<大項目> 放射線利用
<中項目> 放射線利用の基礎
<小項目> 放射線の種類
<タイトル>
電離放射線 (08-01-01-01)

<概要>
 電離放射線とは、物質に電離作用を及ぼす放射線である。一般には、電離放射線を単に放射線と称している。電離放射線には荷電粒子(アルファ線電子線など)のように原子・分子を直接電離することができる直接電離(性)放射線と、エックス線や中性子線のように、いったん原子の束縛電子や原子核と相互作用して荷電粒子線を発生させ、二次的に発生した荷電粒子線が物質に電離作用を及ぼす間接電離(性)放射線がある。ここでは、電離放射線の性質と利用についても触れる。
<更新年月>
2004年02月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
1.電離放射線
 電離放射線とは、物質に電離作用を及ぼすことができる放射線のことである。
一般には、電離放射線を単に放射線と称している。非電離放射線には紫外線を除き電離作用がない。
 電離放射線が物質に入射すると、散乱や吸収によりそのエネルギーが物質に与えられる。電離放射線の物質へのエネルギー移行過程を、放射線と物質の相互作用という。相互作用の種類は多く、しかもそれらは互いに関連している。
 電離放射線は直接電離(性)放射線と間接電離(性)放射線に大別される(図1)。ここで、直接電離(性)放射線とは、荷電をもつ粒子線(アルファ線、ベータ線など)であって、それ自体が直接、原子の軌道電子あるいは分子に束縛された電子に電気的な力を及ぼして電離を起こさせる、荷電粒子放射線のことである。
 これに対し、エックス(X)線、ガンマ線などの電磁波(X線やガンマ線などの電磁波の粒子性に着目したときには、これらを光子という)あるいは電荷を持たない中性子線は、原子あるいは原子核との相互作用を介して荷電粒子線を発生させ、二次的に発生した荷電粒子線が電離作用にあずかる。そこで、これらを間接電離(性)放射線と呼ぶ。
 一般的によく知られ、かつ、それらの利用頻度も多い荷電粒子線には、アルファ線、重陽子線、陽子線、その他の重粒子線(重イオンともいう)、ベータ線(電子線を含む)が、非荷電粒子線には中性子線が、電磁波には、ガンマ線及びエックス線(特性エックス線を含む)がある。
 主に研究対象となっている放射線に、π中間子、μ粒子(ミューオン)やニュートリノなどがある。将来新たな放射線も登場することになろう。
2.電離放射線の性質とその利用
 電離放射線のエネルギーは、空気を電離可能な、またはそれ以上である。空気を電離して一対の正イオンと自由電子を生成する平均エネルギーの値をW値という。気体のW値は、エネルギーが1MeV程度の荷電重粒子線の場合、30〜35eVである。
 電離放射線は物質を構成する原子や分子と相互作用して、そのエネルギーの一部あるいは全部が物質に吸収される。放射線の物質との相互作用は、社会の様々な分野に利用されている(表1)。
 電離放射線の主な一般的特徴を列記すると、
(1)エネルギー範囲が広い。
(2)検出感度が著しく高いものが多い。
(3)種類が多く(図1参照)、おのおのには特有の性質がある。
のようである。放射線の特徴には、ヒトの五感で認知されることがほとんどどないという面もあるが、この特徴が利用されているとは言い難い。上記のような特徴は単独で利用される場合もあるが、放射線の種類とその成因<08-01-02-02>に記されているように、放射線の発生源の特徴と併せて利用されるある。
 放射線の発生源の主なものには、
(1)放射性同位元素:天然に存在する元素の大部分に関係しており、特に原子数(または原子番号)が等しく、原子核が不安定なもの
(2)放射線加速器原子炉:人工的に放射線のエネルギーを利用した装置などがある。
 放射線の物質中での電磁相互作用を利用して、荷電粒子のエネルギーを高める装置が加速器であり、速度の遅い非荷電粒子線である中性子が、原子核に接近してウランプルトニウムのような重い原子核に作用し易いことを利用した装置が原子炉である。
 荷電粒子線の透過像は、放射線の物質中の散乱、吸収状況を反映している。これを利用した技術がラジオグラフィ(診断用エックス線像も含む)である。計測制御に利用されている厚さ計やレベル計なども同類である。
 電離作用を利用した蛍光灯のグロー放電管は、日用品として家庭でも多く用いられている。蛍光作用は診断用エックス線写真の増感紙や放射線量の評価に有用性が認められてきた。
 放射線のエネルギーが、化学エネルギーを遙かに上回ることから、化学結合の切断、グラフト重合反応のような放射線化学反応の誘起を通して、有機物の改質に利用されており、自動車用ラジアルタイヤや耐熱性電線被覆材の強化などに利用されるほか、廃ガスの放射線処理による有害物除去の研究もすでに始まっている。
 放射線の生物作用は、放射線の直接作用と併せて、遊離基による間接作用の利用も注目され、医療用具や食品の殺(滅)菌、発芽防止、品種改良、害虫駆除などのほか、がん治療、疼痛低減化などに利用されている。
 放射線の検出感度は、化学的な元素分析の感度を大幅に上回るものが多い。そこで原子力分野での検出器として活用されるのは勿論、微量元素分析に応用されている。文化財の年代決定に利用されているカーボンデーティング炭素(14C)は、放射線の特性と宇宙および地球環境の恒常性を同時に利用した、精度の高い手法となっている。
 非電離性放射線に分類されている紫外線は太陽光線にも含まれている。紫外線の殺菌効果は、放射線利用に先だっていた。電磁波の輻射(放射)はよく知られた現象である。
<図/表>
表1 電離放射線の物質との相互作用とその利用例
図1 電離放射線の種類

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<関連タイトル>
放射線の分類とその成因 (08-01-01-02)
放射線の電離作用 (08-01-02-02)
放射線と物質の相互作用 (08-01-02-03)

<参考文献>
(1)日本アイソトープ協会:やさしい放射線とアイソトープ(改訂版)、丸善(1993)
(2)物理学辞典編集委員会(編):物理学辞典(改訂版)、培風館(1992年5月)
(3)飯田博美(編):放射線用語辞典(改訂4版)、通商産業研究社(平成8年8月)p.145,p.432
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