<解説記事ダウンロード>PDFダウンロード

<概要>
 世界の原子力発電所は、1997年12月31日現在、運転中のもの429基(合計出力:36,469.7万kW)、建設中のもの43基(3,526.1万kW)、計画中のもの51基(3,916.8万kW)で、いずれも前年より減少した。総計523基の合計出力は43,912.6万kWであった。
 1997年に新たに営業運転を開始した原子力発電所は、3基合計出力323.6万kWである。新たに着工したのは2基、合計出力160万kWで、2002年から2003年にかけて営業運転を開始する予定である。
<更新年月>
1998年08月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
 日本原子力産業会議(現日本原子力産業協会(原産))は、世界の原子力発電所の動向調査を毎年「世界の原子力発電所の動向」として取りまとめている(参考文献1)。今回の調査は、原産が世界33カ国・地域の約85の電力会社等から得たアンケートの回答にもとづき、1997年末現在のデータを集計したものである。それによると運転中のもの429基(36,469.7万kW)、建設中のもの43基(3,526.1万kW)、計画中のもの51基(3,916.8万kW)で、合計523基(4,3912.6万kW)である。
  表1 に世界の原子力発電所設備容量(進捗別)を、 表2 に世界の原子力発電所設備容量(炉型別)を、 図1 に世界の原子力発電設備容量を、 図2 に世界の運転中原子力発電設備容量の推移を、 図3 に炉型別原子力発電設備容量の割合を示す。またIAEAが発表している世界の原子力発電所の発電電力量を 表3 に示す。
 原子力発電所の設備容量と基数の多さでは、米国(10,447.1万kW、107基)、フランス(6,103.3万kW、56基)、日本(4,524.8万kW、53基)、ドイツ(2,349.6万kW、20基)、ロシア(2,125.6万kW、26基)、英国(1,417.3万kW、35基)、ウクライナ(1,361.8万kW、15基)、カナダ(1,272.3万kW、16基)、スウェーデン(1,043.7万kW、12基)、韓国(1,031.6万kW、12基)の順で、先進諸国が多い(表1)。中国は18位で、226.8万kW、3基である。
 一方、電力量について原子力発電の総発電に占める割合では、リトアニア(81.47%)、フランス(78.17%)、ベルギー(60.05%)、ウクライナ(46.85%)、スウェーデン(46.24%)、ブルガリア(45.38%)、スロバキア(43.44%)、スイス(40.57%)の順で比較的東欧が多い。中国は0.79%と少ない。
 1997年に新たに営業運転を開始した原子力発電所は3基(合計出力323.6万kW)である。その内訳は、日本の柏崎刈羽7号機(ABWR,135.6万kW)、玄海4号機(PWR,118万kW)、韓国の月城(Wolsong)2号機(CANDU,70万kW)。東京電力の柏崎刈羽は、7号機が完成したことによりサイト総出力は821.2万kWとなり、世界最大の原子力発電所となった。
 今回の調査で閉鎖を確認したのは、オランダのドーデバルト(BWR、5.8万kW)、米国のビッグロックポイント(BWR、7.5万kW)、メインヤンキー(PWR、90万kW)の3基。いずれの発電所も、電力市場の自由化という流れの中で、競争力の低下が避けられないとの判断から閉鎖に至ったものである。同様に、カナダのオンタリオ・ハイドロ社は、「原子力発電所効率化計画」の一環として1995年10月に休止したブルース2(A)号機に続いて、ブルース1(A)号機およびピッカリング1〜4(A)号機の5基の運転を休止した。
