行い、安全評価、各種制限値の安全裕度の定量化に資する。CMPO等の新溶媒に関する安全性の向上等のため、硝酸との発熱反応、溶媒使用に伴う生成物のプロセス内挙動等に係わる試験・解析を実施する。
 MOX燃料加工施設において、重要なグローブボックスの閉じ込め性能の向上に資するため、付帯機器を含むグローブボックスの閉じ込め性能試験等を行うとともに、グローブ、ビニルバッグ等の構造、材質等の改良研究を行う。また、MOX粉末取扱設備から排気系への粉末移行挙動に関する研究を行うとともに、MOX粉末の粒径、吸湿性等の基礎データを測定する。さらに、MOX燃料加工施設で使用する低水素濃度混合ガスについて、爆発限界組成、爆発挙動に関する研究を行う。高レベル廃液貯槽等の静的熱除去システム及び静的水素除去システムのフィージビリティスタディ、性能評価研究等を行う。
4.運転管理・保守及び放射線管理に関する研究
 再処理施設等核燃料施設の供用期間中検査技術の向上を目的として、高線量下に設置されている機器の検査のための多機能型セル内点検装置を開発する。また、セル内の電気・電子部品の信頼性向上のため、放射線照射による劣化データを取得するとともに、劣化防止方策の検討を行う。異常事象を未然に防止するために、再処理施設全体を監視し、異常事象に結びつきうる状態を探知し、オペレータに助言する運転支援システムを開発する。核燃料施設における安全監視系の向上を図るため、インライン方式による放射性物質の検出技術や状態分析技術を開発する。さらに、再処理施設における放射線監視・管理のシステム開発を行う。
5.放射性廃棄物の管理に関する研究
5.1 高レベル放射性廃棄物の処理に関する研究
 再処理施設から発生する高レベル放射性廃棄物及び高線量固体廃棄物は、現在、再処理施設内において安全に処理・貯蔵されている。高レベル廃棄物量を低減し管理負担の軽減化に資するため、高減容化を妨げる元素を高レベル廃液から分離する試験及び固化体特性評価試験を行う。また、アクチニドのリサイクルとTRU廃棄物の発生量低減をめざす群分離プロセスに関して、群分離・再処理を統合した高度化再処理プロセスに関する安全研究を実施する。
5.2 低レベル放射性廃棄物の処理に関する研究
 不燃性固体廃棄物、低レベル放射性濃縮廃液、廃溶媒の高減容処理技術の開発を行い、廃ヨウ素フィルタ及びヨウ素含有スラッジの減容安定化に有効な廃棄体化技術の試験等を行う。また、廃棄物発生量と環境放出量の低減に資するため、再処理施設から発生する各種低レベル放射性廃液中に含まれる放射性核種を除去する要素技術の試験を行うとともに、従来技術との融合・高度化を行う。
5.3 TRU廃棄物の処理に関する研究
 TRU廃棄物の区分管理に向けた判断基準の策定に資するため、中性子線測定法及びガンマ線測定法による核種測定技術を開発する。また、TRU核種を含む液体廃棄物を高滅容化し、安定固化できるプロセスを構築する高度処理技術を開発するとともに、高濃度TRU廃棄物の固化法として、優れた閉じ込め性能を期待できる新しいセラミック固化法を開発して、TRU廃棄物管理の安全性向上に資する。
5.4 放射性廃棄物の放出挙動特性・低減化に関する研究
 再処理からの揮発性核種である炭素14、ヨウ素129及びヨウ素131の挙動と捕集、固定等の処理技術を研究し、これらについて気相移行と放出量の合理的評価に資する。また、ヨウ素除去技術の高度化及びクリプトン回収・固定化技術の研究を進める。
 当面実施すべき研究課題については 表1-1表1-2表1-3表1-4表1-5表1-6表1-7表1-8 および 表1-9 に示す。
<図/表>
表1-1 原子力施設等安全研究年次計画(平成8年度〜平成12年度)3.核燃料施設の安全性に関する研究
表1-1  原子力施設等安全研究年次計画(平成8年度〜平成12年度)3.核燃料施設の安全性に関する研究
表1-2 原子力施設等安全研究年次計画(平成8年度〜平成12年度)3.核燃料施設の安全性に関する研究
表1-2  原子力施設等安全研究年次計画(平成8年度〜平成12年度)3.核燃料施設の安全性に関する研究
表1-3 原子力施設等安全研究年次計画(平成8年度〜平成12年度)3.核燃料施設の安全性に関する研究
表1-3  原子力施設等安全研究年次計画(平成8年度〜平成12年度)3.核燃料施設の安全性に関する研究
表1-4 原子力施設等安全研究年次計画(平成8年度〜平成12年度)3.核燃料施設の安全性に関する研究
表1-4  原子力施設等安全研究年次計画(平成8年度〜平成12年度)3.核燃料施設の安全性に関する研究
表1-5 原子力施設等安全研究年次計画(平成8年度〜平成12年度)3.核燃料施設の安全性に関する研究
表1-5  原子力施設等安全研究年次計画(平成8年度〜平成12年度)3.核燃料施設の安全性に関する研究
表1-6 原子力施設等安全研究年次計画(平成8年度〜平成12年度)3.核燃料施設の安全性に関する研究
表1-6  原子力施設等安全研究年次計画(平成8年度〜平成12年度)3.核燃料施設の安全性に関する研究
表1-7 原子力施設等安全研究年次計画(平成8年度〜平成12年度)3.核燃料施設の安全性に関する研究
表1-7  原子力施設等安全研究年次計画(平成8年度〜平成12年度)3.核燃料施設の安全性に関する研究
表1-8 原子力施設等安全研究年次計画(平成8年度〜平成12年度)3.核燃料施設の安全性に関する研究
表1-8  原子力施設等安全研究年次計画(平成8年度〜平成12年度)3.核燃料施設の安全性に関する研究
表1-9 原子力施設等安全研究年次計画(平成8年度〜平成12年度)3.核燃料施設の安全性に関する研究
表1-9  原子力施設等安全研究年次計画(平成8年度〜平成12年度)3.核燃料施設の安全性に関する研究

<関連タイトル>
原子力施設等安全研究年次計画(平成8年度〜平成12年度)水炉の安全性に関する研究 (10-03-01-06)
原子力施設等安全研究年次計画(平成8年度〜平成12年度)放射性物質輸送の安全性に関する研究 (10-03-01-08)
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原子力施設等安全研究年次計画(平成8年度〜平成12年度)原子力施設等の確率論的安全評価等に関する研究 (10-03-01-10)
原子力施設等安全研究年次計画(平成8年度〜平成12年度)高速増殖炉の安全性に関する研究 (10-03-01-17)

<参考文献>
(1) 科学技術庁原子力安全局:原子力安全委員会月報 通巻第210号、大蔵省印刷局(1996)
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