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日本の原子力発電所の設備容量は、1999年7月1日現在、
BWR(沸騰水型
軽水炉)28基2,555.1万kW、
PWR(
加圧水型軽水炉)23基1,936.6万kW、重水炉「
ふげん」1基16.5万kWで総計52基4,508.2万kWである(
表1 参照)。また、わが国最初の電気事業用原子力発電所である日本原子力発電(株)東海発電所(GCR1基16.6万kW)が、1966年以来の営業運転を1997年度末で停止した。
これら原子力発電所52基による1998年末の発電電力量(発電端)は、前年に比べ3.2%減の3,075億2334万kWhで、国内総発電電力量の約35%を占めた。
図1 に設備容量および
設備利用率の推移を示す。
図2 に事故・トラブル等報告件数および1基当たり報告件数(法律対象)の推移を示す。また発電電力量の推移を
図3 に、原子力発電所立地図を
図4 に、原子力発電所の
放射線業務従事者の
被ばく実績を
図5 に示す。
1.設備利用率
1998年度の原子力発電所の平均設備利用率は、BWR28基(総認可出力2,555.1万kW)が84.6%、PWR23基(同1,936.6万kW)が83.7%、合計51基の平均設備利用率は前年(81.3%)比2.9%増の84.2%であった。また、51基(「ふげん」を除く)の平均時間稼動率は前年(81.8%)比2.9%増の84.7%であった。
2.運転・建設状況
現在建設中の原子力発電所は、東北電力の女川原子力3号(BWR、82.5万kW)と東通原子力1号(BWR、110.0万kW)、および中部電力の浜岡原子力5号(BWR、138.0万kW)である。なお、建設準備中は東北電力の巻原子力1号(BWR、82.5万kW)、および北陸電力の志賀原子力2号(BWR、135.8万kW)である。1999年7月1日現在における原子力発電所の炉型別の運転・建設状況一覧を
表2−1 、
表2−2 および
表2−3 に示す。
3.設備容量
1998年度末までの日本の原子力発電所の炉型別(BWR、PWR、GCR)設備容量の推移は
表3 と
図1に示すとおり、合計51基4,491.7万kWとなり、一般電気事業用全発電設備容量(22,124万kW)に対する比率は20.3%である。この設備容量は、アメリカ(1999年12月末現在、103基、10,064.3万kW)、フランス(同、55基、5,988.8万kW)に次いで世界第3位である。また、東京電力の柏崎刈羽原子力発電所は、7号機(1997年7月2日営業運転開始)が完成したことによりサイトの総出力は821.2万kWとなり、世界最大の原子力発電所となった。
4.設備利用率の推移
1998年度の日本の原子力発電所の設備利用率は、営業運転中の全原子力発電所平均で84.2%となった。石油代替エネルギーの中核として着実に原子力の利用が進められいる。 日本の原子力発電は、1966年に東海発電所(GCR)、1970年に軽水炉(BWR、PWR)の商業運転開始で幕を開けた。軽水炉は1975年代前半に初期トラブル、BWRは
応力腐食割れ(SCC:Stress Corrosion Cracking)、PWRは蒸気発生器伝熱管からの漏洩等のため、設備利用率は40〜50%程度と低迷を続けていたが、1975年代後半からは徐々に上昇してきた。1983年度には71.5%と初めて70%の大台に乗せて以後、70%以上の設備利用率を維持し(
図1参照)、先進国の中でも極めて良好な成績を示している。故障・トラブル等の推移を
図2に、発電電力量の推移を
図3に、原子力発電所における分布図を
図4に、放射線従事者の被ばく実績を
図5に示す。設備利用率が向上してきた要因としては、
(1)定期検査期間の短縮(その結果放射線従事者の被ばくが減少、
図5参照)
(2)設備・機器の信頼性向上、燃料設計の変更等による運転期間の長期化
(3)運転中のトラブルの減少(
図2参照)
があげられる。
5.改良型軽水炉
現在運転している東京電力の柏崎刈羽6号機(BWR、135.6万kW)および7号機(BWR、135.6万kW)の2基は、
改良型BWR(
ABWR)とよばれるわが国の軽水炉の第3次改良標準化計画の成果を反映した
初号機である。インターナルポンプ(内蔵型再循環ポンプ)など新技術が採用され、安全性信頼性を一層高めた設計となっている。
6.今後について
日本初の
商業用原子炉である東海発電所(GCR、16.6万kW)は、1998年3月で営業運転を停止し、廃炉措置の準備に入っている。
なお、東北電力は、現在計画中の巻原子力発電所の建設計画を3年先送りし、2002年に
着工、2008年に運転開始することを決めた。この計画延期は、同発電所の建設の是非をめぐって1996年8月に実施された住民投票で反対票が6割を占めたという厳しい状況を受けて、当初の計画実施が難しいと判断されたことによる。
<図/表>
<関連タイトル>
我が国の原子力発電所の現状(1994年) (02-05-01-02)
海外の原子力発電所の現状(1997年) (02-06-01-02)
<参考文献>
(1)通商産業省資源エネルギー庁・公益事業部原子力発電安全管理課(編):原子力発電所運転管理年報 平成11年版(平成10年度実績)、(社)火力原子力発電技術協会(1999.10)
(2)日本原子力産業会議(編):世界の原子力発電開発の動向 1998年次報告(1999.5)