<本文>
現行法令に定められている放射性
核種の種類が明らかで、1種類である場合の廃液中又は排水中の濃度限度は、この濃度の水を公衆が生まれてから70歳になるまでの期間、飲料水として飲み続けたとき、
経口摂取による
内部被ばくの平均線量率が1年当り1ミリシーベルト(公衆に対する実効線量限度)に達するという安全側(保守的)モデルに基づいて計算された濃度である。廃液中又は排水中の濃度限度の値は、放射線防護関係法令の数量等を定める告示等に記載されている。
ICRPは、放射性核種ごとに職業人及び公衆に対する内部被ばくに関する線量係数(1ベクレル摂取したときの実効または
等価線量)を示している(ICRP Publication 72等を参照)。わが国の法令では、更に放射線防護の観点から追加して濃度限度を定める必要が認められる核種の線量係数を算定し、それら核種の濃度限度も定めている。計算に当っては、公衆の年齢層ごとの実効線量係数、各年齢層の摂水量及び年齢層ごとの適用年数を用いている。すなわち、
廃液中又は排水中の濃度(Bq/立方cm)
= 1(mSv/年)×70(年)/[生まれてから成人になり70歳に至るまでの以下の量の合計
{各年齢層の線量係数(mSv/Bq)×各年齢層の摂水量(立方cm/年)×適用年数(年)}]
ここで、各年齢層の摂水量と適用年数は
表1 に示す値である。
放射線防護関係法令では、液体状の放射性核種を浄化し、または排水する場合には、次に定められた能力を有する排水設備を設けることとされている。
(A)排水口における廃液中の放射性核種の3月についての平均濃度を下に記す(1)〜(4)の濃度限度以下とする能力
(B)排水監視設備を設けて排水中の放射性核種の濃度を監視することにより事業所境界における排水中の平均濃度を下に記す(1)〜(4)の濃度限度以下とする能力
(1)放射性同位元素の種類(放射性核種)が明らかで、かつ、1種類である場合にあっては、廃液中又は排水中の濃度限度
(2)放射性同位元素の種類が明らかで、かつ、廃液中若しくは排水中にそれぞれ2種類以上存在する場合にあっては、それらの放射性核種の濃度のそれぞれその放射性核種についての廃液中又は排水中の濃度限度に対する割合の和が1となるようなそれらの放射性核種の濃度
(3)放射性核種が明らかでない場合にあっては、廃液中又は排水中の濃度限度(その廃液中若しくは排水中に含まれていないことが明らかな放射性核種に係るものを除く)のうち最も低い濃度
(4)放射性核種が明らかで、かつ、放射線防護関係法令の数量等を定める告示等に記載されていない場合については、別に定められていて、その濃度限度は
表2 のとおりである。
<図/表>
<関連タイトル>
放射線の確定的影響と確率的影響 (09-02-03-05)
線量限度 (09-04-02-13)
年摂取限度(ALI) (09-04-02-14)
国際放射線防護委員会(ICRP) (13-01-03-12)
<参考文献>
(1) 放射線審議会基本部会:外部被ばく及び内部被ばくの評価法に係る技術的指針、(1999年4月)
(2) 日本アイソトープ協会(編):アイソトープ法令集(I) 2001年版、放射線障害防止法関係法令、(2001)
(3) 河合勝雄ほか:ICRPの内部被ばく線量評価法に基づく空気中濃度等の試算、JAERI−Data/Code 2000−001、日本原子力研究所、(2000年1月)