<概要>
各原子力施設間を結ぶ新燃料及び使用済燃料等の各種輸送物の輸送を安全かつ円滑に行うことは重要であり、これら輸送の安全性向上を図るために、安全研究が積極的に進められてきている。我が国の
核燃料物質を含む
放射性物質の輸送に係る法令は、
IAEAの放射性物質安全輸送規則(1985年版)に準拠して定められている。このIAEA規則は現在1996年版への改訂が検討されている。この改訂により、多様化する放射性物質の輸送に対し、より適切な安全管理がなされることになる。
核燃料サイクルの確立の時代を迎えて、解析手法等の技術の進歩、知見の蓄積を踏まえ、放射性物質輸送の安全性向上を図るための安全研究を今後も体系的に進める必要がある。放射性物質の国際輸送については、多くの国がこの規則を各国の基準として定めており、この改訂規則の運用が勧告されれば、我が国においても国内法への取り入れのための検討を進めなければならない。
<更新年月>
1997年03月 (本データは原則として更新対象外とします。)
<本文>
放射性物質輸送安全研究年次計画の策定に当たっては、国内原子力関係機関及び専門家に対するニーズ調査を実施し、安全研究の枠組みの体系化を図り、研究課題の把握を実施した。なお、1996年にIAEA放射性物質安全輸送規則の見直しが行われることになっている。これに伴い、試験準備等の追加、変更が予想される。現在、新しいIAEA放射性物質安全輸送規則は、原子力安全委員会放射性物質安全輸送専門部会・安全基準分科会において審議が行われている。このため、改訂規則の国内法への取り入れに際し、必要な新たな研究課題が生じた場合には、適宜取り上げるなど、柔軟に対応していく。それぞれの研究課題については、国が実施すべき研究についての重要性及び緊急性の観点から抽出を行った。以下にその概要及び課題を示す。
1.
遮へい・
臨界に関する研究
放射性輸送物の遮へい・臨界については、いずれもIAEAの放射性物質安全輸送規則を採り入れた我が国の国内法令に安全基準が定められている。したがって、輸送物はいかなる状態におかれても未臨界であるように設計することが最も重要である。また、放射性物質の輸送は、輸送作業従事者による荷役作業あるいは公衆との接近を伴うので、それらの人々に対する被曝線量当量を低減するため、放射線遮へいは輸送物の
安全設計において重要な課題のひとつである。これらのことを考慮し、本研究においては、以下の3つのテーマを研究課題とした。
1.1
燃焼度を考慮した使用済燃料輸送物の臨界安全性の研究
燃料の高燃焼度化及び
MOX燃料の使用に伴い、使用済燃料輸送物の臨界についても検討する必要があり、その際、燃料の燃焼度クレジットを考慮したより合理的な安全評価手法の研究を行う。
1.2
輸送容器の臨界安全ハンドブックの整備
今後の新たな輸送物の安全解析を行うため、今日まで長年にわたり国内外で開発されてきた遮へい・臨界安全解析コード及びデータを収集し、体系的に整備するとともに、遮へい・臨界安全ハンドブックを整備する。
1.3 高燃焼度使用済燃料輸送における
中性子遮へいに関する研究
高燃焼度燃料における中性子遮へいを考慮した使用済燃料輸送物の遮へい解析評価手法を検討する。
当面実施する研究課題については
表1 に示す。
<図/表>
<関連タイトル>
原子力施設等安全研究年次計画(平成8年度〜平成12年度)水炉の安全性に関する研究 (10-03-01-06)
原子力施設等安全研究年次計画(平成8年度〜平成12年度)核燃料施設の安全性に関する研究 (10-03-01-07)
原子力施設等安全研究年次計画(平成8年度〜平成12年度)原子力施設の耐震等の安全性に関する研究 (10-03-01-09)
原子力施設等安全研究年次計画(平成8年度〜平成12年度)原子力施設等の確率論的安全評価等に関する研究 (10-03-01-10)
原子力施設等安全研究年次計画(平成8年度〜平成12年度)高速増殖炉の安全性に関する研究 (10-03-01-17)
<参考文献>
(1) 科学技術庁原子力安全局:原子力安全委員会月報 通巻第210号、大蔵省印刷局(1996)