 建設中(43基)のうち、営業運転開始を控えているのが、フランスの純国産炉である150万kW級の新型PWR「Nシリーズ」の4基。韓国初の標準型炉となる蔚珍(ULCHIN)3号機(PWR、100万kW)および月城(Wolsong)3号機(CANDU、70万kW)が1998年半ばの営業運転開始を予定している。このほか、インドで建設中のカイガ1,2号機(PHWR、各22万kW)、ラジャスタン3号機(同)の3基、スロバキアのモホフチェ1号機(PWR、44万kW)も1998年中の営業運転開始を目指している。
 一方、1997年に新たに着工したのは、中国の嶺澳(LINGAO)1号機(PWR、100万kW)と泰山(QINSHAN)第2-2号機(PWR、60万kW)の2基で、それぞれ2002年、2003年に営業運転を開始する予定である。
 以下に、1997年末現在の主な原子力発電所の現状(1997年末現在)をアジア、北米、欧州、独立国家共同体の順に紹介する。
[中国]
 原子力発電所3基が運転中で、この3基により総発電電力量(11,350億kWh)の1.27%に相当する144億kWhを供給した。総発電設備容量(25,000万kW)に占める原子力発電設備容量(226.8万kW)の割合は0.84%である。
 中国の第9次5ヵ年計画(1996年〜2000年)には、PWR:60万kW×2基、100万kW×2基、CANDU-6:70万kW×2基、ロシア型PWR(VVER):100万kW×2基の合計8基が盛り込まれている。
[韓国]
 原子力発電所12基が運転中で、原子力発電電力量は過去最高の771億kWhを記録した。総発電電力量(2,244億kWh)に占める原子力の割合は34.3%をとなり、対前年比で1.7%低下した。これまでPWRの設計や建設に関わる技術を蓄積してきた韓国は、月城2号機の建設を通じて、CANDU炉技術の国産化計画において貴重な経験を積むことになった。韓国では、2年毎に長期電源開発計画を改定していたが、開発計画案の1997年末発表は延期された。97年後半からの経済危機を契機に、原子力発電計画に何らかの修正が加えられる可能性がでてきた。
[台湾]
 現在3サイトで6基が運転中である。4番目のサイトとなる龍門(LUNGMEN)1,2号機(ABWR、各135万kW)は、計画ではそれぞれ2004年7月、2005年7月に運転開始の予定である。
[北朝鮮]
 朝鮮半島エネルギー開発機構KEDO)が進めている北朝鮮へ軽水炉2基(各100万kW級PWR)を供給するプロジェクトは、北朝鮮新浦市琴湖地区で進行中である。韓国電力公社(KEPCO)が主契約者、米国デュークエンジニアリング社が技術支援コンサルタントを請け負っている。供給される原子炉は、韓国で建設中の蔚珍(ULCHIN)3,4号機で採用されている韓国標準型(米国CE社PWRの韓国版)。1997年8月19日、建設サイトで起工式が行われ、2003年に完成する予定である。
[インド]
 現在、建設中の4基の原子力発電所のうちカイガ1,2号機(PHWR、各22万kW)は1998年11月に、ラジャスタン3,4号機(同)はそれぞれ1998年11月、1999年5月に営業運転を開始する予定である。
 懸案となっていたクダンクラム原子力発電所建設計画(VVER-1000型PWR、2基)は、1997年12月にロシアとの間で契約に大筋で合意、ターンキー方式(完成品引き渡し方式)で実施される。
[米国]
 電力市場の自由化に伴う競争激化を背景に、効率の悪い発電所を運転認可(ライセンス)の失効を待たずに早期に閉鎖する動きが出てきた。具体的な動きとして、前述のビッグロックポイントおよびメインヤンキー発電所が早期閉鎖を決めた。オイスタークリーク発電所(BWR、65万kW)も早期閉鎖を一つのオプションとして検討されている。
 米エネルギー情報局(EIA)の予測によれば、最も考えられるケースとして24基の原子力発電所が運転認可の失効を待たずに早期閉鎖されるとしている。これ以外の原子力発電所については、少なくとも40年という認可期間にわたって運転されるとみている。残りの全基が認可期間内運転されたとしても、1996年時点の原子力発電設備容量約1億kWのうち、半分を超える5200万kW(65基)が2020年までに退役することになる。さらにEIAは、経済性に加え、使用済燃料処分場の開設が遅れることが必至なため、新規の原子力発電所は2020年まで建設されないとみている。これによって、2020年時点の総発電量に占める原子力発電の割合は、1996年の19%から8%に低下すると予測している。一方天然ガスのシェアは、1996年の9%から一気に3倍以上の伸びを示すことになる。
 こうした中で、GE社の改良型BWR(ABWR、135万kW)とABB-CE社のシステム80+型炉(PWR、135万kW)の2つの原子炉がNRC(原子力規制委員会)から設計認証を取得した。認証を受けたことによって、両型炉とも、発電所の建設・運転に関連したサイトに固有の環境問題を除き、認証された設計の範囲内の安全問題については訴訟の対象とはならない。
[カナダ]
 現在16基(合計出力1272.3万kW)が運転中で、このうちハイドロ・ケベック社(HQ)の2基を除き、全てオンタリオ・ハイドロ社(OH)が所有・運転している。前述したように、OH社は市場自由化の動向や経済性を踏まえて運転再開を再検討するとの前提で、1995年10月から運転休止中のブルース2(A)号機に加え、ブルース1(AA)号機とピッカリング1〜4(A)号機の5基の原子炉の運転を休止させた。1998年には、ブルース3,4(A)号機も休止させる予定である。同社は、稼働率の低下が著しいブルースA発電所とピッカリングA発電所を休止し、比較的良好な実績が得られているブルースBおよびピッカリングB発電所の改良に全力を傾けるとしている。
 カナダ、米国、メキシコの3カ国による北米自由貿易協定(NAFTA)が1994年1月からスタートしており、北米電力市場の統合に向けた動きが加速している。カナダのエネルギー産業は、1996年の国内総生産(GDP)の7.6%を占め、エネルギー輸出額(主として米国向け)も同国の輸出額全体の約10%に達するなど、全産業の中でも大きな位置を占めている。
[英国]
 現在35基の原子力発電所が運転中である。1995年運転のサイズウェルB原子力発電所(PWR)を最後に、建設・計画中の基数はゼロである。貿易・産業省が発表したエネルギー統計によれば、1997年第2・四半期の原子力発電シェアは過去最高の36%となり、石炭火力の33%、ガス火力の29%を抜いて初めてトップとなった。
 1997年1月に、原子力施設検査局はヒンクレーポイントB原子力発電所(AGR、2基)とハンターストンB原子力発電所(AGR、2基)に対して、10年間の運転期間延長を認めた。
[フランス]
 フランス電力公社EDF)所有の発電所による1997年の総発電電力量は、4,577億kWhとなった。内訳は、原子力発電電力量が3,760億kWh、水力が620億kWh、火力が197億kWhで、原子力発電のシェアは前年並みの82%を記録した。周辺諸国への電力輸出は、昨年より5%減の653億kWhで、主な輸出先はスイス、英国、イタリア、およびドイツであった。
 フランス原子力産業界が総力を結集して開発した、150万kW級の最新型PWR「Nシリーズ」4基はいずれも試運転段階で、営業運転を間近に控えている。
 ジョスパン新首相は、6月19日施政方針演説のなかでスーパーフェニックスFBR、124万kW)を閉鎖する方針を明らかにした。
[ドイツ]
 原子力発電電力量は前年の1,617億kWhから約5%増加し、過去最高の1,704億kWhに達する見通しである。ミュルハイムケールリッヒ(PWR)を除く、他の19基が順調に稼動した。平均設備稼働率は、93%前後を見込まれている。
[スウェーデン]
 1997年2月3日、少数与党社会民主党は、バーセベック原子力発電所を閉鎖することで、政策上提携関係にある中央党、左翼党と合意に達した。3党合意に基づくエネルギー政策には、全ての原子力発電所を閉鎖する最終期限は設定していないが、1998年7月までにバーセベック原子力発電所1号機(BWR)、2001年7月までに同2号機(BWR)を閉鎖することなどが明記されている。
 原子力発電所閉鎖に向けた一連の動きに対し、FORATOM(欧州原子力産業会議)は、「最近の世論調査で80%近い圧倒的多数が脱原発政策に反対しているとの数字が出たが、与党社会民主党はその結果を無視している。バーセベック1号機の閉鎖計画は、安全性や経済的判断に従ったものではなく、全くの政治的決定である」と厳しく批判している。
[フィンランド]
 現在4基の原子力発電所があり、ロピーサ1,2号機(VVER、各46.5万kW)を国営電力会社であるイマトラン・ボイマ社(IVO)が、オルキルオト1,2号機(BWR、各73.5万kW)を民間のテオリスーデン・ボイマ社(TVO)が所有している。1997年の原子力発電電力量は約200億kWhで、シェアは27.3%。今後も需要の伸びが見込まれるため、IVO社とTVO社は、所有する発電所の設備容量の増強を図る考えである。
[ブルガリア]
 原子力発電所コズロドイ1〜4号機(VVER-440、各44万kW)と同5、6号機(VVER-1000、各100万kW)が運転中で、179億kWhを発電している。1997年11月に閣議に提出されたエネルギー政策のメモランダム(覚え書)によれば、予定されていたコズロドイ1〜4号機の閉鎖は、代替電源の確保が困難であり、ブルガリアの経済・社会に対する影響が大きすぎることを理由に2000年以降まで先送りされることになった。
[ロシア]
 1997年の原子力発電電力量は、1,083億kWhで、1996年に比べ約5億kWhの減少を示したものの、総発電電力量に占める原子力の割合13.2%と前年並みを記録した。現在、ロシアの電力業界は、規制緩和と自由市場競争への移行期にあり、設備容量に余剰があることに加え、電力需要の低迷、料金収入不足などの問題を抱えている。
 1997年12月議会公聴会での審議のあと、ロシア政府は2005年までの新原子力発電開発計画案を承認した。これには原子力発電設備容量を現在の2126万kWから2700万kWないし2900万kWに拡大することが盛り込まれている。
[ウクライナ]
 原子力発電電力量は794億kWhで、1996年11月以来、チェルノブイリ1号機が閉鎖に向け停止しているにもかかわらず、前年の796億kWhから僅かな減少にとどまった。総発電電力量に占める原子力の割合は、44.9%を記録した。
 チェルノブイリ発電所で唯一発電中である3号機は、定検のため運転停止中であったが、冷却系配管の約260個所に様々な大きさの亀裂が発見されたことから、修復のため大幅な運転停止延長を余儀なくされている。なお、運転再開は1998年春以降になるとみられている。
<図/表>
表1 世界の原子力発電設備容量(進捗別)
表1  世界の原子力発電設備容量(進捗別)
表2 世界の原子力発電所設備容量(炉型別、運転中)
表2  世界の原子力発電所設備容量(炉型別、運転中)
表3 世界の原子力発電所の発電電力量(1997年末現在)
表3  世界の原子力発電所の発電電力量(1997年末現在)
図1 世界の原子力発電設備容量
図1  世界の原子力発電設備容量
図2 世界の運転中原子力発電設備容量の推移
図2  世界の運転中原子力発電設備容量の推移
図3 炉型別原子力発電設備容量の割合
図3  炉型別原子力発電設備容量の割合

<関連タイトル>
日本の原子力発電所の現状(1999年) (02-05-01-03)
海外の原子力発電所の現状(1995年) (02-06-01-01)
System 80+ (02-08-03-02)

<参考文献>
(1)日本原子力産業会議(編):世界の原子力発電開発の動向 1997年次報告(1997年5月)
(2)資源エネルギー庁(編):原子力発電関係資料 平成7年4月
(3)IAEA(編):Nuclear Power Status in 1998, IAEA Press Release, May 8, 1998
JAEA JAEAトップページへ ATOMICA ATOMICAトップページへ